何故かメノリに成り代わりました。   作:如月雪見

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前回、朽木家へ再訪問に行きました。

思わぬ不意打ちを食らったけど、何とかやり過ごしました。



今回、藍染のどうしても克服出来ない弱点が原因で、姫様を怒らせてしまいました。

姫様の機嫌を直す為、協力します。


姫様の可愛いお願い事を叶えます。



姫様の怒りを鎮めましょう。→姫様のお願いを叶えましょう。

 

 

それは、端午の節句の翌日の夜の事だった。

 

「とうさまのばかぁ!!とうさまなんてだいっきらい!!」

 

バターン!!バタバタバタバタ…

 

…姫様があんなに怒るなんて、藍染は何をしたんだろう?

 

報告書の提出とある事を確認する為に、執務室へと赴いたら怒り心頭の姫様が凄い剣幕で走り去るのを目の当たりにした。

取り敢えず、用事を済ませて戻ろうと執務室へと入った。

コンコン、ガチャ

 

「失礼します。報告書を提出に参りました」

「あぁ、ご苦労…はぁ」

「…あの、姫様と何かありましたか?凄く怒っていらっしゃいましたけど」

「…はぁ〜…」

「…ついに恐れていた事態になりましたね、藍染様」

「あぁ…」

「…恐れていた事態?」

 

姫様が暴れたのだろう、散らかった部屋を片付けながら、滅茶苦茶凹んでいる藍染をスルーしきれず、何があったのか聞く事にした。

 

「君もサチと同じ【世界】の生まれなら〈母の日〉は知っているだろう?」

「え?えぇ、まぁ」

「それがこの【世界】にも同じ時期にあってね。みいは今年も手紙と折り紙で作った花束を渡すと凄く張り切って…私も一緒に花作りをしていたら、突然こう言って来たんだ。「かあさまのためにおやつをつくりたい!とうさまもいっしょにつくろう?」とね」

「…それは…えっと」

 

思わず目を泳がせた私に、藍染は苦笑で返してきた。

 

「…君も既に知っているようだね。そう、私は料理が全く出来ない。どんなに努力しても、誰も食べられない物になってしまう…だから、料理やお菓子は作れないと説明したら怒ってしまってね」

「それは…どうしようも無いですね」

「うん…だから困っているんだ。はぁ〜…片付けなら得意なのだが…」

 

こればかりは本当にどうしようも無い。

藍染だって、好きでそうなった訳じゃ無いし。

 

…更に凹んじゃったなぁ

…どうしようかな

…あ、そうだ

 

「…あの、その母の日の事で確認したい事があるのですが」

「ん?…何かあったかな?」

「昨日、端午の節句だからとロクゴウちゃんとナナゴウちゃんを涅様が連れて来ましたよね?その帰り際に、母の日にもロクゴウちゃんを此方に連れて来ると通達があったのですが、藍染様方にも連絡をしてあるのかどうか確認をと思いまして…」

「…あぁ、確かに言っていたな。私が向こうに戻る代わりにと」

「だとしたら、君も大変な1日になりそうだね」

「…そうですね…その日、藍染様はどうされる予定でしょうか?」

「…今年は兄さんも来れると言っていたし、肝心の両親は午後からなら来れると連絡があったから、おやつを一緒に食べないかと誘ったら、快諾してくれたよ。明日、連絡しようと思っていたんだ」

「そうですか…なら当日の昼食後、此方にお邪魔しても宜しいでしょうか?」

「…詳細を聞かせて貰おうか。内容次第で許可しよう」

「みんなでおやつ作りをと思いまして。此方にも台所はあると聞いていますので。作るのは、火も刃物も使わない冷たいお菓子を予定しています。準備は全て此方で済ませて持って来ますので、材料全てをフードプロセッサーで混ぜてカップで冷やすだけの簡単な物ですが。勿論、藍染様には別の役目を果たしていただこうかと」

「…要」

「現在使用制限中の台所の定期メンテナンスは、先日異常無しとの報告を受けています。徹底した清掃、消毒をルドボーンに通達しておきます」

「頼んだよ。さてメノリ、君の要請全てを許可しよう」

「ありがとうございます。では失礼します」

 

バタン…

 

一緒に執務室を出た東仙が、躊躇いがちに口を開いた。

 

「皆でおやつ作りで姫様の機嫌は直るかも知れないが…藍染様は…」

「大丈夫ですよ。おやつを楽しんだ後、一般家庭ならすべき事がある事も知っていただく良い機会になるかと」

「…成程、そういう事か」

「ご理解いただけて何よりです」

 

あからさまにホッとした東仙と、より細かい話し合いをしてから部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

そして母の日当日。

要請通り昼食後、この日の為に用意したエプロンをそれぞれ着けて台所に集合して貰った。

 

「うふふ〜、かわいい〜!」

「良くお似合いですよ、みい様、リリさんも」

「みい様やビアとお揃いなのは良いけど…フリフリはちょっと恥ずかしいなぁ」

「え〜!かわいいよ〜!」

「は〜い、みなさん。今日はフローズンヨーグルトを作りますよ〜」

「「「フローズンヨーグルト!」」」

 

みんなの目の色が変わった。

アイスクリーム、シャーベットに次ぐ姫様とウルキオラの好きな氷菓である。

 

「作り方はとても簡単です。先ずはこのフードプロセッサーにヨーグルト、泡立てた生クリームにそれぞれのテーブルにあるジャム或いは蜂蜜を入れて混ぜた後、このカップに入れて冷凍庫で凍らせて、食べたい味のヨーグルトを選んで貰い、此方のカットフルーツを飾って完成です。では、チームに分かれて作りましょう」

「「「はいっ!」」」

 

早速、作業に取り掛かった。

 

「かあさまはイチゴで、わたしはブドウのにするね!とうさまは…」

「母様がお祖母ちゃん達の分と一緒に作ろうかな?」

「…う〜…ハチミツにしてあげる!」

 

今回は、姫様だけでなくサチさんも、義母に渡すという名目で参加している。

上手く姫様を誘導しながら着々と作業を進めているのは流石だ。

因みにウルキオラ達男性陣は、テスラにお願いして会場のセッティングをして貰っている。

藍染の分は姫様が、スタークの分はリリネットが作るので、他の男性陣の分はロカとビアが用意する手筈になっている。

私はと言うと…

 

「ママ、ママ、ロクねぇ、メリョッピュがいい!」

「メロップ?」

「あい!ろーこといっちょ!」

「メロップね、はいはい」

「きゃー!」

「で、混ぜ混ぜしてカップに入れて…さ、冷凍庫に入れようね」

「あ〜い!」

 

此方に来てからずっと、私にべったりのロクゴウちゃんの相手をしながらの作業となった。

 

…ロカとビアがみんなの手綱をしっかり握ってくれて、凄く助かるわ

 

「エミルーさん、フランチェスカさん、口論するならおやつ抜きで別の部屋に待機して貰いますよ?」

「「うぐっ」」

「ふっ…」

「シィアンさん?」

「んんっ、ハリベル様は何味をお召しになりますの?」

「私はママレードにしようと思う。スンスンはイチゴか…後で少し貰っても良いか?」

「勿論ですわ!」

「カップに注ぎましたら、このアルミパレットに入れて下さい。冷凍庫に入れますので」

 

…うん、本当に頼もしいわ

 

冷凍庫に入れて短時間冷凍モードに設定し、後片付けを終えて会場の方に行ってみると、此方も飾り付けが終わり、道具を片付けているところだった。

 

「もう終わったのか?」

「えぇ、後は冷やすだけだから」

「こっちも今終わったところだ」

「みたいね…さて皆さん、フローズンヨーグルトが出来るまで大体1時間半かかります。そこで、先程のチームで双六でもどうでしょうか?1番のチームにはゼリーが贈呈されますよ〜」

 

瞬間、みんなの目の色が変わった。

やる気が出て何よりである。

会場の飾り付け係だった男性陣は2つのチームに分かれて貰ってからスタートした。

 

かなり白熱している最中に平子一家が来て、観客が増えた事でだいぶ賑やかな双六となった。

物欲センサーが起動したのか、1番になったのはテスラとスターク、日番谷チームだった。

女性陣とウルキオラの恨めしげな表情は中々怖かった。

 

 

 

「惜しかったなぁ、みい」

「ひつがやのおにいちゃん、ぴったりだすんだもん、ずるい!」

「いや、ずるいって言われてもなぁ…」

「は〜い、フローズンヨーグルトがしっかり凍ったので、飾り付けをしましょうか」

「わ〜い!」

「切り替え早っ!」

 

あれだけ怒ったのが気不味いのか、それともまだ怒っているのか、祖父母や叔父とばかり話している姫様に苦笑する藍染の手には、既にサチさんが飾り付けしたフローズンヨーグルトがあった。

そっぽを向かれても凹んでいないのは、味を決めたのは姫様だと伝言済みだかららしい。

 

 

 

全員が飾り付けを終えて、ちょうどおやつの時間になったので、それぞれ好きな席に座って食べる事にした。

 

「ちゅめたい!」

「そうね、急いで食べると頭痛い痛いになっちゃうから、少しゆっくり食べようね〜」

「…あい!」

「ビアは今回、ブルーベリーにしたのね」

「ロカのは蜂蜜ですね…メノ姉様、ロクゴウちゃんもボクのどうぞ。」

「私のもどうぞ」

「あら良いの2人とも?ありがとう…ん、美味しい。私の林檎どうぞ」

「ハチミチュ、ブリューベリー?…ありがちょ、ロクのもあい、あげりゅ!」

「ありがとう、ロクゴウちゃん」

「…うん、林檎のもメロップのも美味しいです」

「むふ〜」

 

私達のようにお互い違う味のを食べ合いっこをしてるのは、ハリベル達と藍染達に、スタークとリリネットだが、ウルキオラがヤミーに強請っているのを見た瞬間は何とも言えない気持ちになってしまった。

 

「ヤミー、ひとくちくれ」

「あぁ?オメェのひとくちマジでデカイからイヤなんだよ」

「む…」

「あー、お代わりがないか、メノリに聞いてみたらどうだ?」

 

…ウルキオラ、毎回思うけど、貴方のひとくちはどう見てもふたくちでも食べ切れないわ

…しかも、同じ量を食べられたら怒るしね

…残念だけどお代わりは無いわ

…キッチリ人数分で作ったからね

 

*今回、ロクゴウちゃんと入れ替わる形で東仙が向こうにいる為、彼は不在。おやつは不要と本人にも確認済み。

 

 

 

おやつを食べ終えた後、誰よりもテキパキと動いて後片付けをしていたのは藍染だった。

あれだけハッキリと明言するだけあって、誰よりも早く綺麗に食器を片付けていく。

これには、流石の姫様も素直に賞賛した。

 

「とうさますご〜い!」

「そうかい?」

「うん!」

「せやろ?惣右介は料理はでけへんけど片付けはごっつ上手いんやで〜」

「…そうなんだ」

「そうよ。母様はね、余りやらないけど料理は好きよ。でもね、片付けはちょっと苦手なの。だから、片付け上手な旦那様にいつも感謝してるのよ」

「…そっか…ねぇ、とうさま」

「ん?何だいみい?」

「だいきらいっていってごめんなさい。こんどのははのひは、とうさまといっしょにおへやのおそうじしてみたい」

「…そうか。それじゃ、来年は母様が吃驚する程ピカピカにしようか」

「うん!」

 

どうやら姫様の怒りも漸く収まり、仲直り出来たようだ。

 

 

 

 

 

 

それから3日後のおやつタイムに、かなり真剣な表情の姫様からお願い事をされた。

5月29日、藍染の誕生日にケーキを作りたいから教えてと。

 

…私に聞いて来るのは解るけど、サチさんはこの事知ってるのかな?

 

サチさんも交えて詳細を聞いた。

先日、みんなでフローズンヨーグルトを作った事でお菓子作りに興味が湧いたらしく、図書館でもお菓子が出てくる本を探すようになった。

しかし、自分の誕生日に作って貰ったケーキはとても難しくて、慣れた人でも失敗する事があるからと説得されて、あのケーキは諦めたが、それよりも簡単に作れるケーキは無いのか聞きに来たらしい。

しかも、藍染の好物の豆腐を使うのと、藍染が尸魂界にいるこの10日間で覚えられるケーキという追加注文も入った。

 

「…豆腐入りのケーキですか」

「うん!」

 

…豆腐入りドーナツがあるなら他にもあると思ってる?

…まぁ、あるにはあるけど

 

「…姫様だけで作るのですか?」

「私も一緒に作るわ。流石にみいを貴女に任せ切りには出来ないもの」

「そうですか…なら、明日まで時間をいただけますか?豆腐を使うお菓子を幾つか作ったのを、試食していただいてその中で作りたいのをお教えしましょう」

「わ〜い!ぜったいだよ!?」

「はい、約束の指切りです」

 

 

 

そして翌日。

約束通り、豆腐入りの蒸しケーキとレアチーズケーキを数種類用意したのを2人に試食して貰った。

 

「…う〜ん…これは抹茶の風味が強くて、豆腐入りとは気付けないでしょうね」

「…このチーズケーキおいしいけど、ほんとうにおとうふはいってるの?」

「あら、これは…」

「おとうふのにおいがすごくするね!」

「そうね、これを教えて貰いましょうか」

「うん!」

 

豆腐の匂い、即ち大豆の香りが1番感じられる絹豆腐と豆乳を使った蒸しケーキに決まった。

 

「では材料です。絹豆腐に豆乳、大豆油、砂糖、黄粉、そして魔法の粉、ホットケーキミックスです」

「まほうのこな?」

「はい、これを使うとケーキとかクッキーといったお菓子を作る時に失敗しにくくなるんですよ」

「そうなの!?すご〜い!」

「ですよね。では作って行きましょう」

「は〜い!」

 

先に砂糖と黄粉、ホットケーキミックスをひとつのボウルに入れて泡立て器でサッと混ぜて真ん中を凹ませておく。

次に、ミキサーで絹豆腐と豆乳、大豆油をしっかりと混ぜ合わせる。

 

「お豆腐の形がなくなるまでしっかり混ぜて下さいね」

「うわぁ〜!おとがすごいね、かあさま!」

「そうね〜」

「途中で1回蓋を開けて容器の周りのをゴムベラでこう…下の方に集めて、もう1回蓋をして混ぜると…はい、均一に滑らかになりました」

「ふぁ〜!」

「では次に、先程のホットケーキミックスのボウルにこのミキサーのを混ぜま〜す」

 

凹みに全部一気に入れて、泡立て器で粉っぽさがなくなるまでしっかり混ぜる。

混ざったら、エンゼル型の耐熱容器(蓋付き)に流し入れて同じ厚みになるようヘラで均してから10数cm上から容器を数回落として空気を抜く。

 

「この作業を忘れると、ケーキの中が穴ぼこだらけになっちゃうので注意して下さいね」

「はい!」

 

後は蓋をして電子レンジに入れてチンするだけ。

今回の分量だと10分前後はかかるだろう。

厨房の業務用レンジと違う家庭用のだから、その当たりは試行錯誤が必須となる。

竹串で火の通り具合を見て、生地がくっついて来たら再びチン。

 

「竹串チェックを怠ると、火が通っていないのを食べる事になって、お腹を壊しちゃいますので、注意して下さいね」

「う、うん」

 

完成したのを型から取り出して試食。

 

「おとうふのにおいがして、あまくておいしい!」

「本当ね〜」

「加熱時間は10分〜12分くらいを目安にすれば大丈夫だと思います。注意事項はこのレシピに書いてありますのでどうぞ」

「今回は本当にありがとう。お豆腐を使ったお菓子は流石に知らなかったから助かったわ」

「お役に立てて何よりです」

 

試食後、後片付けをして今回のケーキのレシピと制作動画のデータを渡して内容を確認して貰い、問題が無いようなのでその日はそのまま解散した。

 

それから毎日、2人は藍染達が戻って来るまで只管練習を繰り返したらしい。

 

 

 

そして誕生日当日、夕食後のサプライズデザートとして出したら、祝われた藍染が滂沱の涙を流して止まらなくなり、目を真っ赤に腫らした状態で、相当な時間をかけて味わっていたと翌日のおやつタイムで聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…予想以上の喜びようね

…まぁ、最愛の娘からの誕生日プレゼントだものね

…食べるのが勿体なくて相当葛藤しただろうな

…あれ?来月って父の日があったよね?

…また豆腐を使ったお菓子とか料理とか教えてとか言われないよね?

…言われませんように!

 





ふと、この【世界】の5月って、何気に忙しいんじゃ無い?と思い立ったのがきっかけです。
端午の節句に母の日、そして藍染の誕生日と絶妙な間隔でイベント目白押しじゃない?と。

母の日と言えば、父と子どもでごはんやおやつを作るCMをTVで見ましたので。
劇物しか作れない藍染の危機と、幸せなひとときを書いてみました。



次回は、志波家の工房の建て直しが終わり、花火見学に行きます。

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