TS異能力古市   作:ブッタ

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たくさんのお気に入りと高評価ありがとうございます!!感謝感激です!!!


第25話 試合の時間です

 

「遅い!!」

 

 

 聖石矢魔高校学園祭通称〝聖石舞祭〟開催当日。いつもよりも活気のが溢れている中で葵は不機嫌を通り越していた。

 

「あと30分で開始なのに誰1人来てないなんて....!負けたら退学だって分かってんのかしら!?」

「まぁまぁ落ち着いてよ葵」

 

 ぷりぷりと怒る葵の横でワタシは椅子に座ってキャンディを舐めていた。するとワタシ達が試合前の待機場所として使っている教室の扉が開く。

 

「..ッ!ちょっと遅いわ

 

 

「買ってきたぞツムギ」

 

 

 しかし入ってきたのは退学組ではなくビニール袋を手に持つヒルダだった。そしてワタシは勢いよく立ち上がり駆け寄る。

 

「おぉ〜!ありがとう!!このお金は来月返すね!」

「問題ない」

 

 ビニール袋を受け取り中身を取り出す。たこ焼き、焼きそば、チーズハットグにフルーツ飴。

 無論お小遣いを早々に使い果たしているワタシにそんなお金はないのでヒルダに借金だ。

 

「うひょひょ〜。ほらヒルダも座って一緒に食べよ?葵もプリプリしてないで」

「うむ。そうしよう」

「わぁありがとう。試合前だし私はフルーツ飴をじゃなくてっ!?

 

 食べ物に手を伸ばし始めるワタシ達に葵が何故か声を荒げた。

 

「アナタ達男鹿は!?いつも一緒にいるじゃない!?」

「いや今日はワタシは先にきたよ。これ食べたかったから」

「私もツムギに誘われ先にここへ来た」

 

「なんで今日に限って...!!」

 

 机に項垂れる葵を横目にワタシはチーズハットグに手を伸ばす。カリカリの衣を齧ると凄く伸びるチーズがアニョハセヨしていてうまうま。これはSNSが捗るような映え具合だ。もう流行ってないけど。

 

「むぐむぐ....ホントは舎弟くん達のクラスのメイド喫茶に行ってみたかったんだけど...」

「そんなん無理っスよ。特にツムッちはこの間の騒動でかなり怖がられてんスから」

「そーだよねぇ....せっかくなら日本のメイド文化をヒルダに教えたかったのになぁ」

 

 ゆかちの指摘に反論できないワタシはがっかりとした気持ちを紛らわすようにまたチーズハットグに口をつける。みにょーん。

 

「もし来なかったらどうするのよ..?アイツら」

「むぐむぐ....まぁ大丈夫でしょ。なんだかんだアイツらやる気はあるよ」

「....というか試合前にそんな重たい物食べて大丈夫なの紬貴」

「よゆーだよ。よゆー」

 

 ちなみに退学組が全員揃ったのは試合8分前でした。待ってる時の葵は般若の如く静かに怒りを燃やしていて怖かったです、まる。

 

 


 

 

 一方、男鹿の舎弟こと山村和也は石矢魔と六騎聖の騒動以降、男鹿達と行動を共にすることが出来ずにいることに悩んでいた。

 

「うぅむ。これはマズイのでは?」

「そうだよねー。ちょっとひくくらい男鹿さんに無視されてるもんねカズくん」

「ハッキリ言いすぎだお前.....」

 

 無自覚にクリティカルな言葉で傷口を抉ってくる彼の幼馴染の藤崎の言葉にがっくりと項垂れる山村。

 

「...俺があんとき...屋上のときにビビらずに2人を追いかけてりゃ....」

「すごい迫力だったよねーフルイチさん。この間動物園で見たライオンより怖かったもん」

「いやさすがにそれは....いやでも確かに」

 

 そんなことを話す2人は体育館を目指して歩いている。無論目的は石矢魔と六騎聖のバレー対決を見るためである。

 

「そーいえばカズ君。六騎聖の人たち大丈夫かな?さっきまで忙しそうだったよね?ツルピカの人たち捕まえるのに」

「帝毛の人達な。まぁそんなの大した問題じゃないだろあの人たちにとっては。きっと作業の片手間程度くらいにしか思ってないぜ?」

 

 2人が話しているのは先ほど喫茶店と化した彼等の教室で起きた事件だ。1人のクラスメイトに多数の帝毛工業の不良が絡んでいたところに六騎聖による大捕物が行われていたのだ。

 他にも様々な場所でトラブルが起これば六騎聖のメンバー収めに行くなど多忙を極めていた。

 

 無論六騎聖の他にも風紀委員や先生方の見回りが行われているが、こと治安維持においては制裁権限をもつ六騎聖が頼られる。特に他校の生徒や外部から人が訪れる学園祭は彼等に要請が集まる。

 

「まぁそんなことより...今はせめてアニキ達の応援を全力で果たすのみ!!急ぐぞ梓!!」

「あいあいさー!」

 

 急ぎ足で2人は体育館へ入っていく。そこにはスポーツ対決を見ようと大勢の生徒で溢れかえっていた。

 

 


 

 

『さぁ!!皆さん大変お待たせしました!今年の聖石舞祭目玉企画...六騎聖vs石矢魔問題児集団によるバレー対決!!司会進行は私放送部の古奈多恵子、そして解説は元バレー部そして現ネコの畑山先輩でお送りします!!』

『ニャー』

『両チームまるで睨み合うかのようにコートの中心で整列します。絶対に負けられない理由を背負った両チーム...勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか?解説の畑山先輩、ズバリ注目の選手はだれでしょうか?』

『ニャーンゴロゴロ』

『やっぱ静かにしてて下さい』

 

 堂に入った見事な実況をしている放送部と隣でネコの着ぐるみを被った解説という名の不審者のやりとりをワタシ達はネットを挟んで並ぶ。

 

 しかし会場は異様な盛り上がりを見せる。六騎聖を応援する声やワタシらを貶す声で溢れかえっており完全なアウェー側だ。

 

「礼を言わせてもらうで?君らのおかげで今年の学園祭は大成功や。今までは僕らも怖がられてたんやけど..君らが悪役買ってくれるお陰で支持してもらえるようになった」

「怖がられてたんだ..まぁ明らかにカタギじゃない黒い顔つきの奴が1人いるもんね..」

「余計なお世話だ。なんだ黒い顔つきって....!」

 

 メガネさんの言葉にワタシなりに納得しているとアマチュア無線部の人が食いかかってくる。

 なんですかぁ?べつにワタシはアナタのこととは言ってませんけどぉ?

 

「大人しくしてろアホ市」

「──ッタァ!?」

 

 いきなり男鹿に横から頭を叩かれ思わず声が漏れる。ジロリと睨みつけても気にせず立っている男鹿にワタシは肘で反撃をいれる。

 

「「........」」

 

 弾かれたようにワタシと男鹿は両手で取っ組み合う。この馬鹿力め。びくとも動かねぇ..!

 

『おぉっと!?試合が始まる前から石矢魔は仲間割れかぁ!?』

「何してるのよ2人とも!!大人しくしてなさい!」

 

 葵の声にワタシは渋々手を離しポッケに入れて大人しく立ってることにする。

 するとメガネさんがネットの下を通るように手を葵へと出していた。

 

「..まぁなんや..今日はよろしく。お互い最高の試合にしようや」

「....そうね。ただ勝たせてもらうわよ」

 

 メガネさんの意図に応えて葵はがっしり握手をする。その瞬間に会場から大ブーイングが巻き起こる。主にメガネさんのファンらしき女子から。

 

『意外にも不良チーム、キャプテン同士の握手に応じます。しかし彼らにスポーツはできるのでしょうか?先程も不穏な雰囲気でしたが...』

『ニャー...でも超可愛いよね。レベちだよあの2人』

『言葉を喋らないでください』

 

 実況席の愉快な漫才を聞き流しつつ葵を抜いたワタシ達6人は向かい合う。

 そう、バレーは6人で行うのに対してワタシ達は7人いる。つまり誰かが補欠としてベンチに行かなくてはならない。

 当然リベロ兼キャプテンである葵は出る為他6人から選ぶことになるのだ。

 

「準備はいい?」

 

 ワタシの言葉に男鹿、神崎、姫川、東条そして夏目は頷く。事前に誰が抜けるか話し合っていたがワタシ含めてごうつくばりな連中...誰も抜けたがらなかった。なので必然的にこの手段を取ることになるのだ。

 

「最初はグー!!!」

「「「「「ジャンケンポンッ!!!」」」」」

 

 ワタシはチョキを出して、その他全員グーを出している。

 

「うそぉッ!!!?!?」

「よし決定だ。さっさとベンチいけ一年坊」

「さ...3回勝負!!」

「却下」

 

 ワタシの要望を非情に捨てる神崎。周りも終わったと言わんばかりに各々ストレッチを始めるのを見てワタシはすごすごとベンチへ歩いていく。

 

『まさかメンバー決めをこんなテキトーに決めた不良チーム!信じられません!』

「うっせーな。さっさと始めようぜ?」

「あの....それよりも確認したいのですが」

 

 男鹿がウズウズと審判を急かすように言葉をかけるがその審判から質問が飛んでくる。

 

「キミは..その赤ん坊を背負ったまま試合するんですか?」

「───ダメなのか?」

「逆に良いんですかっ!?!?それでッ!?」

 

「ええんちゃうか?なんたって子連れ番長や。なぁアレックス」

「そうデスね。ケンカの最中ですら子供を離さないスジガネ入りデスからね」

「ま、まぁ...両チーム異論がないのであれば問題ないで..す?」

 

 少しゴタゴタがあったが、向こうも審判も問題なしと認識したところで全員ポジションにつく。

 

『少々ごたつきましたが..只今より六騎聖対石矢魔によるバレーボールエキシビションマッチ...試合開始です!!

 

 実況の声と共に試合開始の合図のホイッスルが体育館中に甲高く響き渡る。

 サーブはどうやら向こうのチームかららしく向こうの外人さんが打点の高いジャンプサーブを放つ。

 

『おぉ!!さすが新庄選手!!難易度の高いスパイクサーブをいとも簡単に!!本当にボクシング部なのか!?』

『..なんでボクシングやってんだよアイツ

『口を閉じていて下さい』

 

 プロ顔負けのスパイクサーブだが、葵は難なくレシーブで拾い夏目が姫川にトスを上げて力強いスパイクを放つ。

 

「────っ」

 

 しかしメガネさんにブロックされ得点を取られてしまう。ふむ...練習のしたおかげかこっちもちゃんとバレーできてるけど向こうの方が上手らしい。パクッ

 

「....なんでたこ焼き食べてるのよ紬貴」

「エネルギー補給だよ。寧々も食べる?」

「いらないわよ」

「ほしい..」

 

 断る寧々の横から千秋の物欲しそうな声が聞こえたのでたこ焼きを口元まで持っていて食べさせてあげる。

 そんなことをしていると、また外人さんが見事なスパイクサーブを放ち、葵は難なくそれを拾う。

 レシーブによって上がったボールを男鹿は

 

「よっしゃあ!!」

 

 バスケのリバウンドの如く力強く掴んだ......掴んだ?

 

「東条っ!!」

「応!!!」

 

 男鹿の呼びかけに登場はネットに背を向けつつ腰を落として両手を組む東条。そしてその両手に男鹿は飛び乗り、東条が上へ投げる。

 

流星のダンク(メテオジャム)っ!!!」

 

 飛び上がった男鹿は某バスケ漫画バリに相手のコートへボールを叩きつける。

 

「「しゃああああああああッ!!!!」」

「反則」

「「何!?」」

 

『当たり前ですっ!!アホです!!』

 

 もう交代しない?

 

 

 

 

 

 

『六騎聖対石矢魔によるバレー対決。1セット目も中盤にさしかかかり点差が僅かに開いてきました。リードしているのは我らが六騎聖です!!では非常に気が向きませんがここで解説のクソネコに聞いてみましょう。この試合どう見ますか!?」

『この着ぐるみ蒸し暑...』

『もう二度と聞きません』

 

 姫川が審判にタイムアウトをとり全員ベンチへ戻ってくる。すると男鹿と東条が目をギラリと光らせて笑う。

 

「なかなかやるじゃねぇかアイツら」

「あぁ俄然燃えてきたぜ」

 

 なんだかすごい闘争心燃やしてる2人だけども..

 

「「いや私達(ワタシら)が負けてんのアンタらのせいだから」」

 

「「──ッ」」

 

 そうこやつらはあの後にも投げたり隠したり飛び越えたり、挙句の果てに破裂させたりともうそれはやりたい放題であった。

 驚きを隠せない顔をしている男鹿の肩にポンッと手を置く。

 

「オツムが弱いとは知ってたけどここまでとは思わなかったよ...交代しよか」

「ジャン負けは黙ってメシ食ってろ」

「「んだとコラァ!!?」」

 

 すぐさまワタシと男鹿は取っ組み合いを始める。

 オラッこのやろう!鼻の穴大きくしてんやんよ!!うぎゃー!?人はそっちに腕曲がらないっつの!やめろぉ!?

 

「だからやめなさいっての2人とも!!小学生か!」

「まったく..テメーらふざけんなよ?反則はバレねーようにやらねーと意味ねぇだろうがドカスが」

 

 ワタシと男鹿の取っ組み合いを静止する葵の横で姫川は謎の指摘をしてくる。

 

「いいか?しょーがねえからこのオレがテメーらのために見本を見せてやる。おい男鹿」

「ああ?」

「てめーが鍵だ。耳かっぽじってきいとけ。反則なんざしなくても俺たちにだけに許された特別ルールがあるだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

『30秒のタイムアウトか終了し、両チームポジションにつき...な、何でしょうか?石矢魔チーム、不気味にニヤついています!!サーブの七海先輩もこれには困惑の表情です!!』

「..何?何なの?」

 

「いいから打てよ?」

「おう来いやこら」

 

 六騎聖の美人さんが困惑しても姫川と男鹿はニヤニヤと気味の悪い浮かべている。

 もう気にしないようにしたのか美人さんは勢いよくサーブを放つ。

 

「任せて!!」

 

 葵はすぐさまレシーブでボールを上げ、夏目がトスを上げる姿勢に入る。同時に東条、男鹿そして姫川が飛び上がりアタックの準備。良い連携だ。

 

『これは...男鹿選手、夏目選手の前で跳びトスを隠す。見事な連携プレー!!』

「───ッ!!男鹿ですッ!!」

 

 何かを悟ったか三木は狙いを見破る。三木の声に無線部の人と萌え侍さんがブロックに飛び完璧にコースを塞ぐ。

 

 

 

 

 

 

 しかし男鹿は悔しさを出すどころかニヤリと薄ら笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 理由は明白。男鹿に降りてきたのはボールではなく

 

 

 

 

 

 

───マ

 

 

 

 

 

 

 ボールを股に2つ引っ提げたベル坊なのだから。

 

 

 横でノーマークの姫川が手首のスナップを使ってボールをコートに入れる。

 

『は、入ったぁー!なんという汚い..あ、いえ頭脳プレーでしょうか!!石矢魔チーム男鹿選手の赤ん坊をダミーに使ってきました!!』

「は、反則だ審判!!」

「言いがかりはよせよ傷少年。最初にそのガキを男鹿の一部として認めたのはテメーらだぜ?」

 

 姫川の言葉に反論できず口を閉じてしまう三木。その後もベル坊の加勢が認められたまま進む。

 男鹿の頭の上からベル坊がアタック叩き込んだり、ベル坊使ってブロックして打たせなかったり、挙げ句の果てに電撃を使って動きを止めたりなど無茶苦茶やっていた。

 

 しかし意外にも観客の反応はブーイングなど起こらず、それどころか赤ん坊へと応援の声が飛ぶような好感触をしめす。

 

 そして開いていた点差はいつの間にかひっくり返り、こちらのセットポイントとなる。

 しかし

 

「あかんなぁ」

 

 砲撃と疑うほどけたたましく鳴り響く轟音と共に放たれたサーブによりこちらに吹いていた追い風は止まることになる。

 

「もーあかんあかん。ちゃんと普通のバレーしとこ思うとったのに...君らのせいやで?」

 

 脅威的なサーブに葵は拾うどころかあまりの威力に吹き飛ばされていた。しかしメガネさんはその後もサーブを続ける。それは普通のサーブではなく所謂武道の正拳突きのようにボールを殴りつけるようなものだ。

 こちらセットポイントだった筈もメガネさんただ1人により、あれよあれよという間に逆転され1セット目を取られた。

 

『ここで1セット目終了!!とったのは我等が六騎聖!!出馬選手による怒涛のサーブの華麗な逆転劇でしたぁ!!』

『あんニャンバレーじゃニャイニャン』

『せめてキャラは固めてくれません?』

 

 セット間のインターバルによりメンバーがベンチに戻ってくる。

 

「これは...一回休んだ方がいいですよ姐さん」

 

 寧々が葵の腕をスプレーでアイシングしつつ提言する。それもそのはず、あのサーブを受け続けてきた葵の腕はあまりに痛々しく赤く腫れ上がっていた。

 

「ダメよ..私が抜けたら誰がレシーブあげるのよ」

「だけど姐さん腕上がんないじゃないっスか」

「それは...」

 

 責任感の強い葵は交代を渋り..そしてインターバル終了の合図のホイッスルが鳴り響く。だから

 

 

「だいじょうぶい」

 

 

 その責任感によって凝り固まった小さな頭にワタシは手を乗せて、コートに歩き出す。

 

「ワタシがやってみるから...葵は外から攻略法を見つけて」

「紬貴....!...わかった。頼んだわよ」

「アイアイキャプテン」

 

 そう言われて葵と交代したワタシはコートに入る。すると審判からボールを渡される。どうやらサーブはこちららしい。

 

『さぁ第2セットが始まりました。ここは何としても勝ち取りたい石矢魔チームは邦枝選手に代わり入ったのは古市選手です!」

『マジで可愛いなおい』

『死んでください』

 

「フッ。ワタシの鬼サーブを受けてみるがいい!」

 

『古市選手持ち前の顔の良さを活かしてキメ顔で決めた!これで口元に青のりが無ければ完璧でした!!』

『その抜けてるところもいいですねぇ』

 

 マジかよおいもうやめたくなってきた。ニヤニヤとムカつく顔で見てくる男鹿を無視して口元を乱暴に拭く。

 

「何してんだ。さっさと打て」

「うるさいなぁ...!ほっといてよ神崎!!」

 

 羞恥心に駆られながらも拭き終えたワタシはボールを上に投げて全力でスパイクサーブを放つ。

 

「フ────」

 

 風をきって進むワタシのサーブはレシーブの構えをとる三木へと向かう。

 

「何っ!?」

 

 しかしボールは三木から逸れて逆側に立つ美人さんの方へ向かう。油断していたであろう彼女はレシーブするもボールはあらぬ方向へ飛んでいく。

 

『な、なんというカーブサーブ!!まるでボールが生きているかのように軌道変えた!!こんなこと可能なのか!?』

 

「なんてサーブ打ちやがるあの女...!!」

「....激萌え」

 

 なんとも締まらない始まり方だったけれどサーブだけは成功して良かった。ほっと胸を撫で下ろします。ホ...

 ボールを受け取って2度目のサーブを放つ。しかし彼等もバカではなく二度目は三木が対応して拾ってくる。

 

「アレックスさん!!」

「おマカセを!!」

 

 外人さんがそのまま放つアタックを何とかワタシがレシーブで拾う。その後も互いに引かずラリーが続いていく、自分たちの勝利を掴む為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベンチにて赤く腫れてしまった腕を冷やす私は、コートの中で頑張る皆の姿を見てこの数日間のことを思い出していた。

 この学園に来た日はいつもの様にみんなバラバラで、互いに睨み合っていた。けれどあのトラブルがあってバレーの練習をする様になった。

 

 そんなこと石矢魔にいた時はそんなこと考えられなかった。けれど今は皆んなで練習して、力を合わせて試合に励んでいる。アイツらすぐ喧嘩するし問題起こしていたけれど....その時間は高校生活の中で上位に入るくらいに何故か楽しかった。

 

 楽しい?

 

(───あ、そうか。私このクラス終わらせたくないんだ

 

 今まで学校らしいことをせず争ってきてばかりだった私達が今はチームとして手を取り合っている。取り合うことができる。

 だから...私は────

 

 

『おおっと!!夏目選手が転倒!!!大丈夫でしょうか!?』

 

 聞こえてきた実況の声にハッとしてコートに集中すると夏目が足を抑えていた。

 

「いっつ...マジでごめん皆」

「大丈夫か夏目」

「ちょっと足挫いちゃった..」

 

 神崎が手を伸ばして彼を立たせるも、足が痛むのか片足を引きずっている。点差はそこまで離れていないが、リードしているのは向こうだ。

 

「さっきまでラリーが続いてたのに...向こうにサーブが渡るとあのメガネのせいで一方的になりやがる」

「ていうか..他の皆もレシーブしてくんないっ!?さすがにワタシ1人じゃ全部拾えないよ!?」

「オメーは邦枝の代わりに入った来たんだからレシーブ気張れや。つか最初の威勢はどうした?動きが悪くなってんぞ」

 

「いやちょっと油物食べ過ぎてお腹が...」

「「「「アホだろ」」」」

 

 

「みんな聞いて」

 

 足を怪我した夏目と交代した私は皆をこちらへ注目させる。すると驚いた様子で神崎と姫川が私に対して心配の声をかけてきた。

 

「邦枝..!お前大丈夫なのか?」

「まだ腕赤いだろ」

 

 こんなこと1週間前ではあり得なかったこと..きっと皆変わったんだ。私含めていい方向に。

 

「大丈夫よ。みんな今から全部のボールを私が拾って拾って拾いまくるわ。たとえあの人サーブでも。だから...」

 

 だから私は絶対にこのクラスを終わらせない。

 

 

絶対勝つわよ

 

 

 私の言葉に

 

「「「「「応!!!」」」」」

 

 皆、全力で応えてくれる。さぁ反撃開始よ!

 

 

 

 

 

 

『石矢魔チーム、夏目選手と交代して入ってきた邦枝選手に発破をかけられ全員気合いが入ります!!』

『..姐御...!!』

『もう無視します』

 

 邦枝がコートに入り試合が再開、サーブは六騎聖チームの出馬から...つまり彼の強力なサーブを攻略しなければ勝ち目はない。

 しかし邦枝は一抹の不安すら抱かない。なぜならば

 

(貴方のサーブは...ヒルダさん程じゃない!!!)

 

 砲撃を思わせる威力のサーブを邦枝は完璧に拾い上げた。それを確認した瞬間男鹿と古市が動き出す。

 

「古市ッ!!!」

「決めてよね!」

 

 古市が男鹿へと完璧にトスをあげる。しかし六騎聖の郷が男鹿のブロックへと跳ぶ。

 

「また赤ん坊使ったフェイクかッ?いつまでもそんな手が...!?」

 

 しかし男鹿は雄叫びと共にブロックの上から強烈なスパイクが叩き込まれ、レシーブの準備していた三木諸共吹き飛ばす。

 尻餅をつく三木に対して男鹿は見下ろして口を開く。

 

「小細工は無しだ」

「───ッ!!」

 

『この試合初めて出馬選手のサーブが上がり、石矢魔得点を得ました!!この流れをモノに出来るのでしょうか!!神崎選手のサーブです!!』

 

 神崎がサーブを放ち、七海がレシーブを受ける。するとトスをあげるアレックスを隠すように三木、剛そして出馬が跳ぶ。

 しかし邦枝は見えた...アレックスの手のひらが出馬へと向いているのを。

 

「右よ!!」

 

 彼女の声に全員警戒し、古市と東条がブロックに踏み込む。

 

「かかりマシタね」

 

 アレックスはそう呟くと身体を反るようにして出馬とは反対、三木の方へとトスを上げる。

 それは石矢魔全員の目を剥かせ、六騎聖全員にこちらの得点を確信させるほどの好プレーだ。

 しかし...

 

「な!?」

 

 三木のスパイクを防ぐように、反対側にいた筈の古市が目の前にブロックするように飛んでいた。

 

(あり得ない!!どういう動きをしたらあそこから間に合うんだ!?)

 

 三木は驚愕しつつもブロックされないようインパクト際に指を使って緩く返球する。

 

『な、なんと!!アレックス選手も好プレーでしたが古市選手これに対応してブロックに飛んだ!!まるで瞬間移動したかのようです!!』

 

 緩く返球された球は邦枝により拾われ、姫川が東条へとトスをあげ、

 

「ようやく来たぁ!!!!」

 

 野獣の如き暴力的なスパイクでまたもや得点を手に入れる。

 

『東条選手の強力なスパイク!!石矢魔チームの動きが急に良くなって来ました!!』

 

「いいぞぉ!!お前らぁ!!このまま2セット取っちまえ!!!」

 

 すると応援席のほうから石矢魔を応援する声が聞こえて来る。その声の主は彼らの担任、佐渡原巧である。

 そして彼の純粋な応援の心は観衆である他の聖石矢魔の生徒に伝播していく。

 

「いいぞー!石矢魔ぁ!」

「どっちも頑張れぇ!!」

「かませぇ!!子連れ番長!!」

「こっち向いてぇ!!古市さぁん!!」

「邦枝さーん!!最高だー!!!」

 

『なんとお聞き下さいこの大歓声!!私ちょっと目頭熱くなってきました!!』

 

 最早最初のようなアウェーな空間ではなく、どちらも応援する声が増え会場内のボルテージは最高潮のまま試合は続いていく。

 

 2セット目は石矢魔チームがとり、第3セット目両者譲らずデュースが何度も続くほど白熱していた。

 

 

 

 

『両者互いに一歩も譲らず、激しい攻防!!得点は27対28!!!石矢魔5回目のマッチポイントです!!サーブは姫川選手!!』

 

「しまっ」

 

『おっと姫川選手サーブが乱れた!!最早体力の限界か!?六騎聖チャンスボール、三木選手がしっかりレシーブを上げます!!』

 

 三木の上げたボールに飛び込んでくるのは出馬、しかし東条はこれに反応しブロックに跳ぶ。

 

『出馬選手渾身のスパイク!!ブロックが弾く!!!しかしこれは...!!』

「チィッッ!」

 

 東条の手によって弾かれたボールは無常にも返す事はできずに石矢魔側のコート外の方へと飛んでいく。

 

『邦枝選手これを追うが間に合わない!!!』

 

 

 

 

「男鹿っ!!」

「応!!」

 

『な────』

 

 

 

 

 

 しかしコート外へと跳んでいくボールに古市が飛び込むように追いついた。

 

「オラァッッ!!!!!」

『なんと古市選手!!コート外のボールに食らいつき!!ネットの方へと蹴り飛ばした!?!?』

 

 古市はそのまま壁に激突し、蹴り飛ばされたボールは放物線を描きネット前、スパイクの準備をする男鹿の元へとドンピシャで飛んでいく。

 誰もがコートの外へと出る考えておりその男鹿のスパイクに誰も反応できなかった。

 

 ただ1人、三木を除いて

 

 

 

「男鹿ぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」

「オォォォぉぉぉああああッ!!!」

 

 

 

 古市が男鹿に声かけた瞬間に三木は移動してブロックの準備をしていたのだ。衝突する男鹿のスパイクと三木のブロック。しかし

 

「俺達の...勝ちだぁぁぁぁあ!!!」

 

 男鹿は三木諸共スパイクを床に叩きつける。

 

 中学から続く彼等の因縁。虚しくも幾つもの善意がすれ違い、複雑に絡み縛りつき苦しませたそれは、解決とはいかなくとも今一区切りがついた。

 

 

 

 

『き..決まったぁ!!!まさかの古市選手と男鹿選手の超連携により!!27対29!!エキシビジョンマッチバレーボール対決を制したのは石矢魔チームです!!

 

 この日体育館中に勝者を讃える喝采と歓声が響いた。





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