前回、ロクゴウちゃんの5歳の誕生日を祝いに行きました。
今回、ロクゴウちゃんの実父の陰謀によって里親になり、彼女は此処虚夜宮で生活を送る事が決定しました。
ロクゴウちゃんを迎え入れるにあたって、慌ただしい日が続いた。
たかが子ども1人と侮ってはならない。
受け入れ態勢は万全な状態にしなければ、辛い目に遭うのはロクゴウちゃんである。
だから、ロカとビアとでルームシェアしていた空間に、ロクゴウちゃんの寝室と遊び部屋を増設、物置部屋も拡張して貰ったり。
12番隊での日常はどうだったのか、改めて詳細を根掘り葉掘り聞いて、成長期真っ只中のロクゴウちゃんをどうやって育てていくかを同室の2人だけでなく、テスラやヒロさん達厨房のみんなともたくさん相談したり。
ロクゴウちゃんと交流があるシャルさんやコストレイラさん、料理教室に参加しているメンバーも出来る範囲内でだが、フォローしてくれるとの申し出があったり。
…本当に有難いわ
今のところ、現世の子どもとほぼ同じ速度で成長しているロクゴウちゃんと、破面である私達の生活リズムの差を埋める為の対策もどうにかなったので、漸くロクゴウちゃんを迎え入れる事が出来た。
ロクゴウちゃんを迎え入れて数日、涅マユリやナナゴウちゃん、阿近達研究員を恋しがるのではと思っていた。
しかし、此方の予想に反して毎日ご機嫌な表情で私の後ろを付いて来て、私が厨房に立てば「おてつだいがしたい!」、休憩時間になると図書館から絵本(姫様用に集めた絵本の予備)を借りて来ては「よんで!」とおねだりして来たりでとても楽しそうである。
行動を見る限り、今までは〈次ママに会える日はいつ?お泊まりは?〉だったのが、〈次マユリ様達に会える日はいつ?〉に変わった事をちゃんと理解しているらしい。
…環境の変化に大きなストレスを感じて、情緒不安定になったり、夜泣きするかもと思っていたけど
…今のところ何ともなさそうなのよね
…あの子なりに気を使って、色々と我慢していなければ良いけど
私達の心配を余所に、ロクゴウちゃんは毎日生き生きと日常を送っている。
それでもやっぱり心配で、寂しくないかと聞いたら嬉々としてこう答えて来た。
「マユリさまもあこんさんたちもいそがしくて、あまりあそんでもらえなかったの」
「でも、ここではいろいろなひとたちがいっしょにあそんでくれるからたのしいよ!」
「ねるときとおきるときだって、ロウコとアンオウエンとリリアとリリエもいるからへいき!」
「ママいそがしいのに、わたしのおねがいきいてくれるからだいすき!」
技術開発局として何かと忙し過ぎる大人達に囲まれて育って来たロクゴウちゃんには、毎日誰かしらが構ってくれる今の環境がとても楽しくて嬉しいらしい。
敢えて言うならば、託児施設の同年代の子達と遊ぶのが難しくなったのが少し寂しいくらいだと。
「…ロクゴウちゃんがすんなりこの環境を受け入れてくれて良かったぁ…」
「そうですね」
「幾ら毎月お泊まりに来ていたとは言え、此方に強制永住だものな。どうなる事かと思っていた分、安堵感は半端無いな」
「ねぇ~…ふぅ」
「メノ姉様が彼方に行く時に同伴の許可が出ていますから、涅マユリ達とは2度と会えない訳では無いと、ちゃんと理解していますしね」
「…まぁ、俺達にとって1番有難いのは、厨房に籠もりがちのメノリを外に出してくれる事だな」
「「ですね」」
「うっ…」
「それにしても、子どもに優しいアンオウエンは解りますけど、ロウコがあんなにお世話を熱心にするとは…意外でしたね」
「え、そう?」
「あぁ、俺の個人的な見解だけど、付かず離れずの距離を保っていたように見えていたからな」
「あ~…ロウコの居た【世界】での習慣でね、里親里子は当たり前だったから」
「「「え?」」」
「ロウコの居た【世界】では、生まれた時の相棒次第で就ける職業が決まるから、両親のどちらかが同じ職業だとそのまま問題無く育てるけど、違う場合は早くて3歳、遅くても7歳までに同じ職業の里親を探してその人に託すのが一般的だったから」
「…何というかその…凄く合理的だな」
「我が子の将来を見据えれば、当然の対応なのよ。寧ろ、何もしない親は育児不適合者として、法で裁かれるわ」
「…そう言えば以前、メノ姉様は里親に成人のお祝いをして貰ったと言っていましたが…」
「…あぁ、私の当時の両親の職業はね、父は有りと有らゆる車両を乗り熟すドライバー、母は医療従事者だったからね。軍人になる事が決まった私の里親探しは、かなり苦労したらしいわ。辛うじて母の知人の知人の更に知人に元軍医が居て、その人の人脈からどうにか探し出した…って聞いたわ」
「…血が繋がっていても、そんなに違う職業になる場合もあるんですね?」
「そうよ。友人にも「先祖代々政治家を輩出している家系なのに?」って子や「5代に渡って建築家だったのに私の代で…」って子もいたし」
「…だからロウコは誰よりも率先してあの子のお世話をしてると」
「そうよ」
私達の視線の先で、ロクゴウちゃんに強請られて肩車をしているロウコを見遣った。
…そう言えば
「…ねぇ、前々から思ってたんだけど…此処で子どもって認識されている破面ってビアとリリネット、厨房内だとマノさんにフリフォレスさん辺り…かな?…まぁ、当たり前だけど少ないわよね?姫様のコミュニケーション能力を養うなら、もっと居ても良くない?」
「「う…」」
「…居るみたいですよ、メノ姉様」
「え?」
「オリジナル経由のデータですが、ピカロって言う〈集団でもあり個でもある〉というかなり変わった破面が居るとあります」
「…ピカロ?…集団でもあり個でもある破面?」
…あれ?何処かで聞いたような気が?
首を傾げる私にロカが補足説明をしてくれた。
「…ピカロは、元々は子どもの破面1体だけだったのですが…当時、1人ぼっちは寂しいからと、同じ子どもや小動物の姿の虚を見付けては、自身の魂を分け与え続けた結果、集団にして個の破面として生まれたんです」
「…へ、へぇ」
…そう言えば居たわね、そんな特殊な破面
テスラも何とも言えない表情を浮かべながら、ヤミー達から聞いた話をしてくれた。
「姫様の遊び相手としても、子ども社会を学ぶのにも良いだろうと、藍染様も判断して採用したのだが…直ぐに問題が起きたらしい」
「問題?」
「子ども特有の容赦の無さや残酷さが露見してな。最終的には姫様を泣かせたらしい」
「あ…」
「ピカロという名前の通り、悪戯好きなだけでなく、遊びでも負けたくないからと結託して意地悪をしたり…姫様が悔しがる度にその行動はエスカレートしていって…結果は今言った通り」
「…じゃあその子達は?」
「当然、姫様を泣かせた者達は激怒した藍染様の手で直々に即処分、一応止めようとしていた子達は生かして特殊な地下牢に繋いでいるらしい」
「…うわぁ」
…そりゃまぁ、姫様を溺愛するあの藍染がそんな暴挙を許す筈が無いわね
…でもって、それでも一応、意地悪を咎める良心がある子達を生かすだけの理性はギリギリだけどあったのね
「…そんな事があったから、子どもの破面が少ないのね」
「「あぁ(えぇ)」」
「…まぁ、これからはロクゴウちゃんも加わるから、遊びの幅も広がるし、きっと姫様にとって良い経験になるでしょう」
「…だな」
そう思っていたのだけど…。
姫様とのおやつタイムで〈それ〉は起こった。
誕生日会に参加しているとは言え、今まで真面に話をした事も無かった姫様と自己紹介をし合ったのだが…。
「ネムリロクゴウちゃん?ながいし、へんななまえだね~」
「「「「「なっ…(あ…)」」」」」
「ちょ、みい!何て事を!」
「こら、みい。駄目だよ、そんな事を言っては」
「だって~」
「…ママ、わたしのなまえ、やっぱりへんなの?」
「そんな事無いわよ。涅様が下さった大事な名前でしょう?って…やっぱり?やっぱりって、他の誰かにも言われた事あるの?」
「…あのね、よんばんたいのね、たくじしょのひとがね、へんななまえのこだって…ふっ…うぅ~…」
いよいよ堪えきれなくなって泣き出してしまった。
…何処の誰よ、人の名前貶した失礼な輩は
…でも、確かにこの子の名前を聞いた相手は、戸惑ったような反応を見せる事が多かったかも
…特にネリエルとかドルドーニ、ガンテンバイン辺りが顕著だったわね
…ザエルアポロがビアにアンコガカリと名付けているように、ロクゴウちゃんは6番目の子だから6號なのよね
…子どもを番号呼びとかどうなの?って反応の人も居たのかも
…それは兎も角、先ずはロクゴウちゃんに確認しなきゃね
「ロクゴウちゃんは涅様からいただいた名前は嫌なの?」
「ぐすっ…いや…じゃな、い…でも、ひっく…みんな、にっ、ひっ…へんななまえ、ってひっく…いわれるの、は、いやなの」
…少なくとも名前自体は嫌いでは無い
…でも、当たり前だけど名前を変だと言われるのは嫌
…だったら
「…ねぇ、ママからもロクゴウちゃんに名前をあげても良いかな?」
「う?」
「ロクゴウちゃんにもうひとつ名前が出来るの。で、ロクゴウちゃんは好きな方を名乗って良いの。どうかな?」
「ママからのなまえ?」
「そう、ママは貴女にリッカという名前を贈りたいの」
「りっか?」
「リッカはね、雪の結晶を別の言い方にした名前なの。文字はこう」
筆記用具を借りて〈六花〉と書いた。
「雪の結晶はね、まるで6つの花びらを咲かせているように見えるから六花とも呼ばれるようになったの。ママはね、この六花が大好きなの。新しい名前にどうかな?」
「りっか…うん!わたしのなまえはりっか!ママありがとう!」
気に入ったようで何よりである。
改めて姫様と自己紹介し合い、姫様は名前を変だと言った事を謝罪した。
その後のおやつタイムは何の問題も無く、リッカも楽しめる玩具で遊び、姫様とリリネットとも仲を深める事に成功した。
リッカが虚夜宮に来てから数ヶ月が経った頃、朽木家から杏奈ちゃんの1歳を祝う誕生日会への招待状が私達の所に届いた。
「…来た…来て欲しくないのが来たぁ~…」
「ママ?どしたのママ?」
「メノ姉様、気を確かに!」
「クァー!」
「アンオウエンも落ち着け!メノリをつついたって何も変わらないから!」
「…皆様で是非にと…お誕生日けぇきを楽しみにしています…ですって」
「読まなくて良いからロカ…うっ、胃が…」
「…毎回言っているが、他の家のお誕生日会と同じくプレゼントとケーキを持って行くだけなんだから、そんなに毎度毎度気負う事も無いだろう?」
「無理」
「真顔で即答しないでくれ」
「何度も言ってるけど、天下の五大貴族の中でも1番掟に厳しい朽木家からの招待状は荷が重過ぎるのよ」
「大袈裟だな相変わらず」
…どう訴えてもこの感覚を共有して貰えないのが凄くもどかしいわ
「ママ、いたいのいたいのとんでけー!」
「…ありがとね、リッカ」
…取り敢えず、再来月に開催される姫様の誕生日会の献立でも考えて気を紛らわせよう
…あ、そうだ
…姫様の誕生日会の前に、ナナゴウちゃんのお誕生日会もあるじゃないの
…更に胃が痛くなりそう
…行きたくないなぁ
引っ越しや移住は、人数に関わらず大変です。
学生時代、地元を離れて下宿をした時の事を思い出しながら書きました。
眠6號ちゃんは事実上、リッカ(六花)ちゃんに改名されました。
幾らマユリ様がメノリをママだと言っても、親権その他全てがマユリ様にあった以上、手出しも口出しも出来なかった状態からの、突然の丸投げにしか見えない中で、ロクゴウちゃんの事情を良く知らない人達からこの名前はどう思われるかなぁ?とふと思いまして。
そして、ネムは眠7號と言う名前にとても愛着を持っていましたが、原作では既に故人の6號ちゃんはどうだろう?とも考えた上で新たな名前を与える事にしました。
そして、杏奈ちゃんのお誕生日会への招待状が来ました…。
今からアンオウエンが張り切っています。
次回は、杏奈ちゃんのお誕生日会、そしてナナゴウちゃんのお誕生日会に出席します。