前回、12番隊に招待された事がバレました。
1番隊で感謝状をいただきました。
山本元柳斎重國と雀部長次郎とお話をしました。
暫くは虚夜宮でゆっくりしたいです。
今回、4番隊から招待状が来ました。
取り敢えず、行ってきます。
1番隊から戻って来て1ヶ月が過ぎた頃、此方のカレーの日に合わせて4番隊を訪ねに行かせて貰えるようにお願いした。
向こうからも願ってもないと快諾してくれた。
…これで向こうの台所の様子とかが見れる
…未だにカレーを送るこの状況をそろそろどうにかしたいからね
料理初心者しかいなかった虚夜宮とは違って、経験者で構成された炊事班とかがあるのに、レシピと動画を送ってかなり時間が経ったのに誰も作れないのは流石におかしいと思う。
「…今回の訪問で、解決出来れば良いんだけど」
「それは行って見なければ解りませんからね」
「…案外、メノ姉様のカレーじゃないと嫌とか、我儘を言ってる方がいたりして」
「…あぁ、有り得る話だな。何せ、姫様の誕生日会の時に死神と話をしたドルドーニ達から聞いたんだが、向こうでも洋食のメニューが少しだけ出て来るようになったが、此方の味には敵わないと言っていたらしいぞ」
「あー…まぁ、取り敢えずカレーをどうにかしたいなぁ」
今回は、カレーが作れて社交性の高いドルドーニとガンテンバインに同伴して貰う事になった。
…私だけなら兎も角、ロカ達も抜きでカレーは流石に大変だろうし
…トッピングにはロカとビア、辛味調整用のスパイスにはテスラは欠かせないからね
そして4番隊の台所見学の日。
「ようこそいらっしゃいました。本日は宜しくお願い致します」
「「「こんにちは。宜しくお願いします(致しますぞ!)(頼む)」」」
台所に直接入ると担当者達の実力が解らなくなるので、モニター越しに見せて貰う事にした。
モニターの機材が全て入る託児所で。
「もじゃもじゃー!」
「おひげジョリジョリだー!」
「おでこのこれなーに?へんなのー!」
「うぉっ!?ちょっ、待て!うぉあっ!?」
「すご〜い!ちからもちだー!」
「ちょちょちょ、待て!ぶら下がるならせめて二の腕!しがみつくなら背中にしてくれ!これは流石にキツイ!」
「いてててて!髭を摘むのは止め給え!おでこのは取れないから引っ張らないでくれ給え坊や達!いたたたた!」
…ごめん、2人とも
…無事に帰ったら、2人の好きなチョコケーキとフルーツタルト作るから
人見知りをしない、怖い物知らずな元気いっぱいの子供達にもみくちゃにされているドルドーニとガンテンバインに内心謝りつつ、食育の一環として、みんなが食べているご飯はどんな風に作られているのかを、実際に見てみようという名目でリアルタイムで台所の様子を見始めた。
「きょうはカレーのひだよね?ママ」
「まんまぁ〜」
「そうね〜」
「あー!にんじんがたまねぎとおなじどろどろになっておなべにはいってるー!」
「ほんとだー!」
「うぇ〜、これじゃにんじんよけてもたべちゃってるじゃんかー!」
「「にんじんきら〜い!」」
「あらら…でも、あのカレーには玉ねぎと同じあの形の人参が入らないと美味しく出来ないんだよ?」
「「「「え〜!?」」」」
「「「うそだー!」」」
「ねぇねぇ、あのしろときみどりいろのながいのなぁに?」
「あれはセロリっていうお野菜で、独特の匂いがするの」
「いろんなはっぱといっしょにふくろにいれてるよ?」
「あのはっぱなぁにー?」
「あれはブーケガルニ…えっと、ハーブって言う色々な香りのする葉っぱでね、それぞれにローリエ、タイム、エストラゴンって名前があるの。あれを入れて煮込むと良い匂いがするのよ」
「あ!おにくだー!」
「「「おにくおにくー!」」」
「みんなお肉好き?」
「「「「「うん!!」」」」」
「「おさかなよりすきー!」」
「…あー!つち!カレーにつちいれてるよ!」
「えー?すなでしょ〜?」
「土でも砂でも無いよ。あれは香辛料…スパイスとも言って、カレーを作るのに絶対欠かせない大切な材料だよ。あれを入れなかったら、ただのお肉入りの汁物になっちゃうよ」
「「「えー!?」」」
「あ、ほんとだー!おにくとおやさいがカレーのいろになってるー!」
「あ!ヨーグルトだー!」
「あれ〜?でもカレーって、すっぱくないよ?」
「煮込むと、ヨーグルトの酸味…酸っぱさは殆ど解らなくなるのよ」
「ふ〜ん?」
「カレーって、りんごとあかなすもはいってるんだね!」
「そうよ〜」
「あれ?さっきのはっぱがはいってるふくろだしちゃったよ?なんで?」
「あれはね、香付けって言ってお肉やお野菜から出る独特の匂いをあの葉っぱ達が消して、良い匂いに変えちゃうの。その役目が終わったから取り出したのよ。いつも食べてるカレーにあの袋は入っていないでしょう?」
「「「うん」」」
「「「そっかぁ!」」」
「あのはっぱ、どんなにおいがするの〜?」
「あー…此処にあのハーブがあれば、どんな匂いなのか解るんだけどね、流石に無いから…」
「ぶ〜!」
「ごめんね」
…これだけの人数の質問責めは流石にキツイなぁ
…赤茄子って、トマトの別名だっけ?
…ヨーグルトは知ってる子もいるのね
私は私で、モニターの機材を用意した涅マユリによって連れて来られたロクゴウちゃんが左隣に、ナナゴウちゃんは膝に座っている。
その周りは比較的大人しそうな子達で埋まっていて、ほぼ身動き出来ない状態である。
そして調理が始まった途端、子供特有の『あれなぁに?』や『なんで?どうして?』が始まり、質問責めへの対応に四苦八苦する羽目になった。
そうこうしている間に、カレーは完成した。
…此方から渡しているのと全く同じのが出来たわね
…作ってる間も何処にもおかしなところは無かったし
…じゃあ何で此方からのカレー供給は続いているの?
子ども達が迎えに来た親と夕食を食べている間に、卯ノ花さんに尋ねてみた。
「…実は…」
「…え?此処に…サチ様と同じ完視術者が?」
「はい…」
卯ノ花さん曰く、私のカレーが此方に届くようになって3ヶ月後には、炊事班のみんながカレーを習得した。
そこで本来ならば、約束通り提供を終了する手続きをする予定だった。
しかし、ある伝手から此処、尸魂界に十数名の完視術者が来て、霊王の欠片を除去する施術を受けた者達のリハビリをしている最中との事。
その伝手とは銀城空吾と言う少年で、去年とある経緯から死神代行という役目を与えられた。
彼は既に、自分と同じ境遇の人達とでコミュニティを作っていた。
それを知った綱彌代一族が話を持ちかけ、条件を満たす者に施術をしては日常に戻れるようにと、全面的にバックアップをしていると言う。
…あぁ、そうか。
…この【世界】では霊王の欠片の回収だけでなく、元所持者を生かす方法が開発されててもおかしくないか
…あの愛妻家が妻の同胞に無体を赦す訳が無いもの
「…えっと、その方々と私のカレーにどんな関係が?」
「それが…」
とある父娘の為と言うのが主な理由らしい。
その父娘は揃って完視術者という非常に珍しいケースだった。
娘は最低年齢ギリギリだが何とか施術が可能で、無事欠片を除去出来た。
しかし、事前調査で父親が施術出来ない体質である事が判明した。
このままでは、当たり前の生活を送れる娘の足枷になると思い込んだ父親は、自殺未遂をして意識不明の状態になってしまった。
父親がそうなった原因を幼いながらに理解した彼女は、そのショックから拒食症を発症、点滴も嫌がるようになった。
そんな彼女が唯一興味を示し、食べたのがあのカレーだという。
父親が自分の為に辛くないカレーを作ってくれて、それに似ていると。
その後、父親も無事目を覚まし、今では一緒に食べているとの事。
因みに中辛、激辛は他の完視術者達が食べているらしい。
「まさか、此処でカレーが食べられるとは」
そう言っておかわりする者もいるとか。
「え…現世在住の方々が、虚圏経由の食べ物を口にしても大丈夫なんですか?」
「ふふ…器子の物質を霊子の物質へと変換する技術があるのです。ならばその逆の変換を行う技術があってもおかしくないでしょう?」
「あ、そうなんですか」
どうやら、ヨモツヘグイとかの心配は無いらしい。
「…そういう事なら…少なくとも、完視術者の方々が帰られるまでは此方にお送りした方が良いでしょうね。ただ…一言知らせていただきたかったですが」
「…完視術者の事を伝える許可が中々降りなかったもので…本当にすみませんでした」
「いえ…」
…あの四十六室とか面倒な上層部が居たら、言いたくても言えない事とかたくさんあっても不思議じゃないだろうし
「それにしても、メノリさんの料理は本当に凄いですね。器子化してもその能力は健在なのですから」
「あ、そうなんですか?此方では器子化、霊子化は極一部の人しか出来ないですし、私は霊子化したのしか使った事が無いので…」
「えぇ、何せ先程お話した父娘が貴女のカレーを食べ続けた結果、娘さんはもう何時でも現世に戻れますし、父親の体質も改善されて、施術も可能になったのですから」
「…え?」
…自殺未遂したんだよね?
…どんな状態だったのか知らないけど、そこから完治して体質改善までの期間が短くない?
困惑する私に喜々としてその父娘や他の完視術者達の様子を語る卯ノ花さんに相槌を打つのがやっとだった。
カレーの供給を続ける事を正式な契約として必要な書類を作成し、私、卯ノ花さん、完視術者関連の総責任者である綱彌代時灘がサインをして、総隊長である山本元柳斎重國と雀部長次郎が証人となった。
「…確かに。ではまた半月後にお送りしますね」
「宜しくお願い致します。それと…」
これで帰れると思った私に、卯ノ花さんは思わぬ物を見せて来た。
「これ、何だか解りますか?」
「え…ビーツ…だと思いますけど」
「ご存知なのですね!?」
…何で此処にこれがあるの?
どうやら、現世に駐留していたとある隊士が、帰還前に通りすがったお店で赤カブと勘違いして購入したらしい。
しかも大量に。
「取り敢えず切ってみたら、包丁もまな板も私の手も真っ赤になって、中々色が取れなくて…どうすれば良いのか解らなくて困っていたのです」
…ビーツを使った定番の料理と言えば
「…一度レシピと調理動画を取りに戻って良いですか?」
「あるのですか!?」
「はい。あ、此方に圧力鍋2つとキャベツにカレーの材料は残っていますか?」
「圧力鍋と野菜ならありますよ。鶏肉はもう無いですが、豚肉ならあったと思います」
「なら作れますね。取りに行って来ます」
虚夜宮に戻り、みんなに経緯を説明したら此方でも既にカレー作りは終わっているからと、ドルドーニとガンテンバインに代わってロカ達が来てくれた。
「では、ビーツを使った定番料理、ボルシチを作ります」
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」
「先ずはビーツから始めます。汚れをしっかり洗い流して、圧力鍋に入れて、ひたひたになるよう水を入れて少量のお酢も加えて蓋をして強火で加熱、高圧になったら火を止めてそのまま圧が抜けるまで置いておきます。抜けたら蓋を取って冷水の中で皮を剥いてひと口大に切って置きます。私は色移りを避ける為に、まな板に新聞紙とクッキングペーパーを敷いてゴム手袋をして切るようにしていますね。他にもアルミホイルに包んでオーブンで焼く方法もありますが、アルミホイルが無いので茹でる方法でいきました。此方の動画にビーツの下拵えや他のレシピもあるので、興味のある方は視聴してみて下さい」
「「「「成程…」」」」
「「あれって、あぁやるんだ…」」
「「動画、後で見せて貰おう」」
「では続けます。豚肉は食べやすい大きさに切って、塩胡椒をして揉み込んでから、別の圧力鍋にバターを溶かしてすりおろしたニンニクと一緒に炒めて…全体的に焼き色が付いたら水を入れて、ローリエとセロリ、パセリのブーケガルニ(袋入り)も入れて蓋をして加熱、加圧します」
「「「「ふむふむ」」」」
「加圧している間に、人参とジャガイモの皮を剥いてひと口大の乱切り、玉ねぎは大きめの櫛形切り、キャベツはひと口大よりも少し大きめのざく切り、湯剥きトマトもざく切りにして下さい」
「「「「「はい!」」」」」
「豚肉の加圧が終わりましたので、蓋を取って灰汁とブーケガルニを取って、野菜とビーツを入れて蓋をして再び加熱、加圧します」
「あの、圧力鍋が無い場合はどうすれば良いんですか?」
「圧力鍋が無い場合も動画にありますが…先ず、ビーツはしっかり被るくらいの水で茹でます。大きさにもよりますが沸騰したら弱火で30分くらいを目安に茹でて下さい。冷水の中で皮がスルッと剥けたら火が通った証拠です。後は先程と同じく食べたい大きさに切って使用して下さい。お肉は塊だと1時間以上水を足しながら煮込む事になります。牛の脛肉や尻尾になると、最低でも3時間以上煮ないと柔らかくなりません。なので、時間短縮の為に薄切りや切り落としを使うのもひとつの手ですよ」
「「「うわぁ…」」」
「「「えぇぇ…」」」
「つまり、煮物を作るよりも大変なんだ…」
「作るなら、切り落としでやろう」
「…あ、そろそろ時間ですね。蓋を取って野菜に火が通っているか竹串で調べて、味見…うん、野菜と肉、トマトの旨味が出ていますね。後は塩胡椒に少量のお醤油を入れて味を整えて完成です」
「「「うわぁ〜!」」」
「「「「凄い赤い汁物になるんですね」」」」
「旨っ!」
「あ!手が早いですよ!先ずは隊長からでしょう!?」
「あらあら」
完成したボルシチに歓声を上げる隊士達からそっと離れようと後ろを向いてギョッとした。
「ひっ…!?」
「メノ姉様?…きゃあっ!?」
「「2人とも?…っ!?」」
ボルシチの匂いに釣られたのだろう他の隊の隊士達が、涎を垂らして窓に張り付いていた。
かなりの人数が居れば流石に怖い。
「あらあら…もう夕餉の時間は終了していますよ。朝餉は7時からです。お引取りを」
「え、いやでも」
「お引取りを」
「ちょ、ちょっとくらい」
「 お 引 取 り を 」
その後、卯ノ花さんによる説得という名の笑顔の圧力に負けた隊士達はトボトボと帰って行った。
…結局、台所見学だけでは済まなかったなぁ
…でもまさか、ビーツを尸魂界で見る事になるとはなぁ
…現世が今どうなってるのか、見に行った方が良いかも
…そして、やっぱり卯ノ花さんのあの笑顔は怖い。
…今夜、夢に出て来ませんように
今回、4番隊の台所見学をした結果、カレーの定期供給は続ける事になりました。
次回は、2度目の誕生日休暇は休暇じゃなくなった話でも書けたらなぁ…と。
〈完視術者の父娘〉
道羽根アウラとその父親。
このカレーがきっかけで、現世に戻ってからは父娘でカレー専門店を開く為に二人三脚で頑張り、20年後、念願の店を持った。
〈この【世界】の完視術者について〉
小説では、一族の手の者によって利用された挙句、始末された上で霊王の欠片を奪われたが、此処では発見され次第、保護されたり、寿命が来るまで陰から一族の守護担当が守り、寿命を迎え次第欠片を回収する担当と魂を尸魂界に連れて行く担当がいたが、生きたまま安全に除去する施術を開発してからは、欠片持ち本人に交渉して施術、日常に戻れるまで世話をしている。
なので、死神代行となった銀城空吾はその役目もあって施術出来ないが、同胞達が無事日常に戻って行く姿を見て安堵している。
なので、死神達との確執とかは一切無い。
寧ろ、感謝の色が強く、少しでも恩返しをしたくて与えられた役目を日々こなしている。
〈ビーツ〉
いや、本当に何で出て来た…?
本当に謎。
折角書いたのを消すのも勿体ないのでそのまま投稿しました。