「どーいうつもりさ男鹿?」
「いきなり何だ古市」
中庭へと来たワタシは隣の男鹿に冷たい視線を向けて言い放つ。男鹿はそんな言葉に戸惑いを隠せないが知ったことではない。
「さっきの告白劇だよ。まさか会って30分しないで告白するなんてさ。無理矢理つれてきたワタシのメンツ丸潰れなんだけど?」
「まずテメェは無理矢理つれていくな」
ワタシは男鹿に静かに問い詰めていくが、痛いところをついてくる男鹿。生意気なヤツめ。続けて男鹿は口を開く。
「勘違いすんな。オレはベル坊がアイツに懐くことを確信したんだ。珍しくベル坊も喜んでたしな。」
「あー....まだ諦めてなかったんだ。それ」
「当然。必ずやあの女にベル坊を押し付け、オレは元の生活を取り戻すのだッ!!」
成功を確信していかのように高笑いをあげる男鹿。それに反してワタシはもやもやした気持ちを収められず口を尖らせてしまう。
(....ワタシは選ばれなかったのにさ...)
以前にワタシは男鹿に押し付けられそうになったがベル坊が男鹿を選び失敗に終わっている。
にも関わらず今度は葵で成功すると確信しているところを見るとなんだかあたかもワタシが下かのように格付けされているようで面白くない。
「ー....誰に何をおしつけるって?」
ワタシ達の後ろから聞き慣れた声が聞こえる。そこにはいつのまにかヒルダが立っておりその手にはミルクの入った袋が掲げられている。
「貴様はいつになったらミルクを忘れずに持っていくのだ?」
「..テメーはいつになったらフツーに登場すんだ?」
そのままヒルダはベル坊を男鹿から受け取りミルクの時間を始める。彼女の腕の中でベル坊はせっせと一生懸命にミルクを飲んでいる。
ヒルダは哺乳瓶を支えながら、男鹿の企みを聞いていた。
「ーふむ。確かに男だろうが女だろうが坊ちゃまは強ければ懐くが..」
「だよな!?よしっ」
「...むぅ」
ヒルダは男鹿の企みに肯定的な態度を示した。かと思えば..
「しかし、その女はツムギよりも強いのか?」
「え」
唐突なヒルダの疑問に男鹿は固まる。さすがマイフレンド!!ありがとうっワタシのことを忘れないでくれて。
「それにツムギよりも性格は残忍なのか?」
「え」
続くヒルダの疑問に今度はワタシが固まる。ま、マイフレンド??
「アランドロンから聞いたが以前にツムギは坊ちゃまに選ばれなかったらしいが、その女はどうなのだ?強いだけでは懐かんぞ?」
「ーーそ、そういえばそうだったッ...」
「ねぇ。2人ともワタシのことバカにしてる?ワタシ、性格は悪くなくない?」
「「それはない」」
2人の揃った返事にワタシは隅でしゃがみこんで地面にのの字を描く。
「それでどうなのだ?性格でも強さでも上をいくとは思えんが..」
「.....男は気合いだぜ..」
「やはり無計画か。あっほらほら坊ちゃま。こぼしておりますよ。」
無計画に語った男鹿にヒルダは呆れて、ベル坊の口から溢れるミルクを拭く。だが男鹿は言葉を続ける。
「それに小せぇーころからアイツと
「......何...?」
「んぁ?そ、そうだけど。それが何さ?」
唐突に意図の見えない疑問を投げかけられ困惑しつつ返事をするワタシに男鹿は勢いよく立ち上がる。
「つまり!!少なからずコイツの悪い影響を受けている可能性があるっつーわけだ!やってみなきゃわかんねぇッッ!」
「悪いってなんだコラ」
男鹿のふざけた言いようにイラッとしていると突然ベル坊の哺乳瓶が爆ぜる。
突然の出来事に3人とも驚いていれば頭の悪そうな声が聞こえてくる。
「キキッこんなとこで一家団欒かぁ?オガぁ。油断しすぎだぜ?」
声のした方を向けば変な5人組がこっちへ歩いきており、そのうち1人が改造のエアガンを向けている。とりあえずワタシは走り出し、
「キキッヨメたちとガキの命がおしけバッッ!!!!!」
悠長に話してくる
「てっテメェいきなり卑ブギュッッ!!!」
すぐ隣で喚き出す
「こっこのアマッ!!」
「命を惜しむのは貴様らの方だ」
無論ベル坊に危害を加えられてヒルダが黙っているはずもなく瞳孔ガン開きで死刑宣告をする。
首が折れんばかりの威力で顔面を傘でブン殴られる
鳩尾を蹴られてエビみたいになる
「うっ嘘だろ...!!?」
「空 気 読 め や」
いつのまにか後ろにいた焦げた男鹿に気づけず頭から地面にめり込む
ちなみにMK5というのはマジで空気読めない5人組の略らしい。空気読めや。
「よ、容赦ねぇ...なんて雑なキャラ紹介なんだ..!」
「てかあの銀髪の方..あんな強かったのか..!?」
「瞬殺かよ...」
校舎でこちらを見ていた野次馬どもを気にせずワタシ達はその場を後にした。途中サンダルを履いた随分と図体のデカい男とすれ違って。
「姐さん正ーーーーーー直に答えてください」
「なっ何よ」
じとっとした目つきで顔を近づけてくる寧々に私はつい身体を反らして身構えてしまうが、寧々は気にせず問いかけてきた。
「あの男鹿ってやつのことどう思ってます?」
「..........べ..別になんとも...?思ってないですけど?」
「うそッスね。なんですか今のわかりやすい間は」
やはり寧々は今めっちゃ私が気にしてること聞いてきた。ただなんとなく気にしてることを認めたくない私は目を逸らしてしまう。
「まさか..本気で惚れたとか言うんじゃ...?」
「ちょっ..ちょっと待ってよ!!そんなわけないでしょ!!」
寧々がとんでもないことを言ってきたので慌てて弁明する。
そりゃあまあ確かに?あんなこと急に言われてびっくりしたってゆーか?噂ほど悪いやつには見えなかったてゆーか?あの赤ん坊も可愛かったなーとか思ったり...いやでも紬貴はアイツのことどー思ってのか気になるし...?
「姐さん...漏れてます声..」
「...ハッ!い、いやでも!?急に母親ってわけにもいかないじゃない!?モノには順序ってものが...あっあれ?」
「ダメだこれ....」
自分でも何をいっているかわからなくなって来た。すると寧々が息を吐きながら指摘してくる。
「姐さん。まさかうちらの掟、忘れたわけじゃないッスよね?」
私達のチーム【烈怒帝瑠】の掟。それは
男作るべからず!!!
男ができるときはチームを辞める時だけ。先々代から受け継がれてきた私達の結束を固めてきた唯一無二の法律。
「わかってンスかっ!?このままだと下のモンに示しがつきませんヨ!」
「...寧々。だから言ってるでしょ。それはないって」
私はしっかりと寧々の目をまっすぐ見返して言う。
「ー..信じて、いいんすね?」
「あたりまえでしょ?」
「おいっ見ろッ!男鹿だ!!」
「「ーッ!!」」
突然今私達が話題にしていた名前が聞こえてきた。どうやら男鹿が中庭でMK5とやり合っているらしい。
「騒がしいわね...また男鹿?」
「しっ仕方ないわね。見にいくわよッ!!」
居ても立ってもいられず私は声のする方へ走っていく。中庭が見渡せる窓へいくと目に入ってきた光景に驚く。
中庭にはすでに負けたであろうMK5たちがボロボロで倒れており、その中心に彼等をのしたであろう男鹿と紬貴と共に知らない金髪の美女が立っていた。
だっ誰!?なっなんであんな感じで立ってんの!?あれじゃあッま、まるで...
「つーかあの金髪だれだ?」
「知らねーのか?ありゃオガのガキ生んだ方の嫁さ」
ヨメ!?
「マジかよっ!?じゃああの野郎2人もヨメがいるってことか!?」
「しかもどっちもツエー。まさしく最凶ハーレムだぜ」
ハーレムッッ!?!?
「しかしまぁあの銀髪の方も健気だよなぁ。男鹿よそでガキ作ってきても変わらずアイツのそばにいんだもんな」
「それどころかさっきのケンカじゃ一番槍さ。まるで男鹿の忠犬だ」
「ーちょっとそれどういうことよ....」
私は近くの事情を知ってそうな野次馬の1人に声をかける。その人はこっちを振り向かずに続けている。
「知らねーのか?ある日突然男鹿がガキ連れてきてその次にあの金髪のねーちゃんが時々男鹿ヤローに学校まで会いに来てんだ」
「銀髪の方は今までべったりだった分辛いだろーに気にせず奴を受け入れてたまに手伝ってもいるんだぜ?」
「へー。そーなんだ...」
「ってくっ...邦枝ぁぁぁぁぁああ!?!?!!」
ようやく私に気づいたのか驚く親切な野次馬たち。しかしなぜそんなに怯えているのかはわからない。気にしている余裕もない。
弄ばれたような不愉快な私の気分も。不憫な私の大事な友達を思う気持ちも。いろんな感情が私の腹の中で混ざり合い蠢く。
「フッッ!!」
「ヒイィぃぃッッ!!!?!?」
うまく説明できない爆発しそうな私の感情をすこしでも和らげるように木刀で校舎を破壊するが、全く治らない。
ただ一つハッキリと決めたこと。それは
ーオガ、コロス
MK5潰した後、ヒルダは用があるとのことで一旦わかれて、男鹿と一緒に校舎裏を歩いていた。
「なぁ古市。本当に女王は悪くないのか?性格」
「少なくともワタシが知ってる葵は、姫川や神崎とは真反対。正しくないこととか曲がったことが嫌いな性格だけど」
「...んでそんな奴が不良してんだ..?」
おそらく一縷の希望を持って聞いてきたんだろうが葵は間違いなく悪というよりは正義側の人間だ。いつもの棒付きキャンディを咥えてワタシは答える。
「間違いなくアンタよりはいい人だよ」
「一言よけーだオメェは」
「男鹿ちゃ〜ん」
2人で歩いていると横から聞き慣れない声がかけられる。そこにはセンターに分かれたロン毛の優男風な男が窓から顔を出していた。
「邦枝とやり合ったんだって?早ぇーよぉ見たかったのに」
ニッコニコで話しかけてくる男に見覚えがないのか男鹿がワタシに誰かと尋ねてくる。しかしワタシ自身も神崎んトコにいた人としか認識がない。そんなワタシ達に気にせず喋り続ける優男風の男。
「あとは東条だよなー。楽しみだよなー。なんせ石矢魔最強だもんなー」
「石矢魔最強?」
その言葉が気になったのか男鹿が問いかける。
「あぁ!知らねーか?まぁ連中勢力争いに興味ねーから知らねーやつも多いけど最強は間違いなく東条だよ」
「男鹿辰巳...。」
さらにまた横から声がかけられる。これは聞き覚えがある声だ。しかしその声色はとっても怖い。
「チョイとツラァ...貸してもらおうか?」
「.....。」
そこには寧々と千秋が立っており、これからケンカする気満々な目つきをしていた。男鹿は何も言わずに目を見返して、優男風な男はキラキラと目を輝かせる。
「あっワタシノドカワイテタンダッタ。スグモドッテクルカラゴユックリー!」
面倒事、特に友人同士の間など入りたくないワタシは即座に離脱するのだった。
一方その頃学校の渡り廊下では...
「なるほど貴様が邦枝か...
「.....」(この人確か男鹿の奥さん?...って
「...なるほど確かに
「.....」(私なにもヤってませんよ!?!)
もう一つの波乱が起きようとしていた。
原作と差異がない場所は飛ばしたいが、古市ちゃんのせいで色々と影響が出てますね。とりあえず男鹿くんは怒っていい。