何故かメノリに成り代わりました。   作:如月雪見

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前回、ロカとビアがバースデー休暇。
姫様方とお昼をご一緒しました。
手巻き寿司はとても好評でした。

1年越しの約束の銅鑼焼き作りもしました。

朝からお手伝いを頑張ったリッカは、お風呂を待たずに夢の中へ。

部屋に戻ろうとしたら、市丸夫妻がやって来ました。

どうやらトラブルが起きたらしいです。


今年もシン君とリンちゃんのお誕生日会、絶対に成功させます。



お誕生日会を中止になんかさせません。

 

 

「明明後日の誕生日会の事なんやけどなぁ」

「はい」

「凄く凄くすっっごぉ~く残念なんだけど…」

「…残念?」

「中止になった事を伝えに来たんよ」

「…はい?」

 

凄く残念そうに、そして申し訳なさそうに約束のキャンセルをしに来た2人に戸惑った。

 

…え、本当に何で?

…何で中止になったの?

…シン君とリンちゃんに何かあった?

…いや、それは有り得ないわよね

…だって、4番隊の託児施設に通ってる筈だし

…何かあったら、施設専門の隊員達が適切な治療をする筈だし

…だとしたら他に理由が?

…取り敢えず、話を聞かなきゃ

 

「…えっと、何があったのですか?」

 

内心の動揺を抑えながら話の続きを促した。

 

「実は…」

 

一昨年、去年と貸切で使わせて貰っていたお店が、当面お休みせざるを得ない状態になってしまったらしい。

 

何でもつい最近、近所に出来たお店の火の管理が杜撰だった所為で、その周辺のお店と家屋が被害を受けたとか。

その連絡が入ったのが今日の夕方で、今から他のお店に頼んでも場所を確保するのは不可能。

よって、今年の誕生日会は中止にする事を報せに来たとの事。

 

「そんな…」

 

…リッカ、2人のバースデーケーキのデコレーション頑張るって張り切ってるのに

…それに、リッカはこういう時くらいしかそっちの子達と遊べないのに

…みんなに会えるのを凄く楽しみにしてるのに

…中止になったって聞いたら、ガッカリどころじゃなくなるわ

 

ロカに抱っこされたまま眠っているリッカを見やり、市丸夫妻に交渉をした。

 

「…どうにかなりませんか?」

「…どうにかしたいのは山々なんだけどね…」

「如何せん、ボク等のツテ全部使ぅても無理なんよ。どの店も急過ぎて無理やて断られてもうてなぁ」

「隊長権限で隊舎の一室を…」

「…生憎、ウチは暖房設備の点検日で、特に大部屋はどれも使えんのよ」

「う…乱菊さんは…」

「事情を説明したら、隊長から一室使用許可を貰えたんだけど、流石に料理までは…ね」

 

…つまり、場所の確保はどうにか出来そうで、後はおもてなしの料理を用意出来れば誕生日会は出来るって事よね?

 

「…解りました。今から藍染様に掛け合って、許可をもぎ取って参ります」

「「え?」」

「ちょ」

「メノ姉様?」

「何言っ、待て!」

 

響転で藍染の所へと駆け込んだ。

 

 

 

ドンドンドン!!ガチャッ!!

 

「失礼します!」

 

荒々しいノックをして、返事も待たずにドアを勢い良く開けた。

 

「…如何したんだいメノリ?随分急いで来たようだけど」

「明明後日のお誕生日会について、市丸御夫妻から話はありませんでしたか?」

「あぁ、中止になったと聞いたよ?」

「そこでお願いなんですが」

「うん?」

「お誕生日会の料理を用意する許可を下さい」

ズイッ

「ん?」

「お誕生日会の料理を用意する許可を下さい」

ズズイッ

「えっと」

「お誕生日会の料理を用意する許可を下さい」

ズズズイッ

「…それは構わないけど、食糧庫は大丈夫なのかい?次の補給まで保つのかな?」

「大丈夫です、問題ありません」

「そ、そうかい?なら許可を出そう」

「ありがとうございます!」

 

突然やって来たメノリの剣幕に気圧された藍染だが、1番の懸念事項を尋ね、問題無いと言い切られたので、許可を出した。

 

「…嵐…でしたね」

「あぁ…リッカが2人の誕生日会を凄く楽しみにしているみたいだからね。予想以上の気迫で来られて流石に驚いたよ」

 

以前のメノリならば、中止と聞けば残念がりながらもバースデーケーキとプレゼントを贈ってお終いにしただろう。

だが、今は娘のリッカが居る。

特殊な環境下に居る我が子の為に、同年代の子達と交流する機会を逃したくないのは同じ親として解らない訳では無い。

 

「母は強し…ですね」

「あぁ…一瞬、メノリがサチと重なって見えたよ」

 

遣る気に満ち満ちたメノリが意気揚々と去って行くのを見送った藍染達の間で、そんな会話がされていたのを当然ながら本人は知らない。

 

 

 

 

 

翌日の昼食後。

 

「…で、何を作るんだ?」

「主役が子ども達だからね。オープンサンドに何種類かのスープを用意しようと思うの」

「姫様のお誕生日会でもお出ししましたから、今回の招待客の方々も問題無く楽しめますね」

「…ただ、肝心のパンが足りますかね…?」

「…ですね。小麦粉は兎も角、酵母菌の残量が少し心許無いかと…」

「大丈夫よ。ジャガイモがたくさんあるから、それを使ってジャガイモのガレットも用意しようかなって」

「「「「「ジャガイモの…ガレット?」」」」」

「「そば粉のガレットは知っていますが…」」

「「「ジャガイモで…ですか?」」」

「そう、ジャガイモを千切りや摺り下ろしにしたのをフライパンに丸く薄く広げて両面を焼いたものよ。千切りと摺り下ろしそれぞれの食感を楽しめるし、ジャガイモなら上に乗せる具材が和洋中のどれであってもイケると思うの」

「「「「「成程…」」」」」

「取り敢えず、基本のジャガイモのガレットを作ってみましょう」

「「「「「はい!」」」」」

 

只管大量のジャガイモを千切り或いは摺り下ろしていく。

 

「生地作りの注意点は、ジャガイモから出るでんぷんが繋ぎになるから水には晒さない事、千切りの方は塩を少し入れて下味のついでに水抜きをしてね。よりカリッと仕上がるし、ジャガイモの味をしっかり感じられるから」

「「「「「はい!」」」」」

「「「「「了解です!」」」」」

「…で、出来た生地を油を馴染ませたフライパンやホットプレートに丸く、薄く均一になるように広げて…弱火でじっくり片面を5分くらいずつ時間をかけて焼いて完成。強火だと中まで上手く火が通らないから、そこを注意すれば失敗は殆ど無い筈よ」

「「「「「成程…」」」」」

「さて、味はどう?」

「ふ~、ふ~…」

「はふはふ…」

「こっちがサクサクで、こっちはモチモチでおいしいよ、ママ!」

「本当にこれジャガイモですか?ほんのり甘くて外カリッ、中モチッで美味しいです!」

「「「うんうん」」」

「フライドポテトや芋団子とも違う食感で中々…美味いな」

「酒の肴にもなりそうですね」

「でしょ?これに摺り下ろした人参やほうれん草のペーストを混ぜて焼いても美味しいわよ」

「「「ほほぅ…」」」

 

こうして、無事にお誕生日会当日のメニューが決定した。

 

 

 

 

 

そして、お誕生日会当日。

 

「「「こんにちは」」」

「いらっしゃ~い!待ってたわ!」

「「「お邪魔します」」」

 

リッカを此方の子達と遊ばせる為に、ビアを連れて先にお邪魔させて貰った。

 

「ママ!ねぇね!ビアねぇね!」

「こんにちは、ナナゴウちゃん」

「あ、先日贈ったコストレイラさんの服ですね。とても似合ってますよ」

「えへへ~、ありがちょ!」

「リッカちゃ~ん!こっちこっち~!」

「あ!セツちゃんだ!ノリちゃんもいる~!ママ、いっていい?」

「行ってらっしゃい。怪我しないようにね」

「は~い!」

 

リッカは久し振りに会った友達の所へ行き、遊び始めた。

 

…藍染に直談判した甲斐があったわ

 

「お久し振りです、メノリさん」

「今日会えるのを楽しみにしていました」

「お久し振りです。いつもリッカと遊んでいただいて、ありがとうございます」

「…う~…」

 

…あ、ナナゴウちゃんの機嫌が悪くなって来てる

 

「そう言えば…メノ姉様から聞きましたよ、ナナゴウちゃん」

「う?」

「積み木が凄く上手だって。ちょうど此処にありますし、ボクに見せてくれませんか?」

「う~…うん!」

 

…ナイス。助かったわ、ビア

 

私と遊べそうに無い雰囲気を感じて、不機嫌になりつつあったナナゴウちゃんを、ビアが上手く誘導してくれた。

そのおかげで、所謂ママ友同士の情報交換とお喋りに暫くの間、花を咲かせられた。

途中から、それぞれのご家庭の育児相談(主に食事関連)に話の内容が変わったけど。

 

 

 

定時となり、他の参加者も揃ったところで用意した1~12の数字が書かれたペットボトルを12本くっ付けて並べ、床に赤いテープを貼り、鞠を取り出した。

 

「皆さん、モルックはご存知でしょうか?」

「「「「…もるっく?」」」」

「…誰か知ってるか?」

「いや…」

 

本来のモルックの説明をした。

1~12の数字がそれぞれ書かれた木の棒(ピン)をくっ付けて並べて、決まった場所から何も書かれていない棒を投げて棒を倒す、所謂棒倒しゲームのひとつである事。

棒を倒した時、転がった棒は転がった所に立て直す事。

勝敗が決まるまでは最初の場所に戻してはいけない事。

棒を倒した数が2本以上である場合は、倒した本数が得点となり、1本のみである場合はその棒に書かれている数字が得点になる事。

勝敗は合計得点が先に50点になった方の勝ち。

但し、1点でも超えてしまった場合は25点からもう一度50点を目指す事。

今回は安全性を考えて、水を少し入れたペットボトルに鞠を転がして倒す事にした事。

 

「…結構、難しくねぇか?」

「うん、いつまで経っても終わらなさそうな気が…」

「その懸念はご尤もですので、ちょっとルール変更をします」

「「「「るぅる変更?」」」」

「はい。先ず1人2回ずつ鞠を転がします。得点の取り方はそのまま、倒した本数もしくは書いてある数字のどちらかで、チーム全員の合計得点によって貰える景品が決まります」

「「「「「ほほぅ」」」」」

 

みんなの目の色が変わった。

 

「そして、50点ピッタリを取ったチームには、景品とは別の特別報酬を贈呈します!」

「「「「「何!?」」」」」

 

やる気スイッチもしっかり入った。

 

「では、クジ引きでチームを決めましょうか」

「「「「「おぅ(はい)!」」」」」

 

希望者=参加者ほぼ全員でやる事になったので、急遽クジを増産した。

持参したペットボトルの数の都合上、チーム数は変更出来なかった。

 

…1チーム、4~5人の予定だったけど、7人になっちゃったなぁ

…景品の点数、訂正させて貰おうっと

 

みんながプレイしている間に、コッソリと書き直した。

 

「つぎママのばんだよ!」

「ママ、はい、まり」

「はいはい、ありがとうね」

 

審判役をしようと思っていたが、ロカとテスラそして吉良に射場さんがやるからと、リッカとナナゴウちゃんと共にプレイヤー側として参加する事になった。

因みに、ビアは別のチームで参加していた。

 

「次は…4番を狙います…よっと」

 

コロコロコロ…コツンッ、パタンッ

 

「…良し」

「凄ぇなビアちゃん」

「どっちも宣言した通りのぼとる倒してる」

「本当は3番にしたかったのですが、ちょっと距離があったので断念しました」

「いや、それでも凄ぇよ」

 

…ビアも上手く交流出来てて何よりだわ

 

 

 

 

 

ゲームの結果、ピッタリ50点を取れたチームは流石に居なかった。

 

「くぅぅっ!2点…2点超えちまった…!」

「あと1点だったのにぃ…!」

「これが現世の妖怪イチタリナイってヤツか…!」

 

…ニアピン賞として、±1点のチームに贈呈

…やっぱり今回は止めておこうかな、うん

…ルールはルールだものね

 

チームごとに用意した景品を渡した後、後片付け係と食事の用意係とに分かれて場を整えた。

 

「今回の献立は、オープンサンドとジャガイモのガレットです」

「「「「「がれっと?」」」」」

「…千切りのじゃがいもか?これ…」

「正解です。千切りにしたジャガイモを丸く広げて両面をカリッと焼いたものです。フライドポテトとは違う味と食感を楽しめると思いますよ。そして、こちらの平たいのはジャガイモを摺り下ろしてから両面を焼いたものです。モチモチとした食感を楽しみたい方にお薦めです」

「…パンの代わりにこの具を乗せて食べれば良いのでしょうか…?」

「はい、大正解です。勿論、そのまま食べても美味しいですよ」

「「「ほほぅ…」」」

「「「どれどれ…」」」

「う~ん…無難に豚肉と白髪ねぎの上に胡麻だれでいくかな?…うん、美味しい」

「ちぃずと赤茄子のも中々美味いぞ!」

「むむ、この香りは…何と、かれぇそぉすがあったのか…ならば、鶏ささみに蒸し野菜を乗せて、このかれぇそぉすを…うむ、美味!」

「ちょ、山じぃ!かれぇそぉす自分の所に置きっ放しにしないでよ!」

「そっちにも別のそぉすはあるのじゃから、それを使えば良かろうて。もぐもぐ」

「う~わ、横暴!」

 

…うん、凄く大人げないわ

…ってか、カレーソースの独占は控えて欲しいな

…子ども達の悪い見本になってるよ

 

「とっと、あ~!」

「これ(紅葉おろしをかけてある)は杏奈にはまだ早い。ほら、緋真が杏奈の分を作ってくれたぞ。あ~ん」

「あ~ん!んぐんぐ…あ~!」

「はい、次はほうれん草のにしましょうか」

 

1番小さいガレットにカボチャのポタージュを塗ったものを満足げに食べる杏奈ちゃんは、次のを催促している。

 

…杏奈ちゃんもお気に召したみたいね

 

「かぁたん、はやのは~?」

「もうちょっと待ってね~…つなと焼き玉葱に赤茄子のたれをかけて…と、はい、出来たわよ」

「わ~い!いちゃだきま~ちゅ!…むぐむぐ…おいし!とぅたんも、はい!」

「どれどれ…おぉ、確かに美味ぇな」

「とぅたんのは?」

「とぅたんのか?鶏そぼろと茄子にちぃずをかけたヤツだ。食ってみるか?」

「うん!もきゅもきゅ…んま~!」

 

…隼颯君にも好評、と

…主役のシン君とリンちゃんはどうかな?

 

「もきゅもきゅ、んぐんぐ…ぷはっ」

「はい、つなとこーんにとまとよ」

「は~い。あむ、むぐむぐ…」

 

オニオンスープを飲みながらガレットを食べるシン君に、小鉢に都度色々な具材を混ぜては食べさせる乱菊さんの姿が見えた。

 

…ガレットはガレット、具は具として別々に食べる派なのね

 

「とぅたま、ちゅぎはみどりのがいい!」

「緑、緑…これで良ぇ?」

「うん!しょれにね、とりしゃんときのきょ!えっとね、ちろいの!」

「鶏のささみに白い茸…えのき茸やろか?」

「あとねあとね、まよも!」

「で、まよねぇずなぁ…良し、これで良ぇ?」

「うん!あ~…もぐもぐ…おいしっ!」

「ほぅかほぅか。良かったなぁ」

 

ギンにしっかり指示を出して、食べたい具をしっかり選んで食べている。

 

…双子でもやっぱり違いが出るわね

 

他の子達もそれぞれの親と一緒に具を選んだりして楽しんでいるようだ。

 

「ママ、サンマとって~」

「はいはい…他には?」

「う~んとね…あ、リェタスも!あとね、オーロリャソースかけるの」

「レタスにオーロラソースね、はい」

「ありがとう!もぐもぐ…おいしぃ!」

「ママ、おきゃわり!」

「は~い。って、あらら、先に口と手を拭こうね~」

「う~」

「次は何にしよっか?」

「うんとね、えとね…」

 

ナナゴウちゃんも摺り下ろした方を気に入ったようだった。

 

初めてやるゲームに目新しい食事、そしてみんなが1番楽しみにしていただろうバースデーケーキを食べて、始終笑顔のままで過ごして帰路に着いた。

 

帰り際、愚図る可能性を懸念していたナナゴウちゃんも、遊び疲れて涅マユリに大人しく抱っこされて帰って行った。

 

 

 

 

 

 

…無事にお誕生日会が出来て良かった~

…でも、みんなに我が儘言って巻き込んじゃったのは拙かったよなぁ

…みんなして気にしていません、寧ろ楽しんで来て下さいって見送ってくれたけど

…その優しさに甘え過ぎないようにしなきゃね

…じゃないと、姫様の為にと色々と暴走する藍染と同類になっちゃうもの

 

 






今回のメノリは、リッカの為に奔走しました。
すっかり‘お母さん’が板についていますね。
ただ、我が子可愛さから暴走してのクレーマーやモンスターペアレントにならないよう、気を付けないとなりません。



次回は、虚夜宮に大雪が降りました。
さて、如何しましょう。
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