TS異能力古市   作:ブッタ

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第20話 無駄

 

 聖石矢魔高校特設クラス。石矢魔の生徒たちが通うこの教室は現在険悪な雰囲気に包まれている。

 城山を潰され、その報復の為に戦争を吹っかけにいった神崎と古市。しかし神崎は脳を揺らされたことで保健室へ送られ、暴走気味だった古市は男鹿に引き摺られて戻ってきた。

 

 しかし無論それで問題解決したわけではなく、むしろより事態は悪化していく。

 

「....それでノコノコ帰ってきた訳?オマエら。──ハッ。なっさけな」

 

 自分の席で後頭部に両手を組んで風船ガムを膨らます姫川が心底呆れた気持ちを声にする。

 邦枝や大森に目を向けて続ける。

 

「神崎のヤローもそーだし。古市のヤローも結局手を出さなかったらしいじゃねぇか?オマケにテメーらも言われたい放題でオメオメと帰ってくるなんざ、石矢魔の面汚しもいいとこだな」

 

「......」

「揃いも揃って舐められやがって..あぁ?」

 

 言いたい放題の姫川に大森は冷たい眼差しで見下すように睨みつける。

 

「姫川。表に出な」

「いやだね」

 

 すると大森は姫川の胸倉を掴み上げ無理矢理に立たせる。姫川も当然イラつき額に青筋を浮かべ睨みつける。

 

「それが仲間のため戦った奴に吐くセリフ!?だったら何でアンタは行かなかったのよ!!?」

「あぁ?何言ってんだ。オレには関係ねぇだろ」

「関係ねぇんならさっさと出て行きなさい!!!石矢魔がどうとかほざいてんじゃないわよ!!」

 

「やめなさい!!」

 

 邦枝が声を上げ、大森すごすごとゆっくり姫川から手を離す。

 

「2人とも。こんな時に仲間内でまで喧嘩しないで」

「....姐さん」

 

「仲間?惚けた事抜かすなよクイーン...オレたちがいつ仲間になったんだ?」

「あ゛?」

 

 しかし姫川の言葉で逆戻り。

 

バラバラなこの状況をなんとかしなければいけないと邦枝は考え、男鹿にも頼る為に目を向ける。

 しかし...

 

「──....あれ?男鹿は?」

 

 

 男鹿の席には誰も居なかった。

 

 

 そのことに周りも気づき、辺りを見渡す。しかし、教室の中にも外にもその姿は見えない。

 

「...いない..ていうか紬貴もいません。姐さん」

「帰った?」

「...いやまさかあいつら屋上に...」

 

 大森の言葉に邦枝はサァーっと顔から血の気が引いていく。するとこの事態を静かに見ていた夏目が立ち上がる。

 

「アハハ..男鹿ちゃん帰っちゃったみたいだし。オレも()()とするわ」

「ちょっと!!待ちなさい!」

 

 邦枝が呼び止めるも聞かずに教室を出ていき、姫川も立ち上がって出口へ向かう。

 

「おいおいおい、何カッコつけてやがる...オレの方が()()()に決まってんだろ」

 

「....ちょ..ちょっとあんた達!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃男鹿は古市の首根っこを掴み引き摺り、旧校舎の屋上へ向かって階段を登っていた。

 そして引き摺られている古市は人形の様に力無く、しかし不服といわんばかりの表情だ。

 

「......ちょっと」

「あ?」

「あ?じゃないよ。屋上に行くつもり?完全にワナでしょ..それにアンタが言ってたじゃんか。喧嘩したら負けだって..」

 

「カン違いすんな古市。オレぁ..六騎聖が見てぇだけだ」

「......あっそ。ワタシはキョーミ無いから離してくんない?帰りたいんだけど」

「テメェもついて来い」

「おいコラ」

 

 傍若無人な男鹿の物言いに古市はじとりと睨みつける。しかし男鹿はそんな古市の抗議も含んだ視線を物ともしない。

 

「どーせテメェは帰るフリして、あの3人を待ち伏せする気だろうが」

「.....何のこと?..」

「何年一緒にいると思ってんだ。テメェのイカレ具合も諦めの悪さも嫌というほど知っとるわ」

「...ちぇ..」

 

 男鹿が古市を引き摺るのは彼女が目を盗んで城山の報復を企んでいたことを悟ったからだ。

 古市は観念してポケットからお気に入りの棒付きキャンディを取り出して、屋上に着くまでただただ脱力して引き摺られていく。

 

 旧校舎の屋上に繋がる扉に着き男鹿が蹴り破った先にはアレックス、榊、三木そして、アマチュア無線部主将の凶暴な笑みを浮かべる郷宏道の4人の六騎聖が待っていた。

 

「おいおい、何の冗談だ?オレら相手に2人かよ?」

「...なぜあのお嬢さんは引き摺られているのデス?」

「───....また...萌え...」

「......」

 

 男鹿は掴んでいた古市の首根っこ離すと、表情を変えずに口を開く。

 

「2人足りねーぞボケ」

「あ?...なんだまだ来るじゃねぇか」

 

 郷は彼の言葉に首を傾げる男鹿に首で後ろを指し示す。男鹿が顔を後ろに向ければそこには見知った3人の顔が揃っている。

 

 

「どいつだ?神崎君と城ちゃんやったの..」

 

 いつもの飄々とした態度ではなく、静かに怒りを露わにする夏目。

 

 

「どーでもいいが..オレの石矢魔をナメてくれた礼はしねーとな」

 

 いつも通りに捻くれた態度の姫川。

 

 

「......言っとくけど..私は止めに来ただけだから」

 

 そして一歩引いて冷静に努める邦枝。

 

 この顔触れを見て、役者が揃ったと言わんばかりに郷は立ち上がり凶暴な笑みを深め拳を鳴らす。

 

「5対4か..いいね。ハンデとして申し分ねぇ..俺が2人やるぜ」

 

「.....古市」

「んぁ?」

 

 男鹿の拘束から解放されスカートやワイシャツに付いた埃をポンポンとはたいて落とす古市に男鹿が声をかける。

 

「お前..やる気も興味もねぇだろ?なら手ェ出すな」

「....ムチャクチャだなぁ..帰っていい?」

「そこで頭冷やしてろ」

「マジでムチャクチャいうなコイツ...」

 

 ブツクサ文句を垂れるも、男鹿の言う通りに屋上の出入り口の壁に寄りかかって咥えたキャンディの味を楽しむ古市。

 それを見ていた三木が静かに口を開く。

 

「...なんだ、やらないのかい古市さん?相変わらず中途半端だな..だから貴女はいつまで経っても男鹿に良いようにされるんだよ..」

 

 挑発する三木に古市は何も言わず親指で首を掻っ切るジェスチャーをする。乗ってこないと分かるや否や三木は肩を竦ませる。

 

 するともはや待ちきれないといった様子の郷が一歩前に出る。

 

「んじゃあやる奴はさっさとやるぞ。手出したら退学なんてセコいことは言わねぇから安心しろ。俺たちは本気のテメーらも潰してぇんだからよ」

「最も負けた時の言い訳が欲しいなら別ですけど..ねぇ男鹿」

 

「......」

 

「おいおい..アイツが1番強ぇーって噂の奴だろ?俺に譲れよ三木」

「構いませんよ。お先にどうぞ」

 

 郷が三木に強請ると意外にあっさりと譲る。まるで自分以外に負ける筈が無いと信じているようだった。

 

「生意気な一年坊だ...後で後悔すんなよ?数秒で片付けちまってもよぉ!!」

 

 獣を彷彿させるような変則的な動きで男鹿へと一瞬で詰める郷。しかしあと1メートルといった所で横から蹴り飛ばされてしまう。

 辛うじて腕での防御が間に合った郷は蹴ってきた張本人の夏目を睨むが、彼は長い髪を掻き上げ飄々とした顔を向ける。

 

「そう簡単にウチの大将とやれる筈ないでしょ」

「...ヤロウ」

 

 そのまま夏目と郷のマッチが決定。

 

 その後邦枝へいきなり斬りかかる榊だったが姫川が邦枝を庇うように特注のスタンバトンで妨害。

 姫川と榊のマッチがここで決定。

 

 そして新庄と男鹿との対決だが...

 

「どうしましタ?先程から静かですネ?やる気がないのですか!?アナタの仲間は皆手を出してマスヨ!!?それともパンチの打ち方もしらな───ッッ!!」

 

 屋上の端から端までノーバウンドでぶっ飛ばされるほど全力で振り抜かれたの男鹿の拳一発でKOだ。

 

 残るは邦枝と男鹿、そして三木のみ..そして男鹿はベル坊を邦枝へ預け三木と男鹿のタイマンマッチが決定する。

 

 

 

「いいのかい?2人でやれば僕に勝てたかもしれないのに...今からでも遅くない..どうせなら古市さんも────

「ごちゃごちゃウルセェなクソチビ...」

 

 三木が静かに落ち着いた声で、まるで子供に諭す大人のように男鹿へと話しかけるもドスのきいた男鹿の声に遮られる。

 

「テメェの狙いはハナからオレだろ?なのに古市のヤツを貶したり、...アイツをダシにしたり...」

 

 男鹿の身体から純粋でそれでいて黒よりもドス黒い殺意と怒気が溢れ出る。

 

 

 

「まだるっこしいぜ..んな事しなくてもぶっ潰してやるよ..」

 

 

 

 まっすぐ膨大な殺意と怒気をぶつけられる三木は額から一筋冷や汗を流すも、笑みを浮かべ構えをとる。

 

「..僕は君の...君達のそういう所に憧れた。けど今日僕は証明してみせるよ...君達をとっくに超えたことを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー..だる」

 

 屋上の出入り口に背を預けて六騎聖との喧嘩を外から眺めてる古市は退屈していた。男鹿の手を出すなと帰るなという指示を律儀に守る古市はもう面倒くさくなっていた。

 

 すると出入り口の階段の方から聞き覚えのある男子と女子の声が聞こえてくる。

 

「やべぇ!もう始まちまってる!!急げ梓!」

「待ってよーカズ君ー」

 

 山村と藤崎が慌てて階段を登ってきた。どうやら目的は男鹿たちの喧嘩の見学らしい。

 扉までやってきた2人は恐る恐ると顔を出す。

 

「HR終わんの遅すぎだぜ....うお!?東邦神姫の姫川までいる!?」

「すごいリーゼントだねー」

 

 2人は扉の内側から覗き込んでおり、扉の外側に立っている古市に気づいていなかった。

 なので彼女から話しかけることにした。

 

「.....何しにきたの2人とも」

「「ひゃあっ!?

 

 意表をつかれた2人は肩を跳ねさせ驚く。

 

「ふ..古市さん!驚かさないで下さいよ...」

「いやそんなつもりはなかったけど」

「ま...まぁとにかくオレは見届けに来たんです!アニキの喧嘩を!舎弟として!!」

「..そ」

 

 山村の言葉に古市は興味を無くしたのか棒付きキャンディを舌で転がして視線を喧嘩の方は戻す。

 

 実は古市と話す山村の内心はビクビク怯えていた。それは昼休みの騒ぎを教室の外から見ていたからである。

 

 今朝の柔らかい雰囲気とは全く違い周囲に殺気を撒き散らしていた悪魔のような姿は教室の外にいた山村に恐怖を植え付けるのに充分であった。

 今はどこか不機嫌そうであるが殺気が感じられないのを感じて彼は内心安堵する。

 

「フルイチさんは行かなくていいんですかー?」

 

 すると藤崎が古市を見上げて疑問を投げかける。それは声に出してはいなかったが山村も思っていたことだ。

 そしてその質問に古市はキッパリと答える。

 

「行かないよ」

「...でも一緒にやったら勝てるんじゃ?人数多いしー」

「バカッ!古市さんは人数が多いから敢えて戦わないんだよ!!喧嘩のポリシーてやつだきっと!!」

「いや違うけど」

 

 山村の言葉もキッパリと否定して、山村はそうですか..と顔を熱くさせて一歩下がる。

 ならばなぜか?当然その疑問が浮かび藤崎は続いて問いかける。

 

「じゃあどうしてですか?」

「そりゃぁ..()()()()()()()()()()()()()からさ」

「「....?」」

 

 その言葉の意味が分からず首を傾げる2人。

 古市は未だ続いている男鹿達の喧嘩から目を離さずキャンディを舌で転がす。

 

「本当..無駄な喧嘩だよコレは」

 

 そう呟く古市の眼は何処までも冷めており、そのいやに冷たい雰囲気に山村は何も言えず息を呑む。

 

 

 

 

 

 屋上のケンカは更に激化していく、三木の技に男鹿が膝をついてしまい、他の2人も六騎聖に圧されていた。

 しかし、膝をつく男鹿へと攻撃を仕掛ける三木をヒーローのように遅れて登場した神崎が蹴り飛ばし空気が変わる。

 

 神崎の登場により夏目や姫川の動きがかわり、逆転していく。尚その神崎は男鹿が殴り飛ばしてKO。味方にも容赦のない悪魔である。

 

 三木はその男鹿の姿が気に入らないのか先ほどまでの落ち着いた態度を一変させる。

 

「君はいつだってそうだ...そうやって仲間を突き放す...人の信頼を簡単に踏み躙るんだ!!

 

 三木は爆発させた激情を鎮め、ゆったりと半身に構える

 

 

 

 それだけで屋上の空気一変して重くなる。

 

 

 

「いいかい..男鹿。この技は手加減が出来ない...当たればいくら君でもタダでは済まない。だから絶対にかわすんだ

 

 三木が放つ次の技..それは構えているだけで肌を痛いほど刺してくるプレッシャーだけで恐ろしいものだと分かる。

 

 更に高まり張り詰めていくプレッシャー、そして三木が腰を落としたその瞬間────

 

 

 

 

「そこまでよ..その技は出馬くんに止められているでしょう?」

 

 

 

 

 いつのまにか三木の背後に立っていた優しそうな雰囲気を持つ聖石矢魔の女子生徒が彼の腕に手を優しく掴んで止めた。

 彼女は続いて他の六騎聖のメンバーにも声をかけていく。

 

「貴方達もこんな騒ぎは辞めなさい...言わなきゃバレないって思った?」

 

 鶴の一声で彼等はすぐに喧嘩していた手を止めて静かになる他のメンバー。

 

「彼...結構怒ってるわよ?」

 

大丈夫怒ってへんよー

 

 その声は山村と藤崎、そして古市の背後から聞こえてくる。声の主は眼鏡の位置を片手で戻しつつ歩いて屋上へ入ってくる。

 ただそれだけの行動で六騎聖のメンバーをまるでイタズラがバレた子供のように萎縮させる。

 

 それを見ていた古市は、山村に顔を近づけて説明を求める。

 

「山村君...誰あれ?」

「...終わりです..あの人が来たらもう喧嘩にならない....あの人が三木さんを鍛え上げた六騎聖の最強の男

出馬要!!出馬八神流十六代目当主です!!」

 

 

 出馬..そう呼ばれる彼に三木が恐る恐ると近づいて、謝罪の言葉を述べはじめる。

 

「出馬さん...す..すいません。..僕....その彼とどうしても戦いたくて..」

「んー?だから怒ってへんて....それよりも郷くんなんやのこれ?君3年やろ?1年に乗せられてどうすんねん。ホンマやったら君が止めなあかんのとちゃうか?」

「す....すまん」

 

 眼鏡の奥をの瞳をニコニコさせながら出馬は優しく静かに問い詰めていく。それを見て誰もが思う。やっぱり怒ってんじゃん

 

「アレックスと榊もや。おいどこ向いとんねんこっち向けや、しばき回しあげるぞ?」

「アレックスは気絶してるわよ」

 

 ニコニコと表情は崩さないが段々と口調が崩れていき、静かな圧が漏れていく出馬に隣でアレックスの状態を説明する女子の六騎聖..七海静。

 出馬は男鹿たちへと向き直り申し訳なさそうに眉を下げつつ柔らかい声色で話しだす。

 

「すまんなぁキミたち..ウチのが迷惑を────

なんだ?もう終わりなのか?せっかくチャリぶっ飛ばして駆けつけたのによ

 

 出馬の言葉を遮るのは..

 

オレも混ぜてくれよ

「───東条!?」

 

 石矢魔最強 東条英虎。

 彼は先ほどまで工事現場のバイトだったらしくタンクトップと作業用のズボンを着ており、彼はこれから喧嘩をすると言わんばかりに闘志を燃え上がらせている。

 東条が放つ純粋な闘志は弱者を怖気させ、強者を焚き付ける。男鹿はニヤリと笑みを浮かべ、三木は身体勝手に八神流の構えをとる。

 

 しかし出馬は三木の肩を引いて下がらせる。表情は人の好さそうな柔らかい笑顔を浮かべたまま東条をなだめる。

 

「残念やけどケンカごっこは終わりや。あかんでこんなん..しょーもない」

「......」

「せやから..今日はこれで」

 

「テメェが大将か。いくぜ」

 

 穏便にこの場を収めようとする出馬に東条は有無を言わせずに顔面目掛けて右ストレートを叩き込む。

 その衝撃は大気を震わせ轟音を響かせるまさしく猛る猛獣が如き一撃。

 

「...怖いなー君..まるで猛獣や」

 

 しかし出馬はその一撃を表情崩さずに片手で上手くいなしていた。それだけで彼の技は常軌を逸するほどの練度であることを示す。

 

 東条と出馬の間に三木が割り込み、東条の横腹へ拳を当てる。

 

「このッ!!崩拳ッッ!!」

 

 三木が放つのは先ほど神崎を沈め、男鹿でさえ膝をつかせた出馬八神流の技、身体の内部から破壊するものだ。

 しかし相手は東条。

 

「..イテェじゃねぇか....」

 

 膝をつくどころか、言葉だけで痛がる素振りすら見せない。

 三木は自身の技が通じなかったことに驚愕し、後方へ飛んで距離を取るが東条は一瞥しただけですぐに出馬へと視線を戻す。

 

「...たまげたで..久也の突き喰らってどうもないんかい。ものごっつ鍛え上げたつもりやったけど...」

「ちょっとはやる気になったか?」

「──せやな..ケンカやなくて死合やったらいつでも.....

 

 

 

 その言葉と同時に一瞬、出馬を中心に突風が吹き荒れたかと錯覚するほどの圧とナニかが全員の顔を打つ。

 そのナニかを感じ取ったのは4人のみ、男鹿と邦枝はその瞬間に全身の肌が粟立たせ、東条は依然目をギラつかせる。

 

「.....あかんわ..どうにも僕も乗せられとる。静さんまとめてください」

「はいはい」

 

 そういわれた静は手を叩いて場を仕切り出す。

 

「さぁ!皆さん。この騒ぎはこれにて終了..郷くんと榊くんはアレックスを運んで。三木くんもいつまで構え取ってないで行くわよ....あとであなた達みんなお仕置きですって」

「「「.....はい」」」

 

 そう言って六騎聖たちはいそいそと解散し始める。しかし男鹿と東条がそこで待ったをかける。

 

「待てやクソチビ。まだ終わってねぇだろ」

「勝手にしめてんじゃねぇよ」

「いいえ終わりよ。警察のお世話になりたいのなら話は別だけど」

 

 キッパリとお終いを告げる静の言葉ともに、校舎のしたからパトカーのサイレンが聞こえてくる。もうこの戦いを続けることはできないことを知らせる音だ。

 

「勿論今回の件をこのままにするつもりはありません。先生方には皆さんにも遺恨が残らないようにとりはかってもらいます」

「.....」

「ただ、ウチの生徒を含めてですが、これだけの大きな騒ぎを起こした以上それなりの処罰を覚悟しておいてください」

 

 静は今日の騒ぎの収拾と今後のことを端的に石矢魔の6人に伝える。そして三木は一歩前に出て男鹿を睨みつける。

 

「──男鹿...次だ。次こそその曲がった口を叩き潰す」

「──ぬかせ」

 

 因縁の2人が再戦を誓い合ったところでこの騒ぎは収束を見せ、六騎聖も出口に向かって歩き出し、石矢魔の面々もその背中を睨みつけるように眺める。

 彼らの戦いはこうして一区切りがついたのだった。

 

 1人をのぞいて...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上にいる全ての人間の頬をそよ風がやさしくなでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上にいるのだから風を感じるのは当然だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのにそれを感じた途端に全員が行動を止める。止めてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはドロドロとしたドス黒く膨大で残酷な感情を感じさせ、風が身体をなでるたびに圧迫感に息苦しくさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────は?

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