前回、姫様の誕生日会が開催されました。
今回、誕生日会後にあった出来事。
瀞霊廷通信と写真集、どっちも嫌なんですが。
前回の次回予告ですが、他に思い付いた事が書きたくなったので、お出掛けは次回に持ち越しになります。
誕生日会の後、死神達と平子以外の現世組はそれぞれ帰ったが、平子一家と東仙の嫁シホリは一泊してから帰るので、それぞれに用意された部屋へと案内された。
…シホリさん、凄い美人だったなぁ
…きっと、引く手数多だっただろうなぁ
…東仙、だいぶ苦労したんじゃないかなぁ
…それはさておき、夕食は何にしようかな?
…昼食がカロリーの高いメニューだったから、胃に負担のかからないのにしておこう
因みに、出せなかったアンコロネは、残りの生地の焼ける匂いに釣られた面々と、ザエルアポロによって完成してものの30分もせずになくなった。
ってか、ザエルアポロが3割くらいを残ったあんこと共に持ち去った。
…お客様方と姫様用のがまだだって、ストップかけなきゃ全部持ってかれるところだったわ
…今朝の無事だった分が私達用ね
夕食後、デザートとしてアンコロネをお出ししたら、不思議な形だが美味しいと、かなり好評だった。
今日は疲れているだろうからと、朝食の準備が終わり次第、休むようにと藍染直々に命令が下った。
後片付けはまたルドボーンの帰刃に任せてあるとも言われた。
…ルドボーンを、体の良い便利屋扱いしているみたいでちょっと気が引けるんだよね
本人は、姫様と藍染、サチ様のお役に立てればそれで良いと常日頃から宣言しているから、ちっとも気にしていないようだが。
後ろ髪引かれながらも、みんなで大浴場に行ったら、姫様方と平子(母)も来ていた。
入浴中、漸く話が出来ると平子(母)に声をかけられた。
話には聞いていたけれど、本当に息子の真子は彼女に似ていない。
何なら、養子の藍染の方が似ていると思う。
癖のある茶髪や目元が特に。
話を聞けば、彼女と旦那さんは嘗ての虚大量発生事件で尸魂界の住民の避難誘導をしていた時、虚に襲われて彼女は左半身に後遺症を、旦那は両腕を負傷、以来、日常生活を送るのがやっとの有様だったが、藍染が持ち込んだお土産のおかげで、どちらも問題なく完治した事へのお礼がしたいと頭を下げて来た。
…私の預かり知らないところで、また人助けイベントが発生していたよ
取り敢えず、困り事が起きた時に頼らせてもらう事で何とか納得して貰った。
「うりゃ、おりゃ!」
バッシャバッシャ
「はっ!喰らうかそんなモン!」
ザバザバッ…ビシュッ
「甘いですわ」
バシュバシュバシュッ
「うぉあっ!?」
「てめぇ、スンスン!」
「隙だらけでしてよ」
「「上等だぁ!」」
ザバアッ!バシャッ
「…ぷはぁっ、げほっ、ごほっ…アイツ等ぁ〜…うっ…いったぁ…」
「ロ、ロリさん、頭を打ったのですから余り動かないで下さい」
「アイツ等、絶対許さないんだから…っつう〜」
「こうして手を組んで、こう…」
ビシューッ、ビシュッ
「おー!」
「…むぅ、上手く出来ません」
バチャ、バチッ
「ハリベルすごーい!もっともっと!」
ふと気付けば、バシャバシャと激しいお湯の掛け合いをアパッチ達がやってる。
巻き込まれて溺れかかった挙句、頭をぶつけたらしいロリをロカが介抱している。
少し離れた所では、従属官達のやらかしに気付いていないハリベルが姫様、ビア、リリネットに水鉄砲のやり方を教えている。
…ロリのケガ、治しに行こう
…にしても、今日の姫様、初めて尽くしじゃない?
限られた区域内で、藍染が厳選に厳選を重ねた者達とだけの生活が当たり前だったのに、大勢の知らない人達の前に出て、知らない人達と食事をして、遊んで、終いには大浴場で湯浴みまで…。
…大丈夫なのかな?
…興奮し過ぎて高熱出したり、最悪吐いたりとかしなければ良いけど
はしゃぎ過ぎた姫様は、入浴後の着替えが終わった途端、あっさりと夢の世界へと旅立った。
幸せそうに熟睡する姫様をおんぶしながら、サチ様は深々と私達にお礼をして来た。
「皆さん、今日はみいの誕生日を共に祝って下さり、本当にありがとうございました。また明日からも宜しくお願いします」
「…姫様にとって、良い思い出の一部になれるだけで恐悦至極にございます。明日から日常に戻りますが、私達は変わり無く姫様をお支え出来るよう尽くす所存にございます。お休みなさいませ」
「…ありがとう。お休みなさい」
ハリベルさん達と共に立ち入り禁止区域へと戻って行くサチ様に会釈して、私達もそれぞれの部屋に戻った。
翌日、檜佐木がカメラやマイク付きレコーダー、そして大量の雜誌を手に、志波海燕、京楽と共にやって来た。
…志波海燕と京楽は多分、昨日のご褒美チケットの件で来たんだろうな
…でも、檜佐木は何をしに来たのかな?
彼の所持品だけでなく、隣に座っている東仙の申し訳なさそうな表情を見るに、とても嫌な予感がする。
取り敢えず先に志波海燕と京楽の用件を聞いた。
予想通り、2人は昨日のゲームのご褒美チケットを使う為に来た。
「さっさと使っちまわねぇと、他の隊士達にばれて色々と揉める可能性があるしな」
「そうそう、それに、有効期限まで3ヶ月あるけど、その間に失くしちゃったなんてなったら嫌だからね」
「「って、言う訳で宜しくな(ね)」」
「13番隊が果物の寒天寄せとシベリア、1番隊と8番隊は胡麻と黄粉のマドレーヌと選べる3種のお団子(こし餡、みたらし、ずんだ)…はい、確かに承りました」
「頼んだぜ」
「すまないねぇ、メノリちゃん」
「いえ、此方に記載されている日時に用意しておきますので、受け取りの方宜しくお願いしますね」
2人の用件は直ぐに済んだが、問題の檜佐木へと顔を向けた。
「…で、えっと…檜佐木さん…でしたっけ?ご用件は何でしょうか?」
「はい、先ずは昨日の撮影した写真を確認していただきたくて…此方が現像したモノです」
「あぁ、どれどれ…良く撮れていますね。ブレひとつ無く見切れも無い…凄いです」
どの写真も、とても絶妙な角度でちゃんと子どもの顔が写っている。ついでに私のも。
…周囲の人達の表情がアレなんだけど
「ありがとうございます。それで、本題なのですが…此方を読んでいただけますか?」
「…瀞霊廷通信…?…瀞霊廷の広報誌…でしょうか?」
…そういや、こんなのあったな
…原作は勿論の事、小説でも取り上げられてたっけ
話を聞くと、虚夜宮の料理長についての情報を求める声が日に日に増えて、先日のアンケートでは7割を超えたと言う。
「もう何度目か解らない直談判がほぼ毎日来て、隊務にも支障が出ていてな…特集或いは写真集でも作らないと収まらないところまで来ているんだ」
深い溜息を吐く東仙の疲れ切った表情を見るに、編集長としての責務と、目覚めて直ぐに料理長に任命されて奔走し続けて来た私に対して負担になる事は避けたいと言う気遣いの板挟みに苦悩しているのが解る。
命令してしまえば楽なのに、それをしない東仙の人となりには好感を持てる。
…でも、広報誌に載るなんて嫌
…写真集なんて論外もいいところよ
…あぁ、嫌な事を思い出した
「…東仙統括官、ちょっと宜しいでしょうか」
席から離れ、檜佐木達に聞こえない廊下に出て、前世の喫茶店を営んでいた時に、とある雜誌に載った所為で起きたトラブルについて話し、もう二度と嫌な思いをしたくない旨を伝えた。
「…そうか」
「いい加減な記事は載せない様にしっかりと取材、裏取りもしているのは解ります。ですが…」
「…雜誌に載る事に対するトラウマがあるのは理解した。だが、此方としてもあの大量のアンケートを無視は出来ない。それに、妙な勘繰りや邪推をする輩も増えて来ているのも事実だ。だから、適度なガス抜きをしておけば後々の為になると思うのだが…」
「うぐぅ…」
…東仙の言う通り、今のうちにササッと無難な記事を出して終わりにした方が良いかも知れない
「…写真は最低限で、表紙には使わない。載せる内容と発行前の確認をしっかりさせていただけるなら…今回の広報誌の記載に限り、取材に応じます」
「…そうか、助かる」
「それから、私の姿を見てガッカリされても責任は取れませんからね」
「…否、寧ろファンクラブが出来る可能性が高いと思うんだが」
「…は?」
…今のは聞かなかった事にしておこう
…にしても、この【世界】の東仙は1人で編集、発行していないんだ
檜佐木のカメラ技術に取材の交渉力、そして編集能力は目を見張るものがあるからと、隊の誰よりも頼りにしているらしい。
…良かったね檜佐木、頼りにされて
「私は料理長なので、裏方の者として余り目立ちたくは無いのですが…東仙統括官からお話は窺いました。なので、此方からの要望を可能な限り…いえ、全て呑んでいただく事を条件に、取材に応じようと思っていますが…如何でしようか?」
「…その要望とは何でしょうか?」
「…写真は最低限、表紙にも使用しない事と、載せる内容と発行前の最終確認、了承を彼女から得るのが絶対の条件だそうだ。だから何時も以上に慎重に編集をすれば問題は無いだろう。その旨の契約書も既に作成した」
「…しっかりしていますね、メノリさん」
「書面にしておかないと、いざという時に言った言わないの水掛け論になりますので。交渉時の基本かと」
「は、はは…解りました。宜しくお願いします」
部屋に戻って、檜佐木にも東仙に言った条件を呑んで貰い、契約書もしっかり作成した上で取材に応じた。
料理長になった経緯、始まりのみたらし団子と、運命を決定付けた生姜焼き定食を再現する為に作っている姿をカメラに収めたりと、至極まともな取材を受けた。
その間、檜佐木の用事が終わらないと帰れない京楽と志波海燕は、日番谷の案内で虚夜宮内を見学に行った。
「…美味い。団子のモチモチ感がしっかりしてて良いな。みたらしのタレも甘じょっぱさがちょうど良い」
「ですよね、メノ姉様のお団子は天下一です…あれ?檜佐木さんはメノ姉様の昨日のお団子、受け取っていなかったのですか?それに、今までも何度かお土産としてそちらに贈られている筈ですよね?」
「…昨日のは、誕生日会に来なかった同僚に全部取られちまってな…今迄のも、何かしらの用事とかで運悪く食べ損ねてたから…」
「…檜佐木さん、思う存分食べて行って下さい」
「…ありがとう」
「成程、今日の夕食が生姜焼き定食になった理由って、こういう事だったんだな」
「そう。まあ、今夜は豚肉使おうと思っていたからちょうど良かったかな」
この日の取材を終えた時間は夕食の終わり間際だったので、みたらし団子と生姜焼き定食をしっかり食べて檜佐木、京楽、志波海燕の3人は帰って行った。
その後、数回に渡る取材に綿密な話合いを繰り返して、漸く特集が完成した。
出来上がった瀞霊廷通信は、此方にもかなりの数が送られてみんなの手にも渡った。
自分が出した要望に限りなく近い仕上がりで、黒歴史に成りかねない要素は見受けられないのだが…。
…やっぱり、物凄く恥ずかしい
…流石に燃やす訳にはいかないから、部屋のクローゼットの奥深くにでも封印しておくかな
…あ、シャルさんにドルドーニさん、チルッチさんも
…止めて、わざわざ見せに来ないで
…あ〜、ビアとロカ、テスラは助手としての取材に応じたからね、うん
…え?料理教室についてノータッチなのは納得出来ない?
…いや、全員に取材とか大変だし
…ちょ、待って!
…東仙様に直談判に行かないで!
…もう取材とか受けたくないからー!!
破面として目覚めて1年、初めての虚圏の外へ出掛ける話を書こうと思ったのですが…。
ふと、姫様の誕生日会の後の光景と、死神達尸魂界側のとある事情が頭に浮かんだので、そちらを書く事にしました。
今迄一度も無かったであろう虚夜宮からのお土産(美味しくて、健康体或いは理想の身体に近付ける凄いお菓子)を作れる存在が気にならない訳が無い。
瀞霊廷通信で取材しないのか、疑問の声が上がってもおかしくないのでは?と思い立ちまして、檜佐木にも出張って貰いました。
次回こそ、お出掛けします。
〈オリキャラ〉
東仙シホリ
東仙要の妻
メノリと同じくらいの身長
ぬばたまの黒髪を持つ美人
綱彌代時灘の母の生家に仕える下級貴族を母に持つ
時灘の母のお気に入りの侍女だった母は、嫁ぎ先の綱彌代家にも連れて来られた
そこで出会った時灘の父の従者の1人である中級貴族に見初められ結婚、シホリが生まれた
時灘を幼少から知る人物の1人
歌匡が時灘と婚約後、2人の結婚式に出席する為に礼儀作法等を学ぶ場で、講師として東仙要と出会う
全盲故に慣れない環境、使った事も無い道具に四苦八苦する彼を誰よりも熱心にサポートしていくうちに互いに意識していくようになった
時灘と歌匡が結婚した後、共に学院に入学した
シホリの美貌に群がる貴族共から彼女を守る為に、時灘が後ろ盾となって東仙と婚約していると周知した
その後、順調に学院を卒業、東仙と結婚した
結婚して50年、妊娠を機に死神を引退、自身の斬魄刀を返還したが、何故か刀は東仙の所へ行ってしまう為、特別許可を得て東仙が所持している
引退して250年近く経つが、今だに斬拳走鬼の腕前は健在である。
引退前は9番隊の12席に着いていた。
平子紘壱
平子真子と藍染の父
元4番隊の5席に着いていた
当時も怖がられていた11番隊の面子を前に平然と治療し、どんな悪態も聞き流し、暴れられても冷静に縛道で雁字搦めにするか、全身の関節を(特に五月蝿い口を黙らせる為に顎は必ず)外してから治療する為、その豪胆さに4番隊からも恐れられつつも、希望の星として慕われていた
先祖代々営んで来た鍼灸院を継いだ父が急死、家業を継ぐ為に周囲に惜しまれながらも引退した
後の妻となる由希の恋心に一切気付かず、引退した自分について来た彼女に告白される迄困惑していた
真子は容姿が父親似で、性格もやや父親似だが、口調や仕草は母親似である
平子由希
平子真子と藍染の母
元11番隊の6席に着いていた
どんな斬撃も鮮やかに逸らして反撃するその戦い方から、<舞柳>という異名を持っていた
自分達を恐れずに淡々と治療する紘壱の姿に惚れて、彼の仕事の邪魔をしない範囲でアプローチを続けたが、全く気付いて貰えず、引退すると人伝に聞いて、押しかけ女房よろしく彼について行った
刀は確かに好きだったが、彼の仕事姿を傍で見ていたいという女心の方が勝り、困惑する彼に一世一代の大告白の末、妻になった
ガサツに見えて家庭的、割と周りを良く見ている
藍染の独善的な思考を改善した凄い人物
彼女には真子は勿論、藍染も頭が上がらない