何故かメノリに成り代わりました。   作:如月雪見

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前回、ロクゴウちゃんがメノリ達の部屋にお泊りしました。


今回、いよいよ朽木家に訪問します。

物凄く緊張します。

何だかアンオウエンの様子が…?

予定外な事が起こりました。


緊張の朽木家訪問…?

 

 

市丸家のシン君とリンちゃんの誕生日会に参加させて貰って早1ヶ月。

 

今日は延ばしに延ばしていた朽木家に訪問する日である。

 

…既に緊張で胃が痛い

 

失礼の無いように礼服を着て、髪もしっかりと結ってお土産は他の5大貴族と差があってはいけないからと、同じカステラを、それとは別に快復祝の品も用意した。

 

…いざ、出陣!

 

「メノ姉様、顔が怖いですよ」

「まるで戦にでも行くような気配が全身から溢れ出ていますよ」

「綱彌代家に行った時との差が凄くないか?」

「…あれは私名義の土地の確認をしに行っただけで、今回のとは訪問理由が大違いなの。緊張の度合いも変わるわ」

「そこまで気負いし過ぎなくても良いと思うが?」

「と、兎に角、い、行くわよ」

「「「………」」」

 

肩に力が入り過ぎているのは解っているものの、行き先が行き先なので、どうしても緊張する身体を何とか動かして目的地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…綱彌代家と遜色無いお出迎えだったわ

 

遠い目になりながら通された客間の席に座った。

 

…それにしても

 

「どうしたんですか?アンオウエン。ここに来てから随分落ち着きないですけど…」

「クァッ!クァクァッ!」

「…メノ姉様、アンオウエンは何て言っているのでしょうか?」

「クァッ!クァッ!クァクァクァー!!」

「え!?…あ〜、そう、うん、解った。解ったから落ち着いて。此処で粗相は駄目だから。私が合図するまで待って。お願いだから。ね?」

「クァッ!」

「何かあったのか?」

「まぁね。私達には無縁も良いところの…ね」

「「「?」」」

「お待たせ致しました。御当主様方が御出でになられました」

「「「「っ!」」」」

 

家臣の声掛けと共に朽木白哉と妻、緋真に義妹ルキア、祖父の銀嶺、そして既に故人の筈の蒼純が入室した。

 

…あの人って、確か殉職してるんじゃなかったっけ?

…死亡時期知らないけど

 

朽木一家が向かいに座り、お土産のカステラとは別に用意した緋真さんの快復祝いとしての品、果物とメロップ水の寒天寄せと私の厳選7種のスパイス入りクッキーを渡した。

 

…朽木白哉は辛党って、京楽から聞いたからね

…涅マユリの時といい、流石にキャラ全員の嗜好品は解らないわよ

 

「口に、合え、ば、良いの、です、が…」

「…忝ない…それはそうと…その…アン…オウエン…という名だっただろうか…如何した?」

「す、すいま、せん。此方、に伺ってか、ら、ずっ、とこの、調子、でぇ…!痛っ!痛いってば!」

「クァッ!クァッ!クァクァッ!」

 

緋真さんの方へ行こうとするアンオウエンを、抱き締めて落ち着かせようとするが、興奮冷めやらぬ状態でジタバタ暴れるので、そろそろ抑えられそうに無い。

 

…あぁもう!

…久し振りだからって、興奮し過ぎでしょう!?

…仕方ない!

 

「えっ、と、こんな状、態で、本当に、すみま、せん。単、刀、直、入にっ、申し、上げ、ます、ね。緋真、様、御懐妊、おめで、とう、ござ、います!…だから痛いって言ってるでしょ!」

「クァッ!!」

「「「え?」」」

「「「「「なっ!?」」」」」

 

…何で本人まで驚いているの?

…もしかして、気付いてなかった?

 

「ま、まことか緋真!?」

「ね、姉様!?」

「え、え?え!?」

「い、医者だ、医者を呼べ!早急に!」

 

私の言葉に場は騒然、パニックになりながら朽木白哉は緋真さんを姫抱っこして、ルキアと一緒に部屋を出て行ってしまった。

 

「「「「………」」」」

「…我が孫が失礼致した」

「いえ、突然の…しかも破面から御懐妊の報せなんて予想外どころの話じゃ無いでしょうし」

「だとしても…」

「何故気付けたのですか?」

「えっと…それを話す前に確認したい事があります。私とこの子達の事、どのように聞いていますか?」

「…そなたらは、幾度も転生を繰り返して来た特殊な魂を内包している者達…だと」

「アンオウエンの事は?」

「ある【世界】の神獣であった…と」

「…つまり、以前に東仙統括官と日番谷様にお話しした事はほぼ伝わっているのですね…なら、話は早いです。アンオウエンは、虚夜宮に居る者限定ですが、私の同胞である虚や破面は勿論、私達と懇意にしている方を種族問わずで祝福し、加護を与える以外にも能力があるんです」

「…それは?」

「身籠った女性を感知する能力です。此処に来た瞬間から落ち着きがなかったのは、久し振りにその感知能力が働いた所為だったんです」

「「「え…?」」」

「な、何故そのような能力が…?」

「…嘗て、アンオウエンの巫女として生まれた時、【世界】中の有りと汎ゆる生物の約4割弱が死滅していました」

「「「「「なっ…」」」」」

「それというのも先代、先々代、そしてそのまた前の代の神獣の力が弱かったからです。3代合わせても寿命の合計が200年にも届かなかった弊害が、【世界】各地に影響を与えた結果でした」

「それは…」

「何という…」

「そして、その後に生まれた私達はかなり強い力を持っていたので、激減した生物を元の状態に戻し、彼等が生きられる環境を整え直す事にも尽力し、【世界】の終焉を回避する事に成功しました」

「何と…」

「そして、感知能力ですが、これが無ければ全てを元に戻すのに途方もない時間を必要としたでしょう」

「え…」

「何でですか?」

「あの【世界】は分厚い氷に覆われていて、火も光も簡単には得られない、生物が生きていくにはかなり厳しい環境でしたから。つまり、元々の出生率が低かったのです。そして、減った数を戻すには生存者達が協力し、努力して増やすしかありません。先代から引き継いだ祝福と加護を生存者達に与え直し、その上で身籠った女性に〈御守り〉を贈って無事に出産して貰う必要がありましたので、この感知能力はとても重宝しました」

「「「「「〈御守り〉?」」」」」

「これです」

 

アンオウエンが徐ろに自分の羽根を1枚抜いた。

抜いた羽根は、蕾をひとつずつ付けた3輪の切り花になった。

 

「ひとつを身籠った女性に、もうひとつは胎児の父親に、最後のひとつはアンオウエンと私が保管し、無事出産すれば蕾は満開になります。因みに〈御守り〉の効果は流産、死産の回避です。その危機に瀕した時、〈御守り〉が身代わりになります。緋真様と御当主にお渡しいただければと」

「…解った。必ず渡そう」

「…この蕾、別の【世界】ではどうしていたのですか?」

「…転生の話は出来なかったので、3つとも私達が保管して、無事に生まれたらお祝いとして咲いた花を押し花にして渡していました。咲いた花は生まれてから元服するまでの13年間、死を回避する為の〈身代わりの護符〉になりますので」

「成程…」

「13歳で元服…生物の少なさが良く解りますね」

「生まれる前も、生まれてからも〈御守り〉として機能するとは…凄いな」

「出生率は低いのに、死亡率は高かったので…力技ではありましたが結果良ければ全て良し。で押し通しました」

「お、おぅ…」

「…確かに、この感知能力は私達の所ではほぼ無縁ですね」

 

例え、私達虚や破面に生殖能力があったとしても、弱肉強食の虚圏で子どもを作ろうなんて酔狂な輩はいないだろう。

 

…だから、この感知能力は使わないだろうと思っていたのよね

…ここまで死神達と関わる事は無いと思っていたし

…本当に予想外だわ

 

「ナァーオ!」

「「シュシュー!」」

「クォッ!」

「クゥ〜ン」

「ギャァ、ギャギャ!」

「キチキチキチ!」

「うわっ、ちょ、まっ!」

 

ドサッ、ゴンッ!

 

「…っつ〜!」

「メノ姉様!?」

「メノリさん!」

「みんな落ち着け!メノリから一旦離れろ!」

 

説明が終わるのを待っていたみんなも、お祝いがしたいと一気に群がられた勢いに負けて、そのまま押し倒された。

畳だったからそこまで痛くはなかったものの、みんなが一斉に乗っかって来たから重い。

テスラとロカに助け起こされながら、それぞれに返答した。

 

「カノン、リリアにリリエ、ロウコ、シオンは贈り物を作る材料や道具が此処には無いから無理よ」

「ナァ〜」

「「シュ〜」」

「クォ〜ン」

「ギャウ〜」

「ニエのは材料は兎も角、出来上がるまで最低でも1ヶ月、下手したら3ヶ月以上はかかるでしょ」

「キチ…キチィ…」

「マスミのは緋真様と御当主が戻られないと出来ないでしょ」

「クゥ〜ン」

「今、お医者様にかかっている最中なのに、邪魔出来る訳ないでしょ」

「キャゥ〜ン」

「諦めて、みんなの用意が揃った時にしなさい」

「キュ〜ン」

「…そなたらの祝いたいと言う気持ちは誠に有り難い。しかし、メノリ殿を困らせるのは我等にとって本意では無い事も理解して頂きたい」

「「「「「「………(しょんぼり)」」」」」

 

…シュルシュルシュル…シュルシュルシュル…

 

「「「…ん?」」」

「…今、何か聞こえたような…?」

「…何の音だ?」

「…っちょ、ニエ!!」

「キチッ(ツーン)」

 

みんなを説き伏せるのに成功したと思ったら、いつの間にか手のひらサイズになったニエが強硬手段に出ていた。

材料の糸を出す音に気付くのに遅れた所為で、既に〈願掛け紐〉を作れるだけの量を生み出していた。

 

「キチキチキチ!」

「…時間がかかるなら、尚更だって…?勝手な事しないでって言ったよね…?」

「メノリさん、落ち着いて!」

「メノ姉様、拳はダメです!潰れちゃいます!」

「死なないから大丈夫よ。精々、数日動けなくなるだけだから」

「落ち着けメノリ、人様のお宅で暴力沙汰は止めろ」

「…ふんっ」

「えぇっとぉ、メノ姉様、この糸で何が出来るんですか?」

「…ふ〜っ…両足首に巻く〈願掛け紐〉…これを生まれた時に巻いて、成長していくうちに自然に外れたら、大怪我をしにくい、生涯丈夫な足になるっていう縁起物で…蜘蛛が相棒の人なら誰でも知っている定番のお祝いの品よ」

「この糸でその願掛け紐?を作るんですか?」

「そうよ」

「…確かに時間がかかる作業ですね」

「…作るのはメノ姉様だけですか?ボク達は手伝ったらダメなんですか?」

「そんな事は無いわよ。生まれてくる子どもへの贈り物だから、誕生を心待ちにしている人達で作る物よ」

「…ならば、作り方を御教え願えないだろうか」

「え…でも、お忙しいでしょうし」

「…既に隠居した儂にとって、曾孫への贈り物以上に大切な事等無い」

「父に同じく…怪我で引退して大分経ちますが、今程、時間に余裕がある事を感謝した日は無いでしょう。それ程、初孫にしてあげられる事が今からあるというのは、この上ない至福ですから」

「キチキチキチ〜」

 

ドヤ顔してるニエに物凄く腹が立つが、あちら側の要請を無視は出来ない。

 

「…では、紐を編む為の下準備、糸の寄り合わせ方を御教えしますね。先ずは…」

 

その後、みんなに紐の作り方を教えて、女中さんが検査の結果を報せて来るまで黙々と編んでいた。

緋真さんが妊娠していると一瞬で屋敷全体に伝わり、お祝いの準備だと一気に賑やかになった。

 

…アンオウエンの感知能力、ちっとも衰えてないわね

…もしかしなくても、今後もこっちに来る度に誰かしら妊娠してたらこの騒動が起きるって事?

…ありうるなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに遅くまで滞在する予定ではなかった事、虚夜宮の夕食の手配はしていない事を説明し、宴には参加出来ないと何とか説得して、漸く帰る用意が出来た。

その際、一家揃って見送りに来たものだから、マスミの〈寿(ことほぎ)の儀式〉を行う事になった。

これは産まれてくる子どもの長寿を願う、嘗て女王時代に行っていた半年に一度、大教会で行われた催しである。

 

…すっごく久し振りなんだけど

…トチらず出来るかなぁ

 

朽木白哉と緋真さんに向かい合って両手を繋いだ状態で座って貰い、それぞれの背中に照明を当てて2人の影が重なり合うように調整して用意は完了。

 

「キャン!」

「…すぅ〜…はぁ〜…始めます」

 

私とマスミが向かい合うように座り、2人の繋いでいる両手に私とマスミの両手(両前足)を乗せて言祝を唱える。

あの【世界】特有の言祝だから多分、何を言っているのか解らないだろう。

古代語の上、言語そのものが違い過ぎてみんな驚いているが、気にしている余裕は全く無い。

 

『イァ…タ…ルゥ…カ…タ…ネォ…ジィ…モァ…ォゥ…ワ…ノュ…カェ…タ…テョ…マャ…カゥ…ッィ…アㇲ!』

 

…何とかトチらず言えた

 

そっと手を離して儀式の終了を伝えた。

 

「…教会にある夫婦の像で行うのが本来の儀式なんですが…マスミの様子からして成功のようです」

「キャフ〜」

 

とても満足気に尻尾を振っている。

私はとても疲れたが、マスミの機嫌が良いからそれで良しとしておこう。

 

…あとはカノン達か

…ロウコは材料揃ってるから、次に伺った時に作り方を教えれば良いけど

…他はどうだろう?

…やる事やったら確認しなきゃなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本当にお帰りになられるのですか?」

「えぇ、そろそろ戻らないと、姫様の夕食に間に合わなくなりますので」

「左様ですか…」

「残念ですが…仕方ありませんね」

「この子達の懐妊祝が揃いましたら改めてお伺いさせていただきますので」

「是非お越し下さい。我々は何時でも歓迎致しますので」

「では、失礼します」

 

 

 

 

 

 

黒腔の中を全力響転で駆け抜けた。

帰宅の予定時間をだいぶ過ぎてしまっているので、取り敢えずそれぞれ直接部屋に戻って服を着替え、休み無しで厨房に直行し、夕食の用意に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

…やっと帰って来れた

…今は兎に角、夕食を作らなきゃ

…だから、お祝いの事は、後で改めてみんなで話し合いましょうね?

…ソワソワしてるカノン達

 






朽木家訪問の話を書こうとしたのですが、招待されたメノリ達は受動的になるので、朽木家の皆様に動いて貰わないとならないのですが…私の貧相な頭の中の朽木一家、誰も全然動かなくて困りました。
朽木家特有の寡黙、或いは口下手な彼等に、大人しい嫁、姉に倣って遠慮しがちな義妹…どんなに考えても、精々皆で改めて感謝を告げる光景くらいしか思い浮かばず、本当に動かないので、動かざるを得ない状況、嫁の妊娠をメノリ側から報せるという荒技を使いました。

時期尚早が過ぎるのですが、あり得ない話では無いなとも思いましたので。
何せ、元々身体が弱い上に体調悪化で寝た切りになってしまい、子どもなんて夢のまた夢と諦めたのに、例のお土産のおかげでずっと望んでいた健康な身体を手に入れ、恐らく医者にも言われただろう、諦めた子どもだって産める可能性が出て来たなら、それを旦那である白哉に自分から相談するくらいはしそうだなぁ…と。
原作でだって、死に逝く自分の最後の願いとして、妹ルキアの事を頼むような女性ですし。
言うべき事はしっかり主張出来る人だと。

ただ、白哉はかなり過保護で奥手だから、そう簡単にはいかなそうではありますが、そこは人生経験豊富な先輩方がたくさん居ますし…
多分、祖父や父親には相談し辛いからと、妻子持ちの時灘や東仙、藍染とかに相談して、
「後悔しないよう、しっかり夫婦で話し合って決めろ」
とか言われて、頑張ったんじゃないかなぁ…と。
妊活にも個人差があるし…うん。

そこまで想像して、今回は漸く書けました。








次回は、志波海燕のお宅訪問を書こうかと。
あの賑やかな兄弟達を何処まで書けるかな…








〈この【世界】の朽木緋真、ルキアについて〉

緋真は原作では既に故人
昔、止むを得ず妹ルキアを手放したが、思い直して探していたところ、朽木白哉と出会う
彼女の事情を聞いて、一緒に探していたら担当区域に出現した虚について調査していた東仙の長男と遭遇
虚に襲われかけた老人と赤ちゃんを保護していると知り、赤ちゃんと会わせて貰ったところ、妹のルキアだった
緋真の事情を聞き、ルキアの世話をしていたシホリ、東仙と歌匡にも相談し、時灘の許可を得て綱彌代の遠縁である上級貴族の養女として姉妹は迎えられた
緋真はそこで最低限の貴族教育を受けてから白哉と結婚し、まだ幼かったルキアも一緒に迎えられた
例え養女でも、綱彌代を後ろ盾に出来る上級貴族の縁者なので姉妹への風当たりは、本人達に聞こえないところでの陰口程度で済んでいる…筈
因みに、ルキアを拾った老人は朽木家の掃除夫として雇われた



〈この【世界】の朽木蒼純について〉

原作では故人だが、本来殉職する筈の任務で組んだ隊員の支援が間に合い、重傷で済んだ
しかし、怪我をした場所のひとつが魄睡だった為、死神を続ける事は不可能となり引退した
緋真と同じくメノリのお土産のおかげで傷付いた魄睡その他の怪我による後遺症はほぼ無くなった
以来、甘い食べ物は苦手だったが、メノリのお土産は食べられる

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