前回、ビアと1日遊びました。
今回、シオンの果樹園で育てていたある果物達を皆様に振る舞います。
ビアと遊んだ翌日、藍染の許可を得て造った果樹園の一角にて。
「…よいしょ…っと…う~ん…これはまだ早いかな…良し、この木はこれでお終いっと」
「メノリさん、こっちの水色の…葡萄?のようなのはこのくらいで良いでしょうか?」
「ん、OKOK」
「よっと…メノ姉様、灰色のラグビーボールみたいのはまだ獲りますか?」
「ん~…そうね、加工もしたいから…こっちのカゴにもお願いして良い?」
「解りました!」
「…なぁ、この小さな水饅頭みたいなの、中身がやたら極彩色(カラフル)な上に、触ると氷みたいに凄く冷たいんだが…本当に食べられるのか?」
「ナァ~オ!」
バシッ!
カノンは不満気に鳴いて、尻尾でテスラの足を叩いた。
「カノン、どうどう…それはカノンの故郷では最高級品で、特別階級の者でも極一部しか口にする事が許されない至上の果物なんだよ」
「ナァ~オ」
「…それを知っているという事は…カノンは特別階級の出身という事か?」
「ナァ~オ!」
今度は得意気な顔でふんぞり返るカノンの頭を撫でて落ち着かせた。
「料理長!こっちの芋?の茎を引っ張ったら、隣のまで抜けたんですけど、どうしたら良いんですか!?」
「あぁ、それはそういう植物だからそのまま抜いちゃって!」
「解りました!この花壇のこっち側半分は抜いて良いんですよね?」
「そうそう、お願いね」
「畏まりました!」
その後もみんなにも手伝って貰って、彼等が見た事の無い色、形状の果物を収穫した。
「…ふぅ、こんなものかな?」
「…凄い量ですね」
「これ全部が果物だなんて…」
「味が全く想像出来ないな…」
「さ、厨房に持ってって試食しよっか」
…久し振りのそれぞれの【世界】の果物、楽しみだなぁ
…みんなの口に合いますように!
濡れ布巾で拭いたり、流水でしっかり洗い流したりと下処理を済ませて、ナイフと包丁、フォークにスプーンを駆使して、食べ易さを考慮した飾り切りを施した。
「「「「「うわぁ…」」」」」
「「「「「凄い…」」」」」
「「「こうして(こうやって)盛り付けられたのを見たら、まるで不思議な宝石みたいで…」」」
「何だか、食べるのが勿体無いですね…」
「今日のおやつは【異世界】フルーツの盛り合わせ。一応、比較しやすいようにそれぞれの味に近い飲食物を用意したから、食べ比べしてみて欲しいかな」
「「「「「おぉ…!」」」」」
「じゃあ私達は姫様とのおやつタイムに行って来るわね」
「「「「「はい!」」」」」
「「「「「我々もいただきます!」」」」」
「どうぞ~」
「…こ、これが果物…?」
「な、何というかその…」
「…食べても大丈夫なのか?」
「…ってか、そもそも食えるのか?」
「何や、惣右介が珍しいモン食わせる言うから来てみたら…いや、ほんまに何やコレ?」
飾り切りしたのと、収穫したままの両方を持って行ったら、手伝ってくれたみんなと全く同じ反応が返って来た。
藍染が呼んだらしい平子も微妙な表情をしている。
「これは確か…蒟蒻芋だったか?何か、どっかで嗅いだような匂いがするが…?」
「…木の根…いや、牛蒡か?んん?」
「うぇ…真っ黒なピーマンだぁ」
「…何かチャポチャポ言ってないか?このお化け南瓜みたいなの…」
「一応食えそうなのもあるが…こっちのは流石に無理だろ?」
「せやな…これとか見た目も感触も重さも全部バスケットボールそっくりやないか」
「そのバスケットボールみたいなのはボンスカットと言って、冬の寒さ対策の定番だったんですよ。こうやって何度がバウンドさせて…皮の色が藍色になって、完全に跳ねなくなったらこうやって皮を剥いて、中の袋も裂いて実を切り分けると…はい、食べられますよ」
「うわぁ~!グレープフルーツとかよりもずっとおおきいね!はむっ…うわぁ~!あまぁ~い!」
「「「「「えぇ…?」」」」」
困惑しているみんなの前で、食べ易くカットしては飾り切りをして姫様にお渡しした。
「これはだれのすきなくだものなの?」
「此方の蒟蒻芋という植物に似ているのは、アンオウエンの好物で、コンクリンと言います」
「へぇ~、へんななまえ!これは?このきのぼうみたいなの」
「それはスカンボウです。この細い板で皮を削って食べるんです。サクサクした食感がマスミのお気に入りなんですよ」
「じゃあ、こっちのまっくろなピーマンは?」
「それは私とニエの好物のココピンですよ。皆さんが知っているピーマンとは全然違って、上のヘタをこうやって捻って開けるんです。中にはアッサリしたチョコドリンクみたいな味がする液体が入っているので、取り扱いには十分注意して下さいね」
「じゃ、じゃあ…この灰色のラグビーボールは何なん?」
「あぁ、シグビートンですね。リリアとリリエの好物で、とても甘い蜂蜜レモンの味がしますよ」
「では、シオンが既に食べているあの水色の葡萄は何だ?」
「ギャウ?」
「あ、もうシオンてば…これはミミミプレです」
「「「「「は(え)?」」」」」
「ですから、ミミミプレです。こちらは皮ごと食べられますし、甘味が強くて濃厚なマスクメロンを彷彿とさせる味なんですよ。因みに、皮は水色ですが中の実は真っ黒なんです。不思議ですよね」
「いや、不思議っつうかその…」
「…何か、混乱して来たな…」
「…うん、蒟蒻芋を剥いたら中は大きなリンゴだったし…見た目は完全に牛蒡なのに、サクサク食感の鼈甲飴とかね…」
「…ロウコだけ好物を食べられるのは不公平だとずっと思っていましたし、藍染様の許可も降りたからシオンにGOサイン出したら、凄く張り切っちゃって…私達だけではどう頑張っても食べきれない量が一気に収穫出来てしまったので…植える時にもっと考慮するべきでしたね」
「まぁ、それは仕方ないだろう」
「しかし…本当に此れ等を尸魂界に持って行くのか?」
「えぇ。皆さんがどんな反応をして下さるのか、興味がありますので」
「…ならばせめて、事前に果物そのものを総隊長にお見せして、12番隊に成分分析をして貰って安全だと理解して貰う手筈を整えよう」
「…お手数おかけしてすみません」
…つい懐かしくて、収穫可能なのは殆ど獲っちゃったのは拙かったなぁ
東仙に頭を下げながら、みんなの様子をそっと窺った。
…みんなだけじゃなく、流石のサチ様も凄い困惑してるなぁ
…姫様は初めて見る果物達に純粋に喜んでいるけど
…姫様がご機嫌だから、藍染の機嫌も良いのは予想通りだけど
…さて、あっちの方々はどんな反応するかなぁ
そして約束の日、余りにも量が多過ぎるので、今回はロカ達だけでなくヒロさんを始めとする厨房担当者数名に協力して貰って、今回の為にと用意された特設会場で試食会を開いた。
「本日は私達の願いを聞いて下さり、誠にありがとうございます。此方は全て私達の【故郷】の果物です。是非ご賞味下さい。では、いただきます!」
「「「「「いただきます!!」」」」」
試食会の挨拶後、今朝用意して来た乳児用と幼児用に加工済みの果物をそれぞれの配膳担当に渡して、ロクゴウちゃんとナナゴウちゃんの分だけ持って、飲食ブースに待たせてる2人の所へ行った。
「は~い、お待たせ~」
「わぁ~い!いただきま~す!」
「いちゃちゃま~しゅ!」
ナナゴウちゃんは最近、ロクゴウちゃんの真似をするのが楽しいらしい。
「あま~い!」
「ま~い!」
上機嫌で食べる2人のお世話をしつつ、他の死神とその家族達の様子を窺った。
コンクリンブースにて。
「ん~!甘くてとても美味しいですよ姉様!義兄様!」
「本当ね。連れて来て下さってありがとうございます、白哉様」
「…うむ」
「あ~、う、う~!」
「杏奈にはまだ早い…む?持参した茶は?」
「…あら?確かに此処に…」
「あー!うー!うー!ふぇ、うぇ、うぇぇ…」
「杏奈様にはこちらの果汁をどうぞ。そのままだと甘過ぎるので薄めてありますから」
「…忝い」
「ありがとうございます。良かったわね、杏奈」
「あ~ぶぅ~!」
スカンボウブースにて。
「サクッ…!本当に鼈甲飴の味がする…凄いね」
「飴がこんなに簡単に噛めるとはなぁ…っ!?げほっ!何だこりゃ!?辛っ!」
「だ、大丈夫かい?」
「薄荷味が当たりましたね。おめでとうございます」
「コレが薄荷…!?初めて食べた…口が痛ぇし、鼻にもきたぁ…!」
「何処かで口直しするかい?」
「…あー…そうする…にしても、この残りどうすっかなぁ…」
「薄荷は虚夜宮でいただいた事があるから、僕は食べられると思うけど…お互いに囓った所を切って交換するかい?」
「…悪ぃ、頼む」
ココピンブースにて。
「ゴクゴクゴク…っぷはぁ~!剣ちゃん、コレおいしーね!」
「…まぁ、悪くねぇな…ん?こっちのは皮が茶色いが…何か違うのか?」
「茶色いのは早摘みの物でして、甘味よりも苦味が強いんです。甘いのが苦手な方に人気ですよ」
「ふ~ん?」
「ゴクッ…うぇ、にがぁ~い!つるりんにあげる!」
「ちょ、お、っと!…危ねぇ…いきなり渡さないで下さいよ!しかも飲みかけを」
「ねぇゆみちー、あと行ってないのどこだっけ?」
「無視っすか…」
「えっと…林檎と蜂蜜檸檬の味がする所ですね」
「じゃあリンゴのとこ行こう!」
シグビートンブースにて。
「甘酸っぱくて美味しいですね」
「は、はい…大きさは兎も角、色が色なので本当に食べられるのか不安でしたが…予想以上の美味しさで…すいません、お代わりを…」
「はい。因みに此方のシグビートンですが、皮ごと絞ったのを温めても美味しいですし、人によっては、炭酸やお酒で割って飲む方もいますよ」
「では炭酸のをお願いします。流石にこの時間に飲酒は出来ませんから。ね、勇音」
「はい、隊長」
ミミミプレブースにて。
「此方、ミミミプレを茹でたものです。生のと食べ比べてみて下さい。余りの違いにきっと驚きますよ」
「ありがとうございます。あむっ…!?ゴクン。食感もだけど何より味が全然違うのね。凄いわ」
「…だな、どっちも美味ぇや」
「とーたん、はやも!はやもほちぃ!」
「解った、解ったから。ほれ、隼颯の分」
「ありあと!あ~むっ…!おいちっ!もっちょ、もっちょちょらい!」
「まだ行ってない所のも美味そうだぞ~。ほれ、あそこのとか」
「!あいっ!」
ミュウライスブースにて。
「申し訳ありません!ミュウライスはもう限定数量に到達しました!在庫ありません!」
「「「「「え~!?」」」」」
「これから注文書をお配りしますので、お手数をお掛けしますが、此方に並んで下さ~い!」
「「「「「おっしゃあああ!」」」」」
「良かったね、シロちゃん。何とか間に合って」
「…まぁな」
「…ん~っ!本当に冷たいけど、甘くて美味しい!」
「…悪くねぇな」
「ひと口で終わっちゃうのが残念だけど…あれ?シロちゃん?何処に…?」
「…注文書、食いたきゃ書いとけ。出しといてやるから」
「…ありがとう、シロちゃん!」
「…ん」
カボップティブースにて。
「「よいしょぉ…っと!」」
ドスンッ!
「「「「「おぉ~っ!」」」」」
「えらい大きい南瓜やなぁ」
「そうねぇ…それにしても、本当に真っ黒になるまで焼くのねぇ…まぁ、これだけ大きいと仕方ないのかしら?」
「では、切り分けますね」
カット担当者がメノリから教わった通り、ヘタを取ってから横半分に切って、切り口を上にしてそれぞれを32等分に分けた。
「はい、どうぞ!」
「あらぁ、美味しそう!」
「かぁしゃま!シンも!」
「リンもちゃべゆ!」
「は~い、少々お待ち下さいねぇ」
1人分のを細かく切って、器に半分こしたのをそれぞれに直接渡した。
「はい、どうぞ」
「「ありあとぉ!」」
「さぁ、あそこのテーブルで食べましょうね」
「「あ~い!」」
「…可能な限り細かくしましたが、念の為、誤嚥に気を付けて下さいね」
「おおきに」
ガウェーネブースにて。
「…う~む…不思議じゃのぅ…のう、長次郎よ?」
「左様ですな。どう見ても根元まで青い葱なのに…」
「西瓜の味がしおる」
「此方のは粒餡の味がします」
「…【異世界】とは斯様に我等の常識を超える物が有り触れておるのじゃろうなぁ…」
「…違いませんね」
とても真剣な表情で、冷凍した長ネギと同じく冷凍した焼きネギを囓る山本元柳斎重國と雀部長次郎の姿は、中々にシュールだった。
「…あれ?そう言えばビアは何処に?」
今回はヒロさんと一緒に行動している筈なのに見当たらない。
視線を彷徨わせる事数分、納得と言えば納得の所に居た。
ビアは十中八九、瀞霊廷通信に載せる為の撮影中の檜佐木に話しかけていた。
カシャカシャカシャ!カシャカシャカシャ!
「檜佐木さん、お仕事熱心なのは良いですが、夢中になり過ぎてまた食べそびれちゃいますよ?」
「うぉっと!?ビアちゃんか…吃驚した」
「他の方も撮影していますし、ちょっとくらい休憩しても罰は当たらないと思いますよ?」
「いや、しかし…そうだな、お言葉に甘えるとするよ」
「はい、どうぞ。ボクのオススメは焼いて冷やした方のガウェーネとミュウライスです」
「ありがとう。じゃあオススメから…シャクッ…!?本当に小豆の味がする!?見た目は焼いて冷やしたネギなのに!?」
「皆さんと同じ反応…でも、やっぱりそうなりますよね。そこにミュウライスを食べるとまたひと味違うあずきバーになりますよ」
「どれどれ…あ~…うん。確かに全然違うな。って、ミュウライスは1人1個だけだったか…う~ん」
「メノ姉様特製のバニラアイスとも食べ比べしてみて下さい。此方も凄く美味しいですよ」
「…そうだな」
何かと不憫な扱いをされがちな彼に同情している節があるビアは、ヒロさんに一言告げてから渡しに行ったらしい。
あのままじゃ、確実に今回も食べ損ねて終わっただろう。
…本当に良い子よね、ビアは
…ザエルアポロに爪の垢を煎じて飲ませたいくらい
…それはさておき、涅様、どんなに訴えられましても、シオンの果樹園の調査はさせませんよ
…もし強硬手段に出たら、【神罰】くらいますよ?
…植物との強制断絶は流石にさせませんけど
…代わりに、この【世界】の長ネギしか食べられなくなるように調整させますよ
…嫌なら諦めて下さいね?
〈南奈〉がこれまで転生して来た【世界】の食べ物、果物編を書いてみました。
こんな果物を見たみんなの反応はどうだろうか?と想像し始めたら収拾が付かなくなって、頭の中を整理するのに時間が予想以上にかかってしまいました。
次回、メノリ、とある覚悟を決めなければならないかも知れません。
〈異世界の果物について〉
数が数なので、改めて記載しました。
ボンスカット…見た目はバスケットボール。皮が藍色になり、跳ねなくなるまでバウンドさせてからでないと皮が剥けない。とても甘い冬蜜柑の味がする。リリアとリリエ、ロウコの好物。
コンクリン…見た目は蒟蒻芋。皮を剥くととてもジューシーな蜜入りリンゴ。摺りおろしたのは離乳食や療養中の患者の定番食のひとつ。栄養価がとても高い。アンオウエンの好物。
スカンボウ…見た目は牛蒡。皮を専用の板で削って中を食べる。サクサク食感の鼈甲飴の味がする。ごくまれに薄荷味のが収穫出来る。マスミのお気に入り。
ココピン…見た目は真っ黒なピーマン。ヘタを捻って開けて食べるというか、飲む。味はアッサリしたチョコドリンク。冷やしても温めても美味しい。中身を飲みきったら、外側はソフトクリームのコーンのような状態に変化する為、そのまま食べられる。因みに、残ったヘタを土に埋めればまた生えてくる。〈南奈〉とニエの好物。正確に言うと、〈南奈〉は中のチョコドリンクが好き。ニエは外側のコーンになった皮が好き。
シグビートン…見た目は灰色のラグビーボール。皮ごと食べられる。とても甘い蜂蜜レモンの味がする。しかし、加熱すると何故かブルーベリー味になる。種を摂取すると中毒症状が出るので注意が必要。リリアとリリエの好物。
ミミミプレ…見た目は水色の葡萄(巨峰サイズ)。皮ごと食べられる。味は濃厚なマスクメロンに似ている。皮は水色だが、中身は黒い。皮ごと茹でると何故かパイナップル味になる。シオンの大好物。
ミュウライス…見た目はひと口大の水饅頭。うっすら見える中身は極彩色(とてもカラフル)。味は超濃厚なバニラアイス。冷たくてとても美味しい。保管が難しく、例え冷蔵庫で保存しても、収穫直後から24時間後、急速に傷み始め、25時間後には食べられなくなってしまう。冷凍庫に入れても3日は保つが、その代わり味と食感が格段に落ちてしまう。カノンの居た【世界】では年に一度、各地で極少数しか収穫出来ない超希少な果物だった。それを再現し、供給出来るシオンは本当に凄い。
カボップティ…見た目はお化け南瓜。収穫した時の中身は液体状だが、加熱すると固形状になる。皮が真っ黒になるまで丸焼きにしてからヘタの部分を切り取って食べる。必ず加熱しないとお腹を壊すので要注意。味は濃厚な南瓜プリン。今回、収穫した中で1番外見と中身が一致している果物。家族みんなの好物。
ガウェーネ…見た目は根元までしっかり青い長ネギ。切ると中は橙色をしている。そのままでも食べられるが、冷凍してから食べるのがオススメで、スイカバーの味がする。但し、一度焼いてから冷凍したのを食べると何故かあずきバーの味がする。根元は長ネギと同じように土に埋めれば数日で生えてくる。ニエの好物。