お..遅くなってしまい申し訳ありません...。最近は絵描くのにハマってしまいました..
古市と男鹿とベル坊が魔界から帰っていく様子を遠くから黒髪の長髪の男が見届けていた。
「......」
その男は徐に懐に手を入れ通信機を取り出す。通信機のスイッチを入れ、一定のリズムでマイクの部分を叩くと通信機から声が聞こえくる。
『....アスランか..首尾はどうだ?』
「..蝿の赤子は契約者と共に人間界へと戻りました」
『そうか..それは僥倖。蝿の赤子が魔界へ帰ったと聞いた時はさすがに肝を冷やしたぞ』
通信機の向こうの声は安堵の色を見せた。一息ついた様子を見せたのち更に声が続く。
『蝿の赤子はどうだ?頃合いか?』
『...いえ、契約者が未熟故に.....もはや殺して貴方様に献上すべきかと思案するほどに..。しかし』
『....しかし?』
『それは未だ時期尚早かと判断いたしました』
アスランと呼ばれる男の言葉に通信機の声は一度止まる。
『...それが良い..たとえヴラドの土地とはいえ、魔界で蠅の赤子を殺せば王家が面倒になる...』
「仰る通りです」
『あの忌まわしきうつけの気まぐれのお陰で赤子は奴の手の届かぬ人間界へ来ているのだ..焦る必要は無い」
「は...」
『お前はそのまま王家の動向を探りつつ、戦力をこちらに送れ。こちらも商会を使って準備を進める....オマエの悲願が成就する日も遠くないぞ?アスラン』
「...待ち遠しいものです」
通信が切れアスランと呼ばれる男は懐に通信機をしまい、目をつむる。何かを思い浮かべるように。
やがて蜃気楼のようにその場から姿を消したのだった。
9月1日 午前7時15分
夏休みも終わり久々の制服に袖を通したワタシは、幼馴染である男鹿を迎えに行くためにアイツの家まで来ていた。
文字だけを見るとまるでベタベタな漫画の展開だなと考えつつケータイに電話をかけても反応がない。するとタイミングよく男鹿のお母さんが出てきて、リビングに通してくれた。
「はいお茶。今辰巳呼んでくるから」
「すみません...こんな朝早くに。」
「いいのよ!そもそもあの子が起きてこないのがわるいんだから!」
男鹿のお母さんが2階の部屋へ怒鳴り込んでいく間、出してくれたお茶を嗜みつつリビングのTVを見る。この時間帯には国民的アニメのゴハンくんがやっていた。
「おはようござい...む?ツムギではないか」
「おはーヒルダ。お邪魔してるよ」
どうやら身支度を済ませたばかりらしいヒルダが髪を整えながらリビングへ入ってきたので挨拶。
「うむ。おはよう。今日はどうした?」
「どうしたもこうしたも、今日からまた学校だからね。いつも通りアイツを迎えにきたの」
「...そうか。今日からまた学校とやらが始まる訳か」
そのままヒルダと一緒にゴハンくんを眺めつつ世間話に花を咲かせていると2階から2人分の足音が聞こえてくる。
「早く準備済ませちゃいなさい!また紬貴ちゃん待たせてんのよ!」
「ふぁあ...なんだってこんな朝早くに来てんだ?」
叩き起こされたらしい未だ眠そうな男鹿はぼやきつつ椅子に座って朝食を食べだすのでワタシも男鹿に近寄り、隣で眠そうに哺乳瓶を咥えるベル坊の頭に優しく頭を乗せる。
「おはよう男鹿。おはようベル坊」
「ダ」
「おー古市。...ふぁ..どーしたんだよこんな朝早くに」
「やっぱり今日から登校日なの忘れてんね?」
やはりコイツは今日も夏休みを過ごす気だったらしい。この様子だと学校からの知らせは見ていないだろうが念のため確認だ。
「それに今日からはワタシたちは転校すんだよ?」
「転校?なんだそれ」
「やーっぱ見てないね。まぁ転校ていうか校舎が直るまで間借りさせて貰う形だけどね」
「ほー...」
ワタシの親切な説明に男鹿は興味なさそうに気の抜けた声を漏らしてくれやがったのでワタシは男鹿の目玉焼きの横に添えられている2本のシャ⚪︎エッセンを横取りする。
「テメェ!!!なにしやがる!!」
「へへーんだ!これ以上喰われたくなきゃさっさと用意すませろ!!」
ワタシは見せびらかすようにシャウ⚪︎ッセンを口に放り込む。
「あぁ..美味しい!パリパリシャ⚪︎エッセンおいしーっ!!」
「このヤロウ!!」
その後もぎゃあぎゃあ喧嘩しながらワタシ達は登校するために出ていくのだった。
「...騒々しいものだ」
その喧騒を何も言わずにお茶を飲んで聞いていたヒルダがぼそっとこぼす。
9月1日 午前8時15分
「この駅で降りるよ」
「おー」
「アイッ」
ワタシの声に返事してくれる男鹿とベル坊と一緒に電車を降り、改札を抜けていつもと違う通学路を進む。
「しっかしよ..転校つってもうちの生徒めちゃくちゃに多いだろ。どーすんだ?」
「いくつかの学校に分散させんだってさ」
男鹿の問いかけにワタシは答える。ちなみにこれも学校からの知らせに書いてあったものだ。
「いくつかの学校...?」
「そ。ちなみにこれからワタシ達が行くのは..ここ聖石矢魔学園」
タイミングよく今日から通うワタシ達の学校(間借り)についた。校舎はウチのよりも遥かに綺麗で、周りの登校している学生達も皆爽やかだしイカつくない。
「キレーな校舎だなぁ..ウチとはえらい違いだ」
「比較対象がおかしいと思うけど...確かに立派な校舎だよね」
綺麗で立派な校舎を見上げつつワタシ達は校舎に入るために歩みを進める。
「見てよあれ!」
「あの制服...石ヤバのじゃね?なんで子連れ?」
「あの話ホントだったんだ...やだなあ」
「うぉ見ろよ!あのヤンキーが連れてる女!」
「めっちゃ美人やんけ!?羨ましい!」
やはり違う制服というか、石矢魔の生徒であるワタシ達は目立ってしまうようで遠巻きに見られ、世間話のネタにされていた。
とりあえずワタシは男鹿を肘で小突く。
「ねぇ聞いた?めっちゃ美人だってワタシのこと!いやぁー罪な女ですなワタシは」
「そーだな。そいつは眼科行ったほうが良いよな」
「ふざけんな!」
「イテェ!?」
失礼なことを言ってくるコイツのケツを思いっきり蹴る。
「全く...少しはワタシみたいな美人な幼馴染がいることに感謝してほしいね」
「...だったらテメェは中身から直しやがれ..特にその足癖...!!」
「バカなこと言ってないで行くよ。ワタシ達の入り口はこっちの方だから」
「..絶対後で殴る...」
そんなことを言ってる男鹿を連れてワタシは石矢魔の生徒専用の入り口から校舎へ入っていく。
これから間借りさせて貰うのは聖石矢魔の校舎の端っこの方で、トラブルを起こさないようにここの生徒たちが使うエリアは立ち入り禁止となっている。
「...えーと?ここだな」
新しい教室に着いたので扉を開けるとそこには予想外の顔ぶれがいた。
「あれ?葵?」
「おはよう紬貴」
何故かワタシ達の教室に葵がいた。いや葵だけではない。神崎や姫川、東条の東邦神姫の4人が揃っており、他にも寧々や千秋などの烈怒帝瑠の面々や東条のとこのグラサンと色黒さんなど学年がバラバラな奴らがこの教室にいる。
「あれー葵じゃん?なんで?留年?」
「..仮に私が留年だとしても同じ教室はおかしいでしょ..。学校の意向よ」
「そっか。でも一緒のクラスは嬉しいよね。今日からよろしく」
「よろしくね。...お、男鹿もよ..よろしく」
「おー」
眠そうに葵に返事をする男鹿の後ろがワタシの席らしい。鞄を置いて、辺りを見渡すと最近できた友人見つけたので話しかけにいく。
「おー城山じゃんか。おひさ」
「..あ、あぁ」
「元気してた?夏休みなにしてた?」
「お..おう。俺は神崎さんの..」
「おいコラ」
城山を見つけたので友情を深めるべくお喋りしようと机に腰掛けると後ろから肩を掴まれる。
「何ウチのモンにちょっかいかけたんだ?あ?」
「..何さ?友達に挨拶すんのがおかしい?」
「誰が友達だ。俺ぁ認めた覚えねぇぞ」
「そんなの誰も求めてないけど」
「あ?」
「お?」
火花が散るほど睨み合うワタシと神崎。
「大体よぉ...なんでテメェらまで同じクラスなんだよ一年坊..!」
「知らないよワタシに文句言わないでよ」
「何が悲しくてテメーらと同じ教室にいなきゃいけねーんだよ!!」
「だからワタシに言うなや」
理不尽な文句をワタシに言われてもどうにもならないし、どうにもできない。そう考えているワタシに
「それはこっちのセリフよ。ただでさえヨーグルト臭い奴の後ろの席なだけで気が滅入ってんだから、さっさと紬貴に絡むのは辞めな」
「ヨーグルトじゃねぇ..ヨーグルッチだ!んなことも分からねえのか?腕だけじゃなくてオツムも足りてねぇんじゃねえか?」
「「あ゛?」」
救世主ではなく
「まぁまあいいんじゃないの?」
そんな風にワタシ達の睨み合いを仲裁してくるのは立派なリーゼントを持つ姫川だっ
「オレは悪くないと思うぜこのクラス...特に席順が良い。ねぇ?葵ちゃん」
「別に?..い、良いとか悪いとかじゃないし先生が決めたことなんだから仕方ないじゃない」
ポチポチケータイを片手でいじる姫川に話しかけられる葵は頬を染めてチラチラとベル坊と共に寝ている男鹿の方を盗み見ている。
その後葵にナンパするグッナイくんが千秋に額を撃ち抜かれたり、東条がバイトに行きたがったり、MK5が空気読まなかったり、ワタシと神崎が城山を取り合ったりとぎゃーぎゃー過ごしていると、唐突に教室の扉が開かれる。
「静かに。席につけー」
入ってきた男は髪を後ろに流しサングラスをかけた風貌であり、すぐさま黒板に名前を書き始める。
「というわけで今日からこのクラスの担任をうけもつことになった、佐渡原だ。よろしく」
俺は佐渡原巧。この聖石矢魔学園で働いている教師だ。
しかし今日からこの学園から悩みの種が外からやってくる。それは悪名高いかの石矢魔の生徒がこの学園の一角を間借りする形でやってくることだ。
それはそれは大問題であり、実際保護者の方々からとんでもないほどクレームが連日来ていた。数日は夜遅くまで残らないといけないほどで俺はもちろんら他の教師の方々と疲れている。
その上で誰かが奴らの担任ならないといけないと聞いた時は誰もが嫌がった。当然だ。皆教師であって飼育員ではないのだから。
だが校長は俺の腕を期待して指名してくださった。ならばやってみせる。
「聞けば君らはあのゴミ高校の中でもトップクラスのゴミらしいが...最初に言っておくぞ。この聖石矢魔学園に来たからには今までのような生活が送れるとおもうな?」
こういう輩を相手にする時は最初が肝心。舐められないよう常に眉を顰めて目つきを悪くするのも忘れない。
「反抗的なもの。暴力を振るうもの。ルールを守らないものには停学や退学など厳しい処分があると思え」
よしよしいいスタートだ。俺の迫力と警告にビビって言葉も出ないみたいだな。*1
だが念には念を。1人、2人見せしめにしよう。まずはこのリーゼントからだ。
「おい貴様。なんだそのシャツは..指定の物ではないだろう?脱げ」
「......やなこった」
「ほう?停学になってもいいのか?」
「ククッバーカ。テメーこそ言葉に気をつけな。教員1人クビにするくらい訳ねぇんだぜ?」
なにを言っているんだコイツは。そう困惑しているといきなり肩を組んできてケータイを見せてくる。そこには.....
「.......!?」
「佐渡原巧...27歳独身バツイチ。そして..あらーいいのかね聖職者がこんな店を出入りしちゃって」
なんなんだ...なんなんだよコイツ。こんな情報どこから..。マズイ。流石にこんなの広められてしまっては教師生活が終わってしまう..!!
「じょ...冗談だよ。いいシャツだね」
「ありがと」
え..選ぶ相手を間違えてしまった。まぁいい..脅しはやめてもっと単純に腕力でいこう。
所詮は腕力に物を言わせている連中だ。頭をひねれば逆らってこなくなるだろうさ。
「よーし。それじゃちょっとした親睦も含めて腕相撲しよう。この中で1番腕っぷしがつよいのは...」
当たりを見渡すと明らかに1人ガタイが周りよりも一回りも二回りも大きい男がいた。
「君だな?雰囲気で分かるよ..どうだ?」
「んぁ?...あぁでも勝てるかなぁ」
クックック。残念だったな..こう見えても俺は学生時代アームレスリング部で無敗を誇った男...人呼んでゴールデンアーム佐渡原だ。
教卓で向かい合い、腕相撲の姿勢をとるが..ホントにデカいな..コイツ。
「それじゃ始めようか?」
「......」
「レディ.......ゴ!!!?」
轟音が響いたかと思えばワタシは逆さまになって黒板に埋まっていた....。
「あ...やべ...やりすぎた」
「は....ハハハ..いやぁキミ中々強いじゃないか..。ハハ..いやぁ参ったな..今日はイマイチ調子が悪かったよ...ハハ」
おっ俺のゴールデンアームがァァァァあ!?
痛い!?折れてないこれ!?バキッて言ったよね!?教卓も壊れてるし!!?
しかしこれじゃ俺のメンツが丸潰れじゃねぇか!なんとか...なんとかしねぇと...!ん?
「..かー...ふゅ〜...かー..」
おお!!この上ないカモ!!なんで子連れなのかは知らねーけどこいつしかいねえ!!
「おい!君!!起きなさい!!」
「んぁ?」
「授業中に何居眠りしているんだ。大体なんだその赤ん坊は?ここは保育所じゃないんだぞ?」
「はぁ」
よしよしこの弱っちそうな奴をとりあえず見せしめにして面子を保つぞ...
「ちょちょ!先生..!!コイツは..!」
「キミは黙ってなさい!!!」
うぉ!?めっちゃ銀髪美人!!しかしコイツを庇うってことはそういう仲か?尚更許せん!!
ただでさえ俺はつい先月離婚させられたばかりだってのによ..!!俺はコイツの首根っこを掴んで教室を出る。
「とにかく!職員室まで来てもらおうか!!」
「お...おい!?」
「.....アウ..」
「げ!?」
ん?今のは赤ん坊か?乱暴に廊下まで連れてきたから起きてしまったのか?
「むぅ〜〜〜〜〜〜」
な..なんだ?急になんか火花が...
「ダーーーーーーーーーーー!!!」
「「ぎゃあああああああ!?!?」」
廊下から響いてくる2人の断末魔と青白い閃光で古市は何が起きたのかを察してため息をこぼす。
そして教室の後方に座っている城山は今までの一連を見て言葉を漏らした。
「.....カオスだ..」
「...ヒー...ヒー..も.もう最高」
隣の夏目は笑いすぎて呼吸困難になっていた。
ちなみに佐渡原先生はしばらく病欠となり、石矢魔の面々は数日間一日中自習の日々を過ごすのだった。
思ったより進まなかった..反省。でも佐渡原先生嫌いじゃないんや