偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA 作:ポルポル君
ハラルドは避難する人々の中に溶け込みながらマトリクスを抱えて、ただ何処にあるか分からない安全地帯を目指してゴールを目指すラグビーの選手のように必死で走る。
見慣れた交差点に差し掛かった時、一台の黒いクーペが、ハラルドの目の前に滑り込んできた。
「おい、危ねえだろ!」
「すまぬ、急いでいてな。」
曲線的なフォルムを持つクーペ『光岡・大蛇・零』から聞こえてきたのは、日本語訛りの英語である。
この時、ハラルドは声の主である筈の運転手どころか、人間といえる物が乗っていない事に、そしてこのスポーツカーの正体に気づき、思わず溢した。
「黒いの、お前もか……」
「拙者どものことは存じておるな、なら話が早い。」
大蛇のドアはひとりでに動き出し、無人の車内をハラルドに晒す。
ハラルドは、バリケードの襲撃でこのロボット『トランスフォーマー』は全ての固体が信用できる者ではない事を知っていた。
しかし、今バリケードから逃れるために、ここにいる黒い大蛇…もといクーペ型のロボットの手を借りる事を選んだ。
「奴らが追って来れない所まで頼む!」
このロボットがバンブルビーと同じ、友好的な個体である事を信じて。
「マトリクスが……動いてる?」
ハラルドの自宅から二キロ程先のハイウェイにて、ロボットは疑問に思うように呟いた。
「ああ、バンブルビーとかいう奴が触ったら、こうして光りだしたんだよ。」
何故動いたかが気になるのか?と察したハラルドは、この物体が錆びた金属の塊から神秘的な光を放つオーパーツへと変化した経緯を手短に説明した。
「左様な事で!」
「ああ、そうだ。」
驚くロボットに対し、ハラルドはこのロボットの驚愕を少々疑問に思いつつも答えた。
「いかがなことだ、実験に実験を重ねてもうんともすんとも言わのうござったマトリクスが、左様な容易な事で……。」
戸惑いや驚きの感じられるロボットの呟きから、マトリクスの再起動が、いかに奇跡的な出来事なのかを知り、改めてその神秘性に興奮する。
そんな時、嵐の如き暴風と人工的な轟音が、巨大な飛行物体が凄まじいスピードでハラルドとロボットの頭上を飛び去っていった事を伝えた。
彼らの三十メートル程先で静止したそれの姿を、ハラルドは知っていた。
「あれは……ラプターか?」
f22、又の名をラプター、世界最高水準の戦闘能力から、この国の軍が保有する戦闘機の中で最強と名高い機体である。
だが、その機体は白を基調に赤と青のトリコロールで彩られた軍用機ならば本来あり得ないような華やかな配色であった。
「もしや……。」
そして、それがこちらに向かって先程と変わらぬ程のスピードで再度接近した時、ハラルドはその機体に異変が起こっている事を知る。
機首が二つに割れ、二股に分かれたパーツが組み換わり脚として構成されると、それは地を付き、ハイウェイを走っていた他の車達を蹴散らしながら接近を続けた。
それだけには留まらず、展開した機首が側面のパーツに連結すると、その先端からは人間的な五本の青く細い指が出現した。
ハラルド達の眼前に立っていたのは、先程まで戦闘機の形を取っていたロボットであった。
ロボットはその正体を知る。
「貴様……貴様はッ!」
「我が名は『スタースクリーム』、『ディセプティコン』の大将だ!」
戦闘機のロボットは、高らかに名乗りながら、右手の銃を構え、胸部のフタを開いてそこに備えたミサイルランチャーを開放する。
「まずいッ!」
大蛇のロボットが危機を察知し、急速にバックした。
ハラルド達が居た地点はその0.5秒後、橙色の炎と猛獣の突撃の如き激しい衝撃を発した。
ロボットの黒い車体空中で二、三回コンパスのように円を描いて宙を舞う。
スタントマンしか体験し得ないような危機的状況に、ハラルドは声を裏返しながら叫び、空中に打ち上げられた驚きと眼前とこれから自分が落下するであろう地点に存在する死への恐怖で真っ白に染まった心境を全力で吐き出した。
一方、ハラルドを体内に乗せたまま空に飛ばされたロボットは、平常心を保ったままある行動を開始した。
「『ドリフト』、トランスフォーム!」
二つに分かれたリアは、ガラスを完全に収納し蛇腹状に変形したドアと癒着すると、それは腕を構成し、曲線的なボンネットも腕同様に二本に割れ、足として上下に振れた。
丁髷を思わせる赤い光ファイバー状のパーツの付いた頭部が割れたリアの間から飛び出すと同時に、まだリアバンパーから飛び出す途中の右手で背中に差した赤く輝く刀状の武器を取りだし、左手で自身の体外から放りだしたハラルドを受け止める。
そして、迫りくる三機のミサイルを全て手にした得物で薙ぎ払い、ミサイルだった時の何倍も巨大な噴煙に変えると、両手足を連結し、背中に追いやったルーフパネルを胴体に被せると、胴体であった物は内部でバラバラに分解され、再び座席を形状を取って未だに壊れたラジオのように絶叫し続けるハラルドを助手席に押し込む。
大蛇の姿に戻った『ドリフト』は、『スタースクリーム』をすり抜けるように走り出す。
「待て!」
ドリフトを逃がしてしまった事に気が付いたスタースクリームは、慌ててその身を戦闘機の姿に変えると、地上に直線状の雲を上げながらその後を追ったのだった。
「聞いてねえよ、奴らん中にf22がいるなんてよぉ!」
ずれた眼鏡を治しながら、ハラルドは矛先の分からぬ怒りを吐き出した。
「寧ろあれこそが奴らの主戦力、これから奴らは空から攻めてくるのがあたりまえであると思え。」
「落ち付いてられっかよ、最高性能の戦闘機に走る高級棺桶で勝てっこあるかよ。」
発進後直にドリフトを追い抜き、五メートル先を飛びながら時折ロボットの形態を取りスタースクリームがドリフト目掛けて紫色に光る刃を背中から抜き、振りおろす。
「真っ二つにしてやる。」
「おい、くるぞ」
ドリフトは身を逸らす事で、高熱の刃によってクーペの開きにされる事を未然に防ぐ。
紫に光る刃は、すり抜けるように灰色の道路に刺さる。
獲物を仕留められなかった事を悟ったスタースクリームは、刃を一秒足らずで引き抜き戦闘機の形態に変化すると、今度は一気にスピードを上げてハラルド達の三十メートル先へと飛んでゆく。
「心配無用、奴らの能力は『スキャン』したビークルとは完全に別物ッ、、奴らの方は…」
「おお、どうなんだ。」
計算の為か暫く間をおいたドリフトが出した答えは、ハラルドにより強い怒りを覚えさせた。
「2,520 km/hで候。」
「全く安心できんわこのタコッ!本物より速いじゃねーかよ!」
f22の最高速度は2,410 km/h、そのスペックは本物を圧倒的に上回っていたのだ。
彼らの四十メートル程先で、スタースクリームはロボットの形態へと戻ると、胸部のミサイルポッドを開いた。
スタースクリームが放ったのは、ハラルド達の前に最初に姿を現した時とは比べ物にならぬレベルの、ミサイルで構成された鉄のシャワーであった。
だが、それは一粒たりともハラルド達には振りかからない、それどころか標的ですらないようだった。
自分達を狙う物ではない事を知り、ハラルドが安堵していた中、ミサイルの向かう方向からハラルドは不安に表情を曇らせた。
「あいつ、まさか。」
ミサイルはハラルド達の前後を狙うように枝分かれし、灰色のハイウェイに着弾すると、ミサイルはハラルド達が走っている五十メートルの一枚の灰色の板を、ハイウェイから轟音と爆炎をもって切り取った。
自身がハイウェイの断片共々落下している事を自覚した時、ハラルドはついに気が付いた。
「この野郎ッ、俺らの退路を塞ごうって魂胆だなああああッ!」
巻き込まれた数多くの車達の中に紛れたドリフトは、変形を開始する。
鎧武者を彷彿とさせる姿に変わる中、まだ変形を続ける脚で、女性が一命乗っている赤い車を蹴りあげ、無事な道路の上へと押し上げた後に、着地の態勢を取る。
自由落下し、プールに放り出された猫のように手足をデタラメに動かしながら空中を泳ぐハラルドをキャッチする。
そして、ドリフトは体勢を整えると、変形が完了した両足と未だ自由な左手で、落下の衝撃で粉々に砕けたコンクリートの地面を踏み締めた。
「もう逃げ場はないぞ下等生物、そして『デットロック』」
スタースクリームが言うとおり、辺りには瓦礫と車が散乱し、完全に道路としての機能は失われていた。
スタースクリームは人型に変化しながら、ドリフト以上に強烈な衝撃と共に降り立つ。
ドリフトの左手から下ろされて尚パニック状態のままマトリクスを拾い上げるハラルドを尻目に、ドリフト背中から一本赤い輝きを宿す太刀を取る。
「『デットロック』だと?そんな名はとうの昔に捨てたわ。」
遥か遠くのハイウェイで、赤の戦車が一台、まるで彼らを見つめるように佇んでいた。
武士語がいくらか間違ってるかもしれません、間違いがありましたら指摘して頂けるとありがたいです。
ドリフトは大蛇・兜という日本車です。
オルタニティのスタースクリームやスカイワープが変形してた奴です。
スタースクリームはF-22 ラプターです。
実写版と同じモチーフの他に、剣を使うという点ではアルマダスタースクリームを初めとしたユニクロン三部作のスタースクリームのイメージを取り入れました。