TS異能力古市   作:ブッタ

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第19話 ブッ殺しに来ました。

 

「本気でお相手しまショウ」

「後悔すんぞ?」

 

 聖石矢魔の教室の前にて、六騎聖のアレックスと男鹿が互いに睨み合う。

 アレックスはボクシングの静かに笑みを浮かべ、ファイティングポーズを取り、男鹿は凶暴な笑みを深め、余裕を表す棒立ちだ。

 

 しかしアレックスには気にかかることがあるのか、怪訝な表情となる。

 

「...早く背中の子供下ろしなさい。それともまさかそのままで戦うつもりデスか?」

「あん?..あぁそのつもりだぜ。心配すんな..コイツもこれでなかなか根性あんだぜ?」

「ダッ!!」

「───ナルほど。それが子連れ番長たる所以デスか」

 

 それの言葉を皮切りにアレックスは素早いフットワークで間合いを詰めていき、相対する男鹿は動かす正面から迎え撃つ。

 その事態に邦枝は焦った様子で男鹿へ静止をかける。

 

「ダメよ!!せっかく私が手を出さずに納めたのに...!!戦ったら...」

 

「...第一問!!!ある所にジーさんとバーさんがおりました!!!さて強いのはどっちでしょブッ────!!」

 

 ガラ空きの男鹿の顔面にアレックスの右ストレートがめり込み、ぶっ飛んで床に沈む。

 アレックスは終わったと言わんばかりに床に沈んだ男鹿に背を向けて歩き出す。

 

「な..なんだクイズ?なんで?」

「いやそもそもクイズになってなくね?」

 

 野次馬たちは男鹿の突然の出題にざわめき、その内容にも混乱していく。

 

 すると廊下の向こうから1人の男子生徒が男鹿は駆け寄ってくる。男鹿の舎弟となった山村和也だ。

 

「アニキ!!な..なんて事を..新庄先輩の一発をモロに喰らうなんて自殺行為にも程が...」

「ちょ..ちょっと男鹿..何してるのよ..!まだ..」

 

「終わりですヨ..お嬢さん」

 

 邦枝の言葉を優しく否定するアレックス。その言葉に唖然とする邦枝に山村は静かに説明する。

 ボクシング部の部長である彼は今まで公式試合を全て一発KOで終わらせており、プロのボクサーにすら勝つことのある彼の拳はまさしく凶器。常人が食らえばひとたまりもない

 

 

 

0点だ

 

 

 

 常人であればの話だ。

 

 男鹿は常人とは程遠い。拳をまともに受けた男鹿は鼻血を垂らしているがそれだけで悪魔のように笑みを深めながら立ち上がる。

 

「ナニ?」

「オレの問題を即答できねよーなアホは0点だつってだ...ドカスが..」

 

 悪魔のように笑みを深める男鹿はもう一度アレックスへ、近づく。

 

「オレよりも...アイツよりも頭が良いってことを証明してくれよ大将?最後のチャンスだ..ガッカリさせないでくれ」

「...一発KOできなかったのはちょっとショックですが..それと同時にすこしワクワクしますネ...そちらこそすぐに倒れてガッカリさせないでください!!」

 

 そう言ってアレックスは一瞬で間合いを詰めてプロ顔負けのスピードと威力のコンビネーションを放つ。

 

 しかしアレックスは目を見開いて驚くことになる。

 

(────なっ!?避けた!?)

 

 ベル坊を背負ったまま男鹿が舞うように紙一重でアレックスの猛攻を次々に避けていくのだ。

 

「アイツより全然遅ぇなぁ..けどまぁいいか...行くぜ?」

 

 アレックスのコンビネーションを避け切った男鹿は一旦距離をとる。アレックスは逃がさないようさらに追いかけてさらに拳を振るう。

 

問題です

 

 アレックスの振るう無数の拳が空を切り、男鹿はクイズを仕掛ける

 

「パンはパンでも..」

「そこ!!」

 

 男鹿のボディにアレックスの拳を振るうが、それを男鹿は掌で受け止めた。

 素人がボクサー拳を躱すだけでなく、渾身の一撃を難なく受け止める。そんな信じられない事実にアレックスは目を見開いてしまった。

 

 

「食べられないパンは?」

 

 

「....ふ..フライパン」

 

 

「──── て、天才か..?

「何故!?」

 

 自分のクイズに答えられたことがよほど衝撃的なのか今日1番動揺する男鹿は、すぐさま顔を後ろへ向けて引っ付いているベル坊へ目を向ける。

 

「どうだベル坊!?コイツすげーぞ!?強さはそれなりだけど天才だぞ!?」

「スー...スー」

寝てらっしゃる!?

 

 興奮する男鹿にとは違って退屈だったのか引っ付いたまま夢の中に入っていた。

 男鹿がベル坊に何故かと縋るような声を出している姿は最早戦う雰囲気はもうない。

 

「やめです。これ以上意味がないので..いずれまた。今度は三木君と一緒に来ますネ」

「.....三木?」

 

 アレックスは男鹿にそう告げると背を向けて去っていく。こうして六騎聖の初邂逅は幕を閉じた。

 

 

 その後あの場を離れて教室まで戻っていく邦枝と男鹿。しかし寝ているベル坊は邦枝が抱えており、男鹿は肩の荷が降りたと首や肩を回している。

 

「いやー...お前がいてくれて助かったぜ邦枝。ようやく肩がスッキリしたぜ」

「...いつもこの子が寝てる時はツムギが抱っこしてるの?」

「たまにな..なんせ四六時中コイツが肩に引っ付いてるモンだから..肩が凝って仕方ねぇ」

 

「ふーん..でもまぁなんにしてもこっちから手を出さなくても良かったわ。流石に昨日の今日じゃ言い訳できないからね」

「あー..」

「さ、早く教室へ行きましょう..どうしたの?」

「それにしても懐かれてるな...もうお前母親やんね?」

 

 その男鹿の言葉に邦枝は一瞬にして茹で蛸のように頬を染め、頭から湯気を上らせる。

 

「ば...馬鹿言わないでよね!!そ..そんなこと..いきなり言われても..

「えー..いいじゃねぇか..懐かれてんだしよー」

「そ..そんなこと言ってないでシャキッとしなさい!私達でクラスを纏めなきゃならないんだから!!」

「へーい」

 

 そう会話をする邦枝と男鹿はようやく教室まで戻ってきて扉を開ける。するとそこには異様な雰囲気が漂ってた。

 

 その光景を不思議に思っている邦枝に教室にいた烈怒帝瑠のメンバーである花澤と飛鳥が駆け寄ってくる。

 

「姐さん!!す..すみませんウチら止めようとしたんスけど」

「な..何?何があったの?」

 

「じ..実はウチら弁当食ってる時に聖石矢魔の奴らに絡まれて..」

「アイツらこっちが手が出せないの知ってて...そこを城山が助けてくれたんです..だけど...」

「...だけどって..?」

 

 

「病院送りにされたらしいぜ?城山の奴」

 

 

 そう答えたのは自分の席でケータイを弄る姫川だった。他人事のように続ける。

 

 

「噂の六騎聖とは無関係の人間がソイツらに絡んできて、それを庇った城山がパイプ椅子やらダンベルで殴られて頭かち割れたらしいぜ?」

「...随分詳しいわね..姫川。ひょっとしてあんた」

 

「おいおい..俺が城山を襲わせたって?ソイツらにちょっかいかけたって?悪いが俺はそんな暇人じゃねーよ。全部()()から聞いたことだ」

 

 突然出てきた幼馴染の名に男鹿は目を細めて聞き返す。

 

「あぁ?なんでそこでアイツの名前が出てきやがる?」

「そりゃお前...城山のことを伝えに来たのが古市だからだよ」

「伝えにって...誰にだよ」

 

 

「んなもん決まってんだろ...城山の飼い主にさ」

 

 


 

 時は少し遡り、男鹿と邦枝が六騎聖と揉めている間、城山をのせた救急車を見送った古市は教室に向かって歩いていた。

 

「ちょ..ちょっとツムッち!どこに行くんスか!?」

「教室だよ...これを伝えなきゃ行けない相手がいるから」

「伝えなきゃ行けない相手って...」

 

 古市は静かに簡潔に質問に答えながら真っ直ぐ教室まで来て、勢いよく扉を開ける。

 和気藹々と各々昼食を食べていた皆から注目を浴びるが、そんなもの気にせずまっすぐ目当ての人物に向かっていく。

 

「神崎」

 

「...神崎さんだコラ..しめるぞ」

 

 鋭い眼光で睨まれるが古市は意に介さず端的に言葉を続けていく。

 

「城山が病院に送られた」

「───は?」

「そこの2人が絡まれてる所を庇って頭をかち割られてた」

「..ちょっと待て..」

「頭から血が止まらなかったけど救急隊員によると命に別状はないって...」

待てやコラ!!!!

 

 神崎は勢いよく立ち上がり古市の胸ぐらを掴み上げるが古市は無抵抗でなされるがまま。

 

「テメェ..ふざけた冗談だなぁ..アァ!?そんなに殺してほしいんなら望み通り殺してやるぜ!?」

「神崎!!紬貴を放しな!!」

「うっせえぞクソアマぁ!テメェも殺すぞ!!」

 

 ただならぬ雰囲気を感じとり千秋の近くの席に座っていた大森が叫んで制止させようとするが、頭に血が登ってる神崎はさらに怒鳴り返す。

 

 すると胸倉を掴んでいた神崎の手首を古市が掴む。そんなことをすれば当然神崎が激怒し、古市へ視線を戻すが...

 

 

 

「───そんなつまんない冗談言わねえよ」

 

 

 

 神崎は胸倉を掴み上げられ見下ろす形となっている古市の瞳の奥にもはや抑えきれない程の激情が燃え盛っているのを感じとり、力が抜ける。

 

 胸倉を離された古市はパッパと胸元を手で払いながら言葉を続けていく。

 

「前にも言ったけど城山はワタシの友達(ダチ)なんだ。それに前に昼飯を食わせてもらった恩もある。ワタシはこれから御礼参りに行くけど..アイツはアンタをずっと尊敬してるから、一応筋を通す為に伝えにきた」

「....テメェ..」

 

「許せないんだよ...友達(ダチ)を好き勝手にされんのは..付いてくるなら好きにしなよ」

 

 そう言って背を向けて出口に向かう。大森や花澤達に止められるがまったく意に介さず、進んでいく。

 

「待てやコラ一年坊...」

「....何?早く締めに行きたいんだけど」

 

「ついて来いだと?ふざけんな...()()()()()()()()()()()

 

 その言葉に古市は少し目を開くが神崎は気にせず教室を出ていく。

 

「早くさっさと案内しろや...こちとら我慢の限界だボケ」

「...はぁ..意地っ張りな奴..」

 

 そう言って2人は廊下進んでいく。殺意と憎悪を滾らせながら...

 


 

 

「アイツらの..特に神崎のヤローのあんな表情初めて見たぜ?止まらねーよ..アレは」 

 

「寧々さん達がその後追って..ウチらは姐さんを待っていたんス」

 

 姫川や花澤の説明が終わると邦枝は教室を走って出ていくが、男鹿は未だに出て行こうとしない。

 

「ちょっと何してんのよ!男鹿急いで!」

「...いやもう手遅れだと思うぜ..古市が行ったんなら尚更な」

 

 

 

 

 

 

 

 昼休みも終わり午後の授業を始めている聖石矢魔の教室。そこで城山を病院送りにした3人の生徒がコソコソと私語に花をさかしている。

 

「いやーいい事をした後は気持ちが良いなぁ..!不良死すべしってね」

「でも...大丈夫かな..報復に来たりとか」

「大丈夫だってそーなりゃ奴らが退学だ」

 

「そーそ、つか最初にやったのお前だし」

「だってよあれは2人がやれって」

「ビビんなよ..これは正義の鉄槌て奴さ」

 

 ビクビクしている男子生徒に2人は余裕の態度を隠さず、自身の行動を正当化する耳障りの良い言葉が次々と出てくる。

 

「なんならこの調子でもう2、3人言っとく?」

「おッいいねー!このまま俺らで全員この学校から追い出して伝説になっちゃう?」

 

 呑気に調子の良いことばかりを考える3人、既に血に飢えた狂犬共に捕捉されてることも知らずに。

 

 

 

 突如廊下側の教室の窓が全て割られ、突風が吹き乱れる。

 

 

 

 突然の出来事に教室中から悲鳴が上がり一瞬に混乱の渦へと落とされる。それは突風が収まっても変わらない。

 そんなカオスと化した教室へガラス踏み締め窓から入ってくる人影が2つ。

 

「どーもー..ウチの組のモンがお世話になったみたいで....」

「ワタシたちぃ..キミら全員」

 

「「ブッ殺しに来ましたァ」」

 

 

 古市(狂犬)神崎(極道)が、殺意を振り撒いて窓から近くの机に立つ。それだけで教室中の生徒たちは怯えて、言葉を発せなくなる。

 

「おい..どいつがやったんだ?」

「んーと..あぁいたいた。ソコのカス3人だよ」

 

 神崎の問いかけに古市は3人の男子生徒を指差す。するとビビった1人の男子生徒が2人を責める。

 

「ひ..だっだから言ったんだよほらぁ!!」

「バカっ!!」

 

「うん。間違いなさそう」

「そーかい..コイツらか」

 

 もはや自白と言っても違わない言葉に確証を持った神崎は机から降りて3人に近づいていく。

 

「あ!ちょっと!!抜け駆けする気!?」

「アホか年功序列だ。先輩に譲れ一年坊」

「せっこいなぁ..もう」

 

「き..君達!!いきなりなんだね!これは大問だ────っっ!!」

 

 授業をしていた教師が正気を取り戻して声を上げるが古市が黒板に向けて片手を振り上げる。

 

 それだけで飛んでいく斬撃の風が教壇が真っ二つにし教師のスレスレを通って黒板を使い物にならなくする。

 当然教師は声を上げることはできず、古市は机に腰掛け神崎が終わらせるのを待つ。

 

 3人の男子生徒は神崎に睨まれ、怯えつつも反抗的な態度を見せる。

 

「お...お前こんなコトしてただで済むと思ってんのか!?」

「そ..そそそーだ!!殴れるもんなら殴ってみろ!!でもんなことしたら退学だぞ!?もう拾ってくれるトコなんざねぇぞ!!」

 

 

知るか

 

 

 3人の頼みの綱であった退学の脅しだが、神崎にとってそんなもの関係ない。1人の胸倉を掴み上げ、真正面から殺意と共に睨みつける。

 

「殴ったら退学?だからどーしたァ....ウチには後先考えねぇバカがうじゃうじゃいんだよ!!そいつら相手にする覚悟もねぇくせに笑わせんなコラ!!あぁ!?石矢魔舐めんじゃあねぇぞ!!!

 

 真正面からぶつけられる殺意に男子生徒は怯えすぎて、失禁をしていた。

 

 

「まずいですね..先輩。これじゃいくらなんでも僕が止めなきゃいけない」

 

 

 そこへ穏やかで落ち着きのある男子の声が神崎へかけられる。そこには古市の友人の三木が立っていた。

 

「み..三木ぃ!助けてくれぇ...」

「あぁ!?なんだテメーは」

 

 すると神崎の問いに何も答えず額は掌添える。そして、

 

 

 三木の腕は横から古市に蹴り上げられる。

 

 

「古市さん...どうしてこんなことを..?」

「三木..邪魔しないでよ。アンタは関係ないから」

 

 お互い鋭い眼光で睨み合うが、神崎はその場で膝をついてしまう。三木が掌を添えた瞬間に嫌な予感がした古市が急いで蹴り離したのだが...

 

「神崎?」

「クソ...なんだぁ?目が回りやがる...」

 

「脳が揺れているんだ。本当は気を失わせようとしたんだけど古市さんのせいで掠ってしまっただけみたいだ」

「掠っただけでこれ?...本当変わったよね三木」

 

 古市が意識が朦朧としている神崎を気にしていると廊下から聞き慣れた声が聞こえてくる。先に追いかけてきた大森や谷村達だ。

 

「神崎!!紬貴!!待ちなさい2人とも!!」

「いいタイミングだね寧々。神崎連れてって..リタイアだ」

「ふざ...けんなっ」

「脳揺れてんでしょ?無理しないほーがいっすよパイセン」

 

 そうしてもう一度三木へ向き直る古市。しかし彼女に対して三木は爽やかに笑って提案をする。

 

「古市さん..僕は貴女とは戦いたくないんだ。大人しく引いてくれないかい?」

「────あ?」

 

「だからここは一旦穏便にすましたいんだ。お互いの為に..大体、こんな事するなんて..少し幻滅してしまうよ古市さん..人の迷惑もかえりみず、虚勢を張る為に暴力を振るうなんて..不良ってこんなのばかりですか?」

 

 三木の言葉を皮切りに黙っていたクラスは非難と罵声を古市や神崎、そして大森達に浴びせる。

 

「そうだそうだ帰れ馬鹿野郎!!」

「迷惑なんだよ!!チンピラ共!!」

「さっさと六騎聖にやられちまえ!!!」

 

「こ..コイツら...元はと言えばそっちが!!」

「下がっててよ寧々」

 

 腹が立った大森が声をあげようとするも古市に止められる。古市はスマホをポケットから取り出す。

 

 

「人の迷惑をかえりみず暴力振るう..そう言われたらそれまでだよ確かに...ぐうの音も出ない正論だ」

 

 古市が肯定するように話し出し、大森たちは眼を見開いているが古市はスマホの画面を三木達に向ける。

 

「それじゃあさ...無抵抗の人間を殺そうとする人間はなんて呼べばいいのかな?」

 

 古市のスマホからは先ほどまで騒いでいた3人組が城山をリンチにしている様子を遠くから撮っているビデオが写っていた。

 

「友達に頼んでさ、救急車を呼んだ後に撮っておいて貰ったんだけど、見てよここなんてさ...酷いよぉー?」

 

 

『よっしゃ!!んじゃオレのも受けてくれよー!?』

『ウグッ...ハァ...よぉし..後.1人だ』

『すげぇ!!マジでコイツ何もしねーぞ!?うはははは!バカだコイツ!!』

 

 

 古市がニヤニヤした顔で再生したところはまさしく三木の後ろに立つ男子生徒がダンベルを城山に投げつけ、もう1人がバカ笑いを上げている様子だ。

 

 当然このビデオをここで見せたところで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし、

 

「嘘..なにあれ」

「あんなことして笑ってるよ...」

「お前ら..マジかよ」

「あ..いや違..!?」

 

 もとより古市の目的は3()()()()()()()()。退学になろうが、罵詈雑言を浴びせられようが彼女にとって心の底からどうでも良いのだ。

 

 思惑通りに3人組に非難の目を向けられているのを確認した古市はにっこりと綺麗な笑顔を浮かべ三木に話し出す。

 

「ねぇ三木...ワタシはさ、そこの3人にケジメをつけたいだけなんだよ..アンタもワタシと戦いたくないって言ったけど....ワタシもアンタと戦いたくないんだ」

「......」

「だからそこのカス共渡してよ。そーしてくれたらもう誰もそっちの生徒に迷惑かけないよ。あぁ!望むなら退学でもなんでもするさ。だから...」

 

 

 

「それは出来ない相談だ」

 

 

 

 古市の言葉を静かに聞いていた三木はキッパリと断り戦闘態勢を取る。三木の言葉に古市の浮かべていた笑顔は一瞬に消える。

 

「古市さん...貴女のメチャクチャな要求は聞けないよ。僕は六騎聖だからね」

「.....()()はそっちに着くんだ...いいよそれじゃ」

 

 古市は両手で髪の毛を掻き上げる。殺意を滾らせて。

 

 

 

力づくでいくから...後悔すんなよドチビ

 

 

昔の僕だと考えれば痛い目見るよ...

 

 

 

 

 睨み合う2人を中心に教室中に充満していくドス黒い殺意と氷のように冷たい戦意。

 周りで見ている人間は総毛立つということを身体でに実感し、人によれば呼吸すら苦しくなっていく。

 

 もはや衝突不可避と考えられたが2人だが、それは1人の介入によって2人は止められる。

 

「やめろ。古市」

 

 男鹿である。

 

 いつのまにか来ていた彼は古市の背後から肩を掴んでおり、イラついた古市は背中越しに男鹿を睨む。

 

「...離してよ」

「ならやめろ。ここでやったらオマエの負けだ」

「どーでもいいね。そもそも喧嘩しに来てんじゃねぇんだワタシは」

 

 古市は肩を掴んでくるを払いのけ、男鹿を睨みつける。しかし男鹿は真っ直ぐに目を見返す。

 

 

 

邪魔すんな

 

やめろ

 

 

 

 お互い一歩も譲らず古市が睨んで殺意をぶつけ、男鹿がただただ見返す状態が十数秒続いた。

 

「.......」

「.......」

 

 

「....ハァ」

 

 折れたのは古市だった。先程までの溢れていた殺意は霧のように霧散して雰囲気がガラッとかわる。

 

「あほくさ..何でワタシは男鹿と睨み合ってんの..?」

「やめるか?」

「わかったから。今日はもう止めるよ!もー...」

 

 そう言って古市はぽりぽり後頭部を掻きながら三木に背を向けて出口へ歩いていく。するとその背中に三木が声をかける。

 

「帰るのかい?結局中途半端に荒らしにきただけなのかい古市さん?」

 

 そう言って煽ってくる三木に古市は舌を出して中指を立てる。そして教室を出ていき、大森はその後ろを慌てて追いかける。

 

「ちょ..ちょっと待ちなさい紬貴!!」

 

 三木は肩をすくませ次は男鹿へ話しかける。

 

「久しぶりだね男鹿..驚いたよ。まさかキミがケンカの仲裁をするなんてさ。そーいうのは古市さんのキャラじゃないか?」

「......」

 

 三木は話しかけるが男鹿は何も言わない。

 

「ひょっとして忘れてる?僕のこと。酷いなぁ中学のころ────

「マ゛ーーーーー!!!!!」*1

 

 

「.....中学の時あんなにかわいが────

「マ゛ーーーーー!!ママーマーッ!!!」*2

 

「うるさい子供だね...すぐキレて人の話を聞かない、君にそっくりじゃないか」

 

 男鹿の肩に引っ付いているベル坊がメチャクチャキレているのに男鹿自身もすこし驚いている。

 しかし男鹿は何も返事をしない。古市は出ていき、神崎はついてきていた他の石矢魔の男子生徒が背負ってすでに脱出済み。

 

 もはや用はなく、踵を返すと三木はその背中に言葉を掛ける。

 

「なんだ帰るのか。そうそう皆さん放課後は是非旧校舎屋上へ..我々部長連がお待ちしております。男鹿..君は勿論来るよね?」

 

 

「つーか..さっきから馴れ馴れしいとこ悪いんだけど..()()()()()()()

「マ゛ーッ!」*3

 

 

 

 こうして石矢魔と六騎聖との戦争はもはや避けられないモノとなった。

 

*1
喋るな的な意味

*2
とても汚い言葉のつもり

*3
くたばれ的な意味





ここの男鹿くんと古市ちゃんは互いに手綱を引っ張り合ってる関係...
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