偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA 作:ポルポル君
それから一瞬だったか、それともかなり長い時間がたったか分からぬ内に、バンブルビーの意識は灰色の天井の下で目覚める。
全身でこそないものの未だ手足にはメガトロンのキャノンの熱と痛みがのこっていたが、バンブルビーはそれに苦しむよりも前に自分が生きている事を喜ぶ。
閉じた瞼をゆっくりと開ければ、寝台に横たわる自分を怪我への不安や自身の勝手な行動への苛立ちの他、目を覚ました安心などさまざまな感情のこもった目で見つめるラチェットと、友人の無事に安堵したバルクヘッドの姿。
バンブルビーは能天気にラチェットに尋ねた。
「ここは……。」
表情にも現れた複雑な感情からかラチェットはため息をついた後、バンブルビーの破損個所を治しながら答える。
「基地だよ、って動かないでくれよ。」
突然何かに気が付いたのか、ネズミ捕りのように勢いよく状態を起こしたバンブルビーに驚いたラチェットは、思わず工具を落としてしまう。
「し、司令官と……ホワールは!」
まず何より彼女が心配していた事は、上司のオプティマスと先輩のホワールの安否、どちらもメガトロンとの戦闘で自分同様負傷し、特にホワールはメガトロンの砲撃をモロに食らっており、あの砲撃で命を散らしてきた兄をはじめとした仲間達を目にしてきたバンブルビーはそれが何よりも気になっていた。
安心した様子でバルクヘッドは質問に応じる。
「どっちも無事でぇ、ホワールに至っちゃあの後目ぇ覚まして自分でこの基地に助けを求めたんだ。」
「そ、そうなの?」
ひとまず、二人は無事である事は分かってバンブルビーは安心し、灰色の寝台に身体を勢いよく下ろし、再び眠るようにおとなしく修理を受ける。
その数分後、怪我が完治したバンブルビーとどこかで治療を受けていたホワールはロディマスとオプティマスの元に呼びだされる。
勝手に飛び出して敵陣に攻め入るという行為からか、ロディマスの面持ちは険しい物だった。
「全く、勝手に飛び出して、今回はたまたまメガトロンが引き返したからともかく、下手をすれば死んでいたかもしれないんだぞ。」
反省からか神妙な表情のままうつむいて話を聞くバンブルビー、その隣のホワールはあまり今回の件を気に留める様子はない。
それから、ロディマスはその厳粛な表情のままオプティマスの方へと向き直り、より悩ましい様子で話しを続ける。
「司令官……気持ちは分かります、しかし焦り過ぎです、いくら奴らが企んでいる事がとんでもないからといって、無策で突撃するのでは元も子もありませんよ。」
「ああ、申し訳ない……。」
申し訳なさそうな表情で話しを聞くオプティマスは、腹部の穴や吹き飛んだ脚も治され五体満足である。
修理を済ませ、一息ついているラチェットに近づいたのは、オプティマス一向の帰還の一報から目を覚ましたハラルド。
ハラルドがこうしてラチェットの元に来た理由は、ある疑問を解消する事にあった。
「お前らはなんでマトリクスを奪い合ってるんだ?」
自分が命を危険にさらされ、このトランスフォーマーという存在と関わる事となった理由、それがハラルドにとって一番の疑問だった。
ラチェットは回答する事に少々迷いを感じているようで、少々悩むような仕草を見せたが、しばらくして話を始める。
「奴らが古代の書物を解析した事で生み出した兵器『ヒュージョン・カノン』は相反する二つのエネルギーによってこの地球位なら難なく吹き飛ばす位の破壊力を得る事ができる。
そのエネルギーの原料が『ダークスパーク』とその対になるマトリクスなんだ。」
惑星破壊という大それた単語に少々困惑したハラルドはその兵器について考える。
ラチェットの言葉が嘘でないなら、地球を含めた宇宙の数多くの惑星にこのヒュ―ジョン・カノンの力を使う事は明確。
これをつかえばどんな理不尽な要求を通す事も出来、最悪これを使って奴らがこの星を吹き飛ばす事も考えられた。
ダークスパークにまつわる疑問を頭の片隅におき、この絶望的状況を否定せんとばかりにハラルドはラチェットに再び問う。
「ヒュージョン・カノンって……どのぐらい完成してんの?」
「設計図に関しては完全に復元と翻訳がディセプティコンによって済まされ、材料さえあればいつでも制作にとりかかれる状態だよ。
現に、メガトロンはヒュージョン・カノンの小型化とマトリクスやダークスパークを別の動力に変換して運用し、それで数多くのオートボットの命を刈り取ってきた。」
「まじかよ……。」
奴らはその気になればいつでもこの星とその住民を宇宙の藻屑に変えられるという状態に、ハラルドは絶句する。
「まあ、メガトロンが右手に装備しているのは『オリジナルに比べれば』なんてことはない威力だし、奴らが作ってるオリジナルの動力源はマトリクスとダークスパーク意外は駄目って事になってるから……。」
ラチェットのこの星の住人のハラルドへのフォローにならないフォローは力尽きるように止まった。
オリジナルに比べればどうだというのか、結局強力な事に変わりはない、現にそのデッドコピーが敵将に愛用され仲間達を殺戮するという成果を上げている。
オリジナルの動力源がどうだというのだ、今片方が奴らの手中に落ちている。
ラチェットもまた。落ち込んでしまったようだった。
月のディセプティコン基地トリプティコン、ドローンの赤や緑の残骸が転がる集会場には半壊したスタースクリームのボディを勝ち誇ったように踏みつけ、右手ではヒュージョン・カノンをスタースクリームの真っ黒な後頭部に突きつけ、左手ではスタースクリームから奪いとったウイング・ブレードを逆手に持つメガトロンの姿。
「身の程知れ。」
淡々と、しかしこのディセプティコンを従えるに相応しい威厳に満ちた様子でスタースクリームにそう言い放ったメガトロンの表情は険しい。
「申し訳……ありま……せん……。」
背中に刺さったウイング・ブレードの傷は浅いもののそのスパークを捉える一歩手前であり、メガトロンに命を握られたスタースクリームは謝罪の言葉を述べるが、紫の床に接触した白い顔には反省の色ではなく、敗北への屈辱からの引きつった顔。
それでもメガトロンはスタースクリームを許したのか、険しい表情を和らげつつも語りだす。
「良いか、このディセプティコンの将の椅子に座る資格があるのはこのメガトロンのみ、それを忘れるなよ。」
メガトロンはそう言い終えると、スタースクリームの半壊したボディをまるでボロ雑巾のようにこのディセプティコンの技術者ショックウェーブの元まで蹴り飛ばす。
「そいつをリペアしておけ。」
「了解しました。」
ショックウェーブはすぐさまスタースクリームを拾い上げ、低く屈強な声で主君の命令に従う意思を示すと、スタースクリームの二倍はあろう巨体で重く大きな足音と、スタースクリームを引きずる事によるガリガリという耳触りな金属音をを立てながら、ショックウェーブは自身のラボへとスタースクリームを運んで行く。
ショックウェーブ共々スタースクリームが部屋から姿を消すと、メガトロンは部屋の片隅で黙って佇むサウンドウェーブに目をやった。
掃除を済ませて一息ついているのか、はたまた命令を待っているのか表情の無い顔が原因で分からぬ事を気にせず、質問を投げかける。
「雑兵の通信機はどうなった?」
「多少ノ破損ハアルガ、機能ニ問題ハナイ。」
これからも情報を搾り取れる事に、メガトロンは安堵や喜びを覚えたのか微笑する。
それだけ確認すると、新たにメガトロンはサウンドウェーブに命令を下す。
「ダークスパークを回収するのだ。」
「了解。」
主君の命令を受けたサウンドウェーブの姿は9mのロボットの姿から様々なパーツが組み換えられてゆき、最後には直線的で力強く青い車体を持った『G63 AMG 6x6』へと姿を変え、走り去ってゆく。
ちょっと終盤のネタバレになっちゃいますが。
今私の脳内ではロックダウンとサイドウェイズが終盤のある立場を奪い合っています。
反発する力云々はマイ伝のヒュドラキャノンから貰いましたが、少々無理があったかもしれません。
音波さんはG63 AMG 6x6です、ベンツな点は実写ですが実写とはまた違うポイントを与えたい所です。