何故かメノリに成り代わりました。   作:如月雪見

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前回

藍染の過去と今後の目的を知りました。


今回

そもそも、平子達は何故虚夜宮を訪問したのでしょうか?

報連相はしっかりしましょう。



平子達の来訪理由→献立談義

 

 

藍染と平子の関係、藍染の過去を知った翌日、途中退場した藍染が情報共有の確認をしたいから、朝食を共にするよう連絡が来た。

 

…平子の言った通りね

…絶対、朝食に誘って来るって

 

給仕係と共に現れた私達に、姫様は大喜びで誰が、何処に座るかを考え始めた。

真剣に悩んだ結果、久し振りの叔父達を左右と真向かいに座らせたので、必然的に少し遠くなった藍染の嫉妬の眼差しはかなり怖かった。

 

…いつ帰るか知らないけど、それ迄の辛抱でしょうに

…大人気無いなぁ

 

姫様が平子達と話をしている間に、此方は此方で昨夜得た情報についての確認を済ませた。

平子と東仙から聞いた情報に間違いは無いらしい。

 

朝食が終わり、姫様が退出したのを見計らった平子が今回の訪問の目的を話した。

 

「今年はどないすんのか確認に来たんや。この8ヶ月ちょい、何の催しも無かったやろ?その分、今迄と違うて、みいがみんなと楽しめるモンにしよとか考えとるちゃうか思うてな。どないなん?惣右介」

「兄さんにはお見通しか…」

「当たり前やんか、あと2ヶ月もしたらみいの誕生日やろ、オマエが何も考えとらん訳無いわ」

「…え?」

「ん?…何や惣右介、メノリに教えとらんかったんか?」

「…済まない、すっかり伝えた気でいたよ」

「いえ、大丈夫です。姫様の嗜好傾向は大体把握出来ていますし、サチ様や前担当のルドボーンさんにもご助力いただけると思いますので」

「そうかい?なら頼んだよ。それで…やっとみいを皆と同じ会場に連れて行けそうだから、霊圧の有無に関わらない、年齢も関係無く楽しめる遊びの候補は幾つかあるんだけど、まだ決まっていなくて、どうしようか悩んでいてね…」

「ふむ…取り敢えず、候補見せてみぃ」

 

2人は姫様の誕生会の催し物について、真剣に論議を始めた。

藍染に渡された名簿と資料を手に、私達も厨房に戻った。

 

 

 

…姫様の誕生日は2ヶ月後か

…今迄どういう風にしていたのか情報収集しなきゃ

…参加者次第で作るメニューも大分変わるだろうし

…みんなとしっかり話し合わないとね

 

 

 

 

 

 

 

厨房に戻り、後片付けをしながら朝食担当の人達に姫様の誕生日は今迄どうしていたのか聞いてみた。

そうしたら、殆どの人が遠い目をしたり、顔自体を背けたりして黙ってしまった。

 

「え?あれ?みんな、どうしたの?」

「いえ…料理長が来る前の我々の料理の腕は最初に見た通りのモノでしたし、あちらでは姫様専属の担当が、腕を奮ってご馳走を作っていたとは聞き及んでいます」

「ですが、姫様の誕生日だけは我々は料理禁止、現世で大量の市販品を買い込んだのを出すだけと言う、食べに来る者達にとっては年に数回の貴重な日ですが、料理人としては屈辱的な日なのです」

「…そうですね、お目出度い日ですけど…とても複雑な思いをする日でもありましたね」

「「「ロカさん…!」」」

「「「………」」」

 

…そう言えばそうだった

…自分達の料理スキルは嫌と言う程解っているけど、現世の市販品を丸っと1日分購入させられるのは、料理人としてのプライドがズタズタになる行為よね

…多分藍染としては、休日を与えたつもりだろうけど、姫様の誕生日=彼等が日々感じてるコンプレックスを更に煽る日だったのね

 

「しかし、今年は違う!」

「その通り!この数ヶ月で我々の腕は劇的に上がった!」

「藍染様がどんな催し物を計画しているかは解りませんが、今から特訓すれば!」

「行ける!行けるぞ!」

「「「「「うおぉぉぉ!!」」」」」

 

…本当にみんな、根っからの料理人だなぁ

 

物凄い盛り上がりを見せる彼等にちょっと呆気に取られたが、先程貰った去年までの誕生日のご馳走の資料に目をやりながら、何を作るか考える事にした。

 

…やっぱり、ちらし寿司に稲荷寿司、巻き寿司に鯛の尾頭付きに天麩羅の盛合せ、おせち料理が定番かぁ

…山本元柳斎達古参の影響で、瀞霊廷や尸魂界では洋食は余り普及も浸透もしてないんだよなぁ、確か

…誕生日と言えば真っ先に思い付くのはバースデーケーキなんだけど

…ってか、絶対外せないモノだし

…〈私〉が転生した【世界】では子どもの誕生日は、大抵が子どもの好物をたくさん作るか、仕出しのオードブルとケーキでお祝いだったからなぁ

…どうしよう?

 

取り敢えず、参加者名簿にも目を通す事にした。

 

…まぁ、此処に住んでる破面達は強制参加なのは当然よね

…藍染の身内である平子一家が来るのも解る

…平子繋がりで仮面の軍勢が来るのも予想通り

…藍染と平子を慕っていて、家族ぐるみで付き合いがある東仙の家族が来るのもまぁ解る

…綱彌代夫妻も藍染の目的の協力者だからまだ解る

…他にも、姫様の事を知っている古株の方々が来るみたいだけど

 

そこから先の尸魂界側の参加者に物申したい気分になった。

 

…市丸さん、貴方は今産休兼育休中ですよね?

…奥さんの体調もだけど、子ども(双子)はまだ1歳にもなってないのに家族連れで来ようとしますか普通?

…今年は見送った方が良いと思いますよ?

…涅マユリ、姫様の制御装置の制作者の1人で、定期的にメンテナンスをしに来ているからそのついでに参加するみたいですが

…備考欄に秋刀魚の竜田揚げ、紅葉おろし付きもしくは秋刀魚の蒲焼き、針生姜添えって何?

…ロクゴウちゃんの備考欄にはバナナ蒸しパンと野菜ジュース(人参必須)って

…備考欄は注文書じゃないんだけど?

…こっちのは多分、斑目が代筆したんだろうな

…だから、備考欄の使い方おかしいってば

…ってか、姫様の誕生日祝う気あるの?この人達

 

全く同じ筆跡の名前が数枚続いた中に、更木剣八と草鹿やちるの備考欄にも、今までお土産として送ったお菓子の名前が書かれていた。

 

…まぁ多分、やちるちゃんに強請られて書いたんだろうけど

…精々、それぞれの隊の隊長或いは副隊長が来るだろうなくらいにしか思ってなかったんだけどなぁ

 

「う〜ん…ねぇ、ロカ、テスラ」

「どうしましたか?メノリさん」

「何かあったか?」

「去年までの誕生日会って、こんなに参加者居たの?」

「…いや、居なかったな」

「…えっと、虚夜宮内でも破面は去年よりも増加していますし…平子様御一行と東仙様の御家族は毎年いらっしゃっていますよ。あ、市丸様も奥方様と参加していましたね。涅様も贈り物を持参して来ていましたよ。他の隊長や副隊長の方々はその年の都合によってご不在の時も有りましたが…後はえっと…存知ない方の名前が多数ありますね」

「…何故に?」

「…おそらくは、メノリさんが目当てかと」

「…何で私?」

「多分だが…ほぼ毎回東仙統括官経由で送られるお土産を作っている料理長が、どんな破面なのか興味があるからじゃないのか?」

「…主役は姫様なの解ってるのかしら?」

 

頭痛を覚えながら、献立をどうするか候補をあげていった。

 

…取り敢えず、今年は無理しないで一昨年の献立を参考にして、今まで作った事のある五目ちらし寿司に、イワシのつみれ汁、茶碗蒸し、根菜の炊合せに、まだ教えていない天麩羅か竜田揚げにタレとソースを何種類か添えて、好みの味で食べて貰うかな?

…で、ちらし寿司が食べられない人用に同じ具材の五目御飯も作っておこう

…誕生日会まで約2ヶ月あるから、十分間に合うだろうし

…今までとの変化を付けるのに、大きなバースデーケーキを用意するからそれで格好はつくでしょ

…お土産は一口団子の詰合せで9種類くらい用意しよう

 

姫様のだけ、お子様ランチ用のプレートに、ちらし寿司と炊き込み御飯を小さなおにぎりにして、後はひと口大にしたおかずを盛合せた和風お子様ランチにする事にした。

 

…来年は姫様がどう成長をしているかは解らないから、今出来るだけの事をしたい

…後悔だけはしたくないからね

 

 

 

みんなに考えた献立を見て貰った。

作った事のある料理への安心感と、これから特訓する料理への緊張感が綯い交ぜになった表情の人が多い。

その中で、ボルンタさんが手を挙げた。

みんなの目が一斉に彼女に集中した。

 

「あの、折角料理長が考えた献立ですがその…」

「みんなの意見が聞きたいから、どんな些細な事でも遠慮なく言って欲しいから。ね?」

「…では失礼して…オムレツやハンバーグ等と言った洋食は出さないのですか?姫様がお好きだと先日お聞きしましたが」

「あー…うん、実は今回お招きする方々は、洋食は殆どお召しにならないらしくて。馴染みの薄い料理は控えた方が良いかなって思ったの。姫様の食事にだけ入れる訳にもいかないし。姫様、そういうところ気にする方だし」

「…成程、お客様方の嗜好も視野に入れた結果でしたか。姫様の好物を中心にお作りするとばかり思っていたので」

「姫様が主役なのは間違いないから、その考え方は正しいよ。でも、主役の為に来ていただくお客様の事も考えないと、折角の催し物も台無しになっちゃうからね。みんなが満足するにはどうすれば良いかを考えるのも大事だよ」

「はい」

「他に何か気になる事とか、知りたい事は無いかな?」

「…後は、作ってみないと解りませんから、今のところは無いですね」

「「「「「同じく」」」」」

「藍染様がどんな誕生日会にするのかはまだ解りませんが、現時点ではこの献立をしっかり作れるように明日から練習して行きましょう」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

 

この献立を変更せざるを得なくなるのは、週に2回あるおやつタイムの時だった。

 

 

 

「…は?え?えぇ〜?」

「うん、そういう反応になるだろうなとは思っていたけど…ゴメンね、私が余計な事を言った所為で」

「…ううん、仕方ないよ。聞かれた事に答えただけなんだし…私達の居た【世界】では家庭によって違うのは当たり前だし、和洋中が混ざった子ども向けのオードブルにジュース、それにバースデーケーキも定番のひとつだったもの…でも、尸魂界からのお客様の事を考えたらちょっと無謀…ってかヤバくない?洋食のおかずマシマシでってのは…バースデーケーキを出すのも初の試みなのにさぁ…」

「そうよねぇ…今迄全部和食でお祝いして来たし…」

「厨房のみんなの料理スキルだって、和食の基本を優先的に教えて来たから、洋食についてはちょっとどうかなぁ…残り2ヶ月そこそこで教えられるのはかなり限られて来るし…う〜ん」

「御飯に合う洋食で簡単、見た目が華やかだけど和食派の方にも受け入れられるおかずは…」

「…ローストビーフやミートローフ辺りかなぁ…うん、ハンバーグは姫様大好きだし、ミートローフなら松風焼きの変わり種として受け入れて貰えるかも知れない。他には…」

 

サチ様との献立談義はおやつタイム終了まで続いた。

 

 

 

 

 

 

「献立の変更…ですか?」

「そう、私達の居た【世界】での誕生日会について藍染様に聞かれた奥方様が、ご自身の生まれ育った家の話をしたら、その料理の再現は可能だろうか?…って」

「…出来そうなのか?」

「…料理自体は今まで教えたソテーとかムニエル、オムレツ、ハンバーグ辺りをアレンジすればイケると思う。揚げ物は天麩羅からフライに変更して…ソース次第で味は幾らでも変えられるから楽しめるだろうし」

「…なら、何を悩んでいるんだ?」

「既に和洋折衷のおかずを食べている私達や、現世住まいの平子様方はそこまで抵抗は無いだろうけど、問題は尸魂界からのお客様の洋食への苦手意識をどれだけ少なく出来るかだからね…立食式で「食べたいのをお好きなだけどうぞ」が出来るなら、ここまで悩まなくて済むけど…やった事無いのよね、資料を見た限りでは。仮にやったとして、「立ち食いなんてみっともない!」とかなったら折角の誕生日会が台無しになる可能性もあるし…」

「…しかも、奥方様の仰った誕生日会って、ご家庭でお友達を招いての、子ども達が主催の宴ですよね?…大人が大多数を占める姫様の誕生日会にはどう考えてもそぐわないと思いますが…」

「そうなのよ…最初からお善に全て揃えた状態の食事で、和食に混ざっても違和感の無い洋食のおかずで、みんなが直ぐに覚えられる料理なんて、ハードル高過ぎなのよぉ…」

「う〜ん…そう言えば、今迄送って来たお土産も、物によっては好き嫌いが分かれたりしているみたいだしな…乳製品や香辛料の入った物は特に顕著らしいしなぁ…」

「そう…洋食に良く使われる乳製品にハーブ、スパイスの匂いが苦手な人が多いのよ。しかも乳製品は体質的に合わない人もそれなりにいるし〜…本当にもうどうしよう…」

「厨房の皆さんも直ぐに作れて、尸魂界からのお客様にも受け入れて貰える洋食のおかず…確かに難問ですね」

「…あのぉ、ちょっと宜しいでしょうか?」

「何?ルプトゥラさん」

「えっと、藍染様は姫様の誕生日会、今年は奥方様の前世のご実家の誕生日会を参考にするおつもりなのですよね?」

「その予定らしいわ」

「…確か、奥方様の前世と現世はかなり似通っているともお聞きしました」

「らしいわね。現世学の教本の最新版を見せて貰って、お互いに懐かしがったもの」

「…でしたら、今年の誕生日会は現世の誕生日会を参考にしたので、食事もそちらに寄せて用意した旨を藍染様から一言添えていただければ、そこ迄波風は立たないかなぁ…と思ったのですが…」

「「「「………」」」」

「「「「それよ(だ)((です))!」」」」

「そうよ!藍染様がしっかり説明してくれれば良いのよ!」

「…それに、藍染様は料理の再現が出来るかどうかを聞いてきただけでしたしね」

「あぁ、難しく考え過ぎたな俺達」

「…それで、肝心のお料理はどうでしょう?メノリさん」

「そうね…うん、現世の料理を参考にしたって言う体で行くなら…何とか出来るかも。ルプトゥラさん、ありがとう」

「お役に立てたなら光栄です」

「うんうん。さぁ、献立の変更について、改めて話し合いしましょうか」

「「「「「はい!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

…どうなる事かと思ったけど、何とかなりそうで良かった〜

…やっぱり、報告、連絡、相談は大切だわ〜

…流石に、姫様の誕生日会で藍染がうっかり説明不足とかなんてポカをやらかすとは思えないし、思いたくもない

…良し、やるぞ〜!

 






藍染に肝心の姫様の誕生日を伝え忘れられたり、色々と振り回されて思い悩むメノリ達を書いてみました。


次回、誕生日会に向けての準備期間について書こうかと考えています。








〈今回のオリキャラ〉

ボルンタ
スペイン語で意志の意味
メノリよりも少し大きい女破面
疑問に思った事はそのままにしない主義で、少々神経質な一面もある
主に汁物担当


ルプトゥラ
スペイン語で突破の意味
テスラと同じくらいの背丈の男破面
彼のふとした呟きや思い付きが、思わぬ解決の糸口になる事がある
主に副菜担当
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