ワタシは特別だ。
これは自惚れなんかではなく事実としてワタシには人にはできないことができる。
それは風を自在に操ることだ。
何ともファンタジーな設定で信じがたいかもしれないが、ホントのことだ。
母親が言うにはワタシが生まれて4ヶ月あたりのこと。夜中にワタシのいるベッドがある部屋から物音が聞こえるとのことで様子を見にいくと、
部屋中どこから吹いてるかわからない風が玩具やおむつなど部屋中の軽いものをベッドにいるワタシを囲むように舞っていたらしい。
目を疑うような光景に驚いた母親は空中に舞うぬいぐるみとオムツをかき分け赤ん坊のワタシを抱き抱える。軽いとはいえ玩具が落ちてきたら大変と思っての行動だ。
しかし腕に抱いたワタシから吹いた一瞬強い風が顔を打つ。
驚いて目を向けるとまるではじめての悪戯が成功したかのように楽しそうに、嬉しそうに笑っているワタシ。
それを見て母親は我が子が普通とは違うことを悟った。
後日いろんな病院に回ったがワタシの身体には異常は見られず、原因はわからず途方にくれている時、ある病院の先生から勧められて両親は魔二津のある寺へと足を向けた。
そこの住職のおかげで判明したことが2つ。風を操る能力はかつて寺のある山にいたとされる天狗のものと瓜二つ。そして、この力は
つまりワタシたち古市家の先祖には天狗がいるらしい。
住職曰く、生後4ヶ月程で、しかも何十世代の時を経ていながら物を浮かせるほどの風が操れるとなると先祖の天狗はその中でも強大な力を持っていたことが推測される。
今はまだ良いが成長するにつれ能力は次第に強く大きくなることを考えると危険なものだ。おそらく1歳を超えると人も簡単に浮かせられると住職は考えた。
そんな危険な能力を赤子が持てば待っているのは悲劇だ。
住職は両親に物心がつくまでは寺に預けるのはどうかと提案をしたらしい。その寺は悪魔祓いも兼業してることもあり力になれると踏んでのことだ。
だが、両親は予想すらしていなかった突飛な話で追いついていけず、ましてや生まれたばかりのワタシを今日来たばかりの寺に預ける提案に直ぐには頷けない。
そこで住職は2つめの提案として一年ワタシ達の家に住み込みの形で赤ん坊であるワタシの面倒を見させ欲しいと。その後は定期的に寺へと足を運んでくれれば安全は保証するとのこと。
はっきりいって、いくら特別で危険なだからといって初対面の赤ん坊のためにここまでするだろうか。両親は失礼を承知で疑問を問いかける。
その時住職は困ったように眉尻を下げ、
「私も僧侶である前に人の子、世のこども達にはだれであれ健やかにそして幸せに育って欲しいのが私の願い。それに、目の前の困っている人に全力を尽くして手を伸ばさずして、僧は名乗れません。」
両親は住職の信条に似た言葉を聞き、提案を呑むことにしたのだった。
住職と両親のおかげでワタシは至って健やかに育つことができた。能力もワタシは物心ついてからは手足を動かすように自在に扱えていた。もちろん住職の助けあってのことだが。
そもそもこの力自体は身体能力の一部。赤子のころは暴発など制御の効かないこと(住職曰く、おねしょみたいなもの)もあったらしいけど物心ついてからはそういったものは少なくなっていった。
しかし小学校入ってからワタシの心には不満がでてきた。それは周りの同年代の子供とウマが合わないことだ。
別に周りが悪いわけじゃない。住職や両親にも言われたとおり最初から能力については秘密にしていたから、変な目で見られることも虐められることもなかった。ただ、なぜか同年代の友達と話してるのになぜか合わないのだ。
原因はワタシの心にも先祖返りの影響がでていたこと。つまり精神が早熟しすぎていたのだ。そもそも能力の制御の理由で保育園や幼稚園にはかよえなかったワタシが関わり持っていたのは両親や住職のみ。
先祖返りによって成長が早い心が大人しかいない関係でさらに価値観が大人寄りとなっていくのは必然だった。
だからワタシは学校ではみんなに合わせて愛想笑いや作り笑いが多くなっていた。初めて友達を作れるとウキウキしたワタシは想定外のつまらなさに落胆し、テキトーに過ごすのだった。
転機が来たのは小学5年のクラス替え。
ただテキトーに過ごしていたワタシに気になる奴が同じクラスにできたことだ。
そいつは周りの友達から敬遠されている。まるでガンを飛ばしてるかのように常に目つきは悪いし、噂によると大人数の不良が家に出入りしてるなど、よく暴力沙汰を起こしてるなどいい噂を聞かない。
なのにワタシから見るとソイツは遠巻きにされてるこの状況を望んでいるようにもみえる。そして、それが寂しいと感じてるようにも。
初めてだった。初めて知りたいと思った。何を考えてるのか、何を感じてるのか、同年代の子どもに疑問を抱いたのは初めてだった。
帰りのHRが終わり、目当ての姿をさがす。日中ずっとそいつは机に突っ伏して寝ていたので声をかけられなかった。そいつはもうすでに教室出て校庭を歩いていた。一緒に帰る誘いを断り、ランドセルを背負って急いで追いかける。
「ねぇ!キミ、男鹿君だよね...?ワタシ、古市」
後ろから声をかける
「んぁ?」
「ほら..同じクラスメイトの..男鹿君帰り道こっち?一緒に帰ろ?」
「.....。」
初めてワタシから同年代に誘ってみたけどそいつはなにも言わず睨め付けてくる。
「...えーっと「オレの背後に立つんじゃねーよ」
いきなりの言葉に思考が止まる。しかしそんなワタシを気にせずソイツはスタスタと歩みを進める。
「ちょっ...ちょっとまってよ!」
さっさと歩き続けるソイツの背中をワタシは追いかけるのだった。
目つきの悪いソイツの後をつけていくと小さな商店街にはいってく。同時にちらほらと周りの人のガラが悪くなっていく。
来たことない場所に心躍り辺りを見回しているとソイツは口を開いた。
「あのよぉ...フルチンだっけ?こんなとこ、ぶらぶらしてねーでとっととしまえ。」
「古市だよ!女子だよ!ついてないよ!」
「母ちゃん心配すっぞ」
「ぐっ...」
痛いとこをつかれる。確かに母親にはこの辺りは治安が良くないから近寄らないように言いつけられていた。
「この辺りはガラが悪いのが多いんだ。フルチンのオマエなんか一発でころされっぞ」
「だからワタシは女子だってのっ!!!」
まじで失礼なやつだな。ぶっ飛ばしてやろうか!
「...お前、ケンカしたことあるか..?」
「はぁ?あるわけないでしょ」
「ほらな..ここは危ないからとっとと帰えんな」
「そんなのキミだって同じことだろ」
ワタシの言葉を聞いたソイツは息を溢す。
「.....まぁいいや。その度胸があんなら。ただし、オレの後ろに立つんじゃねーぞ」
「わ...わかった」
ソイツに着いていくと路地裏の小さな空きビルへと入っていった。するとそこにはーー
「......」
「クチャクチャ」
「....」
白い特攻風を纏った超ガラの悪いおねぇさんたちがこちらを向いていた。
「.....ェッ」
いくら早熟した精神もったといっても小学5年までしか生きていない子供。目力の強いおねぇさん方に目を向けられビビって変な声が漏れる。
「辰巳くんじゃないっすかぁ!」
「いつもお勤めゴクローさまです!!」
「あいついる?」
「いますよ。リーダぁー!!たつみ君っすよぉー!!」
「あらっこっちのかわいいお嬢さんはお友達?」
「おぉっ!ついにたつみ君も女連れっすかぁ!今夜はお赤飯だぁ!」
「ちげぇーよ」
おねぇさん方は雰囲気を一変させてワタシ達に声をかけてくる。だがワタシの脳はすでにキャパオーバーだった。
(え..えぇっ何?コイツヤンキーの知り合い?ていうか反応的になんか舎弟扱いされてる訳でもないし...なにこれ?)
するとワタシたちは奥の部屋へと通される。そして1人のヤンキーが耳打ちしてくる。
「気をつけな..今リーダーは虫の居所が悪ぃーんだ。」
「うーい」
(えっ!?何っ!怖いっ!怖いよぉ!)
もうすでに心は折れそうなワタシとは違いソイツはなれたように返事をする。
部屋に入るとそこには周りとは少し雰囲気がちがう人がいた。
「.....辰巳か」
(こっこの人が...リーダー..?)
「姉ちゃん。頼まれてた「でらべっぴんレディース」持ってきたぞ」
(姉ちゃん!?)
衝撃の事実に驚いてるとソイツの姉が近づいてくる。その容姿は綺麗なショートの黒髪を綺麗な人だった。だが、
「遅っせぇーよっ!!!」
姉に顔面を蹴っとばされたそいつは後ろへ吹き飛ぶ。
「てめぇっいつまで待たせんだァっウスノロっ!ドラマの再放送見逃しちまったじゃねぇーかァっ!あ゛あ゛っ?!」
さらに追撃かますリーダー。ワタシの心はもう限界だった。
「あらぁ..?辰巳くん。彼女つれてきたのぉ?かわいいわねぇ。私、糸井雫。夜・露・死・苦♡」
「雫、怯えてる」
「ナニィ!彼女っ!?」
さきほどまで弟を痛めつけていたリーダーがすごい勢いでこちらに首を向ける。
「アンタ辰巳の彼女なのっ!?かわいいのにもったいない!?」
「いえ..違います。今日初めて会話しました。」
「あらっそうなの?」
「それより、美咲。私達が乗ってるページどこ?」
おねぇさん方が弟をパシらせた雑誌を漁り彼女たちが載ってるページを見つけはしゃいでると、いつのまにか立ち上がってきたソイツが話しかけてくる。
「な。後ろに立ってるとあぶねーだろ。」
「すごいお姉さんだね....」
「だから言ったんだ。着いてくんなって。」
「でも....」
みんなガラが悪いけど、威圧感とか半端なくすごいしさっきの蹴りとかすごい怖いけど、でもワタシには、
「みんなすごく楽しそう。のびのびしてて」
「...........オマエ変わってんなぁ」
「キミに言われたくない。」
納得いかない評価をつけられたワタシがそいつをにらんでいると、声をかけられる
「たっくん。ちょうど今からお楽しみ会よ。一緒に来る?」
「本当かー!行く行くっ!」
(お楽しみ会...?)
椅子取りゲームとかレクリエーションでもやるんだろうか。そんなことを想像しつつ、連れられてきたのは、
「オラァァァっ!」
「このアバズレがぁっ!!」
「ナメてんじゃねぇっシャバ増がぁっ!!!」
族同士の抗争だった。
なんとか巻き込まれないよう、殴られないよう逃げ回りつつアイツのすがたを探す。
「あっアイツはどこに..?」
「アハハハハハハハハハハハッ」
(男鹿君っ!?)
それはもう楽しそうにヤンキーの顔面に蹴りを入れていた。あまりの光景にワタシの後ろから迫るヤンキーに気づかなかった。
「ガキがっ!!」
「えっ」
「せいっ!!」
「グガッ!!!」
ソイツは背負っていたランドセルを武器にワタシを助けてくれた。
「後ろに立つんじゃねーつったろ!!守りにくいんだよボケ!!」
「....」
そう言い放ちケンカを続ける男鹿の表情は学校で見たものや、さっきまでワタシと話していた時のものとも全然違う、まさしく心から楽しんでいるのがわかる表情。
そんな男鹿の横顔から目が離せなくなった。
「いつもあの人達とケンカしにいくの?男鹿くん」
「....いつもじゃねーよ。たまに誘われたらいくだけだ。おもしれーし」
「ふーん...」
翌日学校の昼休みに男鹿と話していた。結局あの後ワタシは怪我はないが夜遅くに泥とかで汚れたボロボロのワタシをみて両親にひどく怒られた。だけどそれでもあのときの男鹿の楽しそうな表情が忘れられず、昼休みに話しかけていた。
「ふるいちー」
「そとでなわとびしよー」
「あ..えーと」
するとクラスメイトから声をかけられる。ワタシとしては男鹿とこのまま話をしていたいのだが...つい男鹿に目を向けてしまう。
「行ってこいよ。オレはいいから」
「.....わかった....」
そう言われワタシ誘ってくれたクラスメイトの方へ歩いていく。頭の中では昨日の男鹿姉に言われた言葉を思い出していた。
『アナタ名前は?』
『
『じゃあツムギンて呼ぶね』
『ツムギン....?』
『ツムギン。あなたは辰巳の友だち?』
『....友達になりたいと思って今日話しかけました...。』
『そっ!..じゃあツムギン。うちの辰巳のことよろしくね。あいつああ見えて友達が欲しいんだから。』
そういう姉はワタシの頭を撫でてきた。
『でも!恋人はダメよっ!辰巳にアナタは勿体なさすぎる!いい!?好きな人ができたら私に言いなさい!審査してあげる!』
『今日初対面ですよねぇっ!』
『カンケーない!アナタかわいいから今日から私の妹よ!!』
『無茶苦茶すぎる...。』
今日も1人で帰る男鹿の背中を追いかける。
「ねぇ....今日もケンカしにいくの?男鹿君」
「ワリーかよ」
ワタシの問いかけにぶすっとした表情でこたえる男鹿。
「じゃあさ.....ワタシともケンカしてよ」
「...あ?なんだそりゃ?なんでオレが女のオマエとケンカしなきゃいけねーんだ」
ワタシを相手にせず進もうとする男鹿。
「逃げるんだ。じゃ、ワタシの勝ちだね。クラスのみんなに自慢しようっと」
「ふざけんなっ!!」
「ぶべっ!!」
男鹿はワタシを蹴り飛ばす。手が早いな、やっぱケンカ慣れしてるコイツに正攻法じゃ勝てないな。
「何なんだオメーは。あれか?ケンカしにいくオレを止めに来たのか?」
「はぁ?なんでそんなことワタシがしなきゃいけないわけ??言ったでしょ。ワタシは喧嘩しに来たのアンタと。忘れたのニワトリ頭?」
「あ゛あ゛ぁ?」
ワタシの言葉にイラつく男鹿に今度はワタシから右の大振りで殴りかかる。けどケンカ慣れしてるこいつに通用するわけなく
「てめぇこそ、ケンカしたことない雑魚のくせになんでオレに勝てると思ってんだ」
簡単に拳を受け止められる。けれど今のワタシは身体で勝負しない。止められた拳にこめていた風を解放する。
「っの゛ぁっっ!?」
突然の衝撃にたまらず男鹿は吹き飛ばされる。なにが起きたのか分からなかった。ただわかったのは目の前の自分より小さい女子にぶっ飛ばされたことだけ。
「なんだ...いくらケンカなれしてるっつてもこんなんもんか。まっ子供だしね大したことないね。」
嘘である。ワタシの素の身体能力じゃ天と地がひっくり返っても勝てやしない。だからワタシは
そんなことを知らない男鹿は、姉以外でましてや同年代の女子にぶっとばされ、煽られたことで単純な頭に血がのぼる。
「上等だボケェ..。泣かすっっ!!」
「またぶっ飛ばしてやるよォっっ!」
人生で初めてのケンカ。しかも相手は昨日話しかけたばかりの友達。なのにワタシなぜか気分が高揚していくのを感じ、男鹿へと向かう
「グガッ...ハァッ...ハアッ..ハァ......ハァ」
「オェッ...ゴホッ..ハァッ......ハァ」
ふらつきながらでもしっかり立つ男鹿に対しワタシは膝をついて息を整えるのに必死だった。ズルしながらケンカを続けていたがやはりスタミナの差は埋められない。
むしろズルの威力が大きくなりすぎないようにと気を配っているとさらにスタミナを奪われる。ぶっちゃけ超きつい。ぶっ倒れそう。けれど...
「...ハァっ..ハァァァ。...なんなんだオメー。限界だろ。足震えてんぞ。」
「ごほっゴホっ..ハァ..うるさい。まだ終わって...ないっ!!」
風を足に纏わせハイスピードで男鹿に向かう。先程まで何度も見た男鹿だがそれでもあまりのスピードに目を剥く。
「....ぶねぇっ!」
「ちぃっ!」
スピードにのっての突撃だが何度も見せてるため避けられるがすぐさま風の向きを前に向かう急ブレーキ。そのまま右脚を上に上げ男鹿にハイキックを放つ。
しかし男鹿もサンドバッグではない。避けざまに脚を踏み込みボディを狙い右拳を放つ。
本気の右ボディと風を纏う右ハイ。ほぼ同時に相手に叩き込まれ、2人とも倒れ込む。
ワタシはもう立ち上がれないぐらいにボロボロで疲れた。多分男鹿もそうだろうと思いたい。そう思っていると男鹿から声をかけられる。
「..オマエ..ハァ...まじで...なんでケンカしに来たんだよ...ハァ..昨日..はじめて話しただけだろ。」
「...べつに...ハァっ...アンタの態度が気に入らないだけっ..はぁっゴホっ」
「あぁ?」
「...アンタが....何考えてんのか....知らないけど..ヤンキーの姉がいよーが..ゲホっ...ケンカ好きだろーが...ワタシは友達辞める気はないよ。」
「.......はぁ?」
あのとき、昼休み、クラスメイトに誘われたとき、まだ会話の途中だったのにワタシに他のとこにいけって言われたのが気に入らなかった。そのくせアンタの目がどこか寂しそうのも気に入らなかった。勝手に壁を、距離を作られるのかなぜかどーしても嫌だった。
だから人生で初めてのケンカを男鹿、アンタに売ったんだ。
「....
そんなワタシの気持ちを知らずに男鹿が言葉をこぼす。
「どいつもこいつも弱すぎて足手纏いにしかなりゃしねえ..。あげく、ついていけねーだの、ばかだのクズだの言って勝手にはなれていきやがる。」
愚痴にも似たような言葉を苛立ちを隠さずにワタシに投げ捨てる。けれどやっぱりその言葉にワタシは、
「どうせ同じだろーが。てめーらとつるんでも....」
ーー背中が気になってケンカどころじゃねーんだよ.....。
どうしようもないぐらいの寂しさ感じてしまうのだ。
だからワタシは悲鳴を上げる身体を無視して立ち上がり、寝っ転がる男鹿の隣に立つ。
「誰がアンタの後ろに立ちたいって言ったんだ。ワタシが立ちたいのは」
「おっおいっ!」
男鹿掴み肩を貸すように立ち上がる。
ーーワタシが立ちたいのはアンタの隣だ。
「ーー。」
肩を貸しながら男鹿に顔を向ける。ワタシの意思をまっすぐ伝えたくて。
けれど、ワタシの体を限界を迎えていて膝の力が抜ける。
「やべっ」
近づく地面に追加のダメージを覚悟して目を瞑ると後ろから首根っこ掴まれる。
「たくっ限界のくせに無理してんじゃねーよ。」
「アッアハハ...」
ワタシのカッコのつかなさに乾いた笑いが溢れる。そのまま男鹿は肩を貸してくれて姉の溜まり場へと向かいはじめた。
「...そうだ、今日はワタシはズルしたけど、これから強くなるからよろしく。」
「ズル?あの変な風のことか?つかアレなんだ」
「あー....ワタシの体質?てきな?」
「プッ...なんだそれ?...つーか今日の相手はやべーぞ。」
「大丈夫。今日は物影から見てるから」
「隣じゃねーのかよっ」
いつかちゃんとズルしないでもアンタの背中預けられるように強くなって見せるよ。男鹿。
そんな感じの出会い方した男鹿もいまじゃ一児の父としてしっかりと2日前に拾った赤ん坊《ベル坊》を学校に連れてきて世話をしている。人間としての成長を感じるね。
「父親じゃねーよ。アホ市。」
「なんだ、まだ認めてなかったの?ワタシはてっきり諦めて認めたのかと」
「認めてたまるかァっ!!」
「でも美咲さん、マカオから金髪巨乳の奥さんと赤ん坊連れてきたって電話かけてきたよ昨日。」
「そうっ!!それが問題だっつのっ!あのヤロー人の家族を取り込みやがって。」
「アハハハッ」
ワタシは男鹿の不幸話を笑いながらお気に入りの棒付きキャンディを咥える。
するとニギャーとネコのようなベル坊の悲鳴が響く。視線を向けるとそこにはモテなさそうなイカつい3人組がベル坊を抱えていた。
「男鹿くぅ〜ん」
「パパになったんだって?」
「ダメだよー。子供はしっかり見ておかないと。」
「うごくなァッッ!!!
男鹿が叫ぶ。なんでも男鹿はベル坊から15m離れてしまうと電撃によって即死してしまうらしい。まさしく命の危機だ。
「てめぇそれ以上動いたらぶっ殺すっ!!」
すげぇ迫力だなぁ、てかそれは向こうのセリフでしょ。そんなことを考えていると何故だか男鹿を狙って人が集まってくる。
「おっおまえはっ!!《石山の双頭竜..真田兄弟》..!!」
「こっこっちは《キラーマシーン阿部》っっ!!」
「《グッドナイト》下川までぇっ!!」
「Good night⭐︎」
「スキアリィッ!!」
「「「ブベラッ」」」
説明ありがとう。モブ3人組。てーかこの高校は相変わらず変人しかいないなぁ。
「ツムギちゃーん。おはよう。オレと付き合ってくれる件考えてくれた?」
「あぁ..ウン...男鹿にケンカで勝ったら考えてあげるよ。」
「おいコラ」
なんかグッナイくんが話しかけてくるけどとりあえずベル坊を取り返した男鹿に押し付ける。
「てことでぇごめんね。男鹿辰巳くん。君の無敗伝説はオレが止めさせてもらうね。てゆーかその子ツムギちゃんとの子じゃないよね?ねっ?」
「んなことより勝負しろぉ!!」
「あー?めんどくせぇなぁ」
向かってくる阿部と下川を男鹿はー
「...かっ」
「...ごっ」
ボディ一発ずつで沈める。だが男鹿のガラ空き背中をめがけて次は真田兄弟がナイフとチェーンソーを持って仕掛ける。
「隙ありじゃああああ!!ルーキーィ!」
「ガキごと真っ二つにしてやるよぉぉっっ!!」
「隙なんかないよマヌケヅラ」
間抜けヅラを晒しながら肉薄する2人と男鹿の間にワタシは降り立ち、それぞれの顎を蹴りで打ち砕く。しばらくはおかゆを食べて生活するがいい。
今この場で立っているのはワタシと男鹿だけとなった。
「いくか」
「うん。」
「アダッ」
男鹿の声掛けに応じて歩き出す。ワタシは棒付きキャンディの味に満足しながら今日も男鹿の隣を歩く。
ーこうして全国の不良を恐怖のどん底に叩き落とす伝説。《べるぜバブ》ははじまったのだった。
ほんとは1話まるまる使う予定ではなかったけど書いてるうちに長くなってしまいました。