TS異能力古市   作:ブッタ

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第17話 新たにトラブルの匂いがします

 

 9月の上旬、石矢魔高校が男鹿によって瓦礫の山となった為に聖石矢魔学園へ通うことになった3日目の朝。

 次のお小遣い日まで昼ごはん抜きのワタシはお母様のお慈悲で頂く貴重な朝ごはんを大事に食べ終え、いつも通り男鹿を迎えに家まで来た。

 

 しかし、そこには見知らぬ聖石矢魔の男子生徒がいた。..どこか見覚えがあるけど思い出せないソイツはインターホンの前でうろうろしている。

 

 ...不審なヤツめ..

 

「あのー。そこの家になんか用?」

 

 警戒しながら声をかけたもんだから我ながら中々にぶっきらぼうな声が出た。

 

「あ..すいま..うぉ!古市さん!?

「んぁ?誰?」

 

 ソイツはワタシのことを知ってるらしく、人の顔を見るなり吃驚した様子で名前を呼んで来た。

 ワタシがその事に片眉を上げていると急にソイツが両手膝に乗せて頭を軽く下げる。

 

「おっ..おはようございます古市さん!!!自分、今日から男鹿さんの舎弟やらせて頂きます!!山村和也と申します!!!」

「..舎弟ぃ?」

 

 舎弟。その言葉を聞いてワタシの脳裏に昨日のある光景が浮かび出す。それは...

 

「...あぁー。昨日いきなり男鹿に土下座して来た人質の子!」

「ひょっとして今まで忘れてました...?」

「うん」

 

 あの時はお腹空いていて、脳ミソ使ってなかったから仕方ない。そういえばあの後もコイツがついてきて男鹿や葵が困ってたような気がしたけど、商店街のコロッケの匂いに集中していてそれどころじゃなかったな...

 

 いやそんなことはどうでも良くて。なぜか膝を抱えてる舎弟くんにワタシは声をかける。

 

「それで?そんなキミが朝から一体なんの様?」

「...は!そうだった!オレ、男鹿さんのお迎えに来たんです!カバン持ちとか!」

「そーなんだ。じゃさっさと呼ばないとそろそろ電車間に合わないよ」

「そ..それがちょっと心の準備を..」

 

 そんなことは気にせずインターホン鳴らす。

 

 動揺した様子の舎弟くんをよそに家の方から凛とした声の返事が聞こえる。玄関が開かれるとそこには腕の中でベル坊にミルクを飲ませているヒルダが出てきた。

 

「おはようツムギ」

「おはようヒルダ。ひょっとして朝ご飯中だった?ごめんね?」

「いや気にするな。私は既に終えているし、アヤツももうじきだ」

「そっか。ベル坊もおはよう。いい飲みっぷりだ」

「ンマー!」

 

 ヒルダが門扉を開けて中に招いてくれたので遠慮せず中へ進む。するとヒルダは舎弟くんに気がついた。

 

「む?そちらはツムギの知り合いか?」

「んーん。そっちは男鹿の連れ」

「アヤツの?」

 

 男鹿の知り合いが意外なのか少し目を見開くヒルダ。まぁ確かにアイツは友達ができるよーな奴じゃないけどね?

 

 そしたらヒルダに驚いて口をあんぐり開いていた舎弟くんが正気を取り戻しもう一度ワタシにした様に挨拶をする。

 

「お初にお目にかかります姐さん!自分今日から男鹿さんの舎弟やらせていただきます!!山村和也と申します!!男鹿さんの奥さんですね!?以後お見知り置きを!!」

「ほう?..ほう、ほう!舎弟か!」

 

 挨拶を聞いたヒルダは好感触なのか意外にもどこか嬉しそうな反応を示す。

 すると家の中から箸を咥えたままの男鹿がひょいっと顔を出してくる。

 

「げ...てめぇマジで来たのかよ」

「あ!アニキ!!お迎えにあがりました!」

「来てんじゃねーよ....」

 

 どうやら男鹿は舎弟のことを認めてないらしいが、舎弟くんはめげずに着いていくようだ。不良漫画でよくある展開だ。

 

「男鹿。まだ朝飯かかる?」

「もう食い終わるわ。ベル坊もちょうど飲み終わったみてぇだし少し待っとけ」

「あいあい」

 

 そう言われたので玄関土間に腰掛けて、カバンに入れたジャ⚪︎プ読んで待たせて貰うことにする。

 男鹿は中に戻っていき、それをヒルダは追うように続いて中に入っていく。

 

「それよりも..舎弟とは家来のことだな?..フン。少しは出世したではないか?」

「ダーブダ」

「アホか..そんなんじゃねーよ」

 

 やっぱりどこか嬉しそうだなヒルダ。

 

 

 結局ワタシ達が舎弟くんを連れて学校へ向かうときもヒルダの機嫌は良く、今まで見たことないぐらいニコニコした顔で見送ってくれた。

 

「...ナンだありゃ」

「ヒルダのあんな顔初めて見たよ」

 

 ヒルダの見たことない表情にワタシと男鹿が困惑しているのとは反面、舎弟くんは手を振るヒルダに嬉しそうに手を振りかえす。

 

「あっカバン持ちますよアニキ!」

「いい」

「そっすか..いやぁそれにしてもさすがですね!まさか奥さんが外国の方とは...しかもすんごいグラマー美人!!それに古市さんもいて両手に華って奴ですね!!」

「いやワタシをまるで男鹿のハーレム一員みたいに言わないで」

「え..違うんですか?噂じゃアニキが赤ん坊作っても離れていかないほど惚れ込んでいて健気な人だと..」

「違うわい!!なんじゃその噂!?!?」

 

 わけのわからない噂にワタシはつい仰け反ってしまう。ふざけんな誰だそんな噂流した奴!!!

 

 すると黙っていた男鹿がワタシ達の後ろを歩く舎弟くんに顔を向けた。

 

「うっせぇぞてめぇら..そもそも昨日から言ってんだろ俺はテメェのアニキじゃねーし。着いてくんなっつーの」

 

 しっしっと手で払うと、男鹿は歩みを早めワタシも置いてかれないようにスピードを上げる。

 

「そんなぁ..待ってくださいよアニキ!!」

「アニキじゃねぇって」

「オレ..本気なんです!!本気で男鹿さんの強さに憧れてるんです!!」

 

────ピクッ

 

 おや?男鹿くんの様子が....!?

 

「もはや伝説ですよ!!たった1人で石矢魔の東邦神姫を制して頂点(テッペン)とった最強の一年生!!」

 

─────ピクピクッ

 

強くなりたいんです!!オレも!!男鹿さんみたいに!!なんで兄貴と呼ぶのは当然..いや呼ばせてください!!

 

 

 

「───────...しょうがないなぁ〜もう」

「いやちょろすぎか」

 

 女騎士並に秒で落ちた幼馴染にチョップをかます。なんだその表情。それも初めて見たよ。

 

「まぁ?いいんじゃねぇの?アニキと呼んでも」

「ホントですか!?」

「だからちょろすぎだよバカ」

「ノン。バカじゃない!!アニキだ!!」

 

 もーすっかりその気になってる男鹿に呆れる。どうせ舎弟なんざ持っても教えるなんて器用なことできないコイツはそのうちワタシに押し付けて来るのは目に見えている。

 そんな未来を回避する為ワタシは説得しようと口を開く。

 

「どっちでもいいわバカアニキ」

「繋げるよくない!!」

「..はぁ。あのねアンタが神崎や姫川みたいに器用に出来るわけ...」

 

「オレ、アニキだけじゃなくて古市さんにも憧れてるっす!!」

「は?ワタシ?」

 

 なんか男鹿の方だけじゃなくワタシの方にも矢印を向けられたんだけど...?

 

「そうっす!!さっきの噂のように男鹿さんから離れないほど健気でありながら..!」

「いやだからそれは...」

「男鹿さんが背中を預け、隣に立つ唯一無二の相棒!!」

「あ..相棒...」

 

────ピクッ

 

「男鹿さんが東邦神姫に挑むときも勝てるように陰から導いた姿はまさに智将!!」

「...智将」

 

─────ピクピクッ

 

 

「超美人で頭もキレるとか超カッコいいっス!!!」

 

 

 ワタシは男鹿の肩に手を置く。

 

────いい奴じゃないか

────だろ?

 

 

 なんかんだ似たもの同士な2人であった

 

 

 

 

 

 

 学校に向かう為に電車に揺られるワタシ達3人。そんな中ふと気になったことを私は聞いてみる。

 

「そういや山村君はなんで男鹿なわけ?」

「あ、カズと呼んでください!」

「いや山村くんは男鹿の強さに憧れたってのは聞いたけど....聖石矢魔に不良っていないの?」

「そうスッね....基本優等生の学校なんで...まぁ強い人はいるんすけどオレは不良のが憧れるっつか..」

 

 聖石矢魔は坊ちゃん高って呼ばれるくらいだし不良なんていないのだろう。しかし...

 

「優等生の学校ねぇ....やっぱワタシらを校舎に受け入れるってなった時は結構荒れたんじゃない?」

「そうですね..実際生徒達の不満もそうスけど、特にPTAや保護者からがやばかったらしいです。かくいうオレの親も結構反発していて..」

「そりゃそうだ。自ら要らない爆弾抱え込むようなもんだしね」

 

 想像通り学校側も結構無茶をしてくれたらしい。感謝感謝。

 そう考えていると唐突に男鹿が口を開く。

 

「いるの?」

「え?」

 

 主語がなく素で聞き返してしまう山村くん。しかし男鹿は気にせず言葉を続けていく。

 

強い奴

 

 男鹿が気になったのはそこらしい。山村くん目を少し見開くと少し焦ったように口を開く。

 

「い..いや強いって言っても全然別次元の人達ですよ?」

「「別次元?」」

「あ...いやだから」

 

 別次元という言葉にワタシも聞き返してしまう。

 

 山村くん曰くその強い奴ってのは剣道やボクシング、空手に色々な競技でインターハイに出場するようなエキスパートの人達らしい。

 

 聖石矢魔はもともと部活動が盛んでインターハイに出場するエキスパートがごろごろいるらしいがその中でも毎年6人が選ばれ学校を取り締まるんだとか。

 

 その6人を聖石矢魔部長連合六騎聖

 

 この6人がいるおかげで聖石矢魔には不良なろうとする人はいないとのことだ。

 

「つまりあれだね?ワタシ達はそのロッキセーってのに目をつけられてるわけだ」

「いやいや..問題さえ起こさなければ大丈夫ですよ。多分」

「問題ねぇ...?」

 

 問題起こさないなんてそれこそ無理そうだなとワタシは考える。

 

 すると突然男鹿が笑い声を上げる。

 

「フフフ古市君。俺わかっちゃいました」

「は?何が?」

「何故今までの奴らにベル坊は懐かなかったのかだよ」

「.....まだ諦めてなかったの?」

 

 随分と懐かしい話題を出してきたなコイツ。一応聞くだけ聞いてみることにしてみる。

 

「んで何がわかったのさ?」

「...バカはダメなんだ

 

 

 そんなことを言ってくる男鹿にワタシは一つ引っかかることがあるので

質問をする。

 

「それは何か?ベル坊に選ばれなかったワタシはアンタよりバカだって?」

「いや、バカで弱っちぃってことだ」

「ふざけんなコラ」

 

 ド失礼なことを抜かしてくるコイツを睨むがそれもどこ吹く風。歩みを進めながら男鹿は言葉を続ける。

 

「いいか古市。当面の目標はオレより頭のいい六騎聖とやら捜すことだ!」

「そんなん全員だろアホ」

「ノン!!アホじゃない!!」

 

 ──男鹿がベル坊を押し付ける為に六騎聖を捜す。 それは男鹿が東邦神姫を制した時と全く同じ動機。

 つまり新たなトラブルが起きるってことなのだろう。平穏とは程遠い未来につい息が漏れてしまうワタシなのでした。

 

 

 

 これから巻き起こる新たなトラブル。確かにそれは男鹿も関わることになるが、その火種は古市自身となることを彼女はまだ知らない。

 

 


 

 教室に入り今日も今日とて自習の時間を過ごす。席についておきにの棒付き飴を咥えるワタシは少し気になることがある。

 

「....なんか..人数減ってない?」

「あん?そうか?」

 

 ワタシの言葉に前に座っていた男鹿が反応を示すが気づいてなかったらしい。

 辺りを見渡せば人のいない空っぽの席がちらほらと見える。

 

「ほら前列のMK5とかグッナイくんも居ないし...あ、東条とかも居ない」

「あー」

 

 男鹿と話していると横を歩いていた男から野太い声で話しかけられる。

 

「東条()()だ」

「あ!..グラサンパイセン」

「庄司さんだコラ」

 

 トイレから戻ってきたのか席に戻る途中で訂正するようにグラサンパイセンが話に混ざってきた。

 

「そんでグラサンパイセン。東条さんは?」

「バイトだよ。バイトの虫だからな..あの人」

 

 やっぱり東条はサボりらしい。いやこの場合サボりなのだろうか?そんなどーでもいい考えを巡らせているワタシにグラサンパイセンは気になる事を話し出す。

 

「まぁMK5はどーか知らねぇが..妙な噂が流れてる。お前らも気をつけたほーが良いぜ?」

「....妙な噂?」

 

 

「────六騎聖..アタシも聞いたよその噂」

 

 斜め後ろから芯の通った声がかけられる。そこにはトレードマークの特攻服を羽織った寧々が真剣な表情をしていた。

 

「ウチら石矢魔を追い出そうとしてる奴らがいる...MK5達をやったのもきっと..」

「その六騎聖?」

 

「ハッなにビビってやがんだ..情けねぇ」

 

 おっと?ワタシの隣の神崎くんが寧々に喧嘩を売り始めたぞ?嘲笑する神崎の後ろの席の寧々は青筋を浮かべている。

 

「....は?」

「その噂が本当だとして、こんなショボい学校の奴にやられる奴らが雑魚なだけだろ。まったく石矢魔の恥だぜ..」

「いきなり何アンタ..構ってほしいんですか?あ?」

 

 青筋を浮かべる寧々は立ち上がって神崎の胸ぐらを掴み上げ、神崎も眼光を射殺さんばかりに鋭くする。

 

「...どこ掴んでクソアマぁ..殺すぞこら」

「上等よ..やってみろ」

 

 喧嘩が始まり、周りもプロレスの観客ばりに野次を飛ばして囃し立てる。もはや教室は一瞬にして血の気溢れるリングへと変貌したのだった。

 

 もはや寧々と神崎の殴り合いは不可避。会場のボルテージが上がっていくのを感じていると、そこに待ったをかける人物が教室へ入ってくる。

 

「やめなさい!!」

 

 鞄を肩にかけた葵だった。まさしく鶴の一声で野次でいっぱいだった教室はピッタリと静かになり、葵へ視線が集まる。

 注目を浴びる葵は全く気にせず、その姿は女王を思わせる堂々とした態度で歩いてこちらへ来る。正確には男鹿に。

 

「....男鹿..

「んぁ?」

「──ちょ...ちょちょちょ....ちょ、ちょっと..つ付き合いなさいょ.....」

 

 気にしてないんじゃなくて余裕がないだけだったわ。顔真っ赤にしてそんな事を言ってる葵はひじょーに乙女だった。

 

 静かになっていた野次馬も唐突な葵の行動に野次を飛ばす。しかし先程の威圧的なものとは違い、まるで恋人がイチャついている姿を外野がそとから茶化す中学生のようだ。こ れ は ひ ど い

 

 そんな雰囲気な外野に言い返して鎮めようとする葵に、今まで静かにケータイをいじっていた姫川が冷静に言葉を紡ぐ。

 

「────お前ら帝毛の奴らと揉めたんだって?」

「「.....っ」」

 

 その指摘にワタシと葵が息を呑む。しかし姫川が続けて口を開く。

 

「ヤバイんじゃねーの?転校したてだってのよ。結構問題になってるらしいぜ?」

 

 そう。あの程度のいざこざは石矢魔にいた頃は何ら問題ではなかったが今はそうではないのだ。普通の高校ではそもそも暴力沙汰自体、大事件だ。

 

 やはり先程の発言は男鹿と葵が先生方に呼び出されているからということで、葵は男鹿の腕を掴んで強引に職員室へ向かった。

 ワタシは?と考えたがまぁ喧嘩には参加してなかったから難を逃れたのかもしれない。ラッキー。

 

「あー...男鹿も行っちゃったし..昼はどーしよかなぁ」

「それじゃウチらと昼飯食わねっスか?ツムッち」

 

 その声に振り向けばそこには綺麗に朱色に染められた長髪に花の髪飾りをつけた女子と威圧的な目つきでマスクをした金髪の女子生徒が各々の昼飯を持っていた。

 

「おー?ゆかちー。それに涼子も」

「どうスか?久々に一緒に昼飯」

「ちょうど葵姐さんも行っちまったしな」

 

 昼飯に誘ってくれている友人2人。しかしワタシは今...

 

「行きたいのは山々だけどさ...今昼飯持ってないんだよぉ..お金無いし..」

「なに言ってんスか!そんなんウチらの分ければ解決じゃないっスか!ね?」

「あぁ。それに今日はオレの昼飯少し多くて、食べてくれると助かる」

「...おぉ..ゆかちぃ〜..りょぉうこぉ〜...」

「「うぉ!?」」

 余りの優しさにワタシは涙がちょちょぎれて、嬉しさの余り抱きつく。

 

「ありがとぉ..これでワタシは今日も生き残れるよ..」

「大袈裟だな..」

「寧々先輩とアキチーもどうスか?」

 

「あたしは姐さんを待つわ」

「..私も」

 

 千秋と寧々は葵を待つことにするらしい。なれば早速ワタシ達は教室を出て、昼飯を食べに行く。

 

「どこで食べるの?」

「外っス。ウチらが行ける場所でいい場所最近見つけたンスよ」

「へぇ..そりゃいいね」

「あ!やべぇ飲みもん忘れちまった..」

 

 すると涼子が思い出したかのように声を上げた。飲み物を忘れたらしいがここはワタシの出番だ。

 

「そんならワタシ買ってくるよ!」

「いいのか?」

「もち!昼飯食べさせてくれんだからね。....ただお金がないから涼子のお金預かることになるけど..」

「そんなの気にすんなよ。んじゃ千円もっていきな..そんでアンタの分のジュースも買ってこい」

「えぇ!?いやいや流石にそこまでは...」

「遠慮すんなよ」

 

 男前すぎる涼子の後ろにワタシは後光が指しているように見えた。

 

「ありがとう...!!この恩は来月必ず返すから!!」

「てかジュースも買えないとかどうしたんスか?」

「新作の8万のゲーム機買った」

「パネェ!!」

 

 ワタシはすぐさま涼子様の希望を聞いて近くの自販機に向かって小走りでやってきた。

 自販機の中は至って普通のラインナップ。さっさと飲み物買って2人に合流しよう。

 

「えーと..涼子は麦茶か....おっあった」

 

 

 

 

「古市さん」

 

 

 

 涼子様の麦茶を購入して下から取っていると、後ろから名前を呼ばれた。その声は穏やかで落ち着きのある聞き覚えのない男性の声だ。

 そちらへ視線を移せばそこには聖石矢魔の制服をきた男子生徒が1人。

 

 

 

「久しぶり..てゆーかオレの事覚えてる?」

 

 

 

 ソイツは短髪で純朴そうな童顔で、左右の涙ほくろと左頬に走る二筋の傷が特徴的だった。

 

 

 

「よく君達に泣かされたんだけどさ」

 

 

 

 けれどソイツがワタシを知っているようにワタシもソイツを知っている。

 

 

「男鹿とは一緒じゃないのかい?」

「────三木...」

 

 

 なんせコイツとワタシ、そして男鹿は同じ中学の友人だったのだから....

 

 

 

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