遅くなりもうした...。
朝の登校時間、聖石矢魔の廊下を小柄な老人が土足で歩み進めていた。すれ違う生徒達も見覚えのない老人が堂々と真ん中を歩くその姿に誰もが困惑している。
「ふむ...さてどこにおるのかのう?」
「失礼ご老人!」
辺りを見回す老人の背後から今は解散した元六騎聖のアレックスと郷が駆け寄ってきた。
「困りますよ..!部外者が勝手に校舎に入られては」
「あぁ、ほらクツ土足じゃナイデスか!来客用のスリッパがありマスのでまずは事務室へ..!」
「...ほう?この国では靴を脱がねばならんのか。これは失礼」
老人は彼等の言われたことに素直に従いその場で靴を脱ぎ始める。
「ところでちと尋ねるが、石矢魔という高校の教室はどこかのう?」
「い、石矢魔?彼等に何の用デスか?」
「父兄の方か?そうでないのならやめといた方が」
彼等の言葉は、突如顎に炸裂した衝撃によって遮られる。
脳を揺らされ尻餅をつかされる2人を老人が見下ろす。その手に持つ靴がいつの間にかヌンチャクのように靴紐で繋がっていた。
「質問しているのはワシだ。男鹿辰巳という男を捜しておる、どこじゃ?」
質問の答え以外の言葉を許さないと言わんばかりの威圧感。小柄なその身体には似つかわしくない威圧感に2人は身体が上手く動かせない。呼吸すら苦しく声が出なくなる。
「答えんのか?ならば」
答える様子を見せない2人の姿に老人は痺れを切らしたのか靴を握る腕を振り上げ、
一陣の風がヌンチャクのように繋がっていた靴紐を切り裂いた。
突然の出来事にその老人は転がった靴に目もくれず、背後に立っていた人物へと目を向ける。
「あー...とりま落ち着きません?」
そこには古市が立っていた。
「何があったか知らないけど警察呼ばれちゃいますよオジーサン」
「...ふむこやつらはお友達かい?お嬢さんや」
「全然違うけど」
キッパリと無情に切り捨てる。当然2人も彼女を友人とは思ってはいなかったが、余りにも即答でキッパリ言うものだから座り込んでいた思春期の2人が内心ちょっぴり傷ついたのは内緒の話。
「しかしお嬢さん、銀色なんて珍しい髪をしておるの?染めたのか?」
「天然物ですよー、さぁこんなとこで暴れてないでさっさと帰ろーねオジーサン。ちょっとだけならワタシがお話し相手になりますよ?」
どうやら彼女は重度にボケてしまった老人が知らずに学校へと迷い込んだと勘違いしているようだ。
生粋のお爺ちゃん子である彼女は温かい目で寄り添うように玄関への誘導を試みる。
「天然か、なるほどお主がそうか...」
老人は値踏みするような視線で彼女を見つめ始めた。その真剣な眼差しで突然凝視されて古市は少し気圧されて後ずさる。
爪先から頭のてっぺんまで眺めると老人は彼女の眼をまっすぐ見据えた。
「お主...」
「な、なに?」
雰囲気に呑まれ固唾を呑む。そして
「良い身体しとるの」
「セクハラなら他所でやれ腐れジジイ」
彼女の眼は一気に氷点下へと落ちた。
「そう邪険にしてくれるな」
「こっち見んな、さっさと警察に捕まりやがれ。ワタシはてっきり....あー心配して損した」
吐き捨てて古市は老人に背を向けて自身の教室へと歩き出した。
「ああ、待ってくれんかお嬢さん」
老人の声かけに応じず、背中越しに中指を立ててその場を後にする。角を曲がりその背中が見えなくなった後も老人はその方向を見続ける。
「...あれほどの逸材を、殺してしまうのは些か惜しいの」
老人は顎髭を撫でながら呟くと、もう一度歩き始めた。靴で殴りつけた2人に目もくれず、
「よぉしッ野郎共!新しい校舎見に行くぞォッッ!!」
奇妙な老人との邂逅というイベントから脱出し、漸く教室へと辿り着いた古市。
扉を開けるとそこには教卓に勇ましく立ち、力強い声を上げる神崎の姿とそれに呼応する石矢魔の男子生徒の面々。
「だがしかぁしッ!!その前に仁義を欠いちゃならねぇッ!!全員佐渡原にチューモークッッ!!!」
姿勢を正して全員教壇に立つ佐渡原へと身体を向け、
「今までお世話になりましたーーッッ!!!」
「「「お疲れ様っしたーーっっ!!!」」」
軽く頭を下げながら口を揃えて感謝を述べた。その光景はさながら刑期を終えた組頭とそれを迎える組員だ。
「うん...ウン...今HR中なんだけどね..まだ」
「なになにサド先?ついに下剋上果たしちゃった?」
「そんなの出来ないよ?古市さん」
そんな光景を見た古市は面白がるように涙目の佐渡原を揶揄う。
「オラ、テメーも行くぞ」
「ぐぇッ!」
教卓から飛び降りた神崎は軽くラリアットのように彼女の首に腕をかけて引きずる。
「ちょっと痛いんだけど!?つか何処行くのさ!?」
「あ?テメー知らねーのか?オレ等の校舎が復活したんだよ」
「だから今からウチらも行こうってコトッスよツムッち!」
ゾロゾロと神崎に続く男子達の中からヒョコッと花澤が顔をだす。しかし神崎に無抵抗で引きずられる古市は納得出来ていなかった。
「え、早くない?壊れたの夏休み終わりぐらいだよね」
「でももうほぼ校舎できてる感じッスよ?」
破壊されてから2ヶ月足らずで校舎が建つ。法外な環境で休みなくぶっ続けで働き続けたとしてもそんな短期間で建てるなど物理的に不可能だ。
だが、後ろについてくる不良達は出来上がっているのを実際に見たという声がちらほら聞こえてくる。
「なにがどうなってんの」
「神崎さん!!ラクガキでウ⚪︎コマーク書いて良いすかねぇ!!」
「ウ⚪︎コマークはダメだ幼稚すぎる!一人一回八文字までだからな!」
「じゃあオレガラス割ります!!」
「馬鹿野郎!最初の一枚はこの神崎さんの仕事だろーが!!」
「....まぁなんでもいいや」
後ろの不良共と己を引きずる男の頭の悪い会話に古市はやがて、考えるのをやめた。
石矢魔高校新校舎。
崩壊以前の姿は見る影もない、学校とはかけ離れた中世の王城のようなデザイン。煌びやかな装飾に天へと届かんばかりに背を伸ばす時計塔。
想像を遥かに飛び越えてきた新校舎に石矢魔の皆はただただあんぐりと口を開いて驚くだけ。
「....城?」
誰かがつぶやいたその言葉は間違いなく全員の胸の内で共感を得た。
驚愕に固まっているとこの工事をしていたであろう2人の作業員が現れ、なぜか石矢魔高校の表札を外し始めた。
突然の事に大森が作業員に話しかける。
「ちょ、ちょっと?あなた達何をしてるの?」
「はい?」
「表札の取り外しですけど...」
「取り外し..?なんで、ここは石矢魔高校でしょ...?」
2人の話を聞いても納得ができず大森はさらに問いただす。すると2人は顔を見合わせた。
「ひょっとしておたくら石矢魔高校の人?ひょっとして聞いてないんですか?」
「ここ別の学校に変わるらしいよ。ほらこれこれこの看板」
外した表札を下ろして、新しい豪華な表札を取り付ける。そこには以前、古市が適当こねたあの学園の名前が書かれていた。
「..あ、"悪魔野学園"..?」
思いつきででっち上げた架空の学校名。存在しない筈のそれが今彼女達の前に現れた。
その後花澤や神崎、そして意外にもノリノリな姫川を中心に全員敷地内へと侵入。敷地内も校舎と負けず劣らずに煌びやかな装飾がなされており、道も石タイルで整えられている。
しかし植えられている植物はどれもこの世界では見たことのないものばかり、そして何よりそこかしこに
「ウソでしょ...なんでアイツら学校なんかを..?」
「ツムッちー!コッチの開いてる扉から皆入ってるスよ!」
「えぇ!!ちょ、ちょっと待ってよ!」
突如現れた悪魔たちの目的がわからず呆然としているうちに石矢魔の生徒達は皆校舎内へと侵入していた。
古市は慌てて彼等の後を追いかける。
「ちょっと一旦引き換えそう?この間ここの奴等がどれだけイカれてるか姫川達はよく知ってる筈でしょ?」
「いつになく弱気な発言だな古市?今日は男鹿が居ないから弱腰なのか?寧ろオレはマンション壊された上に学校にまでこんな真似されておめおめ引き返せねぇよ」
「それにもともとオレらの
古市の提案に列の先頭にいた姫川と神崎が反発の声を返す。彼らだけでは無い、夏目や城山、いつも冷静な筈の大森や谷村、そして他の石矢魔生徒達も気持ちは同じのようだ。
だが当然、何の準備も出来ていない状況で悪魔達の本拠地へと乗り込むことなど危険極まりない。
「だけど...!」
「まぁまぁ、ツムッちも少し落ち着くっスよ。ほら天井にまじパネェシャンデリアがあるッスよ?」
「別にワタシシャンデリア好きじゃないよ?」
食い下がる古市を花澤が宥める。しかしそうこうしている内に彼等どんどん歩みを進めていく。
電気は付いておらず、薄暗い校舎の中で所々ステンドグラスから漏れた陽の光だけが中を照らしていた。
「しっかしここすこし不気味ッスよねー..。なんかドラマとかでよくみる幽霊が出る洋館みたいで」
「やめてよ由加!」
花澤の言葉を大森が怯えた様子で咎める。だが先を歩く神崎も似たような違和感を抱いていた。
「つーか、ここまで歩いて階段がねぇのおかしくねぇか?」
その言葉に石矢魔の生徒達の内にどよめきが生まれる。そして一度疑念が生まれれば際限無く湧き出てくるもの。やれ、扉が勝手に閉まっただの壁の絵画が1人でに動いただの。どよめきはやがて不安となり彼等の間に伝播していく。
その時後方にいた古市は突然歩みを止めた。
「...ツムッち?どうしたんスか?」
突然動きを止める古市に隣りを歩いていた花澤が不思議そうに首を傾げる。だが古市はその質問に答えず、
────突如勢いよく身体を翻しながら腕を水平に振り抜いた。
後方に向けて振った腕は"伊太刀"を放ち、歩いてきた廊下の両の壁ごと空間を切りつけた。
「うぉぉっ!?」
「な、なんスか!?」
突然轟音と共に深い傷が刻まれた壁に一行は驚愕に染まる。何が起きたか誰もが状況を理解できずにいる最中、古市はただ静かに辺りに舞う砂塵の向こうを見据えていた。
砂塵の向こうに3人の人影が浮かび上がる。
「うひゃー...今のはヤバかったね。バリアサンキュー、オドネル」
「不用心に近づきすぎだ」
「──..。」
彼等の前に現れた見慣れぬ3人の姿、コートの下にビキニ鎧を身に待とう女の悪魔、寡黙な男の悪魔。
そして包帯で頭部を覆い両腕を鎖で拘束されている"オドネル"と呼ばれた悪魔が彼等を庇うように前に立っていた。
古市が放った"伊太刀"はオドネルの展開したバリアにより防がれていたようで、3人の悪魔に傷一つついていなかった。
「風による不可視の斬撃...。威力もさることながら目を見張るべきはその速度...回避はまず無理だぞ」
「話に聞いた以上だね..!私達の隠匿術式にも気づかれるなんて、楽しくなりそう!」
「楽しむな、我々は責務を果たすまでだ」
「硬いなーオドネル。1番変な格好してるくせに」
「お前に言われたくない」
オドネルの言葉を聞き流し、刺激的な格好をした女の悪魔は一歩前へと出る。
「もしかしなくてもキミがフルイチって子だよね?ヘカちゃんとグラちゃんをフルボッコにしたベルゼ様の家臣って。確かにこりゃあの2人には荷が重いかも?」
すると確かめるように古市を眺めていた女の悪魔はおさげを揺らし茶目っ気に笑った。
「アタシはベヘモット柱師団柱将、アギエルちゃんだよ!よろしくね」
「同じく柱将、オドネル」
「....柱将..ゼラ..」
アギエルに続き2人の悪魔も名乗りを上げ、同時に古市へと戦意を研ぎ澄ましていく。
「なーにが柱将だよ、そんかエッチなカッコしておきながら。同性だとしても目のやり場に困るよ」
しかしその一言でその場の雰囲気が霧散した。
「え、エッチ?アタシの格好が?」
「エッチだよ。そんな露出しておきながらコートを着てるのか更にエッチ。メガネでおさげのとこも」
「そうかなぁ..可愛いと思うんだけど?」
「可愛いけどちょっと刺激が、特に内腿のタトゥーが────
「何の話してんのよアンタ達は!!!」
突拍子もなく気の抜ける会話をし出したアギエルと古市に耐えきれず大森が渾身のツッコミを入れる。
「今はそんなことどーでも良いでしょうが紬貴!」
「...は!あまりの光景つい..」
「アンタ達も!その服悪魔野学園の生徒でしょう!なんなのよこの学校!」
「アクマノ..?」
大森の言葉にアギエル一瞬キョトンとするがすぐに思い出した。
「そーそー!悪魔野学園!知ってる知ってる!坊ちゃまのネーミングセンスにも困ったものよねー」
自らの学校のことなのに余りにも他人事な彼女の様子に大森はじめ石夜魔の生徒達は困惑する。
因みに古市は自身のネーミングセンスが焔王と同程度であることに内心落ち込んでいる。
「ただ..まぁそうだね。ここは坊ちゃまの学校なんだ。だから──」
アギエルは思い出すように言葉を紡ぎ、
「言い忘れてたけど、進入禁止だよ」
腰に下げていた両刃の剣を引き抜いた。
途方もない殺意がこの場の空気を支配し、陽光を鋭く反射する刃に全員の背筋が凍る。
誰かが息を呑む刹那、目にも止まらぬ速度でアギエルが彼等へと距離を詰めていく。
振りかぶる剣の先、狙うは───
「──ぇ?」
大森寧々の首。迷いなく一閃振り払う。
だがそれを見逃す古市ではない。剣が彼女の首へと届く前にアギエルの腹部へと回し蹴りを叩き込む。
脚から伝わる確かな手応えを感じるが、アギエルは怯む事なく剣先を古市へと振るう。最初からそれが狙いだったかのようにその動きはスムーズだった。
「───ッ」
古市はすぐに後ろへとのけ反り躱す。しかし誘い込まれ踏み込みすぎていた彼女は躱しきることができず瞼から額にかけて浅く切り刻まれた。
血が流れ、片方の視界が塞がる。されど彼女は表情を変えずアギエルを力いっぱいに蹴り飛ばした。
吹き飛ばされながらもアギエルはすぐさま身体を翻して体勢を整える。蹴られた箇所に手を当て咳き込む様子に彼女も決して小さくはないダメージを負っている。
されどその顔は心底楽しそうに口を歪ませていた。
「けほッ..流石に痛いなぁ。アタシの速さに蹴りを合わせられるなんて凄いじゃん」
「ほざけ、露骨に誘ってた癖に」
嘲笑うような称賛に古市は凶暴な笑みを浮かべながら血を拭って視界を取り戻す。
「.....ッ、紬貴私達も」
「下がって!」
「隙あり!!」
我を取り戻し、助力をしようとする大森達に古市が叫ぶように止めた。当然その隙にアギエルは剣を振りかぶって古市へと襲いかかる。
迎撃として腕を振るって"伊太刀"を放つが、
「それはさせんよ」
アギエルの周囲にオドネルによって展開したバリアに防がれる。
「ちぃッ!!」
舌打ちをしながらも後ろへ下がり剣を躱す。いつの間にか魔力を込められていたそれは校舎の床すら容易に切り裂いた。
「ちょっとオドネル!!手は出すなよ!」
「出すに決まっているだろう。聞くがお前はあの不可視の斬撃を躱せるのか?」
「ぐっ..痛いとこを」
「お前は防御が不得手...故にこの女を相手に私の魔術は必須だ」
オドネルの言葉に対して不満を表すように頬を膨らませる。しかしアギエルも不服ではあるが異論を言う事なく剣を構えた。
「ち...また多対一かい。アンタら悪魔ってのはタイマンが出来ないのか?」
「喜べ、それほどまでにお前を警戒してるのだ。尤も、たった1人で私達からその荷物共を守り切れるかな」
オドネルの言葉を皮切りに再度アギエルが高速で切り掛かる。これ以上下がれば石矢魔の生徒達が巻き込まれる、古市は意を決して前へと出る。"伊太刀"も数振り放つがオドネルがそれを防ぐ。
魔力の込められた剣を身体を捻って躱そうとしたその時、石にでもなったかのように
指先一つ動かせないその事象に古市は目を見開くが、アギエルの剣は止まらず古市へと叩き込まれる。
首の皮を裂いて血を撒き散らし骨を断つ、その一撃が入る直前。
「────1人じゃないわ」
アギエルの剣は突然現れた木刀によって弾かれ防がれた。
「間一髪...間に合ったわね」
「葵!」
石矢魔の女王、邦枝葵である。
「おっとと...なんだお前?おかしいな、もう人は入れないようにしたはず..ちゃんとやったのオドネル」
「完璧にやった。私の仕事にケチをつけるな」
邦枝の登場にどう侵入してきたのか疑念を抱く悪魔達。その間邦枝は木刀握りながら辺りを見廻して状況を把握する。
「貴女..その傷っ」
「かすり傷だよ気にしないで。助けてくれてありがとう」
問題ない程度の傷ということをアピールしつつ、古市は
「姐さん..!」
「寧々、皆んなを連れてできるだけ遠くへ逃げて。ここは私と紬貴でどうにかするわ」
「けれど..」
「お願い」
邦枝の強い瞳に大森は黙り込んでしまう。
「作戦会議は終わった?アタシとしてはお前よりもフルイチにしか興味ないから逃げた方が良いよ」
「貴女こそ、私の友達にこんな傷をつけて後悔しないでよね」
興味も無さげに言い放つ様子に邦枝は鋭い声で啖呵を切る。すると同時に彼女を囲うように濃密な魔力と、目に見えない異様な存在感がそこに現れる。
「行くわよ..コマちゃん」
存在感の正体、コマが能力を解放して真の姿なる巨大な狛犬と変貌していたのだ。
「アギエル...お前はあの女を先に始末しろ。私とゼラの魔術があればフルイチを倒すまでは行かなくとも抑えておける」
「......」
「ワタシの相手はむさ苦しい男とマゾミイラマンか..テンション上がんねーな」
隣に立つ古市も額の傷をなぞって血を拭い、彼女の身体を中心に風が巻き起こし始め闘志を静かに燃やす。
対する悪魔達も身体からドス黒い靄が溢れ冷たい殺意が充満する。
両者共に戦意が膨れ上がり場の空気が重く張り詰めていった。
────"心月流抜刀術八式 神薙"
校舎の屋上を鋭い斬撃が切り裂く。しかし、標的は斬撃に掠りもせず身軽な身のこなしで屋上へと音もなく着地する。
「まったくせっかちなジジイ共じゃわい。しかし...人間とは不便。たかが数十年程度でそこまで老いるとはな..石動源磨、邦枝一刀斎」
老人の視線の先、そこには聖石矢魔の校長と刀を携えた一刀斎。そして、
「何度も言うがワシは挨拶に来ただけじゃ」
「そいつはつまり宣戦布告って意味だろうが..ベヘモット」
「早乙女禅十郎..か」
紋章激しく光らせる早乙女の姿。3人とも臨戦態勢を取りベヘモットを取り囲む。隙一つないその身のこなしはベヘモットを一歩たりとも逃さないと言わんばかりだ。
「挨拶じゃ、これからのお隣さんと...」
だが、その3人をもってしてもベヘモットは忽然と姿を消した。
「そしてベルゼ様の親に」
彼は隣の校舎の屋上で息を潜めていたヒルダと男鹿の元に移動していた。その動きは早乙女を除いて誰の目にも追えていなかった。
「初めましてじゃな..男鹿辰巳」
屋上の入り口から不敵な笑みを浮かべながら2人を見下ろすベヘモットの眼は何処までも冷たかった。
古市ちゃんの技の解説とか...いりますか?