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ワタシ...古市紬貴は今、長年の付き合いの幼馴染である男鹿辰巳に校舎裏まで呼び出されました。
いつもとは違い珍しくなんだか真剣な表情をした男鹿にワタシはNOを言えず謎の緊張感じつつも男鹿の後ろをついて来ました。
校舎裏に着くといつもと違う雰囲気を纏った男鹿がワタシの方へ振り返り真っ直ぐ目を見てきて、ワタシは見つめてくる男鹿からなぜか目を離せない。
...え...ナニ?なんなの?..そーいうのは葵の方が良いんじゃないの!?
心臓の音共に心の声が大きくなり思考がまとまらなくなってきたワタシに男鹿は何も言わずに何故か一歩近づいてくる。
ちょおぉい!ちょいちょいッ!!?いきなり!?いきなりナニする気!?
男鹿は未だ何も言わない。ただただワタシを見てくる。そんな視線に耐えきれずついぎゅっと目を瞑ってしまう。
そして...
「なぁ古市..オレは何してんだ?」
「は?」
ワタシは意味を汲み取れず眉を顰めたのだ。
「何って...え?記憶消えた?」
「違ぇよ!!なんでオレはバレーボールをやってんだ!?オレはただあのチビをぶっとばしてぇだけなんだぞ!?」
「あぁ...いやまぁ言いたいことはわかるけど..そんな事したらもう問答無用で退学でしょ」
「どーでもいい!!ケンカしたいケンカしたいやだやだケンカしたいよー!!」
「駄々こねないで?」
年甲斐もなく地面に寝転がり四肢を高速で振り回す男鹿の姿はト⚪︎ざらすでオモチャを買ってもらいたくて駄々をこねる4歳の子供となんら変わらない。
余りにも滑稽で無様な行動を晒す男鹿にワタシはため息をついて、男鹿の横で意味もわからず無邪気に男鹿の真似をするベル坊を抱っこして背中の土を払う。
「ベル坊?こんなのほっといてヒルダのとこへ戻ろ?」
「アー」
そしてワタシはベル坊を連れて体育館へ戻るのだが、当然電撃を食らいたくない男鹿は身体を跳ね起こしてこっちへかけよってくる。
「バッ!?ソイツ連れて離れんじゃねぇ!!死ぬぞ!?」
「アンタがね。ほらさっさと体育館戻るよ」
「コノヤロウ...大体オレは────
突如大きな破裂音が響いて男鹿の言葉が遮られる。
「.....何いまの?」
「...あそこからだな」
謎の音の出所は男鹿が指差す先、校舎の外れに位置する道場かららしい。普段は空手部やら柔道部などの部活動が使っている筈だが...その音は明らかに特異なものだった。
「行くぞ」
「えぇ..バレーやろうよ..」
「ダッ」
「ベル坊まで..」
男鹿はもちろん腕の中にいるベル坊も行く気満々らしく、渋々2人に着いていく。
馬鹿正直に正面から入っていけば問題になるのは確実なのでワタシ達は裏に周り格子窓から道場の中を覗き込む。
中にはそこら中に破壊されたサンドバッグがいくつも転がる道場の真ん中に道着を着た三木が立っていた。
しかし破壊されたサンドバッグは妙なことに外から壊されたより、内側から破裂したような異常な壊れ方をしていた。
「...これは..あれ?男鹿?」
隣で一緒に覗き込んでいたはずの男鹿がいつのまにかいなくなっていた。というかベル坊もいなくなっていた。
「よう。そいつが屋上で使おうとしてた必殺技か?」
「.....ここは立ち入り禁止だよ」
男鹿の声が道場の声が聞こえてくる。どうやら三木を見つけたことで我慢できずに既に道場へ向かっていたらしい。
いまこんなとこで喧嘩でもすればもはや退学は逃れられない。それはまずいよ...
ハラハラと焦った気持ちと一緒に格子窓の外から道場の入り口に目線を向ける。
「──ダ」
しかしそこには見たことないぐらい勇ましい顔で力強く地面を踏み締め立つベル坊がいた。
ちなみに男鹿は固まる三木の後ろにいつのまにか立っていた。
「残像だ」
「何が?」
訳のわからんことを言う男鹿に三木が青筋を浮かべてツッコんでいるが、ワタシも道場の中へ急ぐ。
すると三木は男鹿に道着を渡して戦いを申し込んだ。喧嘩ではなく組み手の手合わせならば問題ないだろうとのことであり、男鹿はそれを断るはずもない。
「...よし。さっさとやろーか?」
「すぐにその余裕を崩してあげるよ」
道場の真ん中で向かい合う2人そしてワタシとベル坊はその2人を壁際で眺める。
するとベル坊は勇ましい顔つきでスッと片手を上げる。
「ダ!!」*1
「3年前...どうして僕を裏切った?」
「あん?」
「君を倒す前に聞いときたくてね」
「ダァママ゛マ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッ!!?!?!!」*2
「どうどう。落ち着いてベル坊」
話し始めた三木に対して青筋浮かべてブチギレるベル坊が暴れないように抱っこして優しく宥める。
しかし2人とも..というか三木はこっちに気にせず話を続ける。
「中1の終わり...僕が転校するときだ。霧矢が学校に攻め込んできた時、何故僕を裏切ったんだ?」
「.....覚えがねーな?」
「そうか...それが君の答えならば」
音もなく腰を落として構える三木。しかし放つ圧はより重くこの場の温度低くさせた。
「───もう必要ない」
「......」
「!」
ベル坊は空気の変化を感じ取ったのだろう。もう一度片手を上に上げ合図を取る。
「ダ*3
「いくぞ男鹿!!!!」
しかし残念。三木はベル坊の合図を聞くことなく男鹿へと距離をつめて攻撃を仕掛けていく。
2度も合図を失敗したベル坊はバチバチと小さな電撃と涙を溢しながらワタシのお腹にヒシっと顔を埋めてきたので優しく抱っこして小さな頭を撫でて慰め戦いを見守る。
「どぉした!?奥義を見せてくれんじゃなかったのか!!」
三木の猛攻を涼しい顔でいなす男鹿が煽る。するとその挑発に乗るように三木は動きを変える。
蹴りと拳の乱打から一変、男鹿の膝を踏み台に軽く飛び身体を捻る。
「──出馬八神流〝旋斧脚〟!!」
宙を飛んだ三木は後ろ回し蹴りの要領で踵を男鹿の頬へ叩きつけ、蹈鞴を踏ませる。
「...あぶなかったぜ」
いえ当たってます..口から血出てますよ男鹿さん。
「全然効かねぇなチビィ!!!めり込みキック!!!!」
それはフツーのハイキックです。驚異的な威力を持つ普通のハイキックは難なく躱され、懐へ潜り込まれる男鹿の腹に三木の両の掌底が突き刺さる。
「──出馬八神流〝双打掌〟!!」
その威力に男鹿の口から苦悶の息が漏れる。しかし三木はそこで終わらず両の手を付けたまま僅かに腰を下ろし、足に力を入れた。
「──〝双纏手〟!!!」
両手が身体から離れていなかったにも関わらず男鹿が吹き飛ばされるほどの威力が放たれ、男鹿の顔が歪む。
───寸勁..もしくはワンインチパンチとも呼ばれるのと同じ原理の技だろうか。であれば三木が扱う流派は八極拳か何かを取り入れていると考えて間違いなさそう。
ワタシがそんな考えを巡らせていると、膝をつく男鹿に対し三木が冷たく口を開く。
「僕は誰よりも強くなる。君よりも..君達よりも強くなる。そう誓ったあの日から僕は何千何万と同じ修練を続け『技』を身につけた。君らのお遊びの喧嘩ごっことは...」
────わけが違うんだよ
「ハッ。きかねぇな?まさかそれで終いじゃあねぇだろうな」
冷たく言い放つ三木に対して男鹿は薄く口端を上げて煽る。しかし強情を張る姿勢とは裏腹に呼吸が乱れている。
「まったく..あの東条とかいう人といい、君達不良のタフさには呆れるね。まぁいい..次が本番だ。その減らず口をきけなくしてあげるよ」
「やってみやがれ」
三木が構え直す。そして───
────出馬八神流奥義 冥鶯殺
その一撃にて男鹿は沈んだ。
その後ワタシ達はバレーボールの練習に参加できる筈もなく葵に謝罪のメールを入れてそのまま帰路についた。
気の抜けた顔で呆ける男鹿を連れて河川敷を歩く。
「男鹿...三木に誤解されたままだけどいいの?」
「......」
「あの時ならともかく..今なら」
「.....覚えてねぇ」
ワタシの言葉にぶっきらぼうに男鹿はそう言い放つ。不器用なやつ...
中学の頃、霧矢とかゆー奴が攻め込んできた時...男鹿は彼らの前で助けに来た三木をボコボコにぶちのめした。傍から見れば酷い話...だからアイツは男鹿を敵視している。裏切られたと....
アイツ何も知らされてないし、男鹿は嫌われたかったのだから当然の結果だ。けれどそれは男鹿なりに三木を守ろうとしたのだ。
三木と同じように奈良へと引っ越す霧矢に目をつけられないよう。
男鹿がどれだけ強かろうが手の届かない場所では何もできない。そしてあの時霧矢はしつこいぐらいに男鹿へと執着を見せていた。そんな時に三木と友人であることが知られれば狙われるのは想像に容易い。
だから突き放した。冷徹にそして残酷に。
「......ハァ」
ついため息が溢れる。あの時三木だけに限らず男鹿はワタシとも行動を避けた。なぜなら霧矢にワタシと三木の仲の良さを疑われていたからだ。
男鹿が最初に霧矢をぶちのめしたあの日、ワタシは喧嘩に参加せず三木を心配して抱き起こしていた。それを見られていたらしく霧矢は一時期ワタシ達を人質にとることも画策していたと男鹿から聞かされていた。
幸いにもワタシと距離を置いたからか、霧矢はその計画をやめ男鹿だけに集中するようになった。
あの時は男鹿の喧嘩を手伝うことすらできず、せめて三木だけでも誤解してほしくないと考え、言える範囲で話したけど...現実はこの様だ。
そのまま河川敷を歩いているとふと甘辛さを纏った芳醇なソースの匂いとばちばちと油が勢いよく弾ける音が風にのって耳に届く。
そちらへ目を向ければたこ焼きの屋台にて近所の子供がたこ焼きを受け取っていた。
「...あれは..」
「........」
男鹿は何も言わずに屋台へと向かう。
「らっしゃい」
「テメェ...どんだけバイトしてんだよ」
「ホウ?珍しい客が来たもんだ。何にするよ」
「ケンカしようぜ..」
男鹿はたこ焼きを注文するわけではなく喧嘩をふっかける。しかし
「そいつは..高えぞ?」
屋台の男、東条英虎は戸惑うことなく口端を上げてそれを受けるのだ。
「よく見りゃお前ボロボロじゃねぇか。まさか負けてきたんじゃねぇだろーな?」
「ちげーわ。これはあれだ。虫歯だ」
バイト中の東条は男鹿を連れて川沿いまで来た。そーいやアイツらが初めて喧嘩したのここだったなぁ。
なんて考えていると早速喧嘩が始まる。相も変わらず東城は真正面からブン殴る..小細工も技も何もない『力』だけを凝縮したような戦い方だ。
「もう2、3本虫歯にしてやるよ!!!」
東条の攻撃に怯んだ男鹿に好機と言わんばかりに追撃を仕掛ける。しかし男鹿はすぐさま体勢を立て直してカウンターの頭突きを入れる。
東条はたまらず後ろに蹈鞴を踏む。
「お前を倒せる必殺技がありゃ..アイツに勝てる!!」
男鹿は東条へと距離を詰めて無防備の腹に全力で拳を叩き込む。しかし東条は効いている様子を見せない。
「なんだそりゃ?」
「....!?」
「お前弱くなったんじゃねぇか?必殺技だなんだくだらねぇ」
東条は力強く拳を握る。
「要はコイツの強さだろ」
男鹿は目を見開く。まるでなにか憑き物が取れたたかのように。
「ハ...ハハハ」
「ククク」
「「ハーハッハッハッハ!!!!」」
笑いながらも2人の喧嘩は続いていく。ただ全力でぶん殴り合う。
───数十分後
「ダ!」*4
「まてベル!!ヒイキすんな!?明らかに俺より男鹿の方がボロボロじゃねぇか!!」
「アダ」*5
主審ベル坊により男鹿の判定勝ちとなった。だいぶ..いや結構贔屓目が入っているが、主審が白といえば白なのだ。
「よし。行くぞベル坊、古市」
「ダーブ」
「...頭の中は整理できたの?男鹿」
「ごちゃごちゃ考えんのはもーやめだ。ガラじゃねぇしな...一つだけハッキリしとけばそれでいい」
ワタシの問いに男鹿はどこかスッキリしたような面持ちで言う。
「バレーもケンカも全部勝つ。そんだけだ」
「...そ」
そんな言葉にワタシはすこし笑みが溢れ、歩き出した男鹿の隣を歩く。
────そして、それぞれの想いや思惑な渦巻く聖石矢魔学園祭は開催当日を迎えた。
───学園際当日
「おや...お久しぶりですね?早乙女君」
魔二津に佇む寺に1人の男が訪れていた。