前回、ザエルアポロによって、ビアの防御力が上がりました。
約束していたロカと現世に行きました。
思わぬ人物とロカが既に知り合いになっていました。
今回、もうひとつの約束、ビアと遊びます。
ロカと現世に行った2日後、ビアのリクエスト〈一緒に遊びたい〉もとい、〈私が子どもの頃にやっていた遊びを一緒にしたい〉を叶える日が来た。
この日の為にこの1ヶ月、少しずつ用意をして来た。
ビアに頼む訳にはいかないから、マスミの〈影移動〉を利用して、必要な道具をザエルアポロに作って貰う形を取ったので、本当に時間がかかった。
朝食をしっかり食べてちょっと休憩したところで、先ずはこの場で出来るカードゲームをする事にした。
「…メノ姉様のケーキやクッキー、アイスの写真をカードにした物ですか?」
「そうそう。シン君とリンちゃんのお誕生日会でやったゲーム覚えてる?」
「お花合わせの事ですか?はい、勿論です」
「うんうん、それの喫茶店〈墨華〉のメニューバージョンがこのカードなの。物心ついた時にはあのお店にあった物でね。日替わりとか季節限定のも含めたメニューが豊富なのも売りだったから、お店の手伝いをするようになった時に覚えるのに凄く役に立ったのよね」
「メノ姉様の思い出がいっぱいある遊びなんですね」
「えぇ。じゃあ今回はカルタにしようか。交互に山のカードをめくって、その相方をより早く取った方の勝ち。さぁ広げて広げて~」
「はい!」
「じゃあ、行くわよ~」
「勝負です!」
1試合目終了、結果は何とか面子は保てた。
しかし…
「…ビアに小豆を使うお菓子、全部取られたわ…」
「身体が勝手に動きました!相変わらずどれも美味しそうです…ジュルッ…おっと、ボクとしたことが…」
「あはは…今のは定番メニューのみだったけど、今度はソフトドリンクのみのをやってみる?」
「はい!次こそ勝ちます!」
ソフトドリンクに季節限定、軽食メニューと4連戦した結果、1番品数の少ない軽食メニューは完膚無きまでに惨敗した。
「…やっぱり強いわビア」
「やっと勝てました…ところで、こっちの箱は何ですか?」
「こっちのもお店にあった玩具よ」
箱の中には大中小のパンケーキとオールドファッションとポン・デ・リング、そして餡ころ餅の食品サンプルと1~3の数字が書かれたサイコロと、各面に食品サンプルの名前が書いてある少し大きめのサイコロ、そしてお皿が入っていた。
「遊び方はね、先ずはこの大きめのサイコロを振って出た目に書かれているメニュー…これには大のパンケーキね。次に数字が書かれたサイコロを振って…2が出たから大のパンケーキを2枚こうやって重ねてこのお皿に乗せてターンは終了。次の人にサイコロを渡すの」
「…2つのサイコロを振って、出た目に従ってこのお皿にパンケーキやドーナツ、或いは餡ころ餅を重ねていく遊びですか?」
「そうよ。先に乗せられなくなったり、崩しちゃった方が負けってゲーム」
「成程…ではこのまま続けてやりましょう。良いですよね?」
「構わないわ」
サイコロの目に左右されがちなゲームだが、積み方次第でも勝敗が変わるから、そういった駆け引きもこのゲームの楽しみの1つである。
「…むむむ…そっちの方に偏って来ているから…こっちにお…け…ば…あぁ!」
グラッ…バタァーン!コロコロコロ…パタッ
「うぐぅ…餡ころ餅がぁ…せめてオールドファッションかポン・デ・リングなら耐えられたのにぃ…」
「上下逆さまに置くのは禁止だからねこのゲーム。餡ころ餅が出た時点で一気に難しくなるのよね」
「もう1回です!今度は勝ちます!」
「ふふっ、次も負けないわよ~」
この後、何度も餡ころ餅に振り回されて負けまくったビアだった。
ふと餡ころ餅を片手に唸ったかと思えば、此方に真剣な表情を向けて一言呟いた。
「…餡ころ餅で禊ぎをしたいです」
…そこまで?てか、どうやって?
「うん、ちょっと落ち着こうか、ビア」
「そうだぞ、もう直ぐ昼食の時間になるから、テーブルの上を片付けて貰わないと」
「え?…あら、もうこんな時間になってたの?」
「…気付きませんでした」
テスラに声を掛けられた通り、正午近くになっていたので、一旦テーブルを片付けて昼食を食べた。
その際、私達のゲームを見学していた人達の中にも、興味を持った数名からやってみたいと申し出があったので、追加でカードと食品サンプル、サイコロを用意するようにザエルアポロに連絡をした。
午後からはビアが以前「やってみたい」と言っていたリリアとリリエによる大縄跳びをしに、カノンとマスミが見付けたという打って付けの場所に向かった。
「…この辺かな?」
「ナァ~オ!」
「キャンッ!」
リリアとリリエが体長を伸ばし易くする為に、頭を掴んでユラユラ揺らしてあげているうちに縦一列に並ぶようにカノン達に指示を出した。
勿論安全性を考えて、此処へ来る前に脱皮を済ませてから来ているので、猛毒への心配は一切ない。
「えっと…ボクは何処に居たらみんな跳びやすいでしょうか?」
「ナァーオ」
「ギャッ!」
「クォクォッ!」
「身長を考えると…真ん中に立って貰った方が助かるわ」
「そうですか?では失礼します」
「一応確認だけど、縄跳びは知っているわよね?」
「はい、姫様とリリさんとでやった事があります」
「なら大丈夫ね。じゃあいくわよ」
「はい!」
「クォッ!」
「ナァ~オ」
「キャンッ!」
「ギャッ」
「キチキチッ」
「クァッ」
アンオウエンはひと鳴きして私の頭上に避難した。
「…アンオウエンは今回は跳ぶ気無しね」
「クァッ」
「まぁ良いわ。改めていくわよ…せーの!」
自分で回す縄跳びとは違うから、最初はかなり緊張した表情をしていたビアだが、跳ぶタイミングを掴めてからは余裕を持って跳ぶようになった。
そこでふと思い付いた動作が出来るか聞いてみた。
「ねぇビア、その場で跳びながら方向転換出来そう?」
「え?方向転換?どうやって?」
「えっとね、跳びながら右或いは左へ身体を向けていって、後ろのニエ達と向かい合うって出来そう?」
「…やってみます」
ビアは少し思案顔になり、器用に跳びながら右向け右を繰り返して、後ろでリリエの頭を前足に巻いて回しているロウコの方に向いた。
しかし…
「出来ました!…ってあれ?ニエ?何処に…?」
「お~!って、こらニエ!ビアの背中で楽しないの!降りなさい!」
「え?あれ?いつの間に?」
「キチキチキ~」
ビアの後ろで跳んでいたニエは、掴まりやすいように小さくなってビアの背中で休憩をとっていた。
ニエのやる気は既に無いらしく、仕方なく一旦休憩を取る事にした。
「ビア、結構跳んだけど足大丈夫?」
「ん~…まだ平気です。ボクよりもリリアとリリエの方が大丈夫ですか?」
「「シュファ~…」」
「あ~、眠くなって来ちゃったか~」
「この時間って、メノ姉様の首に巻き付いて寝ている事が多いですものね」
リリアとリリエは通常の長さに戻り、目をショボショボさせながら慣れた動作で私の腕を登り、首へと巻き付いた。
「「フシュゥ…フピ~フピ~フ~…」」
「大縄跳びはお終いですね」
「そうね…ゆっくり戻ればおやつの時間になるから、のんびり帰りましょうか」
「はい!」
今日のおやつは粒あんホイップのオムレットだった。
「…はぁ~、あんバターも良いですが、あんホイップも美味しいですぅ~」
「そうね、生地のフワフワ感に小豆の食感がしっかり残るよう粗潰しにして、でもってホイップの甘さを消さないように少し塩気を効かせて…美味しいわ。…また腕を上げたわね」
「「「お褒めの言葉、ありがとうございます!」」」
「「より一層励みます!」」
「うん、期待してるわね」
…相変わらず、大げさだなぁ
おやつを食べた後、あくまで娯楽目的で造られた運動場の一角で、バドミントンをする予定だったのだが…。
「…え?使用禁止?」
「な、何でですか!?」
「つい先程、どっかのマヌケがまた手を滑らせてテニスラケットを天井のスプリンクラーにぶっ刺して壊した所為で、運動場が水浸しになってね…少なくとも今日はもう使えないってさ…ったく、おかげでおやつの時間に遅れそうになったわよ」
「そうね…もう何度目か解らないくらい設備を壊すんだもの…流石にもう彼を出禁にすべきだと思うわ」
「「全くだ(でヤンス)!」」
どうやらその場にいたらしいチルッチとネリエル達が苛立たしげにおやつを頬張りながら教えてくれた。
…運動場が使えなくなった以上、此処で出来る遊びを考えなきゃ
…折角、バドミントンの道具一式作ったのに
…あ、そうだ
「この食堂の隅で出来るバドミントンやろっか」
「「「え?」」」
おやつを食べ終えて、椅子と道具一式を持って食堂の隅っこへ移動。
お互いのラケットが限界まで手を伸ばしてもぶつからない程度の距離を取って、そこに椅子を置いてそれぞれ座って準備はOK。
「椅子に座ったままバドミントンをやりましょう。ルールは簡単。打ち返せなかったり、椅子から立ち上がったら負け。どう?」
「…要は座ってやる羽根つきのようなものですね」
「そうそう。じゃ、行くわよ~」
ポンッ
「はいっ!」
パシッ
「ほっ」
ポンッ
「何の!」
ペシッ
「は~い」
ポンッ
「えいっ!」
パシッ
「よっと」
ポンッ
「くっ」
バシッ
「はいっ」
ポ~ン
「え、高っ…眩しっ!?」
スカッ…ポトッ
「はい勝ち~」
「…っメノ姉様、ズルいです!照明を利用するなんて!」
「勝負の世界は厳しいのよ~」
「う~…もう1回!あそこまで高く打ち上げるの禁止で!今度はボクから行きます!」
「はいはい」
再開したバドミントンだが、それまで大人しかったカノンが打ち合うシャトルに反応した末に空中に跳び上がって強奪、そのまま逃走を開始した。
バシッ…ポトッ
「ナゥッ(ハグッ)」
スタタタタタ…
「「…え?」」
それを取り返す為の鬼ごっこに急遽変更となった。
「ちょ、待ちなさい、カノン!」
「シャトル返して下さ~い!」
シュタタタタ…
バタバタバタ…
「ちょっと、マスミ達も見てないで手伝ってよ!」
「ワンワン!」
「クォッ」
「クァックァッ!」
「ギャッ」
「キチキチッ」
「頑張れ~!じゃなくて!…もう!」
シュタッ、シュタッ、シュタタタタ…
「そこ登っちゃダメだってば!」
「降りて来て下さ~い!」
ヒョイッ
「このっ!」
シュタッ
「わっとぉ!?」
ピョイッ
「いい加減にぃ…!」
ガシッ!
「捕まえた!」
「ナァ~オ!」
「…ってシャトルは?」
「え?あれ?何処に落としたのよ?」
「ナゥ~?」
テーブルの上を爆走したかと思えば、食堂の掃除をしていた清掃担当者達の背中や頭を経由して、照明の上に乗ったり、壁を器用に駆け下りて今度はテーブルの下に逃げ込んだり…。
漸くカノンを捕まえたと思いきや、今度はいつの間にか落としたシャトルを探しに、食堂の至る所を見て回る羽目になった。
「あ、ありました!」
「ナイス!ビア」
「お疲れ様、2人とも」
「夕食の時間だぞ」
「「え?…あれ?」」
ビアのリクエスト〈2人で遊ぶ〉は、カノンに振り回された形で終わった。
…何か、凄く疲れたのに、不完全燃焼感が半端ないんだけど
…ビアも?
…じゃあ、都合の付いた時にまた遊びましょうか
…今回のとは違う遊びだって、まだたくさんあるんだから
…うん、〈約束〉ね
いざ書こうとしたら、メノリとビアが遊ぶ光景が中々思い浮かばず、苦戦しました…。
何せ、ビアの生まれた理由がザエルアポロ専用のあんこ運搬係なので、子どもらしい遊びを知っている訳が無くて…。
メノリの傍に居る事になって、彼女の役に立つ事にしか興味が無かったビアが、姫様とリリネットの遊びに参加するようになって、更には死神の子ども達とも交流する回数を重ねて行くうちに、漸く遊ぶ事に興味を持てるようになったところかと。
メノリはメノリで、自身の子ども時代なんて遙か彼方の記憶を頑張って掘り返して思い出すのに、だいぶ苦労したんじゃないかと。
しかも7回も転生を繰り返しているからその【世界】ごとの子ども時代を思い出すのは至難の業でしょうし。
取り敢えず、1番記憶がしっかりしている〈南奈〉の子ども時代にしていた遊びをメインに、肉体年齢10歳前後の女の子相手でも無理の無いだろう遊びをさせてみました。
次回は、所用で尸魂界に行って来ます。