偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA   作:ポルポル君

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悪の王者

一体を染めていた赤い光が西へと消え、黒々とした風景の中で人工的な白い光が昼間以上に存在感を示していた頃。

博物館の中から、トラックが走ってくる音がする。

重量でスピードがおちているのかそれとも運搬物の破損に気を使っているのか、何かとても大きな物を牽引している事がその自動車にあるまじき遅さから察せた。

運転席に座っていたのは人に似た形状こそしていたものの、それが人ではない事を顔の中央の赤い光とハンドルを握る銀色の指が示していた。

 

トラックの反対側にはロスのハラルドを一瞬にしてこのニョーヨークまで運んできた緑色の渦が浮かび上がり、その中から赤の戦車『M1エイブラムス』と二台の銀と白の『M6クーペ』、そして紫のスクーター『ジエラ・ランナー』が姿を現す。

「あれはエイブラムス?……いや、奴らか。」

平々凡々とした外観のクーペはともかく、戦車の赤というスタースクリーム同様の兵器らしからぬ派手なカラーリング、無人で走るスクーター、そしてあの異様な渦を当然のように潜り抜けた事から、それらが『トランスフォーマー』である事、そして『ディセプティコン』の仲間である事がハラルドにはすぐに分かった。

ハラルドが彼らの正体を探っていた時、その答えを肯定するかのように四台は変形を開始した。

クーペ二台は、フロント部分を真っ二つにして構成した脚で起き上り、裏側に収納されていたと思しき腕がリアと癒着し、二つに割れるとその間からは口のないゴーグル状の目だけの顔が飛び出し、人型を構成する。

一方のエイブラムスは、中央で割れたキャタピラで車体を起こし、その車体を胴体に変えながら細い両腕を生やし、カメラを思わせる赤い単眼を持った頭部がせり出した。

その背後ではあの不気味なジエラ・ランナーのハンドルが二つに割れてトンボを思わせる大きな目の付いた顔が露出し、六本の指の付いた細長い腕が座席から構成され、車体の前後前後のタイヤで立ち上がり、異形の存在へと姿を変えた。

 

彼らの前には黒いトラックと共に、身長に牽引されてきたであろう『異文明の戦車』が、この日を心待ちにしていたかのようにその銀の機体を誇らしげに輝かせた。

 

「おい、お前ら……」

「静かにしろ!」

ハラルドは彼らがこれから一体あのオーパーツに何をしようというのか、聞き出そうとした時黒いロボットに何かを近づけられた。

銀のドリルのようでありながら回転する気配のないそれがどんな道具かは分からなかったが、このタイミングで自分に近づけてきた事から少なくともそれが自分を殺傷し得る武器である事は分かり、ハラルドは渋々閉口する。

 

「ハジメルゾ」

ジエラ・ランナーだった小さいロボットは、耳触りなしゃがれた声で何かを開始する事を宣言すると同時に、左腕に取り付けた長く大きな主砲を掌の反対側まで回し、右手を工具と思しき機器へと組みかえた

その右手は銀の機体に触れると火花を上げ、次々に機体に付けられた無数の傷を埋めてゆく。

外部の傷を一通り治すと、今度は銀の装甲をこじ開け、その内部の修理を開始した。

ボロボロだった戦闘機が徐々に本来の勇ましい姿へと戻ってゆく様子に、ハラルドは興奮を覚えると同時に、言いようのない不安を感じていた。

 

突如小さなロボットが修理の手を止め、金切り声を上げた。

「パーツガ足リナイ!小サイノヲ殺セ!」

そして、赤いロボットは本来M1エイブラムスには無い筈の銀色の四角形の主砲から、あの緑色の弾丸で仲間である筈の銀のロボットの頭部を消し飛ばした。

その際に主砲から放たれた光弾が蛍光グリーンであったから、ハイウェイで自分たちを煙に巻いたのがこの赤いロボットである事をハラルドは知る。

そして、小さなロボットは頭部及び完全な人型を失い物言わぬ金属の塊と化した銀のロボットに手を掛けると、なんの躊躇いもなくそれの解体を開始しその内部のパーツを何かの基準でより分けてゆく。

全てのパーツが摘出され銀の塊が屑鉄の集まりと化す所を、無事なもう片方の灰色のロボットは顔色一つ変えることなく見届けていた。

 

銀のロボットから摘出した使えるパーツを戦闘機の傷ついたパーツと一通り交換した後、小さなロボットは何かを催促するように左腕を差し出す。

「ラヴィッジ、マトリクスヲ渡セ」

ラヴィッジはその長い脚でまで素早く歩み寄り、足元にマトリクスを落とす。

ラヴィッジが自分の命令に従った事をマトリクスが鳴らした硬質的な音で悟った小型のロボットは、マトリクスを戦闘機の機体に振りおろし、付きたてたのだ。

それまで修理していた物を突如傷つける真似をした小さなロボットの思考が、ハラルドには理解できなかった。

だがその直後、ハラルドは小さなロボットの狙い、そしてマトリクスの機能の一つを知る事となる。

マトリクスが突き刺さった戦闘機から、マトリクスと同じ神秘的な青い光が放たれたかと思うと、戦闘機の下部が二本の足のように立ち上がり、機体の側面は腕として両側に広がり、戦闘機に手足がついたような某可変戦闘機を思わせる形態に変化する。

変形はそれだけにとどまらず、地面と水平に位置する機体を垂直に起こすと、王冠を思わせる三本の黒光りする角が付いた頭部が現れる。

その雄々しい姿は、それが奴ら『ディセプティコン』の中で別格の存在である事を

周りを見回す厳ついロボットを前に、三体のロボットはひざまずいた。

「お久しぶりです、『メガトロン』様。」

「表を上げよ、我らにはまだやるべき事がある。」

メガトロンは、部下と思しきロボット達に命じた。

 

「その下等生物はなんだ?」

メガトロンはハラルドと黒いロボットの方を向く。

「マトリクスをここまで持ち込んだ者です、始末します。」

そして、左手の武器を振りあげ、ハラルドを処理しようとした時、メガトロンは静止を促すように平手を突き出す。

「そんなのはエネルギーの無駄、取るに足らない虫ケラ如きに構う必要などない。」

「……了解」

ハラルドの開放を促したメガトロンの笑みは、弱者を嘲る物だった。

先程までプレス機の如く強烈にハラルドの身体を灰色の地面に押さえつけていた圧力は消え、ハラルドは慌てて黒いロボットの懐から脱出する。

「そしてここにはマトリクスもある、我らの勝利は近い、後は実行に移すのみ。」

メガトロンは胸部から引き抜いたマトリクスを右手の上に浮遊させ、不敵な笑みを浮かべながらその紫の顔をマトリクスの輝きで神秘的な青に染めていた。

 

そんな時、空中にあの緑の光が浮かび上がる。

「まだ何か来るのか?」

「いえ、そんな予定はありませんが……。」

その光の中から飛び出した物体は、その形状を変えながらメガトロンに向かって落下してゆく。

赤と青が散りばめられた白い機体、その側面から付きだす青く細い指、そしてその青い手が握る紫の閃光が一同にその存在を示した。

「スタースクリーム!」

「この愚か者めが。」

メガトロンは防御の体勢に入るが、その右手に持っていたマトリクスは、スタースクリームの左手へと移動していた。

「メガトロンッ、マトリクスも破壊大帝の椅子も、貴様には何にも渡さん。」

「そうか、ならば力ずくで奪い返すのみ。」

メガトロンの右手からは紫に光るモーニングスターが出現し、メガトロンはスタースクリームに明確な害意を示す。

「おッ、お願いです!打たないでください……」

その害意を察知したのか、スタースクリームは怖気づき、震えあがる。

鎖が得物同様に紫の軌道を描くと、スタースクリームの左手を円盤状の白い盾に亀裂と溝を作ると、マトリクスをその地面に落とす。

スタースクリームはひしゃげた左腕を抑え、痛みに顔を歪める。

「身の程を知るがいいわ。」

メガトロンはモーニングスターを右手に収納しながら、スタースクリームを笑う。

 

「いまだッ」

黒いロボットがスタースクリームの反逆に注意を引かれ、マトリクスの持ち主が居なくなった今を、ハラルドはマトリクスを奪い返す絶好の瞬間と睨み、その身を前方に投げだすように走り出す。

「待て、下等生物。」

ハラルドが走りだした事に気が付き、捕獲を試みた黒いロボットだったが、ハラルドは自らに接近する青い手を、サッカークラブ時代に鍛えた俊敏さですり抜ける。

「ラヴィッジ!」

姿を消していたラヴィッジが、その長い脚からなるスピードでハラルドとの距離を一秒足らずで縮め、黒光りする爪と牙を構えながら飛びかかる。

「骨でも食ってろこの駄犬が。」

ハラルド的外れな罵声を飛ばしながらかつて銀のロボットのバンパーであったと思しき残骸を手に取り、ブーメランのようにしてラヴィッジに投げつける。

それを避けることには成功したラヴィッジだったが、軌道を狂わせ、赤いロボットの顔面に飛びつきその視界を遮ってしまう。

「ラヴィッジ!離れろ!何も見えん!」

ハラルドに狙いを定めていた赤いロボットは、スタースクリームの足元と白いロボットを撃ってしまう。

白いロボットは板状の胴体に黄緑の光弾を受けると、頭部と四股を四方八方に飛び散らせその身を相方同様のスクラップに変えてしまった。

スタースクリームが情けない悲鳴を上げたと同時に、マトリクスは大小のコンクリートの破片と共に銀の残骸の中に紛れ込む。

「でかしたぞ一つ目!」

ハラルドは銀のパーツの中から長い棒状のパーツとマトリクスを拾い上げ開きっぱなしになっている博物館の入り口を目指す。

「まずい!」

事態に気が付いたメガトロンは驚きに紫の顔を引きつらせ、ハラルドを追う為にその黒く太い脚を踏み出したが。

「隙やりッ」

スタースクリームは破壊大帝の座を諦められぬのか、マトリクスを捨ててメガトロンの首へと狙いを変える。

スタースクリームを重々しい蹴りでその太く黒い首を落とされる事は免れたメガトロンだったが、結局ハラルドを見失ってしまう。

「全くこのスタースクリームめッ」

メガトロンの叱咤と険しい顔には、この最悪のタイミングで反逆に出たスタースクリームへの怒りと呆れが現れていた。

 

「案の定いやがったな。」

博物館の内部には、より人間にちかいサイズのディセプティコンが占拠している。

今でこそ人型であるものの、胸部のライトや二つの細い車輪から、それがバイクであった事を推測できた。

ハラルドの侵入に気が付いた一体は細い右手を刃物の形状に変え、展示室の一角から躍り出て、ハラルドに切りかかる。

とっさの判断でこれを回避したハラルドは右手の棒をその後頭部に突き出すと、黒い先端部分がそのロボットの額から突き出し、その機能を停止させた。

急いで棒をロボットの頭部から引き抜いたハラルドは先程の物と同タイプのロボット達が銃を構えて続々と顔を出す中をすり抜けてゆく。

 

ハラルドが辿り着いたこの博物館の中で一際大きな部屋には、今夜の件があるまではメガトロンが展示されていたであろう空白、そして今はないメガトロンと向かい合うように赤と青で彩られた異文明のトラックが存在していた。

「ここで良かったな……」

ハラルドが九歳の記憶を頼りに向かっていたのはこの展示スペースだった。

メガトロンと同じ文明から生まれたと考えられていたこのトラックを起動する事で、ディセプティコンに対抗する事を考えていた。

ハラルド自身はこの計画に自信は無かった。

果たしてこのトラックが善良な個体なのか?メガトロンと違って修理も何も行っていないこのトラックは動けるのか?そんな疑問は未だに解消されていなかったのだ。

だがこうして追いつめられた今、最早このトラックにしかすがりつく物がなかった。

硬質的な音がリズムを刻みながらその音量を徐々にあげ、ハラルドに生命の危機を伝えた。

「もう考えてる暇はねえ!」

『お手を触れないでください』と書かれたフェンスを飛び越え、トラックに最接近した。

「失敗すれば良くて器物破損で御用、悪くて奴らの餌食か。」

ハラルドが先程までに通ってきた廊下だけではなく、この部屋に続く全ての廊下から足音がする事が、ハラルドにもう逃げ場がない事を知らせていた。

「グッモーニング!デカブツ!」

ハラルドは覚悟を決め、マトリクスをその赤い車体に突き刺した。




個人的なヴィーコン(クーペコンビ)の車種のイメージはm6クーペです。

追記:サウンドウェーブとショックウェーブであったキャラは、彼らにしてはかっこ悪く、自分でも気に入らなかった為にオリジナルキャラに身代わりになってもらいました。
『この作品に登場するキャラには何かしらの元ネタがある。』という自分の発言が嘘になってしまった事をお詫びします。

オリキャラの車種は『シボレー シルバラード』です。
シボレーというと実写版でよく車を提供してくれるイメージがあります。
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