前回、シン君とリンちゃんのお誕生日会、何とか成功しました。
今回、虚夜宮に大雪が降りました。
3月下旬のある早朝、何だか寒いし暗いなと思ってカーテンを開けたら、大雪が降っていた。
「…何で虚夜宮に雪が?しかも3月の終わりに?」
「キャンキャン!」
「「シュシュ~…」」
「キチキチィ…」
「ギャウゥゥ?」
「ナァ~ォ…」
幾らアンオウエンの加護があっても、寒いものは寒い。
マスミは嬉しそうだが、リリアとリリエ、そしてニエはシオンに抱き付いて暖を取っている。
カノンは私が入っていたベッドに潜り込んでしまった。
…リッカにビア、ロカは大丈夫かしら?
リッカはロウコに抱き付いてまだ眠っている。
ビアは少し厚着をすれば問題無いらしい。
が、ロカが突然の寒さに対応仕切れず、ベッドから出られなくなっていた。
「…す、すみません…さ、寒くて…」
「気にしないで。はい、カイロに体温調節機能付きのインナー」
「クァァ~」
「アンオウエンが傍に居るって」
「あ、ありがとうございます…さ、寒っ」
「まぁ、原因は何となく解りますし、無理しない方が賢明だとボクも思いますよ」
「後で食事を持って来るからね」
「お、お願いします…うぅ…」
…十中八九、藍染の所為だからね
厨房に行くと、変温動物や植物がモチーフと思われる破面達が、軒並み身体を震わせながら遅刻して来た。
中にはロカと同じく寒さでベッドから出られないから、休ませて貰うと連絡が来た。
…やっぱりね
みんな冬に逆戻りしてしまった。
状況が状況だからと、本来なら朝食担当では無い人達が来てくれたおかげで、時間には十分間に合った。
朝食後、藍染から何でこんな事をしたのか経緯の説明があった。
昨日、執務室の模様替えをしていたら姫様が来て、一緒に作業をした。
その最中にいつのか解らない雑誌がソファーの下から出て来て、それを見た姫様がとある特集記事〈札幌雪まつり〉のまつりの文字に興味を示し、
「このすべりだいたのしそう!すべりたい!このせつぞう?見たい!ううん、つくってみたい!」
とおねだりして来た。
姫様至上主義の藍染が彼女を諌める筈が無く、東仙の手伝いをしていた日番谷に頼み込み、ほぼ徹夜で雪像や滑り台を造るのに必要な雪を降らせ続けたと。
…何というとばっちり
…気の毒が過ぎるわ
…夕食のメニュー、大根おろしと玉子焼きを追加しようかな
みんなへの説明がこの時間になったのは、今の今までサチさんにお説教されていたかららしい。
「そういう訳だから、この図面通りに滑り台と雪像を造ってくれたまえ」
「「「「「はぁ!?」」」」」
…まぁ、当たり前の反応よね
破面達が雪像とか氷の滑り台なんて造った事がある訳が無い。
「んなの、日番谷にその雪像とやらをそのまま造らせれば良かったじゃねぇか!」
「それでは意味が無いんだ。みんなが雪像造りをしているところに混ざって、自分も造りたいとみいは言っているからな」
…何て無茶苦茶なお願いをしたのよ、姫様
…そしてそれを何の躊躇いも無く了承しないでよ、このバカ親父!
こうして、一部を除いた破面達の今日の予定を強制返上しての滑り台&雪像造りが始まった。
「…おい、雪像とか滑り台なんて、どうやって造れば良いんだ?」
「さぁ…?」
「大体雪なんて、室内スキー場つったか?あれのお披露目で初めて見たもんな」
「あぁ、あれな」
「クソ寒い思いした記憶しかねぇぞ俺」
「「「「「俺(私/僕)も」」」」」
…全く以てその通りだろうね、うん
姫様が雪遊び出来るようにと、藍染が造らせた施設の人工雪を此処数年で知った破面達のボヤキは良く解る。
大体、砂と石、岩に極僅かな植物しか無い虚圏の中で、長い間存在し続けた虚や破面に、いきなり「この大雪を使って滑り台や雪像を造れ」は無茶振りが過ぎるだろう。
ジィ~ッ…
そして案の定、現世のイベントに1番詳しい私に視線が集まった。
…だよね
取り敢えず、会場となる場所に行ってみた。
「…あ、流石に雪を集めて積むところからじゃ無いのね…良かったぁ」
「ゆき~!ママ、ゆきいっぱいだよ~!」
「そうね~」
ロウコから降りてキャッキャッと駆け回るリッカに相槌を打ちながら、会場の見取り図を確認、姫様が造りたい雪像用の雪ブロック以外の立て看板の数に頭痛を覚えた。
…動ける破面に対して、造る雪像が多いわ
…せめて半分、いや2/3くらい減らせなかったのかしら?
…本当にどうしよう?
「メノ姉様?」
「う~ん…比較的構造が単純なのは…コレかしら…取り敢えず、コレを完成させて、どんな感じで造れば良いのかを覚えて貰おうかな?」
「…そうだな、作業工程の感覚を掴めば何とかなるだろう。この完成予想図の絵柄を知っている者も少数だが居るようだし」
作り始めて1時間が経った頃、漸く動けるようになったロカが、しっかり防寒対策をしてやって来た。
「メノリさん、ビア、リッカちゃん、テスラさん、皆様、遅刻してすみません」
「あ、ロカねえだ、おはよう!」
「はい、おはようございます」
「もう大丈夫なの?」
「はい、お陰様で。何とか状態異常から脱する事が出来ました」
…この寒さは状態異常扱いなのね
…まぁ、動けるようになって何よりだわ
「後、応援の方々もいらっしゃいましたよ」
「「「「「応援?」」」」」
どうやら東仙が尸魂界に事情を説明して、今日非番の隊士達に声をかけてくれたらしい。
…正直、凄くありがたいわ
何せ私とロカ以外、現世に行く役目を与えられている極少数しか雪像を知らないのだから。
その造り方ともなれば、「解らない」「知らない」と返答されたのだから。
「ありがとうございます」
「いやぁ、礼には及びませんよ!」
「雪像造りは得意ですから」
「何せ、ウチの副隊長にゃ毎年雪が降る度に何かしら造らされてるからな…」
「うん、そうだね…」
…遠い目しちゃってるよ、あの2人
…って、あれ?
…これ、彼等にとって急な呼び出しだよね?
…休日(非番)返上扱いだよね?きっと
…昼食はどうするんだろう?
「…ロカ、ちょっとこっち来て」
「はい?」
東仙から彼等の昼食について、何か聞いていないかを確かめた。
案の定、休日返上の緊急出動として扱う事、昼食は此方で用意すると説明したらしい事を伝えて欲しいと伝言があった事。
…嫌な予想的中しちゃったよ
…今何時だっけ?
…うわ、今からやらないと間に合わないかも
藍染に振り回されている東仙を気の毒に思うものの、そのしわ寄せを受ける此方としては、報連相の遅延はたまったものじゃない。
「…東仙統括官も、藍染様の無茶振りにてんてこ舞いの様でしたので」
「昼食担当のみんな、今すぐロカと一緒に厨房に戻ってくれる?メニューは混ぜ込みおにぎりと豚汁の予定だったけど、つみれと蕪入りの豆乳スープも追加してくれる?後、豚汁にはすりごまを、豆乳スープにはおろし生姜を多めで仕上げに入れて」
「「「「「あ、はい」」」」」
「ボクも戻ります。ボクは此処では殆どお役に立てないので」
「そもそも俺達は厨房担当だからな。温かい飲み物とかお菓子とかを提供する支援側に回った方が良いだろうし」
「…それもそうね。そうしましょうか」
取り敢えず、ロカ達に厨房の方を任せる事にした。
私はというと…
「ママ、ゆきうさぎできたよ~!みてみて~!こんどはね、ゆきだるまつくるの~!ママもやろ~?」
「は~い。…悪いけど厨房の方、お願いね。何かあったら直ぐに連絡してね」
「あぁ」
ずっと私の作業が終わるのを待っていたリッカが、ロウコと一緒に雪ウサギを大量生産していた。
…うわぁ、どれだけ造ったのかしら?
…ってか、此処通路の一部だから移動させないと
このままだとみんなに蹴られちゃうかも知れないからと、何故か先に完成している巨大かまくら(確認したら、食事処にする予定らしい)の周りに置かせて貰った。
そして、雪だるま造りを開始した。
「んしょ、んしょ…」
「よっと…」
絵本で見た3段重ねのが造りたいとのリクエストに応え、何度も向きを変えて出来る限り丸く、重ねる部分を削って乗せて、接合部に水に浸した雪をくっ付けて外れにくくして、同じように造った頭もくっ付けた。
「後はお顔と腕、帽子にボタン、マフラーを付けて完成ね」
「おかおやる~!」
「クォッ!」
ロウコに抱っこして貰って木炭で目と口、ニンジンで鼻を造った。
バケツに木の棒、手袋を風で飛ばないように紐で縛って固定して、豆炭でボタンを演出。
「良し…後はお揃いのマフラーを巻いてあげて」
「は~い!ぐるぐる~…できた!」
「うん、可愛く出来たわね~」
「うん!ママ、カメラカメラ!」
「はいはい…あ、もうちょっと雪だるまに寄って…うん、良し。じゃあ撮るわよ~、はい、チーズ」
「チーズ!」
「クォッ!」
カシャツ!
満足したリッカを連れて厨房に戻った。
昼食の時間になり、雪像造りに勤しむ破面達と死神達の所に食事を持って行った。
…あれ?さっきよりも死神増えてない?
今のところ、死神達の指示に従って破面達が雪像を造っているのだが…。
…朽木白哉が居る
…確か、朽木響河が非番で藤乃さんと紫さんを連れて来ていた筈じゃ無かったっけ?
周囲を見回せば、彼等は任された雪像造りをあれこれ言い合いながらも楽しげにやっている。
其処にルキアも混ぜて貰って、チャッピー造りに勤しんでいる。
尸魂界で人気のあるキャラクターも造ると予定にあったから、彼等はその担当らしい。
…うん、とても楽しそうね
…ただ、隊長と副隊長が来ているけど、大丈夫なのかしら6番隊?
…って、何勝手に予定に無い物を造ってるのよあの人は!?
ちょっと目を離した隙に、朽木白哉が勝手にわかめ大使を造っている。
…私達は何も見ていない
…ってか、何も見なかった
…そう、何も見なかったのよ私達は
「ママ?おにぎりもうないよ?」
「え?…あぁ、ごめんなさい。次のケース出さなきゃね」
自分の精神衛生上の観点から、朽木白哉のやらかしを見なかった事にした。
この後、勝手に予定外の物を造った事に対して朽木白哉と東仙、そして藍染の間でかなり揉めたらしい。
揉めに揉めた結果、このわかめ大使を隠す為に、追加で迷路を造るように通達が来て、みんなして荒れに荒れた。
「「「「「ド畜生がぁぁぁ!!」」」」」
「「「酒だ酒!呑まなきゃやってらんねぇぞ!!」」」
「あ~ぁ!明日なんて一生来なきゃ良いのによぉ~!」
「「「「それな!!」」」」
…そりゃ、荒れるよね。うん
思い思いのお酒を呷りながら不満をぶちまけるみんなを止める気には、流石に誰もなれなかった。
本来ならしなくて良かった筈の苦労の果て、姫様ご所望の滑り台と雪像、そして諸事情で追加した迷路が完成した。
虚夜宮雪まつり当日(四月朔日)。
「「きゃ~!」」
「~っ!!」
メノリはロカ達みんなの好意に甘えて、今回のイベントのメインのひとつ、3種類ある滑り台のひとつでリッカとナナゴウちゃんと一緒に滑っている真っ最中である。
…話に聞いてたよりも傾斜がキツくない!?
…しかも何か長い気がするんだけど!?
「ゴ~ル!」
「きゃ~!」
「…っはぁ~」
「ママ、だいじょうぶ?」
「な、何とか…ね。次はどうするの?」
「う~んとね~、めいろ!」
藍染がどうしてもわかめ大使を姫様に見せたくないからと、無理矢理造らせた迷路に行った。
この迷路はスタートとゴールが2ヶ所あって、途中にある幾つかの雪像と写真撮影が出来る仕様になっている。
因みに、この迷路を造る原因となったわかめ大使は、朽木白哉が見せたいであろう緋真さんと杏奈ちゃんにルキア、銀嶺そして蒼純にのみ隠し通路の存在を教えるという手段を取った。
…別に見せたところで姫様の精神がどうにかなる訳じゃないでしょうに
…精々、「これなぁに?」って、質問攻めされる可能性があるくらいで
…どれだけ嫌なのよ、あの過保護
「「ゴール(リュ)!」」
「おめでとうございま~す!ゴールのご褒美クジをどうぞ」
「「わ~い!」」
ガサガサ…
「「これ!」」
「えっと…ホットココピンとメロップクッキーの引換券ですね。はい、どうぞ」
「「ありがと~!」」
「良かったわね。早速貰いに行こうか?」
「「うん!」」
すっかり、尸魂界の子ども達の守り神扱いのアンオウエンを始めとする家族みんなの雪像そして、クッカプーロの雪像と一緒に撮影出来て大満足の2人を連れて休憩に入った。
…表に堂々と置かれるのは恥ずかしいとは言ったけど
…あの迷路に設置されるとは思わなかったなぁ
少々複雑な思いをしつつも、雪まつりを楽しんでいる2人の望むままに会場を回った。
「「おいし~!」」
「そうね。やっぱり寒い日はホットココピンが美味しいわ。後は…リッカの造った雪うさぎ探しね」
「うん!」
「ゆきうしゃぎいっぱい?」
「うん、いっぱい居るよ」
数ヶ所設置してある休憩ブースで戦利品のホットココピンとクッキーを堪能した後、それぞれの雪像の周りに設置した雪うさぎの中から〈目が赤くないうさぎ〉と〈身体の何処かに六と書いてあるうさぎ〉を探すゲームを追加して貰った。
雪像ごとに番号が振ってあるので、対象の雪うさぎが居る番号に○を付けて総合案内所に提出すれば景品が貰える仕様になっている。
…だって、折角リッカが頑張って造ったんだもの
…活かさなきゃ勿体ないじゃない?
「みつけたよ~!」
「おめめ、みぢょり!」
「あら本当ね。じゃあ此処に○を書こうね~」
「「うん!」」
…確か、全部で14個に設定したから
…後3つでコンプリートね
1匹1匹真剣に探す2人を微笑ましく思いながら、他の家族も同じように雪うさぎ探しに勤しむのを見遣った。
「「みつ(ちゅ)けた~!」」
「これで最後かな…うん、じゃあ案内所に行って見て貰おうか」
「「うん(あい)っ!」」
無事全ての雪うさぎを探し出し、景品を貰った。
「かわいい~!」
「にあう?にあう?」
「とっっっても可愛いわ!」
コンプリートの特別賞は、コストレイラさん特製の色が選べるウサ耳フード付きポンチョだった。
「やだ、ウチの子達可愛すぎ~!」
カシャシャシャシャ!
「ちょ、落ち着きぃや乱菊。他のお客さんの迷惑になっとるやろ」
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
「アカンアカン。ほれシン、リン、あっちでバロマナ出来立てらしいで、食べに行こか?」
「ばろまにゃ!?」
「「たべる~!」」
「あん、もぉ!待ってよ~」
…危ない危ない
…乱菊と同じ事するところだったわ
…人の振り見て、よね。うん
カメラをそっとポケットに仕舞い直した。
「「ママ?」」
「ん?何でも無いわ。後は…やってない事ってあったかしら…?」
「ちゅべりだい!」
「え?滑り台ならもう全部滑ったでしょ?」
「「これ!」」
「…え?何これ?〈裏〉滑り台?」
…本当に知らないのが最後に残ってた
どうやら、全てのイベントを熟した人限定のものらしい。
…何コレ?
其処には、表の滑り台よりも遙かに大きな滑り台…否、坂があった。
しかも、一部に〈特殊な形状〉の〈あるモノ〉が設置してある。
「あら、メノリじゃないの」
「チ、チルッチ…見当たらないと思ったら、此処の担当だったの?」
「そうよ」
「「こんに(ゃ)ちわ~!」」
「はい、こんにちわ。元気良いわね2人とも」
「うん!」
「ちゅべりだい!」
「ハイハイ、こっちよ。コレに座って上に行けば滑れるわよ」
「「わ~い!」」
…本当にコレ滑らなきゃならないの?
リフトで上りながら口元が引き攣るのを堪えながら、ウキウキワクワクしてる2人に相槌を打つのがやっとであった。
頂上に上り、特注のソリにしっかり固定された。
流石に、滑る前に確認しない訳には行かなかった。
「…ねぇ、本当に大丈夫なの?2歳児が滑っても安全なの?」
「設計上は大丈夫だと窺っておりますよ」
「設計上って…」
「先程、志波家のご長男の…隼颯君…でしたか?…が志波様と共に滑り下りて行くのを確認しましたし」
「えぇ…!?」
…本当に大丈夫だったのそれ!?
…だってコレ、どう見ても
これから滑る坂を見遣る。
表のよりも傾斜が更にキツく、坂の途中には〈特殊な形状〉の〈あるモノ〉…自己主張の激しい、所謂ジャンプ台が何度目を凝らしてもある。
その大きさからして、現世の冬季オリンピックの競技で見た事のある〈アレ〉にしか見えない。
「「「では、行ってらっしゃいませ」」」
「「は~い!」」
「ちょ、ま、心のじ」
パッ…ヒュンッ!!
「「きゃ~!」」
「ひいっ…!」
凄いスピードのまま、あっという間に問題のジャンプ台に到達、私達は文字通り飛んだ。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!誰よぉぉぉ!!??ラージヒルなんて造ったのはぁぁぁぁぁ!!??」
半泣きで絶叫する羽目になった。
「ママ?」
「だいじょうぶ?」
「は、はは………ちょっと休ませて…」
その後、無事に着地したものの、暫くの間腰が抜けて動けず、2人に心配されてしまった。
…さ、流石はあの涅マユリの娘達ね。強いわ
…取り敢えず、当分滑り台は遠慮したいわね
今回、可愛い可愛い愛娘の為にと藍染が暴走、彼方此方に迷惑をかけまくっての雪まつりが急遽開催されました。
姫様は勿論、子ども達が楽しく遊べたので結果オーライです。
…どさくさに紛れてメノリも親バカ発動してる気が…?
次回は、瀞霊廷通信の取材の話でも。