何故かメノリに成り代わりました。   作:如月雪見

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前回、姫様のお願い事を叶えました。



今回、復興した志波工房に見学に来ました。
約束の花火見学、楽しみです。


志波工房見学→サプライズ→打ち上げ花火鑑賞

 

 

志波工房の主が、志波海燕の妹の空鶴に代わって初めての事故から4ヶ月が経った。

志波一家から工房の建て直しが終わり、花火工房として復興したという連絡を受けた。

約束の花火制作の見学は何時でも歓迎する旨が書かれた手紙に招待チケットが同封されていた。

 

…思ったより早くない?

 

最初の見通しだと完全復興まで最低でも半年はかかると聞いていたから、予想よりも早い復興に驚かされた。

 

何でも、歴史ある志波工房の危機を知り、助太刀に来た西区の貴族は勿論、他の区域の貴族達からも有志が集って再建に尽力してくれたおかげで、本来なら半年以上かかるだろう後始末と建て直しがものの2ヶ月程で終了し、既に線香花火や幾つか小玉ではあるが打ち上げ花火の依頼を熟しているという。

 

…多分、志波家の人望だろうなぁ

…そうじゃなきゃ、こんな短期間で復興なんて出来る訳が無いもの

 

藍染と話し合い、見学は1ヶ月後に行く事になった。

しかし…

 

「うちあげはなびいいなぁ〜。わたしもみたいなぁ〜」

「え、えっと…」

「みい、残念だけど」

 

コンコン

 

「…ちょうどいいところに。入ってくれ」

 

ガチャッ

 

「やっぱり此処に居た」

「か、かあさま…」

「駄目でしょう、旦那様の邪魔をしては」

「だ、だってうちあげはなびが…」

「みいは約束していないでしょう?」

「むぅ…」

「それに旦那様がみいの為に既に手配していますよ」

「ほんとうとうさま!?」

「…サチ」

「事実でしょう?それにこうでも言わなければ、メノリさんがいつまで経っても仕事に戻れませんよ?」

「は、はは…」

 

工房見学の決行日について話し合っていたところに、藍染を遊びに誘おうとノック無しで入って来た姫様にしっかり聞かれてしまい、行きたいと私に抱き着いておねだりされて困っていた。

連れ戻しに来たサチさんの機転で何とか場は収まった。

 

…流石母親、扱い方を解ってるわ

 

 

 

そして1ヶ月後、約束通り工房見学に来た。

 

…直接工房に行く手筈だからって、油断したわ

 

此処にも例の派手なトーテムポール(多分、今回は犬がモチーフ)が私達を出迎えた。

両端の骨を咥えさせたマンガ肉に『熱烈大歓迎!!メノリ=マリア御一行様!!(私の顔をデフォルメしたイラスト付き)』と書かれていた。

 

「「「「………」」」」

「ふぐっ!?」ガシィッ!

「「「行くぞ((行きますよ)メノ姉様)」」」ギュッ×2

「…帰りたい」

 

思わず響転で逃げようとしたが、テスラにしっかり首根っこを捕まえられて敢え無く失敗、トドメにロカとビアに両腕をガッチリ組まれた為、観念して工房に入った。

 

 

 

志波一家は勿論、前回訪問した時に会った職人達と、同じく見学に来ていた子供達とも挨拶を交わし、今回のお土産である4種(メロップ、抹茶、黄粉、胡麻)の大量の鈴カステラを渡した。

 

「小さく切れば隼颯君も食べられますのでどうぞ」

「前回と言い、ありがとうな。好きなだけ見て行ってくれ」

「かちゅてりゃ!はーも!」

「はいはい、後でみんなでいただきましょうね〜」

「う〜!かちゅてりゃ〜!メェた〜ん!」

 

つい先程まで寝ていただろう、また寝癖の凄い頭で隼颯君が都さんの腕の中で暴れてる。

流石にこれから入る場所が場所だからと、苦笑いで手を振るだけに留めた。

 

…火薬を扱っている場所に、隼颯君を連れて行く訳には行かないでしょ

…ましてや、ご両親が揃っているなら尚更

…見学の後、出来る限り相手をしてあげよう

 

 

気を取り直して、打ち上げ花火の作り方を順を追って見学させて貰った。

 

 

「約束の花火はこの6号玉で作ったんだ。勿論、既に完成しててそれは最後に見せるから。先ずは基本の割物花火の作業工程を説明するから付いて来てくれ」

「「「「宜しくお願いします」」」」

 

先ずは花火作りに欠かせないし、とても時間のかかる星(火薬玉)の材料を作る部屋に案内された。

 

「先ずはこの部屋で玉の中に入れる火薬玉に使う火薬の調合を行う。可燃剤や酸化剤、花火に色を着ける為の炎色剤とかを色んな割合で混ぜ合わせてふるいにかけてサラサラにしたのを隣の星と割薬を作る部屋に持って行くんだ」

 

慣れた手付きで様々な大きさの天秤で計量しては数字の刻まれた器にドンドン薬剤を移していく者達と、計量された薬剤を乾いた素手で混ぜ合わせて別の容器に移す者達、そして混ぜ合わせた薬剤をふるいにかける者達、それを隣の部屋に持って行く者達の見事な連携に思わず、感嘆の声が出た。

 

「「おぉ…」」

「…凄いです」

「一糸乱れぬ動きですね」

「この作業をしくじると、もう失敗作しか出来ねぇからな。熟練者じゃねぇと任せられねぇんだ」

「成程…」

「んじゃ、次の部屋に案内するぜ」

「「「「はい」」」」

 

 

隣の部屋は花火玉の肝、星と割薬作りをしている職人達の邪魔にならない距離での見学になった。

 

「入って右側が星作り専門で、左側が割薬作りを専門にしているんだ。先に割薬の方を案内するな」

「「「「はい」」」」

 

割薬とは、花火玉を打ち上げた後、中の星が飛び散る為に必要な物で、此処では籾殻に爆発力の高い火薬を塗して作るとの事。

星は花火玉の大半を占める火薬玉で、菜種を芯にして調合した火薬粉を塗しては天日で完全に乾かしてまた塗して乾かすを直径約2cmになるまで繰り返す。

天気や湿度に左右される作業の為、長い時は3ヶ月以上かかる事もあるらしい。

 

「今の時期は乾きが微妙で、ちょっと時間がかかるんだよな〜」

「「「「は、はぁ…」」」」

「因みに彼処にあるのが近々完成する天日干し中の火薬玉だ。乾燥が甘いと上手く爆発しないけど、塗しが甘かったり乾かし過ぎたらヒビ割れする事もあるから、見極めと加減が難しい作業なんだ」

「「「「へぇ…」」」」

「こっちに置いてある大きさの違うヤツは右のが最初に塗したのを乾燥させたので、順番に大きくなって、1番左のが火薬玉として完成したヤツだ」

「「うわぁ…」」

「随分差がありますね」

「最初のなんて豆粒ですよ」

「それがこんなに大きく綺麗な丸玉になるとは…」

「凄いです」

「だろ?さて、次の部屋を案内するぜ」

「「「「はい」」」」

 

渡り廊下を渡ると3つの部屋があり、右側の部屋に案内された。

其処には、様々な番号が書かれた箱に入れてある火薬玉と割薬、多分導火線用の縄、そしてそれを詰める玉が置いてあった。

 

「此処は見ての通り、割物用の玉詰めと玉貼りの部屋だ。先ずは玉の中にさっきの火薬を咲かせたい花火になるようにひとつひとつ丁寧に詰めていって、最後の真ん中に和紙を敷いてから割薬を詰めたのをふたつ作る。んで、片方に導火線を取り付けて、ひとつの玉になるようにピッタリ合わせてバラバラにならないようにしっかり糊付した紙を貼り付けては乾かしを何度も繰り返して、合間に中の空気抜きも兼ねてあぁやって転がしたりしてまん丸な花火玉を作るんだ。この張り合わせる時もちょっとでもズレたら綺麗な花火は打ち上がらねぇ。…で、これらの工程で出来たのが、こっちにある割物花火の玉だ」

「「「「わぁ…(おぉ…)」」」」

「…全工程がとても繊細で、熟達者の真剣さが伝わって来ました」

「…凄いです」

「割物花火で此程の手間がかかるなら、私達にと作っていただいた型物花火はどんな風に作られたのでしょうか?」

「う〜ん、気になるな」

「興味を持って貰えるのは嬉しいぜ。型物は子どもに大人気だからな。今も特注のを作ってる最中なんだ」

 

とても嬉しそうにイキイキした表情で、型物用の部屋に案内してくれた。

此処には、先程と同じ玉に詰める火薬玉と割薬に、縄、そして白いフワフワの…綿の実がたくさん置いてあった。

 

「型物は中を綿の実で埋め尽くして、片方に打ち上げたい形に火薬玉をあぁして動かないように綿にギュッって詰めて、もう片方に導火線と割薬を詰めたのを貼り合わせて後は割物と同じく糊付した紙を貼って乾かしを繰り返して作るんだ」

「…本当に、綿の実?でいっぱいですね」

「火薬玉が随分少なくないですか?」

「型物は空に絵を打ち上げるものだからな。打ち上げる角度を間違えるとただの線にしか見えねぇ場合や、最悪それすら見えねぇ場合もあるからそこも注意が必要な花火なんだよ」

「「「「はぁ…」」」」

「花火って、作る時もですけど、打ち上げる時も凄く繊細なんですね」

「まぁな。何せ、ちょっとでも扱い方を間違えるとこの間みたいな大惨事を引き起こせるシロモノだからな」

 

そう、あっけらかんと言い放つ空鶴を見て、完全に吹っ切れたのだと理解した。

 

その後、休憩所で何故か浴衣(テスラは甚兵衛)に着せ替えられ、空鶴に

「どうしても招待したい所があって。後は兄貴と義姉さんに頼んであるから」

と言われた。

「花火を見るのに何故こんな格好を?」

と疑問符だらけの3人に対して、先程は気付かなかったある張り紙を指差した。

「多分、あれじゃないかな?」

「…流魂街西区花火祭り?」

「やべ、外すの忘れてた」

「岩鷲ぅ…」

「ゴメンって!」

「お祭りかぁ…懐かしいなぁ」

「祭りって何をする所なんですか?メノ姉様」

「ん〜とね…あ〜…百聞は一見にしかず。行けば解るわ。ですよね?」

「おぅよ!」

「「「えぇ…」」」

困惑する3人に構わず、目的地へと案内して貰った。

 

…こういうのはヘタな印象与えるよりも、直に感じて貰った方が良い筈だもの

 

 

 

目的地である流魂街西区のお祭り会場に到着した。

このお祭りの為の特設ステージでは、張り紙に描いてあった雅楽隊が演奏中で、観客席の人達が心地良さそうに耳を傾けている。

 

「…聞いた事の無い音ですね」

「まぁ、こういった娯楽?とも俺達は無縁だからな…」

「でも、偶には悪くないでしょ?」

「…メノ姉様が時々口ずさんでいるのとは違いますが…こういう音楽もあるのですね」

「まぁね」

「さ、出店で先ずは腹拵えだ」

「「「出店?」」」

「周りにあるお店の事よ。露店とも言って、こういったイベントの時に一時的にお店を出すの」

「「「へぇ…」」」

「あ、人形焼きがありますね。甘酒も」

「…七味焼きか…」

「あの白いフワフワは何ですか?」

「あれは綿飴。あの機械の真ん中の高速回転している筒にザラメを入れたら、側面から溶けたザラメが白い糸状になって出てくるから、それを割り箸で絡め取って作るの」

「ふぁ〜…あれも飴なんですね」

「はいよ」

「「「え?」」」

「私達、此方のお金はありませんよ?」

「俺の奢りだ。遠慮なく食ってくれ」

「え、いやそれは悪いですよ」

「今まで色々とお世話になっていますから。私達の感謝の気持ちです。受け取っていただけたら嬉しいです。ね?隼颯」

「あい!」

「…そういう事なら…ありがとうございます」

「おぅ!」

 

3人が反応した人形焼きに甘酒、綿飴、七味焼きそれにかき氷(みぞれ)をいただいた。

 

…帰ったら、ザエルアポロにわたあめ機とかき氷機作らせようかな

…茹で小豆とか宇治金時で釣れそうだし

 

食べた後、的当てで巨大市松人形を手に入れてしまい、テスラに背負って貰ったり、金魚掬いの店でビアが

「凄く小さいですね…目刺しよりも食べがいがなさそうです」

と言い出し、顔を引き攣らせた店主へと金魚達が一気に移動したので慌ててこの金魚は鑑賞するもので、食用ではない事を説明して、店主に頭を下げたりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が十分暮れた頃、1番綺麗に見える場所に案内して貰い、設置されているベンチに座った。

 

「いよいよですね、メノ姉様」

「そうね」

「凄い音と共に夜空に色々な絵が浮かぶらしいですが…」

「それこそ百聞は一見にしかずなんだろう?」

「えぇ!夜空に咲くたくさんの花は凄い迫力があって、とても綺麗なんだから!」

 

ドオオォォォォン!!!

 

「「「っ!?」」」

「始まったわね」

 

ドドオオオォォォォン!!!

 

定番の菊(変化菊)や牡丹に始まり千輪が夜空を彩った後、私達との約束の型物花火が打ち上がった。

 

「猫に犬に熊…」

「蛇、狐、鳥、蜘蛛…」

「カノン達をモデルにしたのね…って!」

「門で見た旗のメノリさん…?」

「何てモノを打ち上げてくれてるのよ!?」

「お、落ち着けメノリ!」

「ボク達のも上がってますから!ほら!」

「…肖像権で訴えたい〜」

 

かなり簡略化されていて、尚且つデフォルメもされてるから無理だろうけど、叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…恐るべし、志波空鶴

…そしてそれを笑って流す志波一家

…他の五大貴族とは違う意味で油断ならない一族なのね

…取り敢えず、お礼は言うけど

…この手の約束の時はしっかり事前に報連相するようお願いしないとね

 






今回の工房見学ですが、花火に関する知識は皆無なので、只管検索して共通している部分を抜き出して、説明役の空鶴の口調を思い出しながら書くのはとても大変でした。
それっぽく書くのはやっぱり難しいです。

そして、人情溢れる志波一家が、打ち上げ花火を見せるだけで満足するかなぁ…?と思い、打ち上げ花火とお祭りはセットのイメージが作者にはありまして、尸魂界のお祭り(出店)に招待して、メインの打ち上げ花火を見せる風景が浮かび、みんなで浴衣や甚兵衛着て彼等の案内を受けながらメノリ〈南奈〉にとって久し振りの、ロカ達にとっては初めてのお祭りを楽しむ姿を書く事にしました。




次回は、姫様の誕生日会の準備に忙しいのに、涅マユリによって12番隊に強制連行される話でも書こうかと。
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