(オリ主タグを付けてますが、筆者が操作していた主人公の事です)
冒険者の朝は早い。
「下僕!!はよ起きるのじゃ!!」
フェステに布団を引っぺがされる。
枕に顔を埋めながら「あと5分…」とぼやいても、相棒は容赦してくれなかった。
「もう昼じゃぞ!?いつまで寝ておるのじゃ!!」
朝ではなく昼だったらしい。そういう日もある。
「アインレインの護衛の任があるのじゃぞ!?もう出立の時間になるというのに!!」
―――そうだった。
今日は、彼女が神殿から出てくる貴重な日なのだ。うかうか寝ている場合ではない。
ベッドから飛び降り、寝間着を脱ぎ捨て、護衛っぽい見た目の服に着替える。
「お、おい下僕!? 飯はどうするのじゃ!?」
ご飯は食べていかない。ジェイクさんのご飯も捨てがたいが、どうせお祭り騒ぎに乗じて露店が出ている事だろう。そこで適当なものを買いながら向かおう。
そんな感じの事をフェステに話しながら、コイン亭の扉を開け放つ。
「気を付けてな~!」
カウンターのジェイクさんに手を振り返し、外へ出る。
私の名はフロスト。
このアステルリーズの街で、冒険者というものをやっている。
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「な、なんとか…間に合ったか…」
膝に手を付いて荒い呼吸を繰り返しているフェステ。もっと鍛えなきゃだめだよ、なんて小言を言うと、「元はと言えばお主が~~!!」と怒られてしまった。ごめんて。
「お二人とも、お待ちしておりました」
アステルリーズ、バファリア教神殿前。
高い丘の上にそびえたつ高い塔、その本殿の前には、すでに馬車が待機していて。
その隣に立つ、神官長リュゲリオと、神託の巫女兼私たちの友人、アインレインに迎えられた。
「本当に、お待たせしたのじゃ…」
珍しく殊勝な態度で頭を下げるフェステ。そして頭は下げたまま、キッと私に鋭い視線を向けてきた。だからごめんて。
「大丈夫。さっき準備が終わったばかりだから、全然待ってない」
柔和な口調と表情で答えるアインレインに、むしろ不思議そうな顔をするフェステ。
「さっき終わった? お主早朝から起きておったのだろう?」
「うん。日が昇ったくらいに…」
ちら、とこちらを見てくるフェステ。まるで『見習え』とでも言っているような目だ。すっと目を逸らす。
「そんなに時間がかかるものなのか?」
「うん。出立の前に、神様へのご挨拶とか、神託の確認とか、色々あるから」
そんな感じの儀式だか洗礼だかを、朝っぱらから起きて、午前中いっぱい行っていたのだという。
言われてみれば、アインレインはどこか眠たそうだった。馬車に乗せたらそのまま寝てしまうのでは無いだろうか。
まぁ、街に着くまで彼女の仕事は無いので、寝てもらっていて構わないのだが。
これからアインレインは、月を跨ぐぐらいの、長期の旅に出る。バファリア教の巡礼の旅だ。
私とフェステは、その護衛の任に付いたのだ。
「道中はワシらが守っておるから、寝ておって構わんぞ?」
「うん…」
生返事のアインレイン。眠気が限界なのだろうか、と思いきや。
その視線は、私が手に持っている、さっき露店で買った「たこ焼き」にくぎ付けだった。
「………」
「………」
「………」
「………美味しそう」
リュゲリオ、フェステ、馭者の神官一行が見守っている中、率直な感想を述べた神託の巫女。
食べる? と差し出すと、一瞬目を輝かせて―――次いで、親の機嫌を伺う子どものように、リュゲリオの顔を見やり、
「……あまり食べ過ぎてはいけませんよ」
笑顔が返り咲いた彼女は、うきうきでたこ焼きを受け取ると、馬車の中に入っていった。
「なんというか…緊張感が無いのぉ…」
苦笑するフェステ。だが私は、あのマイペースなアインレインが好きだ。ぜひあのままで居て欲しい。
「では、よろしくお願いします」
リュゲリオに改めて頭を下げられ、こちらも頭を下げる。
緩んだ分の緊張は、私たちが引き締めればいい。信託の巫女―――いや、私達の大事な友達は、私達が守ってみせる。
そんなわけで、長い旅が始まったのであった。
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守るべき友人は、フェステの隣でぐっすり眠っていた。
「本当に緊張感が無いのぉ…」
呆れ半分、微笑ましさ半分、といった様子で笑うフェステ。
お腹いっぱいになったら、眠気が限界を突破したらしい。たこ焼きの箱を持ったまま寝落ちしてしまったのである。
空の箱を回収し、手早く折りたたみながら、隣に座る神官長に話しかける。
私たちまで馬車に乗せてもらってよかったのか、と。
「あなた方には、脅威の排除という任務があります。それまではどうか、体力を温存されますよう」
そんな気遣いは必要ないんだけどなぁ―――なんて思いながら、屋台で買ったドリンクを飲む。美味しい。
ここからミンスターホルンまで歩きながら、周囲を索敵しつつ、道中襲ってくるモンスターや野盗なんかを相手にしたとしても、全く苦では無い。体力的にはお釣りがくるくらいだ。
が、他ならぬアインレインが、それをよしとしないようで。
「こやつの事じゃ。自分だけ安全な馬車で運ばせて、ワシらを歩かせて戦わせるなど、許せないのじゃろう」
確かに。しまいには「せめて自分も歩く」なんて言いそうだ。
昨今の情勢を鑑みて、わざわざ馬車と護衛を用意したというのに、その護衛対象が見晴らしのいい道を、大手を振って歩いていては、全くもって意味が無い。
そんな本末転倒な事態を避けるためにも、私たちは馬車に乗せられているらしい。
「元々は、歩いて巡礼しておったんじゃもんな…」
バファリア教の巡礼は、その過程が厳しければ厳しいほど、祈りが空に届くと言われている。そのため、かつてはアインレインを含めた5人程度で、歩いて聖地を巡っていたのだ。
が、前述したように、昨今の情勢の考慮と、最近のアインレインの活躍―――特に、アバリティアシェルの制御に掛かり切りだった事を考え、彼女の心身を優先し、今回は優しい旅路になったのだという。
ちなみに、この馬車の導入、『歌姫』3人からの直談判だったらしい。彼女を少しでも労われと。教会内部では相当議論になったそうだが。
でも―――最終的には労わってくれて、個人的にはとても嬉しい。
そう伝えると、リュゲリオさんは眉一つ動かさず、淡々と答えた。
「あれだけの試練があったのです。祈りはすでに、十分に届けられる事でしょう」
「なるほどのぅ、これまでの一連の事件も『次の巡礼までの過程』と考えたわけか」
うまく考えたの! と指を鳴らすフェステ。リュゲリオさんは変わらないポーカーフェイスで居るが、その横顔がどこか、アインレインを案じる保護者のように見えた。
まぁ、私の勝手な解釈だとは思うけど。
「リュゲリオ様、アインレイン様」
馬車が止まり、馭者の神官が声を掛けてくる。
最初の目的地であるミンスターホルン、の近くまで来たのだ。ここから歩いて村まで行く手はずになっている。
「アインレイン、起きるのじゃ。ここから歩きじゃぞ」
「ん……」
フェステにゆすられ、瞼を開けるアインレイン。
寝ぼけ眼をこすりながら、小さく欠伸をするその姿は、どう見てもただの可愛い女の子だ。顔が知られていなければ誰も神託の巫女などと思うまい。
「立てますか、アインレイン様」
「うん…」
リュゲリオに手を貸してもらい、馬車から降りる美少女。
まだ少しぽわぽわしているアインレインの服装を軽く正し、歩けそうな様子を確認した後、リュゲリオは先頭に立って歩き始めた。
やっぱりあの人は保護者かもしれない。
余計な事を言うと怒られそうなので絶対に言わないが。
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ミンスターホルンの人たちは、アインレインの来訪を歓迎してくれた。
護衛(私たち)が付いているのをいいことに、いつもより断然近い距離で信者たちと接するアインレインは、とても嬉しそうな様子で、そんな巫女様のお姿を見た村人たちの機嫌も大層良くなる―――という、素晴らしいエングラムの循環(?)を見た。
「今日はここで一泊します。明日また護衛をよろしくお願いします」
村人たちの歓迎もあり、村の施設で宿泊する事になった一行。
よーしじゃあ休むかぁ!
―――なんてわけにはいかず。
私たちは、歓迎されていない連中の相手をしなくてはならない。
それが仕事なのだ。
「な、なんなんだお前ら!?」
野盗の頭らしき人物を簀巻にし、ポイと地面に転がす。
むしろお前たちが何なんだ、と聞き返すと、ありふれた野盗であると語ってくれた。
食料や金目当てでこの村、ミンスターホルンを襲撃しただけだと。ましてや、こんな田舎に神託の巫女様が居るとは思ってもみなかった、とのことだ。
「お主、今『こんな田舎に』と言ったな?」
小さな足を野盗の胸に乗せ、その顔を覗き込むフェステ。
「その田舎を、なぜわざわざ襲撃に来たんじゃ?」
ぐ、と言葉に詰まる男。他の転がされている連中も、軒並み目を逸らしている。
確定だろう。こいつらの狙いはアインレインだったのだ。
なんで彼女を狙ったのか。聞きながら、斧の刃先を首筋に当てる。
「ま、待ってくれ! オレ達は―――」
観念して白状しかけた男の言葉は、しかし。
続くことは無かった。
「あッ…がッ…!!」
突然白目を向き、口から泡を吹き始める野党の頭。
「な、なんじゃ!?」
フェステの手を引き、下がらせる。
頭の異変に呼応するようにして、他の連中も地面に転がったまま、もがき苦しみ始めた。
数秒の苦悶の大合唱の末、闇夜に相応しい沈黙が訪れる。
一応、各自の脈を取ってはみたが、見事に全滅だった。
「…毒か」
多分ね。フェステに同意しながら、思わずため息が漏れ出た。
前にもこんなことがあった。
なんとも胸糞悪いこの感じを、再び味わう事になろうとは、思ってもみなかったが。
「あの時の犯人はユーゴじゃったが…今回は一体だれが、なんの目的で…」
顎に手を当て、一人で考察し始めるフェステ。
心当たりは、無いわけでは無い。
でも確証は無い。あいつがやった、と言い切るには、動機も証拠も不明だ。
そして、それを調べるのは、今回の仕事に含まれていない。
「…それもそうじゃな」
笑みを浮かべるフェステに、手のひらを突き出す。彼女も同じように、手のひらを突き出してきて、
パン、と小さく音を鳴らす。
「護衛、成功じゃな」
笑顔で頷く。
護衛対象を、アインレインを守る事が出来た。
その事実だけで十分だった。
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はっ!? と目が覚めると、揺れる馬車の中だった。
「やっと起きたか。仕方のない奴じゃな、ほんとに…」
向かいの席には、呆れたような顔を浮かべている2人が居た。フェステとリュゲリオさんだ。
そして、私の隣には、
「昨日、遅かったんでしょ。お疲れ様」
天使のような笑みを浮かべているアインレインが居た。
フェステたちが寝たままの私を馬車に放り込み、すでにミンスターホルンを出立したらしい。日は割と高い位置にまで昇っていた。
しかも彼女の肩を借りて寝ていたらしい。神託の巫女の肩は寝心地最高だった。
深く頭を下げて謝ると、天使は両手を振ってなだめてくれた。
「朝方まで見張ってくれてたって聞いた。だから、むしろ私はお礼を言うべき。ありがとう」
気にしないで、的な事は言われると思っていたが、カウンターでお礼が飛んでくるは思わなかった。
この子は本当に、怖いぐらいに素直だ。教団の教えの賜物なのだろうか。それとも、彼女だからこそなのだろうか。
「ワシも起きてたんじゃが!?」
「うん。ありがとう」
「…お、おう」
まともにお礼を言われると、それはそれで照れるらしい。相棒の防御力の低さに、思わず吹き出してしまった。
「なんで笑うんじゃ!」
フェステの抗議に、アインレインもクスクス笑う。
「いつか……」
そこまで言いかけて、口をつぐむアインレイン。
言わんとしたことは、分かる。
それをフェステが代弁してくれた。
「いつか、カーヴェインやシャルロットも一緒に、旅をしてみたいの」
「…うん」
頼りなさ気に、でも笑顔で頷く、神託の巫女。
バファリア教の教えにまだ詳しくないから、神託の巫女に『勤め終わり』なんて概念があるかは分からない。彼女の様子を見るに、実現するのは難しいのかもしれない。
でも、いつかきっと。
少なくとも、神官長のリュゲリオが、今の話を聞いて何も言わないで居てくれるあたり、希望は見える。
自分の記憶(ルーツ)を探すのも、目的の1つではあるけど。
何より、仲間達との冒険が、最高に楽しいから。
この青空が続く限り、私は冒険を続ける。
私はフロスト。
この惑星レグナスで、今日も仲間たちと冒険に挑む、アステルリーズの冒険者だ。
私たちの冒険は、まだまだ続く。
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~あとがき~
ここまでお読みくださりありがとうございました。
個人的には好きだったブルプロが終わりを迎えることになってしまったので、せめて何らかの形で残したいと思い、今回慌てて執筆した次第です。
皆さまのキャラクターも、フェステやチームのメンバーたちと共に、レグナスの世界で冒険を続けていると信じ、今回は筆をおかせて頂きます。
また、ブルプロで私のキャラと関わってくれた皆さま、ありがとうございました。
どこかでまたお会いしましょう.
それでは、皆さま良い旅をノシ
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おまけ
ミンスターホルン近郊、アンドラ盆地との境目あたりの街道。
野盗の集団が、今まさに村へ襲撃をかけようとしていた、そこへ。
『ねぇ』
上から声が降ってきた。
辺りを見回した野盗の何人かが、その正体を見つけることに成功する。
丘の上の人影。
月を背にし、闇夜に浮かび上がったそのシルエットは、自分達よりもはるかに小さい。
『あの子、疲れてるからさ。寝かせてあげてくれない?』
声色からして少女。おまけに小柄。野盗たちは顔を見合わせ―――一斉に高笑いをした。
「どうしたお嬢ちゃん!随分早ぇ命乞いだなぁ!?」
1人が大声で、丘の上の少女に話しかける。
すると、影は丘から飛び出し、
その落下エネルギーをも利用して、男に斧を叩きつけた。
「ごァッ……!?」
地面を揺るがす衝撃の後、カエルが潰されたような声を上げ、沈黙する男。
『お願いだから―――』
その頬と武器を返り血で染めた少女は、事態を把握できていない集団に向け、
『―――静かにしてね』
双斧を振りかざした。
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