偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA   作:ポルポル君

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迫りくる影

「すごいエネルギー……流石は『プライマス』の遺産だ。」

黄色いロボットは、謎の作用によってその両手を上を浮遊する『マトリクス』を見つめていた。

最もらしい単語及びそれが含まれたロボットの発言の意味その物をハラルドは理解できなかったが、ハラルドはこのロボットと『マトリクス』に一つの繋がりがあるという仮定が確信に変わった。

そして、さらなる情報を手に入れようと、その好奇心からハラルドはロボットに尋ねた。

「教えてくれ、それは一体どうゆうモンなんだッ!」

ロボットは、理解し難い期待の眼差しに戸惑ってしまったのか、多くを語らなかった。

「あたしはそこまで詳しくは知らないよ、何でも『プライマス』っていう神様が、あたしら『トランスフォーマー』が生きていくのに困らないように作った物って位。」

しかしハラルドは『神』という単語を含んだ壮大な話から、自分の生きる世界が広がってゆく感覚を感じ、満足する。

「す、すげえ……。」

 

そんな時、車庫の外から聞こえてきたサイレンの音が次第に大きくなっている事、それがこの付近で大音量のまま留まった事に、ハラルドは大きな不安を抱いた。

このロボットを廃車置き場から引っ張り出した事が、車泥棒と思われたのか?それともこのロボットには持ち主がいてそいつに通報されたのか?

「おい、何処行くんだよ。」

「ちょっと散歩に。」

ハラルドはロボットの言葉を軽く受け流す。

どんな言い訳をしようかと、ハラルドは床に置いたコートを着て、寒気をその全身に浴びた。

だが、彼はまたもや不可解な物を目にする事となった。

 

自宅の庭に一台、無人の黒いパトカー仕様のカプリスが一台停まっていた。

だが、そこにはこのカプリスを運転してきた筈の警官の姿が確認できないのだ。

ハラルドはこの異様なカプリスに書かれた標語に、より強い違和感をもつ事となる。

「『罪人を罰し服従させる』だと?」

本来ならば市民を守る事が書かれていた筈のそれが高圧的な物に変化している事に、言いようのない恐怖を覚えていた時、金属のパーツがうごめく音がした。

あのロボットがまたソルスティスに戻ろうとしているのか?と思ったが、その音はロボットがいる車庫からではなく、この庭のどこかから鳴っている事が分かった。

ハラルドの意識は、再びカプリスへと向けられた。

「こいつ、まさか。」

その時既にカプリスの外装が組み換わり始めていた、タイヤが押し込まれ、二股に割れた後部が地に着き、バラバラに分かれたボンネットは胸や肩を形成する。

気が付けばパトカーは、あのロボットと同じように人型を形成していたが、黒光りする全身の装甲や成人男性を思わせるシルエット、ハラルドを見下ろす赤い目が、あのロボットにない危険性を匂わせていた。

「マトリクスは、何処ですか?」

それがこのロボットの最初の発言だった。

 

「ま、まとりくす?何のこったよ……。」

ハラルドはこのロボットから感じる嫌な予感から、シラを切る事を決めた。

その時、ロボットは白い顔に微かに浮かべていた笑みを消し、険しい顔になって苛立ちを露骨に現した。

「とぼけても無駄ですよ!あなたがあの『オートボット』との会話の中で、マトリクスの事を知り、更にその情報を引き出そうとした事をッ!」

『オートボット』という言葉は知らなかったが、文脈からしてあの黄色いロボットの事を指しているという事は理解した。

そしてハラルドは驚愕し、戦慄する、このロボットはいままであの黄色いロボットとした会話を何かしらの方法で聞いていた事がわかった。

こいつはデタラメを言っているのか?という疑惑、そして『デタラメであってほしい』という願望が突如聞こえてきた聞き覚えのある声によって、打ち砕かれる事となる。

「すごいエネルギー……流石はプライマスの遺産だ……。」

「教えてくれ!それは一体どうゆうモンなんだッ!」

砂嵐のようなノイズによってくぐもっており若干不明瞭な部分があったものの、それは確かにハラルド自身とあの黄色いロボットの声だった。

そしてそれは紛れもなく、数分前まで自分達がしていた会話であった。

黒いロボットはハラルドに怒号を浴びせた。

「下等生物の分際でこの私にハッタリをかますとは!あなたは有罪!許せませんねぇ!」

その声と共に、黒いロボットの五本の細く鋭い指を備えた無機質な白い手が複雑に組み換わると、黒い円盤に銀色の細かい刃を備えた、明確な害意を帯びた形状に変化する。

丸ノコと言うべき形状に変形した右手が上げた獣のようなけたたましい唸り声と、スクリューの如き危険な回転は、ハラルドを恐怖のどん底に陥れた。

唐突に訪れた自分の最期を確信し、ハラルドは迫る鋸に負けぬ程激しく叫んだ。

 

「させるかよッ!」

突如、その横から現れた何かの突進によって、黒いロボットは体勢を崩し、鋸はハラルドに達する事なく、庭の土と芝生を巻き揚げ、黒い飛沫に変えただけに止まった。

ハラルドはその光景に、再び生にありつける喜びを覚え、感涙を流した。

「サンキュー!黄色いの!」

「『黄色いの』じゃねえ!あたしの名前は『バンブルビー』だッ!」

その背後で、黒いロボットが鋸を地面から引き抜き、怒り心頭でまくし立てた。

「出てきましたねオートボット!」

「さて?裁かれるのどっちかな?独善野郎の『バリケード』!」

バンブルビーの右手は、その名前の通りに蜂を思わせる黒い槍の形状を取り、同時に、額についたバイザーが幼さを感じさせる顔を覆った。

それだけの変化が、人畜無害な印象を覚えたバンブルビーを、バリケードに対抗しうる戦士の姿に変えたのだった。

 

先手を打ったのはなんとバンブルビーであった。

彼女の突き出した鋭い右手の一撃は、バリケードの獲物が持つ暴力的な回転に阻まれ、激しい火花と金属が削れる硬質的で耳触りな音をたてた。

攻めに来ようとするバリケードを力と武器で抑えつつ、その槍でバリケードの黒いボディを捉えにかかっていたのだ。

しかし、体格から来る腕力の差から、次第に槍は押し返され始め、今度は逆に丸鋸がバンブルビーに迫っていた。

バンブルビーは丸鋸の進路を逸らし、バリケードの身を軽やかにすり抜けると、先程まで隠れていた車庫に手の形状を保ったままの左腕を突っ込み、その中をせわしなく引っ掻き回した後に、ハラルドにその中の何かを投げ渡す。

投げられたラグビーボール程のサイズの物体は神秘的な青い起動を描き、ハラルドの手の中に着地した。

バンブルビーはやや早口でハラルドに言った。

「頼む!あんたはそれ持って逃げてくれ!」

バンブルビーの唐突な頼みに戸惑いながらも、ハラルドはバリケードから逃れる為にマトリクスを抱きかかえて走り出す。

「死ぬんじゃねーぞ!黄色いの!」

ハラルドはバンブルビーの健闘を願いながら、自宅前を後にし、都市を目指す。

「ああッ!待ちなさいッ!」

逃がすまいと言わんばかりに必死でハラルドに元の形状を保った左手を伸ばすが、それも背後のバンブルビーに頭を掴まれ、結局ハラルドを捕える事はままならなかった。

「無視すんじゃねえッ!」

「んのふっ」

背後からの牽引力によって、そのまま背後に勢いよく投げられたバリケードの黒い巨体は灰色の車道に打ち付けられた。

コンクリートの車道に大きな亀裂を入れる程強烈な衝撃に、バリケードは間の抜けた情けない悲鳴を上げる。

地面に叩きつけられたバリケードにバンブルビーはすかさず槍を突き出したが、それはまたもやあの危険な螺旋に阻まれ、耳触りな音を立てるだけに留まった。

そのままバリケードはバンブルビーを押し返すと、丸鋸を掲げた。

「真っ二つにして差し上げましょう!」

しかし、掲げた右手をバンブルビーの右肩目掛けて振りおろした時には、バリケードが狙った右肩は、既にそこには無かった。

眼前から消えたバンブルビーを探していたバリケードは自分の腹部に危険が迫っていた事を察知した。

「下ァッ」

懐に潜り込んだバンブルビーの存在を明確に知った時、バリケードはとっさの判断で身を逸らしたが、既に凶器はバリケードの腹部に達した事を彼自身の痛覚センサーが思い知らせた。

「しまっ……」

そして、槍から走る鋭く強烈な電流が、バリケードの黒い機体に張り巡らされた回路を染み込む水の如き勢いで焼き切ってゆく。

 

「どうやら、処刑されるのはテメエみたいだな。」

バリケードの首に槍を突き付けるバンブルビーを前に、バリケードは明後日の方向を見て不可解な笑みを浮かべていた。

バンブルビーは、これから殺されるというのに余裕のある笑みを浮かべたバリケードを見て、その表情を険しくする。

「なにニヤついてんだ気持ち悪い。」

「いやはや申し訳ありませんねえ、私の弁護人が、参上したのですからね。」

「どうゆう意味だ……」

その時、バンブルビーの胸に、覚えのある炎のような痛みが襲いかかった。

それは胸だけに留まらず、足、左手、左肩など、身体の至る所を襲う激痛に、思わず声を上げた。

そして、胸に刺さった淡い紫色に光る矢の存在を確認すると、それが昨日廃車置き場で味わった苦痛と同じ物である事を、改めて知るのだ。

バリケードは隙を見て、先程まで見ていた方向へと駆け寄ってゆく。

「おかげ様で助かりましたよ。」

安堵し、先程以上に落ち着きのある笑みを浮かべるバリケードの隣に、一体のロボットが滑り込むようにして現れた。

バリケードよりも一回り大きな黄緑と紫のボディには、先端にタイヤを張り付けた脚に、細く長い腕と、背中に取り付けられた一本の長いアームなど、その姿は蠍を彷彿とさせるものだった。

それは満面の笑みを浮かべて、硝煙を上げる長い右腕を構えた。

「会いたかったぜかわいこちゃん、また一緒に遊べてラッキーだぜ。」

「『ボーンクラッシャー』……」

 

彼らの頭上を、一機の白い戦闘機が飛び去っていった。

「気楽でいいですね……。」

バリケードは乾いた笑みを浮かべて、戦闘機に吐き捨てた。




バンブルビーの車種はポンティアック・ソルスティスです、
実写映画版のジャズ(マイスター副官)が変形する奴です。

バリケードはフォード・マスタングではなくあえて車種を実際にアメリカでパトカーとして使用されているシボレー・カプリスにしました。

バンブルビーの性別については投稿の直前までわりと悩みました。
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