学校の渡り廊下にて対峙するヒルダと邦枝。
「貴様が邦枝だな?ひと目見ておきたかった」
(オッ男鹿の奥さんっ!なんか目つき怖いし、絶対何か勘違いしてる!?)
邦枝はヒルダが今朝の男鹿との告白劇について問い詰めてきたのだろうと考えなんとか怒りを収めようと言葉を選んで話しだす。
「あっあのですね、別に私は
「...?
しかしヒルダは最近できた友人の古市から聞いた、彼女の小さい頃から親しい仲である邦枝に会いに来ただけであった。
そんなことは知らずに邦枝は言葉を続ける。
「そっそんなことありませんよッ!むしろ嫌いですッ!」
「...それはどう言うことだ?
先程MK5を処した後にヒルダは古市に邦枝との関係を聞いていた。小さい頃に会ってから仲が良いこと、最近は会えておらず寂しかったこと、また会えるようになって嬉しかったことなどを聞いていた。
だが当の邦枝からはまさかの嫌い発言に眉を顰めるがさらに邦枝は畳み掛ける。
「今日初めて
「.....。」
邦枝としては今日初めて会った男にいきなり告白されたかと思えばまさかの二股中。しかも小さな頃から親しい大事な友人の古市を悲しませているときた。
曲がったことが嫌いな邦枝が当然好意を抱くはずもなく嫌悪感を丸出しに言う。目の前のオガの嫁を前にしてこの発言は憚れるが気にしてもいられない。
「そもそも、私はっ!」
「もうよい...もうわかった」
「ーーッッ!!」
続く邦枝の言葉を遮るようにヒルダが呟き、身の毛がよだつほどの恐ろしい圧が漏れる。
「なるほど?今回はあのドブ男の目が正しいらしい...もしかしたら坊ちゃまも貴様に懐くかもしれんな...」
「え...えっと?お...落ち着いてください..」
恐ろしい圧を放つヒルダに邦枝は気圧されつつ、なんとか怒りを収めようとするもヒルダは傘を構える。
「?..落ち着いているとも。もうまどろっこしい話は抜きにしよう少々手合わせ願おうか?」
「ーッ!?」
さらに身体から圧が強まるヒルダに説得は無理だと悟り木刀を構える。
(これは話合いは無理そうね.....)
傘と木刀。互いに構えつつ間合いを測る。邦枝がなんとか上手くいなしつつヒルダの怒りを静める方法を模索していると突然ヒルダの姿が消える。
(きっ消え..!?)
「上だ」
いつの間にか上に移動していたヒルダが邦枝の頭めがけて傘を振り下ろす。邦枝は驚きつつもなんとか顔の前に木刀を滑り込ませ受け止める。身体全体にくる信じられないほどの衝撃に目を剥く。
「ぐッ!(なんて威力ッ!?)..うぅアッッ!!」
声をあげて木刀を振り抜く邦枝にヒルダはその勢いを利用して踊るように華麗に後方空中へ宙返りをして間合いをとる。
「人間にしては上出来な反応だ」
邦枝の方へ目線をむけるればそこにいる筈の邦枝いない。
「心月流抜刀術 参式」
声が聞こえてくる方へ視線を向けると空中にいる自分と目線が同じの邦枝が木刀を構えている。どうやら壁を蹴って飛んできたらしい。
ー飛檐 燕子花
「ーッッ!」
ヒルダを巻き込むように円を描きながら木刀振り払う。辛うじて身を翻してかわすがその剣圧に耐えられず耐性が崩れる。
「(攻めるなら今!)壱し..ッッ!?」
隙を見せるヒルダに畳み掛けようとするが突然目の前にヒルダのピンクの傘が開かれ視界が遮られる。
「おもしろい。私に抜かせたこと、誇って良いぞ人間」
背後を取られた邦枝は自身は迫る剣先を辛うじて木刀で逸らすがそのままヒルダの攻撃の勢いを減らせず地面へ共に落ちる。
轟音が響き土煙が晴れれば跨りながら剣を突き立てるヒルダと木刀でなんとか頭の横へ剣をずらしていた邦枝の姿が見える。
(たしかに強い。あの状況から私の剣を逸らす腕前は見事というほかない。だがそれでもあの2人ほどではないな)
(な、なんなの?これ仕込み刀?)
「フン」
ヒルダは鼻を鳴らすともう用はないと言うように邦枝から離れ背を向け歩いていく。続いてなんとか立ち上がる邦枝。
「なっ..なんだったの?」
「あっ葵姐さんっ!!」
疑問を抱く邦枝に走って声をかけてくるチームの構成員。邦枝は続く言葉に驚愕することになる。
「たっ大変ですっ!!」
「寧々さんと千秋さんがッッ!!男鹿にやられましたッッ!!!」
「ーー。」
時間を少し巻き戻す。
場面は大森と谷村が男鹿に逃げられ呆然としているところだ。古市が一時離脱をした後、野良の性悪猫ちゃんに泣かされそうになっているベル坊をなだめるため止める間もなく男鹿はダッシュでどこかへと消えていく。
イベントはないことにがっかりするセンター分けの男、夏目は校舎へ戻っていき残されたのは2人のみとなった。
「..何なのあいつ?肩透かしもいいとこね」
「.......でもそこまで悪いやつではないのかも」
「千秋!?アンタまでそんなこと...!」
谷村の言葉に驚きなんとか考えを改めさせようとする大森。だからかもしれない。後ろからくる男の気配に気が付かなかったのは。
鈍い音が響き谷村が頭から血を流して前に倒れる。
「千秋っ!!?」
「そうだぜ?男鹿は極悪さ」
「あっアンタは!」
そのまま成すすべなくもう1人に頭を殴られて気を失う。
「チョロい仕事だなぁ。本当にこれでいいのか?」
「あの人が言うにはこれで男鹿と女王が互いにやり合う準備ができたらしい」
下手人2人が頭から血を流して倒れている2人を見下ろしながら話す。その2人はどちらも図体がでかい。
「んじゃサッサと退散しよう。姿を見られたら元も子もない」
「ああそうするとしブッッ!」
「なっ!?」
相方の言葉に賛成する言葉を顔面に何かが飛んできて遮られる。その何かはジュースの缶だった。しかも中身がしっかり入ったやつ。
「まずいっ!急いで逃げるぞ」
「あっあぁ!くそっいてぇ」
2人が逃げた後すぐに1人の銀髪のウルフカットをもつ女子が駆け寄ってくる。古市だ。
彼女はすぐさま倒れている友人2人を抱えて保健室へと連れていき一応の応急処置を済ませる。
血は止まり、2人とも容態が落ち着いた様子が見えると保健室を出る。
その目には内側に秘めた激情が静かに燃えていた。
男鹿の犬と称される彼女は下手人たちを探すべく校舎を歩く。標的は先ほど見た。あとは匂い辿って狩るだけだ。
石夜魔高校の屋上。よく男鹿と古市が溜まり場にしているが今は男鹿と邦枝が互いに向かいあって立っている。
「男鹿辰巳。あんたは許さない」
「ハッ上等だ。わざわざそっちから来てくれるたぁ気がきくじゃねぇーか?」
男鹿の言葉に邦枝は不愉快気味に目を細める。
「で?何を許さねーって?」
男鹿が邦枝に問いかけると同時に男鹿の首めがけて木刀が横に振るわれる。男鹿はいきなりの攻撃に咄嗟に身を翻してなんとか躱わす。
「っぶねーな」
「まずは
「は?あの子?」
あの子と言われて男鹿はの脳裏にベル坊が浮かぶ。何故邦枝がそんなことを気にかけるのかわからないがとりあえずありのままの気持ちを話すことにした。
「
「..........そう」
男鹿の言葉を聞き邦枝は自分の大事な友人のことを思い出して顔に青筋を浮かべ、木刀を握る手に力が入る。
まだ聞かなくてはならないことがあるとハラワタが煮え繰り返るのを耐えて、もう一度繰り返す。
「何をした?」
「あ?」
「2人に何をしたの?」
その言葉には男鹿はこの前にベル坊押し付けにいった神埼、姫川のことかと考える。
「ー別に弱ぇヤツに用は無ぇからな。サクッとぶっ飛ばしただけだせ」
その一言をきいた瞬間、大義名分を得たと邦枝は怒り押さえつけていた理性を放り投げた。
一瞬で間合いを詰め木刀で袈裟斬りを仕掛ける。
「外道がッッ!!」
「キキッちょっと女2人小突いただけでここまで予想通りに事が運ぶとは、さすがですね美破さん」
「んふふ♡まぁね」
屋上で戦う2人を見下ろすように出入り口の上で見物するのは今回の2人が決闘するように暗躍したMK5の碇と首謀者の美破。
美破は決闘している2人の勝った方を襲い2人とも潰すという所謂漁夫の利作戦決行していた。大森と谷村を潰すようMK5に指示したのもこの男。
しかしそれを知るはずもない邦枝は力の限り男鹿へと殴りかかるのだった。
「ん?なにかしら今の?」
「下からですね」
一瞬決闘している2人のものとはちがう衝撃と音がしたから聞こえてくる。下の出入り口は他の4人に誰にも邪魔させないよう見張らせていた。
「ちょっと碇、下見てきてちょうだい?問題なければいいしあの子たちがはしゃぎすぎてるなら注意してきて」
「ハイ」
そう指示する美破に従順に従い、気づかれないように階段の出入り口へ向かう碇。
「フフフっ石矢魔に女王は2人もいらないわ」
美破は明るい未来に想いを馳せ笑みを浮かべる。この時点で作戦のイレギュラーが出てきていることに気付かずに。
美破の策略通り男鹿と邦枝が屋上で決闘を始めた時、大森は目を覚まし身体を起こす。
「寧々さん!よかった気がつきましたか!?」
烈怒帝瑠の構成員の一人が声を掛ける。隣を見れば未だ眠ったままの千秋が看病を受けていた。
「びっくりしましたよ。いつもの溜まり場の教室に保健室に来いってメモがあって来てみれば2人ともボロボロなんですもん」
「...葵姐さんは....?」
「え?...あぁ大丈夫ですよ。さっき寧々さん達の仇を取るって男鹿と屋上にいます」
男鹿と闘っている。その事実を聞いた瞬間彼女はベッドから飛び降り保健室飛び出していく。
痛む身体を無視して屋上へ目指して走る。
「まずいっ!いま2人が戦ったらあいつらの思うツボだっ!!」
急いで走っていき屋上へ続く階段を登るとそこにはボロボロなチームの構成員たちが壁にもたれかかっていた。
「あっあんた達..?」
しかし不思議なことに彼女らは一緒に目線を上にしており、どこか怯えていた。その先に先程の下手人がいるのだろうと思い見上げると
ー過剰なまでにボロボロになっている下手人のMK5の4人の姿があった。
「なっなにこれ...?」
4人とも四肢はあらぬ方向に曲がり、先ほど彼女を殴ってきた2人に至っては顔面が潰されている。だが、かろうじて4人とも生きているようでか細い呼吸は聞こえてくる。
そしてそのMK5を処したであろう人物は5人目の碇の髪を掴んでいた。
「じゃあ首謀者はその美破とかいうオカマだな?」
「だからっそうだっていってんじゃんか!頼む!殺さないでくれ!」
「アホか。殺さないよ。刑務所行きたくないもん」
そういって髪を離すと顔面に蹴りを入れて壁に埋める。大森はいつも知ってるその人物の全く違う雰囲気につい名前を呼んでしまう。
「つ..紬貴....?」
「寧々!?歩いて大丈夫なの!?」
MK5を処した張本人、古市紬貴は名前を呼ばれると大森のケガの調子を聞いてくる。まるで何もなかったかのように。
「えっえぇ。なんとか..ね」
「よかった..ビックリしたよ..人数分ジュース買って帰ってきたら2人とも血を流して倒れてたからさ。ついカッとしちゃったよ」
軽く話してくる古市に大森は脳裏にある言葉を思い出していた。
ー男鹿の忠犬
(忠犬...?これじゃまるで狂犬じゃない....)
すると屋上の扉の向こうから轟音と振動が響いてくる。男鹿と邦枝の方も決着が近づいている。
「そうだ!姐さんがっ!」
「行ってきて寧々。ワタシじゃなくて寧々の方が葵は聞いてくれるから」
「えぇ行ってくる!」
急いで階段を駆け上がる寧々の後ろを追うように埋めた5人目のチビの首根っこ掴んで上がろうとすると後ろから声がかけられる。
「うぉっすげぇ。変な話聞いて見に来たけどこっちもおもしろいことになってるじゃん」
「んぁ?」
後ろを向けば昼間に話したセンター分けのロン毛優男がなぜかそこにいた。なんでいるのキミ??
「男鹿ちゃんだけかと思ってたけどキミも面白いねぇ」
「...あぁうん。ソウッスネ」
なんか楽しそうですねこの人めっちゃ目キラキラさせてますもん。
「それじゃ俺いくわ。イイもん見れたし男鹿ちゃんによろしくねー」
「...まじでなんなんだ?」
ワタシはもう気にしないことにして上に上がる。変な人多いなぁこの学校。
先ほどの轟音と振動の原因は邦枝が男鹿に大業を繰り出したものによるものだった。その威力は凄まじく邦枝の息は絶え絶えに、屋上の床はくずれ、男鹿は倒れ込んでいる。
(あ...当たったのかしら....あまり手応えはなかったけど..)
あまりの手応えのなさに疑問を抱いていると出入り口が勢いよく開かれる。そこから大森が声を上げる。
「姐さん!!!罠です!!美破の罠です!!」
「遅かったわねチェックメイトよ」
「美破...え?どういうこと?」
突然の展開に疲れ切っている邦枝の脳は正しく働かず処理しきれない。だが大森によって彼女らを襲ったのは男鹿ではないこと、そしてこの決闘が仕組まれていたことを悟る。
「おかげでアンタはバテバテ。まずいわねー、今私と戦って勝てるかしら?」
邦枝の脳はようやくこの現状を理解する。しかし正しく理解していなかったのは美破も同じことだった。
後ろから美破は頭を鷲掴みにされる。
「人がせっかくガマンしてんのにジャマしてんじゃねーよ」
驚愕する邦枝を他所に美破の顔面を地面に叩きつける男鹿。その衝撃で地面にクレーターができる。
「何してくれてんのよっこのボケがああああああああ!!!」
ガバっと顔を起こす美破に珍しく目を少し見開く男鹿。
「あんたの出番はもう終わりなのよこっからは女王対決でしょ!そーゆー流れわかんないかなぁあーもう信じらんない!私の美しい顔をよくも!絶対ぶっ殺すかr」
メコッともう一度顔面を叩きつける。
「うーーん?何いってんだ?このオカマ」
男鹿の顔はいつも通りの悪魔のように楽しそうな顔をしている。
「ちょっとおおおひどいじゃないの!!アンタ悪魔!?碇ぃ!アンタ早く私をたすけなさいよちょっと」
「探してんのはこのチビ?」
「ヒッッ!!いっイカリ...?」
美破の問いかけに階段を上がってきた古市がもはやボロ雑巾以上の碇を美破の前に投げ捨てる。
余りのダメージ具合に一瞬碇とは認識できなかった美破を男鹿はもう一度メコっと叩きつける。
「タフなヤローだな」
「ごらぁぁぁ!!まだ人が!」
メコッ
男鹿の肩にいるベル坊はこの光景が楽しいのかニヤニヤしている。
「やめなさいよ!!てゆーかさっきから赤ん坊の顔をむかつくんですけど!!」
「ウルセー」
メコッ
メコッ
メコッ
「ふぅー!やっと静かになったね」
オカマのを頭から地面に埋めて漸くスッキリしたような顔をする男鹿。ベル坊も今の光景を楽しめたのか目をキラキラさせて興奮している。
「結構ボロボロじゃんか男鹿。強いでしょ?葵は?」
「おー古市。確かに強かったぜまじで」
ワタシが問いかけると男鹿はその強さに満足しているようだ。葵が褒められると嬉しくなる。ふふん。
とりあえずワタシは寧々の怪我が心配なので見にいく。
「寧々も大丈夫だった?頭から血出てたけど?」
「えぇ....大丈夫よ。まだ痛むけどね」
「無茶しちゃヤダよ?」
「..アンタに言われたくないよ」
なぜかじとっとした目つきで見られるワタシ。なんで??
すると男鹿が突然の出来事に追いつけてない様子の葵に話しかける。
「さてと....じゃ続きをやろーか?」
「.....」
男鹿の言葉に葵は答えない。その表情は何かを考え込んでいるようだった。そして意を決したように話し出す。
「....ひとつだけ答えて..紬貴とアナタはどういう関係?」
「あ?」
「おん?」
そこで何故かワタシの名前が上がる。予想もしていなかったことにワタシと男鹿が同時に声をあげ、目を合わせる。
「「まぁ、
同時に同じ言葉を言う私達に葵は目を見開いた。
「そうなのね。ーー私の、負けよ」
葵が負けを認める。なんの心変わりがあったのだろうかは知るよしもないが少しだけ表情が明るくなったのをみて良いことだとワタシは考える。
「いえそうじゃないわ、ごめんなさい私。なんていったらいいか...」
「そうか!!じゃあハイッ!!!」
男鹿が葵の降伏を聞くや否やすぐに表情が明るくなりズイッと葵の前にらベル坊を差し出す。
無論訳の分からない葵は真意を問いかけるが男鹿はさも当たり前かのように
「だってお前の攻撃に耐えきったらコイツ貰ってくれんだろ?」
(((何そのルール???)))
訳の分からないことを言い出す。ワタシたち3人は思考が真っ白になる。だがなんとか思考を取り戻した葵。
「もっもらうって何?その子あんたの子じゃないの?」
「あん?オレの子なわけねーだろ。無理矢理押し付けられて育ててるだけだせ?」
当然の疑問に男鹿はあっけらかんと答える。いやまぁそうだけどさ...誤解生まない?その言い方。いやでも誤解でもなんでもないしな。
「えぇ!?じゃあの一緒にいた金髪の人は!?奥さんじゃ!?」
「全然違え。なんならオレよりこいつの方が仲良いぜ」
「そうだね。友達だからね」
「えぇ...じゃっじゃあなんなの!?あの人!?なんであんなことを!?」
葵はなんだかめちゃ戸惑っている。どうしたんだろ?
「何ってそりゃ悪魔だよ悪魔」
((悪魔!?!?..のような女!?!?))
「オイコラ。流石にそれは誤解が生むだろ」
「いやでも事実だろーが。他になんて言やぁいいんだよ」
「ぐぬぬ、だけどさぁ...」
ワタシが男鹿に言い負かされていると出入り口の方から凛とした声がかけられる。
「いつまでくだらん話をしている。帰るぞその女は親にはなりえん」
「えっいやぁでも」
ヒルダは淡々と男鹿に伝える。諦めきれない男鹿は渋るがそんなの気にしせずにワタシの方へ話しかける。
「行こうツムギ。今晩はカレーだが食べに来ないか?」
「いいの?じゃ母さんに連絡するね」
「うむ。さぁ坊ちゃま。参りましょう。お風呂に入りましょうね」
男鹿からベル坊を取り上げて出口へ歩いていく。その後ろついていくワタシの口はもうカレーの口になっている。男鹿は離れていくベル坊に慌てて後を追いかける。
「待って!!」
しかし意外にも葵が後ろからヒルダを呼び止める。
「あなたさっきのこと...」
「...どうやらお互い誤解があったようだ。謝罪しよう」
「え?いっいや確かに私も早とちりだったというか...」
なんのことを話しているのかはわからないワタシと男鹿は間で固まる。この2人接点あったんだ。
するとヒルダは何故かこっちへ近づいてくる。
「ていうかなんであんなこと..」
「しかし、昔はどうあれ今の1番の友人は私のようだな?」
「...え、...ハッ!!」
ヒルダが葵の言葉を遮るようにワタシの肩に手を置いて変なことを言い放つ。すると葵の中で何か合点がいったような様子。
「いっイヤそんなことはっ!」
「フン。文句があるなら腕を磨いて出直してくるんだな」
「......ッ!!」
なんか2人の間で火花が散るぐらいガンつけあっている。しかし何もわからないワタシと男鹿と寧々はただ戸惑うことしかできなかった。
ナニコレ。
ー翌日。あいにくの雨模様の天気にすこし気分が下がりつつ傘をさして男鹿とともに学校へ向かう。
「結局、今回もダメだったね」
「あぁだが心配するな!次の目星はついている!」
心配はしていない。しかし次の目星というと必然的に残るもう1人の男。
「...石矢魔最強の東条だね」
「おうよ」
昨日の優男さんから聞いた石矢魔最強、東条英虎。少数精鋭の派閥。
どういう男かは知らないが、おそらく神崎や姫川のように軍隊を作るというよりは仲のいい身内でやってる筈だ。恐らく他の派閥よりも結束力は強く、接触するのも難しくなるだろうな。
そんな事を考えていると後ろから慌てた様な声が聞こえてくる。
「ちょっと!!姐さん本気ですかッ!?」
「当然よ。私が浮ついたせいで皆に迷惑かけたんですもの」
「だからって何も辞めなくても...千秋も何か言いなさいよ」
「.......似合います」
「千秋!?」
ワタシの友人たちのようだが何やら揉めている。振り返る前に1人男鹿の横へ並んでくる。
「それに前々から考えていたのよ。そろそろ寧々に烈怒帝瑠を任せてもいいって。だから勘違いしないでよね」
横に並んできたのはワタシの小さな頃からの大事な友人。しかし服装が攻撃的な特攻服ではなく普通の石矢魔の制服が着用されており
「ケジメよ」
もはや見た目は普通の可愛い女子高生だった。なんか顔も赤いし。
「じゃまた学校で。紬貴」
そういって走っていく葵をワタシ達は黙って見送る。とりあえず何がなんだかわかってない男鹿の横腹を肘で小突く。
にぶちんめ。
夏目さんのファンの皆さん申し訳ない。この人結構扱いにくいです。