偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA 作:ポルポル君
翌日、日曜日の朝、春の物の様に温かく眩しい朝日が、遠い水平線の彼方から冷え切った冬の街に照りつける。
ハラルドの自宅にある小さな車庫に、拾われた時に存在していた穴や切り傷、煤を取り除かれ、綺麗な姿に変わった黄色いソルスティスと、それを工業大学で養った技術を活かして修理するハラルドの姿があった。
オカルトが好きでいながら、それまで怪奇現象の類とは無縁の人生を送ってきた彼が、大学生になってようやくその目で見る事が出来た、正真正銘の怪奇に、ハラルドが一睡も出来なくなる程に興奮していた事を、隈と満面の笑みを同時に浮かべるその顔が示していた。
このスポーツカーを修理する理由は、異文明の産物と思しきこの物体の構造の確認という目的もあったが、最大の目的は、この物体が再びロボットとして動き出す姿を見る為である。
「そういや、綺麗にするのに時間がかかって中身を確認を見てなかったな。」
ハラルドはボンネットに手をかけ、その内部を確認した。
その時、彼は再び驚くべき物を目にする事となる。
「な、なんだこれ……こんなヘンテコなエンジンルーム、見た事ねーや。」
それは、銀色の未来的な印象を覚えるパーツが散りばめられた、奇怪なエンジンルームであった、どうやら、あの現場に散らばっていた金属の矢が二本程、一部のパーツに突き刺さっているようである。
あらゆる部品が通常のスポーツカーにないような奇怪な形状をしており、辛うじてバッテリーであると確認できた物も、本来ならば有り得ないような小さなパーツと化している。
ハラルドは改めてこれが、未知の文明から現れた怪奇である事を実感し、再び作業に取り掛かる。
時が経ち、この空には太陽が完全に姿を現し、寒々としたこの住宅地を温めてゆく。
その頃には、金属の矢は全て引き抜き、それによってあけられた穴も適当な鉄板を打ちつけて、全て塞いだのだ。
ハラルドは、車庫から出ると、赤いコートを着込て自宅から出て、その身を冬の大気に晒す。
「あのタイプはたしかガソリンでよかったよな。
しかし今日も寒いぜ。」
特定のプログラムによって動いていたと思われるロボットが、物言わぬソルスティスと化した原因をハラルドは燃料不足による物と睨んでいた。
このスポーツカーにも普通の物と同様に給油口は存在し、さらにそれはこじ開ける事も可能であった。
彼は、ガソリンスタンドから買ってきた携帯缶を手に、この車庫に帰ってきた所だった。
「お腹が減って力が出ないってかロボットちゃ~ん、朝食だ、ありがたく頂け。」
そして携帯缶から、あらかじめ開けておいた給油口にその内容物を注いでゆく。
ハラルドは今、高度な文明からの来訪者たるロボットの動力源が本当にガソリンなのか?という不安を抱いていた。
だが、それ以上に、これでこの物体が動く姿を見る事が出来るかもしれないという期待もあった。
「……ど、どうなんだ。」
車庫は静寂に包まれる、まさか何かダメな所があったのか?穴を塞ぐだけでは甘かったのか?やはりガソリンには対応していないのか?
先程から抱いていた不安が、大きくなっていた時。
「もっと……くれ……。」
どこからか聞こえたその声に、ハラルドは驚愕する。
それはつい最近聞いた覚えがある、少女の物を思わせる高く若々しい声である。
「誰だ、どこにいるんだ、何が欲しいんだ。」
狭い車庫の中を見回し、赤い携帯缶を持ったままその声の主を探す。
そして、その声は再び聞こえてきた。
「……ここだよ。」
それと同時に、ソルスティスの車体から内部で複数の細かい金属のパーツがうごめくかのような機械的な音がなる。
しだいにそれは、耳を澄まさなくとも聞こえる程に音量を増してゆく。
異変は音だけでなかった。
車体その物もそのパーツを組み換え、内部に隠されていたであろうパーツをせり出し、スポーツカーの形を崩してゆくと同時に、それはしだいに人型へと近づいてゆく。
ソルスティスの変形が止まると、『それ』は黄色い細身のロボットの姿をとりしゃがみ込みながら、銀色の丸い顔に埋め込まれた光輝く青い目で、ハラルドを凝視していた。
「おおッ」
再び披露されたロボットの持つ人知を超えた機能に興奮するハラルドは、思わず声を上げ、手に持っていた携帯缶を落としてしまう。
「おおッ、じゃないよ、こぼすなよバカ。」
ハラルドが落した携帯缶から、自分がもらえる筈だったガソリンが流失する所を目にして、ロボットは苛立ち、そして呆れた様子でハラルドを罵る。
「なんでアンタ、あたしを治してくれるの。」
「お前が動くところが見たかったんだよ。」
「お前、なんであん時突然車になったんだ?」
「『ビークルモード』になればまだ誤魔化せると思ったんだよ……。」
変形によって露出したパーツの傷を治しながら、ロボットとの雑談をハラルドは楽しむ。
そんな時、ハラルドは家の中のある物の存在を思い出し、車庫を出る。
「何処行くの?」
「ちょっとお前に見せたい物がある。」
戻ってきたハラルドがもっていたのは、ラグビーボール程のサイズの所々錆付いていながらも銀色の光沢を持った謎の機械。
ハラルドは
「……こ、これは。」
「お前、これ何か分かるんだな!」
ハラルドは九歳の頃…祖父からこのオーパーツを受け取った彼のオカルト人生の原点たるこの鉄塊の謎が解ける事に心を躍らせた。
ロボットが金属でできた『ある物』に手を伸ばした時、『ある物』は自身を覆う錆を消し、中央の部品を展開すると、そこから青い神秘的な光が放たれる。
「動いたッ!?」
ハラルドは、これを受け取った祖父からは『謎の文明の産物たるオーパーツ』である事を知らされていたが、それがまさか変形し、発光するなどとは聞かされていなかった、ましてや、それが今こうして動き出すとは、思ってもいなかった。
「『マトリクス』……本物だ……。」
マトリクスと呼ばれたそれを持ち、ロボットは驚いた様子で呟く。
「こちら『バリケード』、高エネルギー反応を確認、現場に急行します。」
ハラルドの自宅から三キロ程も離れた町の車道からパトカー仕様の『シボレー・カプリス』が一台、『現場』に向かって走っていった。
その運転席には、誰も乗っていなかった。
修理のシーンはいろいろと突っ込み所はあるだろうと思います。
不自然に思う、または変だと思う部分があればご指摘をお願いします、可能な限り対応し、本編に反映したいと思います。