TS異能力古市   作:ブッタ

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ここら辺の妙な平和回好き。こんなの読んでくれる貴方も好き。


第37話 人手が無くては何も出来ません。

 

「えー..つーわけで、皆さん日曜の真っ昼間から集まっていただきありがとうございます」

 

 ランチタイムの終わりどきのファミレスの一角の席。コホンと咳払いしながら挨拶の言葉を話す古市。そして彼女の前に居るのは神崎三人衆に姫川、そして烈怒帝瑠の花澤、谷村、大森。

 カタギとは思えない異様な雰囲気を発する彼等を前に、ラミアは古市の後ろに半歩隠れている。ついでに周りの店員や客も距離を取っている。

 

「幾人かには既に話したけど、集まってもらったのはとある人物の捜索を手伝ってもらいたいのです」

「おいおい」

 

 続く古市の言葉、それに待ったをかけるのは青筋を浮かべる姫川。明らかに怒りを隠さない彼は薄めのサングラスの奥で鋭い眼光を光らせ古市を睨みつける。

 

「古市ぃ...テメェぶっ殺されてーのか?そんな理由で俺と神崎の勝負を邪魔をしてこんなとこに集めたのか?あ?」

「そんなぷりぷりしないでよ坊ちゃま。仕方ないでしょー?アンタらの格ゲー対決全然終わりが見えなかったんだもん」

「よし殺す」

「まぁまぁ、落ち着いてよ姫ちゃん」

 

 軽い調子の古市の呼び方にブチギレの姫川が立ち上がるが、隣に座っていた夏目が肩を抑えて落ち着かせる。

 

「ま、俺としては学園祭のときに城ちゃんと神崎くんを助けてくれた貸しがあるからさ。手伝うのは良いけど、俺達に助けを求める理由はあるのかな?」

「あるよ。勿論人手が欲しいってのもあるけど...もう一つの理由が───」

 

 

「そんなことはどうだって良いのよ!!」

 

 

 すると突然静観していた筈の大森がしびれを切らしたようにテーブルを叩いて声を上げる。彼女としてもここでのんびりしていられない理由があるのだ。

 

「紬貴、アタシと千秋はアンタが葵姐さんが何処にいるのか知ってるって聞いたからここまできたのよ!もう丸2日姐さんと連絡がつかないのよ!?」

「焦る気持ちは分かるけど落ち着いて寧々、それについてもこれから話すよ。何せ今回の人探しは葵も無関係じゃない。勿論ここにいる石矢魔高校に属する皆さんも」

「はぁ?」

 

 意図が見えない素っ頓狂な古市の発言、それは側で聞いていたラミアにも分からず思わず彼女の服の裾を引っ張り手を招く。

 招かれるまま古市は頭下げてラミアに耳を寄せ、小声で話し始める。

 

「ちょっと!コイツら協力させようと言ったあたしが言うのもなんだけど..大丈夫なの?そんな適当なこと言って!」

「猶予は少ないんでしょ?どの道人手はいる。まぁー見てなって」

 

 心配するラミアの頭に優しく手を乗せて、古市はもう一度席に座る不良達に顔を向ける。彼等の様子は先程よりも目に見えて悪くなっている。

 苛つきを隠さない者、怪しむ様子の者、興味を無くしケータイを弄る者など、しかし彼女は臆さず口を開く。

 

「さて、先程も言ったけれど今回の人探しは皆無関係ではいられない。何せこれは石矢魔の沽券に関わる話です」

「要領を得ねぇな。それがどうして俺たちに関わるんだ?あ?」

 

 淡々と話すが苛つく姫川が食いかかる。しかし他も言葉にしないだけで同じく感想を持っていることははっきりと分かる。

 だが彼の言葉に古市は言葉を返さず、ただ片側の上着とタンクトップを掴んではだけさせ肩を露わにする。一昨日受けた傷口は未だ完全には塞がらず肩から胸にかけて巻かれた包帯に僅かではあるが血が広い範囲で滲んでいた。

 

 

 それを見たこの場にいる人間全員が度肝を抜かれて息を呑んだ。

 

 

 普段古市は良くも悪くも目立ちやすい男鹿とよく並んで行動しているため金魚の糞や腰巾着などと舐められることが多い。だがここにいるメンバーは既に彼女も男鹿にも劣らない隠れた実力者であることを知っている。

 そんな彼女が決して浅くはない怪我を負わされた事に驚愕を隠せないのだ。

 

「───..先日男鹿と葵、そしてこのワタシも何者かによる襲撃を受けました。幸い全員命に別状はありませんでしたが、それでも怪我は避けられず..あの男鹿に至っては全身血だらけの重症です」

「...あの男鹿ちゃんが..?」

「ちょちょ...!!ツムっちそれ大丈夫なんスか!?」

 

 古市の口から知らされる信じられない驚愕の事実に各々が固まり、花澤が古市の怪我を心配するが問題ないと腕を振る。

 

「相手はここ辺りでは見かけない制服でした。喧嘩の道理を弁えず非情で凶暴な連中で、そして何より数が多い。総数ではウチが圧倒的に負けていてます」

 

 嘘と事実を織り交ぜていきながら古市は言葉を続けていく。事実襲ってきた悪魔達は少人数程度だがもっと居るのは明白であると考える古市。故に何がなんでも戦いを止めるためにどんな手を使っても焔王を見つけ出さなければならないのだ。

 

「ハッキリ言いましょう...奴等は近いうちに石矢魔を攻めてきます。石矢魔高校発足以来最大の窮地と考えていただきたい」

「ちょっと紬貴...!!葵姐さんは...葵姐さんは無事なの!?」

「これといった大きな怪我は無いよ。けれどこの事態を重く見た葵と男鹿は力をつけるために葵の祖父の元で修行してるみたい」

 

 自分達ののリーダーがいつの間にか襲われていた事実に顔を青くする大森に古市は彼等の現状の様子を答える。

 

「祖父って...でも姐さんの実家の神社には誰も居なかったわよ!?」

「え゛、そうなの?」

 

 しかし思いもよらぬ言葉に彼女は目を丸くする。邦枝の祖父と修行と昨日の朝に男鹿から聞いていたものだから古市はてっきり彼女の実家にいるものだと考えていたのだ。

 だがそこに誰も居ないとすれば古市の心当たりがある場所はただ一つとなる。

 

「んぅ....だとしたら魔二津かな?」

「魔二津?どうしてあんな山しかない場所に行くのよ?」

「葵が...というか葵と葵の爺さんが昔から使っている修行場がその山奥にあるからさ。昔にワタシと葵はその近くの寺で知り合ったんだもん」

 

 推測ではあるが彼等の居場所を伝える古市は咳払いする。

 

「こほん、兎にも角にも先日辛くも撃退した奴等の次の襲撃を返り討ちにするべく男鹿と葵は力を付けて帰ってきます。とはいえ先程も言ったように相手は驚異的な数です。故に先んじて首謀者探し出して叩く必要があります」

(...こ、コイツ..息をするようにスルスルと嘘をつくわね...。やっぱり危険な奴と考えた方が良いのかしら..)

 

 自信の受けた傷すら利用して話に説得力を持たせる古市のホラ話を側で聞いていたラミアは戦慄し、内心疑惑の目を向けていた。

 

「決してこれは脅しでも強制でもありません。ですが石矢魔の中でも有数の実力者である皆にお願いします。誰の為でもない、ワタシ達の石矢魔の為に力を貸してください!!」

 

 先程までの飄々とした態度とは打って変わり、覚悟を持った軍人のように真剣な雰囲気で頭を下げる名役者古市。

 すると今の今まで静かにヨーグルッチを飲んでいた神崎が口を開いた。

 

「...なぁ古市。もしかしてテメーらを襲ったのは妙なコートの制服を着た奴らか?」

「そ、そうだけど...どうしてそれを?」

「一昨日の夜、コンビニ帰りにソイツ等を見たぜ。しかも東条の奴と六騎聖の眼鏡野郎を伸してやがった。見つけた途端にどっか行きやがったがな」

 

 想像だにしていなかった強力な援護射撃(目撃証言)、それは古市含めて全員驚かせ、話に更に信憑性を作る。

 

「と、東条先輩までも..スか...!?」

「何処の学校よ..神崎君」

「古市の言う通りここいらの奴じゃねぇ。多分修学旅行生とかだぜ..."アクマ"とかどーとか言ってやがったな」

「悪魔....強そう」

「何にしても...舐められたまんまじゃいられねぇな。おい古市..テメェそこまで考えてんなら奴等の学校ぐらいは特定してんだろーな?」

 

 最初のほぼ無関心の状態だったのが嘘のように全員がまだ見ぬ襲撃者達に対して闘志を燃え上がらせ始めていくの見てラミアは更に側で不敵な笑みを浮かべて立つ古市に慄く。

 

(すごい...さっきまであんなにバラバラだったのに、いつの間にか全員やる気で満ち溢れてる..!コイツまさかここまで考えて....ん?)

 

 そこまで考えて気づく、古市の笑みがどこか引き攣っていることに。

 

「その学校の名は....」

 

 古市の言葉が一度止まる。その勿体ぶるような沈黙に皆固唾を呑んで静かに続く言葉を待つ。

 そして古市は数秒続いた沈黙を破る。

 

「あ... 悪魔野学園(あくまのがくえん).....です

 

 

(いや無理でしょそれはッ!!)

 

 

 小学生が3秒で考えたようなネーミングが飛び出してきたことに眼を剥いて内心ツッコむラミア。

 

(何よその名前!?即興だとしてももっとマシ名前があるでしょーよ!!皆んな固まってんじゃない!!いくらなんでもこれは───)

「悪魔野学園ン〜...?」

 

 その名を聞いて姫川が立ち上がって口を開く。その目は鋭く拳は力強く握られていた。

 

「なんて悪そうな名前なんだ!?」

 

(うえぇぇっ!?信じるのぉ!?)

 

 驚愕のあまり空いた口が塞がらないラミアを置いて神崎達も続いて立ち上がり声を上げる。

 

「しゃあッ!!俺達が全員ぶっ潰してやるぜ!!」

「葵姐さんに舐めた真似してくれやがってマジ許さねぇッス!!」

「...ハッ!..そ、そうそうその粋です!!目指すは打倒悪魔野学園!!」

 

────おおおおおおぉ!!

 

 放心から戻ってきた古市の言葉に各々まだ見ぬ敵へと闘志を燃え上がらせ、バレー対決の時のように団結を固めていく。

 

(な..なんなのよコイツら〜!?)

 

 ただ1人理解の追いつかないラミアはただただ呆けることしか出来ないのであった。

 

 


 

 一方男鹿はと言うと修行初日は一刀斎の言われるがまま道場や神社の境内の掃除など雑用ばかりをして、想像と余りにもかけ離れた指示に苛つきつつも一日を終えていた。

 そして本日修行2日目、古市の推測通り彼等は神社から移動して魔二津の山奥にある修験場に場所を移して本格的な修行へと入っていた。ちなみに帝毛の影組も何故か付いてきていた。

 

 本題の修行内容は岩を素手で割るという一見無茶苦茶な内容である。しかしこれは邦枝の一族が遥か昔から受け継いできた武術、心月流の基礎"撫子"を習得する為のものであった。

 抜刀術が主である心月流の中で無手の技、力を分散させずに一点に集中させる事で内部に破壊力を通す当身技である。

 

 余分な力を抜き、姿勢に呼吸、全身の連動性等のコツを上手く掴むと普通は手頃の岩であればすぐに割れるようになる。

 しかし男鹿は最初に選んだ自信の背丈を遥かに超えた巨大な岩を割ることに固執していた。達人ですら割ることが難しいソレを今日初めて挑戦する彼が割るにはあまりにも無謀であり、心配した邦枝も手頃な岩に変えることを提案するが、むしろ男鹿の反骨心に火をつけ、また付いてきた影組の人達も次々と"撫子"の習得に成功した事で彼はますます巨大な岩に固執するようになる。

 

 やがて時間が過ぎて夕暮れ時、無謀にも思えた巨大の岩は男鹿の手によって綺麗に真っ二つに割られていた。

 

「.....どうだ..ジジイっ。少しは強くなったかよ....オレは...」

 

 息も絶え絶えに大の字に倒れたままの男鹿は、静かに男鹿の修行を観ていた一刀斎に問いかけ、一刀斎は顎を撫でながら無愛想に口を開く。

 

「───ふん..まだまだよ。お前さんならばこれぐらい出来て当然じゃ」

「...けっ..くそじじいめ...」

「カッ..まだ生意気な口を聞けるのがその証拠じゃ」

 

 疲れ果てながらも憎まれ口を叩く男鹿に一刀斎は口端を僅かに上げてその場を後にする。残された男鹿はただ静かに目を閉じて呼吸を整えるように深呼吸を何度も繰り返す。

 すると1人仰向けに寝そべる男鹿へと近づいて来た。

 

「..凄いじゃない。本当に割るなんて驚いちゃった」

「.....」

 

 袴を着た邦枝が掛け値なしの賞賛を贈る。たった数時間で達人ですら難しい程の巨岩を割ることは驚愕に値するものであり、祖父である一刀斎の見込んだ男鹿の素質を改めて実感する。

 しかし当の男鹿はどこか納得のいってないような表情を浮かべていた。

 

「..どうしたの?」

「──まだだ..まだこんなんじゃあのエラ共に勝てねぇ。まだこんなんじゃアイツに....」

 

 そう言葉を溢す男鹿の脳裏にはあの時の光景と無力感が浮かび、自然と拳を握っていた。

 

「全然ダメだ。もっと...もっと」

「──焦らなくても大丈夫...あなた絶対強くなる。その気持ちがある限り、その悔しさがある限り」

 

 優しい声で邦枝が言い切り、両の拳を胸の前で握った。

 

「私も頑張らなきゃ。あなた達に置いてかれないようにね!」

「...ハッ。よく言うぜ」

 

 

「よしそれでは全員移動するぞ。この先にある寺で今日は一泊じゃ」

 

 一刀斎の言われるがまま全員移動を始める。日も暮れていき冷ややかな薄暗闇に包まれていく山の中、一行は寺に続く長い階段へと辿り着く。

 

「な..長ぇ...今からここを登んのか?」

「辺りもなんだか怖いわぁ..孝ちゃん手繋ぎましょ?」

「気色悪いからやめんか出崎」

「...これもまた修行」

 

 影組の面々が終わりの見えない階段にそれぞれ反応を示している間にどんどんと男鹿達は進んでいく。

 冷たい山風に木々が擦れ、あちこちで烏が鳴き喚く。不気味という言葉が似合う夜の魔二津の山の中、階段を登り切ったそこに壮厳たる寺がそこに佇んでいた。

 

「随分デケェな...こんなとこホントに泊まっていいのかよ?」

「ここの住職とは昔からの知り合いでの、遠慮はいらんよ」

 

 男鹿の問いに答えながら一刀斎は厳かな山門をくぐり境内へと入っていく。すると1人の黒を基調とした道服と角頭巾を身に付けた老爺が近づいてくる。

 

「ようこそいらっしゃいました、邦枝さん」

「急ですまんな住職。今日は世話になる」

「いえ、この時期になると来客も少ないですからね。寧ろ賑やかになって良い嬉しい限りです。では皆さんお疲れでしょうから早速宿坊へとご案内しましょう」

 

 人の良い笑みを浮かべ住職は彼等を連れて高級旅館さながらの宿坊の戸を開ける。

 

「外履きはそちらにまとめておいて下さい..。諫冬、居ますか?」

 

 住職の呼び声に宿坊の奥から巫女服を身に纏った樫野が少し緊張した面持ちで現れる。

 

「申し訳ありませんが皆様をご案内して頂けますか?」

「....」

 

 樫野は静かに頷き、男鹿達へと会釈をして彼等の寝泊まりする場所へと案内を始める。道中三鏡が何度も話しかけるが内気で人見知りしやすい性格の為かはたまたチャラついた雰囲気に怯えたのか、口を開くことは無かった。

 しかしそんな彼女が唯一他と違う反応を示したのが、

 

「....ん?どした?」

「...ッ」

 

 男鹿だった。明らかに怯えた反応を示して樫野は案内を終えると会釈をしてそそくさとその場を後にした。

 

「なんだったんだ?」

「ププー!嫌われたな男鹿...。んなおっかねぇツラしてっからだな」

「うるせぇハゲ。今度はテメーの頭をかち割ったろか?」

 

 三鏡の軽口に対して辛辣に返す。その後、住職達から夕食のおもてなしを受けた後それぞれ布団を出して寝床の準備を始める。

 すっかり夜もふけていき男鹿達と別れて祖父と相部屋の邦枝は部屋で一緒に連れてきていた赤ん坊の光太の世話をしていた。

 

「んぅ....」

「もう寝る時間よ光太。今日は疲れたでしょ?」

「..ム〜」

「んもー..半分目空いてないじゃない。ほらねんね、ねんね」

 

 襲いくる眠気に対抗しようとぐずる光太だが布団に寝かせられ、お腹をポンポンと一定のリズムで優しく叩かれると抵抗虚しく夢の世界へと誘われていく。

 ようやく寝息を立てる光太を見てひと息つく邦枝。すると部屋の扉が静かに開かれ、そちらへ目を向けるとそこには樫野が立っていた。

 

「葵ちゃん..」

「イサちゃん久しぶりね!ごめんね今日は急に」

「ううんっ」

「いやぁ助かったわい。後で改めて礼に行くでの」

 

 久々の再会に嬉しそうに顔を明るくする樫野と邦枝。一刀斎もいつもの無愛想な顔を気持ち少し緩めていた。

 

「あの..お爺ちゃんがお風呂を沸けたからどうぞって....」

「本当!嬉しい〜!もう汗でベトベトなのよ...!」

「葵、ワシは最後で良いからあの悪タレどもに先に入るよう伝えてきなさい。ここは温泉じゃから喜ぶじゃろう」

「はーい。そうだ、イサちゃんも久しぶり一緒に入ろ?ねっ」

「う...うんっ」

「それともう一つ」

 

 着替えを持って移動を始める邦枝に一刀斎が待ったをかける。

 

「葵、風呂から上がったら男鹿の小僧を連れて一緒にここの部屋へ来なさい」

「え....え!?」

 

 予想外の言葉に邦枝は一瞬にして顔を赤く茹で上がらせる。瞬く間に言葉の意図を深読みしていく彼女に彼は言葉を続ける。

 

「何を考えているか知らんが、ここの住職がお前達と話をしたいそうじゃ」

「...え?」

 


 

 

 日が落ち月が空高く上がった後も街は街頭や建物の灯りで照らされている。その明るい街中で古市達の表情は曇っていた。

 

「ぜーんぜん見つかんないなぁ...」

「あの後回ったゲームセンターには目撃証言すらなかったわね..」

 

 疲れたように新しくキャンディを取り出して咥える古市と同じく項垂れるラミアが嘆く。

 あの後勢いよくファミレスを出た一行は手分けして街中のゲーセンやゲームショップを回ったのだが結果は手がかり一つも出なかった。

 このままでは埒が明かないと一度集合して作戦を練り直しているのだ。

 

「しっかしこんなに捜していないとなると...別の方法を考えなきゃダメかぁ」

「ゲーム好き以外に他の手がかりはなんかねーのかよ」

「さぁ...どーなのラミアちゃん?」

 

 ヨーグルッチを飲みながら問いかける神崎、それもその筈捜索の手がかりが緑髪の子供とゲーム好き、追加でメイドを侍らせているの3つのみでしかないのだから。

 話を振られたラミアは何か有用な手がかりを探す為頭を捻る。その時ラミアのポケットから電子音が鳴った。

 

「ヒルダ姉様からだわ。....うん?何かしら?」

「どしたの?」

「ヒルダ姉様が焔王坊ちゃまから漸くメールを受け取れたらしいのだけれど...なにこれ?"ネトゲサイコー"?暗号かしら?」

 

 その言葉聞いた瞬間、ラミアを除いたこの場の人間が固まる。そして奇しくも皆同じ考えが浮かんでいた。

 

───それじゃん....

 

 今日一日中無駄骨を折り続けていたことを知り、皆身体が重くなったという。

 





〜おまけ〜

 天狗伝説で有名な魔二津の山の中に佇む厳かな寺。そこには天然の温泉が湧いており自然豊かなレベルの高い温泉スポットとしてマニアの中で密かに名が売れている。
 今宵もその湯舟に虜になった者がまた1人。長く浸かっていたせいか少し火照った身体を夜風に当てる。無駄毛の一本も毛穴も無い、一目でわかる綺麗な身体を伸ばして少し声が漏れる。
 その身体は健康的に引き締まり薄らとお腹が割れており、火照っていることも相まってより艶かしさを感じさせる。
 視線感じたその者は怒るどころか優しく微笑み、優しく手を伸ばす。もはや男であれば涎を垂らしてその手を取るであろう。

「ウフフ。サービスカット♡」

 禿げの出崎巧(オカマ)でなければ。

鬼岩猛突(デストレイラー)!!!」

 巨岩すらも粉々にする一撃を受け、オカマは月に届かんばかりに夜空へと落ちていった。


 後に鬼塚はこの時の一撃が生涯最高の一撃だったと語る。

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