BEGINNING OF THE REVOLUTION   作:スタイニー

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遂にクラシックレースが始まる。

ピーちゃんは今までとは違うレースの関わり方を持つことになり、新たな気持ちで春シーズンを迎える。

そして、世代の中心にいるミスターシービーは担当トレーナーと自身に掛けられた期待とどう向き合うべきかを思慮していた。


クラシック三冠

「アンバー!取材のまとめはあれでよかった?」

 

ミスターシービーとカツラギエースの取材の翌日、ピーちゃんはアンバーシャダイに取材をまとめたレポートを提出していた。そして、提出してしばらくたったある日にピーちゃんはアンバーシャダイにレポートの感想を尋ねる。

 

「うん!凄い良かったよ!このまま記事にしていいくらいだよ!いやー、ピーちゃんにこんな才能があったなんて!ぜひ生徒会に来て…」

 

レポートの感想を聞かれたアンバーシャダイはとてもニコニコした表情でピーちゃんのレポートの出来を絶賛する。そして、ピーちゃんを生徒会に勧誘しようとすると…

 

「ねぇ、アンバー。アタシを生徒会に入れてくれない?ただ、実績は足りないから会長推薦枠ってことで通してよ」

 

ピーちゃんはアンバーシャダイが勧誘の話を言い切る前に自ら生徒会に入ることを申し出てきた。

 

「えっ?本当に?今まで『絶対に入らない』って言ってたのに、どうして?」

 

突然のピーちゃんの発言にアンバーシャダイは嬉しそうにしながらも、今まで頑なに拒んでいながら、急に快諾したことに驚き、その理由を聞く。

 

「なんか、取材してたらアンバーの気持ちがわかってきたんだ。後輩たちが『未来を変えてくれることに期待する』っていう"楽しさ"が。だから、アタシももっと学園の内部に近づきたいなって」

 

ピーちゃんは少しだけ気恥ずかしそうにしながらも、素直に理由を話す。

 

「えー、本当に!うれし〜!やっとわかってくれたんだ!じゃあ、じゃあ、選手たちの広報を担当してよ!いろいろな子たちに取材したり、レースの記事書いたりしてさ!書き物でトゥインクルシリーズを盛り上げて!」

 

ピーちゃんの宣言がウソでないことを確認したアンバーシャダイは大喜びでピーちゃんにお願いしたい役割を話す。

 

「まあ、それはいいけど、アタシの文才は未知数だから、毎回いい書き物がいつも出来るかは保証出来ないよ?」

 

予想以上に喜ぶアンバーシャダイに少しだけ戸惑いながらもピーちゃんは広報の担当をすることに了承する。ただ、了承はしたものの自分の文才に関しては自信がないようだ。

 

「大丈夫だって、今回の取材レポートは凄くよかったから。特に『"自由"のミスターシービー』と『"叛逆"のカツラギエース』の内容は面白かった。ピーちゃんは2人を推してるんだね!」

 

アンバーシャダイはピーちゃんの文才に太鼓判を押す。そして、レポートの中にピーちゃんが注目している選手がいることを見抜く。

 

「まあ、そんなところかな。アタシ的に2人なら今のトゥインクルシリーズを変えてくれるんじゃないかなって思ったから、より宣伝してあげたいなと思ったんだ」

 

「なるほどね…。ピーちゃんがそういうなら、きっとその子たちが今のトゥインクルシリーズを変えてくれる中心の存在になるよ…。とりあえず、今週からクラシックトライアルも本格化するし、いきなり忙しくて申し訳ないんだけど、頑張ってね!」

 

「まあ、頑張るよ。よろしく!」

 

取材が終わってすぐに、アタシは生徒会に入ることをアンバーに申し出た。アタシが生徒会に入ろうって思った理由は2つ。1つは長くお世話になってきたトレセン学園に何かできないかなって思ったから。

 

まあ、こんなアタシが今更なんだっていうのはあるんだけど、やっぱりトゥインクルシリーズもといトレセン学園の活気がなくなってることには寂しさを感じるし、また活気が戻ってきて欲しいとは内心思ってたしね。だから、活気を取り戻すための何かをアタシもしたいかなって思ったんだ。

 

2つ目はエースやシービーたちの世代の子たちに可能性を感じたから。アタシはエースとシービーに特に注目してるけど、それ以外にもセンスのある子はたくさんいるし、みんなモチベーションが高くてキラキラしてる。そんな希望を持って頑張ってる子たちのためにも、先輩のアタシがもっと後押ししないとなって思ったんだ。だから、手伝いじゃなくて正式に生徒会に入ろうって思ったの。

 

そうして、生徒会に入ったアタシはすぐにクラシックトライアル戦線の取材に乗り出していく。アタシが広報担当になったのは2月の半ばから。そして、一番最初に取り上げることになったのは、ミスターシービーが出場した共同通信杯だった。

 

 

 

2月13日、重賞、共同通信杯

1着ミスターシービー

 

 

 

2着は前回シービーが敗れたレースの勝者ウメノシンオーで、今回はシービーがキッチリとリベンジしたカタチになった。

 

ただ、シービーがリベンジを意識してレースに本気だったかというとそんなことはなくて、本人曰く『追い込み戦法の実践練習』。

 

ちょっとシービー、もう少し空気読んで発言してよね。そんな話を記事にしたら大炎上するから、もう少しオブラートに包もうか。

 

 

 

そして、約1ヶ月後にミスターシービーは再びトライアルレースに出る。

 

 

 

3月6日、重賞、弥生賞

1着ミスターシービー

 

 

 

シービーはトライアル2連勝で皐月賞への出場権を獲得した。

 

ちなみにレースはいつも通りに流し気味。ただ、内容は前回よりも良くなっていて、このレースでシービーは自分の走りを完全にマスターした感じがある。これで全力じゃないとか、本当に天才だよね。

 

 

 

ちなみにその頃エースは…

 

 

 

2月20日、オープン、京都ジュニアステークス

13着

 

3月26日、条件戦、春蘭賞

1着

 

 

 

エースは年明け初戦は大敗したけど、次のレースはしっかり立て直して通算3勝目。獲得ポイントを順調に伸ばして、皐月賞への出場ラインに届いた。これでシービーもエースも無事に皐月賞に出られることが確定した。

 

「皐月賞に出場しそうなメンバーがだいたい決まってきたね。今年は有力選手に大きなトラブルもなく、みんな出場するって感じかな」

 

ピーちゃんは特集記事を作るべく、様々なレース記事を読み漁りながら、今年の皐月賞の展望を頭に巡らせていく。

 

今年の皐月賞はジュニア級や春のトライアルでしっかりと実績を挙げてきたメンバーが怪我などで脱落することなく、順当に名を連ねる様相を呈していた。

 

まず、阪神ジュニアステークス勝者のダイゼンキングと朝日杯勝者のニシノスキーの東と西それぞれのジュニア級チャンピオンが早々に皐月賞参戦を表明。

 

続いて参戦を表明したのは、シンザン記念勝者にして、名門メジロ家のメジロモンスニー。さらに続けて、きさらぎ賞の勝者でシービーも一目を置く、ニホンピロウイナーが参戦を表明。

 

その後、共同通信杯・弥生賞の2連勝を飾ったミスターシービーが堂々と名乗りをあげ、地道に勝ち星を上げてきていたカツラギエースが滑り込みで皐月賞への出場を決めた。

 

「皐月賞は2人とも頑張って欲しいけど、やっぱりシービーに人気が集まるだろうね。アタシ的にもシービーならやってくれるんじゃないかなって思うけど、どうなんだろう?今年はついに出るのかな、『三冠ウマ娘』」

 

長いトゥインクルシリーズの歴史の中で様々な記録や偉業はたくさん成されてきた。中でも、毎年この時期になると世代上位の実力を持つ者に期待がかかる大偉業がある。それは…

 

 

 

クラシック三冠

 

 

 

『三冠』の起源はかなり古く、ウマ娘たちによるレースが国民的興行スポーツとして認知され始める前の40年前にまで遡る。ちなみにその時代では『三栄冠』という呼称であった。

 

そして、その『三栄冠』を達成した最初のウマ娘の名は『セントライト』と言った。

 

イギリスのさる高名な貴族のもとに生まれ、日本で育った彼女は、 『レース界に誇りある栄冠の道を作る』ことを使命とし、日本のレース界に飛び込んだ。そして、見事に『三栄冠』を達成をすると、『"選手として"の使命は果たした』として、現役生活をたったの1年で引退してしまった。

 

時代背景やそういった特殊な事情があるためセントライトの存在は半ば伝承的な部分があり、"初代"三冠ウマ娘という認知が世間にはあまり浸透していなかったりする。ちなみにセントライト本人は現在も存命で故郷に隠居し、URAのレース事業を『裏側』から支えているという。

 

セントライトが三冠を達成した当時は、指定された3レースに勝つだけで得られる称号ということで、その価値は決して高くなかった。

 

そういった認識であるため、その後は毎年のように三冠達成を期待される選手がいたのだが、どんなに素晴らしい才能を持つ選手でも『二冠』止まりになってしまい、実際に三冠を達成できる者は1人も出なかった。

 

そして、あまりにも達成されないことで『三冠』という概念が伝説化しかけていた23年後についに2人目の『三冠』達成者が現れる。

 

そのウマ娘の名は『シンザン』と言った。

 

デビュー当初は見栄えのしない体格で、チーフトレーナーやチームメイトからの評価は決して高くはなかったが、唯一シンザンの力を信じていたサブトレーナーと共に6連勝で皐月賞を制覇。

 

そして、前哨戦のオープンレースを落とすことはあったが、本番のダービーと菊花賞は危なげなく勝利し、23年振りの『三冠』を達成した。

 

その後のシンザンは史上初となる八大競走5勝と、トキノミノル以来となる生涯連帯率100%を達成。引退後も指導者として数々の強豪選手を排出するなど数々の実績を挙げ続けている。

 

ちなみにシンザンは現在も指導者として活躍中。本人曰く『自分の伝説を超えてくれる者を自らの手で育て上げる』と豪語し、今もなおトゥインクルシリーズを『表側』から支えている。

 

そして今、シンザンの三冠達成から19年の時がたった今年のクラシックシーズンを前に"18人目"の三冠達成の期待選手として世間から騒がれているのがミスターシービーである。

 

「シービーが世代のNo.1っていうのはみんな認め始めているけど、当の本人は『三冠』に興味がないからなぁ〜。一体、今年のどうなることやら…」

 

ミスターシービーの"実力"を認めているピーちゃんも彼女に三冠の期待をかけてはいるが、彼女の"性格"もよくわかっているピーちゃんからすれば、『できるできない』の前に『やるかやらないか』の問題があるということに苦笑いをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ、シービー」

 

校舎の屋上の建屋の上で寝そべっているミスターシービーに1人の男性が声を掛ける。

 

「ん!寺さん、今日は見つけるの早いね」

 

見つけられたミスターシービーは起き上がり、下にいる男性に笑顔で応える。

 

「それはそうだろ。散歩禁止令があって校外に出られないなら、お前の居所などたかが知れている。そんなことより、トレーナー室以外ではその名で呼ぶな。ここでは"トレーナー"と呼べ。お前はもう一山幾らの存在ではないのだ。無駄な注目を避けるためにも普通でいろ」

 

ミスターシービーの一言にトレーナーも笑顔で応えるが、それはそれとして、約束した呼び方で呼ばないことを注意する。

 

「わかってるけど、ちょっとくらいは大目に見てよ。周りには誰もいないってわかってたからそう呼んだんだ。あとさ、トレーナーって呼ぶって決まったのは"最近"でしょ?アタシにとって寺さんはずっと寺さんなんだから、そんな簡単には出来ないよ、寺永"トレーナー"」

 

寺永の注意に対して、ミスターシービーは苦笑いしながら情状酌量を求める。

 

「まったく、そんなことばかり言っているから、いつまでも直らんのだ。で、今日のイメージトレーニングはどうだったんだ?」

 

「うん!いい感じだよ!思い浮かんだ走りのイメージの通りに走る感覚はなんとなく掴めてきた」

 

「そうか。順調そうだな。しかし、年明け前の条件戦で不覚をとった時はどうなるかと思ったが、この重賞2連戦はだいぶ余裕のある勝ち方だ。お前にしては珍しく立て直しが早かったが、何かきっかけがあったのか?」

 

寺永はここ最近の調子の良さと立ち直りのきっかけを聞く。

 

「んー、きっかけかぁ〜。あっ、2ヶ月前くらいに走ったエースとの併走かな?アレは全てが思い通りに走れた。まあ、併走だから集中出来て当たり前かもしれないけど、あの時の感覚は今でも体に残ってるよ。アレは最高に楽しかったね。きっとアレがいい気分転換になった気がする!」

 

ミスターシービーは少し悩みはしたが、2ヶ月前のカツラギエースとの併走をきっかけにあげた。

 

「なるほど、それは興味深い話だ。本番のレースでなくとも、集中状態に入れることがあるのか…。そうすると、そういった状態に入るための条件にレースの重要度は関係ないと言えるか…」

 

ミスターシービーの意外な回答に寺永は興味あり気な表情をする。

そして、顎に手を当てながら、悩ましげな表情で自問自答しだす。

 

「ハハッ!アタシ、寺さんのそういう悩ましげな表情が好きだなぁ〜。なんか、『私は独特の美学を持ってます』っていう雰囲気が漏れ出ちゃってる感じがアタシは好き!」

 

物思いに耽る寺永に対して、ミスターシービーが笑う。どうやら、トレーナーらしくない寺永の雰囲気がミスターシービーのお気に入りのようだ。

 

「ん?それは私を"おかしい"奴だ、と言いたいのか?」

 

ミスターシービーの発した言葉を気にした寺永が思案をやめ、その真意を問いただす。

 

「まあ、ある意味そうだね。でも、気にしないでよ。アタシは寺さんの"トレーナーらしくない"感性に惹かれたから担当契約を結んだし、こうしていつも一緒にいるんだから」

 

ミスターシービーは訝しむ寺永を笑いながら見つめる。

 

「昔、お前の父にも似たようなことを言われたな。『お前の感性はただのレースファンだ』と。確かにそうなのかもしれない。実際、私もお前と同じで功績や栄誉には興味がない。私が求めるのは、人々の心を熱狂させ、永遠に語り継がれるようなレースに立ち会うことだからな。トレーナーとしてはこの上なく異端だろう」

 

寺永はミスターシービーの評を素直に認める。

 

「フフッ。そこは素直に認めるんだ。まあ、でも異端だろうと、おかしいヤツだろうと、このミスターシービーのトレーナーに選ばれたことは誇りに思っていいよ!寺さんは数多のトレーナーたちの求愛を突っぱねてきたアタシの心を射止めたんだから!」

 

そんな寺永をミスターシービーはニヤニヤと笑い、おどけて見せる。

 

「おしめ姿の時からお前を知っている私が、そう思うのは不可能だ。まあ、それはそうとしても、少なくとも私はお前の走りに期待はしている。最低限の指示やトレーニングには従ってもらうとして、走り方はお前の自由だ。私はお前の自由な走りの果てに私の追い求めるレースがあると期待しているからな」

 

生意気なミスターシービーの発言を淡々と受け流す寺永。ただ、寺永としてもミスターシービーの才能溢れる走りに魅力を感じているようで、コンビとしての相性は非常に良さそうだ。

 

「まあ、ほどほどに期待しておいて。寺さんがアタシに夢を見るのは自由だから。とりあえず、これからも"お世話"よろしく!ところでさ、全然話が変わるんだけど、『クラシック三冠』て、そんなにすごいことなの?最近は記者の人たちが、そのことしか聞かなくて、誰もレースの話をしてくれないから、今まで以上に取材がつまらないんだけど」

 

笑顔を見せていたミスターシービーだったが、ふと思い立ったかのように表情を硬くさせ、最近の取材についての不満を寺永に話す。

 

「まあ、それは仕方がないだろう。世間一般の感覚でいえば『クラシック三冠』は全てのウマ娘たちが目指す目標の極地なのだから、お前にもそれについてどう思うかを聞くのは至極普通なことで、それを『価値がわからない』と断じるお前が"異常"なんだ」

 

不満顔のミスターシービーに対して寺永が、ミスターシービー自身がズレていることをストレートに指摘する。

 

「そんなこと言われてもなぁ〜。価値がわからないのは事実だし…。まあ、他人がアタシを異常とか変わってるとか思うのは勝手なんだけど、無駄な期待とかはやめて欲しいよね。これじゃあ、昔と何も変わらないよ。めんどくさい…」

 

一般的な話題であることを理解しているが、価値観の押し付けではないかと感じているミスターシービーはさらなる不満顔をする。

 

「それも仕方がなかろう。お前の出自を知っていれば、誰もが期待をかける。ヨーロッパの概念で言えば、お前は掛け値なしの『日本レース界のサラブレッド』なのだから」

 

子供のようにむくれるミスターシービーを寺永が嗜めつつ、期待をかけられる理由があることを説明する。

 

「確かにお父さんもお母さんもレース界で凄い実績を残した人だよ。でも、それはアタシにはなにも関係ないでしょ。それでいて思い描く通りの実績を残せないと"期待外れ"って言うんだから、勝手過ぎるでしょ」

 

「まあ、言いたいことはわかるが、それは人の性であり、変えることのできない世の真理だ。不満を持つだけ無駄なものだから諦めろ」

 

「まあ、そういうものっていうのはわかるけど、人を縛り付けることの何が楽しいんだろ…みんな自由でいいじゃん…」

 

寺永の言葉にミスターシービーはなんとも言えない表情で黙ってしまった。

 

「シービー、トレセン学園は楽しいか?」

 

そんなミスターシービーの表情を見た寺永が別の質問を投げかける。

 

「えっ?うん、楽しいよ。ここにはアタシが望んだものが全てある。競い合ってくれる仲間も緊張感のあるレースも何もかも。だから、楽しいよ!」

 

寺永の突然の質問に一瞬戸惑うミスターシービーだが、トレセン学園での生活に充実感はあるようで、先ほどの暗い表情から一瞬で明るい表情へと切り替わる。

 

「そうか、ならいい。シービー、この学園にいる以上、選手としての責務を求められることは割り切るしかない。ただ、お前は"学生"でもある。私は学生としての生活に関しては周囲の雑音などきにせずに楽しんで欲しいと願っている。特に友人関係はな。それだけは約束して欲しい」

 

ミスターシービーの表情が柔らかくなったからだろうか、寺永も安心したかのように穏やかな表情で諭す。

 

「うん!精一杯楽しむよ。それは約束する。お父さんもお母さんもそれを望んでるからね」

 

「ああ、それでいい。さて、そろそろトレーニングを始めようか。本番まであと1週間だ。気を抜くなよ」

 

「オッケー!よいしょっと!」

 

寺永の呼び掛けに元気よく答えたミスターシービーはアクロバティックなジャンプで建物の屋根から飛び降りる。

 

「おい!言った側から危なっかしいことをするな!」

 

「あっ、ごめん」

 

またしても忠告を無視された寺永が呆れ顔で苦言を呈すると、ミスターシービーは舌を出し、ちょっとだけ気まずそうにしながら、寺永の側へと駆け寄り、グラウンドへと向かった。

 

 

 




独特の感性と目的意識を持つミスターシービーというキャラクターはトレーナーとの関係性によって見え方が変わるような気がします。

私の物語のCBトレは、無邪気で奔放なシービーの感性を尊重し、見守る"保護者"のような立ち位置とシービーの自由な走りに魅せられた人物として描いています。

トレーナーの詳細な人物像はもっと後のお話で掘り下げていきますが、名前からわかるように"あの方"と"あの方"を混ぜ込んだ人物にしています。
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