偽書 超ロボット生命体トランスフォーマーSAGA 作:ポルポル君
「もう大丈夫だ地球人よ、危機は去った。」
かつて宿敵たると数十年という長い時間を過ごした展示室、観客のほとんどはディセプティコンへの恐怖からか逃げ出し、小型ロボットもオプティマスが全て破壊してしまい、何もいない筈のこの広い部屋に、オプティマスはたった一人残った何者かに語りかける。
「ありがとう、本当に、ありがとう。」
小型ロボットの残骸や柱の陰に隠れ潜んでいたハラルドは単純ながらも誠意を込めた言葉でオプティマスに感謝を伝え、その前に姿を示す。
「ところで地球人、君に会わせたい者がいるのだ。」
唐突なオプティマスの言葉に、ハラルドは少しの驚きと疑問から問いかける。
「それって誰だ?」
「君の命の恩人だ。」
『命の恩人』という単語からハラルドの頭に浮かんだのは、今目の前で対話している『オプティマス』、ハイウェイでスタースクリームから自分を守り抜いた『ドリフト』、そして自分が初めて目にしたあの小さくて黄色いトランスフォーマー『バンブルビー』である。
今ここにいる、つまり既に会っているオプティマスを除けば該当するのはドリフトとバンブルビーが候補となる。
ロスに居る筈の彼等がどうやってここまで来るのか?その疑問は脳裏に蘇ったあの緑色の渦が三秒という短い時間で解消した。
そして、外から迫る硬質的なリズムの後、ついにその疑問は解消される。
「黄色いの!」
「黄色いのって……いうな。」
幼さを感じる少女の物のような声、どうゆう訳か廃車置き場で発見した時以上に傷つき汚れた黄色い装甲、ソルスティスの因子が各所に散りばめられた細く女性的な身体は紛れもなくバンブルビーの姿だった。
無事を喜ぶ事もつかの間、ハラルドはバンブルビーがここまで傷ついている事への心配が押し寄せてきた。
「いったいどうしたってんだよ。」
「やつらに……やられた……。」
その身体にはハラルドがこの手で処理した金属の矢の他に、強烈な打撃や鋭い刃で付けられた傷が数多く存在し、それらの痛ましい傷程深刻ではないものの、胸部には一度無理矢理こじ開けた物を溶接して何かを隠した形跡があった。
「ごめんな黄色いの……俺、お前に何にもしてやれなかった。」
深刻な表情でわびるハラルドに、バンブルビーは何故か笑顔を見せる。
「あんたはあたしとの約束を守った、それだけで十分。」
彼女の満面の笑みが、ハラルドの表情を和らげた。
突如、バンブルビーの背後で重く大きな金属が大理石の床に激突する音が聞こえた。
音の方向では、力が抜けたのかオプティマスが膝を付き、苦しみをその姿勢で表していた。
ハラルドはその姿から、彼が衰弱する原因を知り、メガトロンが念入りに修理されていた事に納得する。
「大丈夫ですか司令官。」
「やっぱりボロボロじゃ駄目ってか。」
今ここに目覚めるまでの険しい経緯を想像させる数々の傷がオプティマスの身体に今になってダメージを与え始めていたのだ。
「どうゆう事だよ、目覚めた時はあんなにピンピンしてたのに。」
「マトリクスの力でさっきまでは最善のコンディションで戦えていただけで、やっぱろボロボロだったんじゃないですか…。」
心配する二名にオプティマスはなんとか力を見せようとする。
「いいや大丈夫だ、なんとも……くッ」
しかし今やオプティマスには二人を安心させるために見せる力すら出せなかった。
疲労するオプティマスを見かねてか、バンブルビーは提案を出す。
「私の隊に『ラチェット』がいます、今ここまで呼んできましょうか?」
「ああ、ありがとうバンブルビー」
どこからか小さな黄色い機器を取り出したバンブルビーに、ハラルドは尋ねた。
「おい『ラチェット』って何者だ?」
「軍医のおっさんだよ、みんな一度は世話になってるの。」
先程の会話で、わざわざラチェットが軍医である事をオプティマスに伝えなかった、つまりオプティマスがラチェットという者が最初から軍医である事を知っている前提で話していた事から、ハラルドはラチェットが彼らの間で名の知れた者である事を察する。
簡潔な回答でハラルドの質問に答えると、黄色い機器を耳と思しき場所に近づけて今ここにいない何か…恐らく『ラチェット』と思しき者、そしてもう一人彼女の上司と思しき者にバンブルビーは語りかける。
バンブルビーが通話を終了して機器をしまった数分後、彼らの眼前にはあの緑の渦『スペースブリッジ』が発生し、その中から一台、赤と白のツートンカラーと四角く分厚いボンネットが特徴的な救急車仕様の『フォード・スーパーデューリー・F-350・XLT』、そして派手なファイアーパターンが目を引く細長く曲線的なフォルムを持ったマッスルカー『シボレー・コルベット・エクステリア』が現れる。
スペースブリッジが姿を消すと共にデューティーの箱状の後部からは白い両腕が展開し、荷台からなる下半身が未だ変形し続ける上半身を起こす。
壮年の物を思わせる渋い顔が飛び出したのを境に変化を止めたそれは、オプティマスに及ばずとも屈強で大柄な体躯を誇っていた。
一方コルベットは、リアが二つに割れると共にドアの下部から引きずりだされるように赤い腕が引き出され、曲線的なボンネットが二股に分かれながらその車体を地面と垂直に起こし、最後に赤い頭部が付き出すと、人型のシルエットへと変化する。
ここまでの流れからこの白いロボットこそが軍医のラチェットであるとハラルドは確信した。
だが、隣の赤いロボットが一体なんなのかは分からない。
「バンブルビーッ!司令官ッ!」
赤いロボットが発した若々しく爽やかな声は彼らのボロボロの姿からくる心配と同時に、彼らとの再会に対する喜びも感じ取れた。
「すまない、君を助けられなくて。」
「気にしないでよとっつぁん、あたしは今なんだかんだで生きてるんだから。」
申し訳なさそうな笑ってみせるバンブルビーだったが、それでも身体は傷だらけである為かラチェットの表情からは不安は消えない。
「『助けられなくて』って?お前らどうしたんだ?」
ラチェットが一体何に責任を感じていたのかと疑問に思い、ハラルドは問いかける。
答えたのはあの赤いロボットである。
「俺の小隊は三手に分かれてシカゴに現れたディセプティコンと戦う者と、君を助けてマトリクスを回収する者、そして俺とラチェットはバンブルビーを助けに……。」
そして先程のラチェットの発言から、その結果をハラルドは察した。
赤いロボットまでもが責任感からかうつむいた時、この重々しい空気を変えようとラチェットは割り込む。
「ところで君たちどこをやられた?」
その手には修理に用いると思しき工具を握っている。
「それじゃあまずは司令官から……」
「黄色いのから先に頼む!」
バンブルビ―の言葉に突如割り込んできたハラルドに一同は驚愕する。
それに真っ先に反論したのはバンブルビ―である。
「ちょっと待ってよ、こちとら司令官を治すために呼んだってのに。
あたしはついででいいんだよ。」
「お前気付かないのか?その胸、一旦こじ開けられた跡だろ、奴らの事だから何をしたんだか分からんだろ。」
「彼なりに考えがあるのだろう、ラチェット、バンブルビ―の治療を優先してくれ。」
ハラルドの考えにオプティマスも賛同する。
「この溶接の跡がかい?」
ハラルドの言葉に反応してバンブルビ―の身体を見たラチェットは不安から顔を顰め、違和感ある溶接の跡に手をかける。
そしてバンブルビーの胸から黄色い板が外され、その内部が晒された時ラチェットは驚きや恐怖に顔を引きつらせる。
「これは……」
「爆弾じゃないかッ!」
赤いロボットの言葉から、恐怖と驚愕は一同に広がった。
今回、ラチェットの変形プロセスの描写が適当になってしまった事をお詫びします。
オプティマスやメガトロンのアースモード等他のTFの変形を考えていた中で、ラチェットを疎かにしていたせいでこうなってしまいました。
今後、ラチェットの変形描写に変化があるかもしれません。