TS異能力古市   作:ブッタ

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第8話 プールで遊びましょう。

 

 だんだんと陽射しが強く、油蝉の声も活発になってきており夏の訪れが本格的に感じる今日この頃。

 ワタシは今家族と共に南の島へと来ている。

 茹るような都市部の蒸し暑さに辟易した両親が商店街の福引きにて南の島への旅行券を見事に引き当てるミラクルを引き起こしたことが発端。

 夏休み中に南の島でのバカンス。誰もが羨むようなシチュエーションでワタシは....

 

「...めんすぉ〜ぅるぇ〜いぃ...」

 

 高級リゾートのプールサイドのビーチチェアで暇を持て余していた。持て余しすぎて溶けかけていた。

 無論ワタシとてダイビングにマリンスポーツなどいろんなアクティビティを家族とともに楽しんでいた。

 しかしもともとワタシはインドア派の人間。夏はクーラーの効いた涼しい部屋でゲームをして過ごしていたいワタシは既にアウトドア要素は満腹状態であった。

 

「おねぇーちゃーん!ボールとってぇー!」

 

 溶けているワタシの元へビーチボールがやってくるのと同時に妹のほのかの声が聞こえてくる。とりまボールを風に乗せてほのかの方へ飛ばす。

 

「っとと!もー!おねーちゃんもあそぼーよぉ」

「あぇー?ほぅえー」

「溶けすぎてなにいってるかわかんないよ..おねーちゃん」

 

 それは仕方ない。だって平和すぎて暇なんだもん。

 いつも男鹿と一緒にいるとトラブルが向こうのほうからやってくるので退屈しないが、アイツと離れるだけでこんなにも退屈になるとは..

 とろけながらほのかの方へ目を向けると背後のプールに浮かぶ

 

口髭が特徴的なデケェオッサンと目があって覚醒する。

 

「.....フ」

 浮かびながら目を合わせてくるオッサンがグッドサインしてくる。無駄に歯を煌めかせながら。

 

「おねーちゃん?どうしたの?」

「....なんでもないよ」

 

 ワタシは気にしないことにしてもう一度ビーチチェアに背中を預ける。しかしあのオッサンはワタシに用があるようで、

 

「トォッ!」

 

 プールから飛びあがり体操選手のように空中で身体捻りながらビーチチェアの隣に着地する。10点満点だ。

 

「すごい!おじさん体操選手みたーい!」

「ハッハッハ。ありがとうございます。こう見えて鍛えてますから」

「一目瞭然だよ」

 

 どー見ても鍛えてるようにしかみえない身体だろ。ワタシがツッコむとそのオッサンことアランドロンがこっちを向く。

 

「さぁ古市殿!!共に参りましょう!!!ブグッ」

「どこにだよ」

 

 そんなことをのたまいながら身体を開こうとするオッサンの顔面に足裏をめり込ませてやめさせる。

 

「男鹿殿が古市殿の家まで遊びの誘いに来ておりました」

「は?男鹿が?いやつかなんでアンタはそれを知ってんの」

「それは私が貴女の家の庭で留守番をしていましたので。ブグッ」

「ふざけんな不審者」

 

 とんでもねぇこと言いやがるオッサンにもう一度足裏をめり込ませる。しかし男鹿の誘いか。どうさ明日の朝には帰ることになるし...よし。

 ワタシはほのかの方へ顔を向ける。

 

「? なぁにおねぇちゃん」

「ほのか。ワタシはこれから男鹿と遊びに一足先に帰るから。母さんによろしくね」

「..えぇー!また男鹿さん!?」

「ごめんて。帰ってきたら⚪︎ーゲンダッツ買ってあげるから」

「わかった!いってらっしゃい!」

 

 現金だな我が妹よ。とりま伝言は頼んだし行くとしよう。

 水着の上にパーカーを着てオッサンの方へ歩く。

 

「では古市殿。行きましょうか」

 

 ぱっかーんと縦に身体を割るその姿に一瞬引いてしまうが、気を取り直してオッサンの身体の中に入っていく。

 

 オッサンの中は蒸し暑い外とは違ってすごく快適な気温だった。

 


 

「学生2枚で」

 

 あのあとオッサンに連れてこられた先で男鹿に誘われ市民プールに来ていた。しかし市民プールの中は夏休みの影響かすし詰め状態で、とてもプールで遊べないので2人でプールサイドでくつろいでる。

 

「なぁ男鹿くん。なんでワタシは高級リゾートプールからすし詰め状態の市民プールにきてんの?」

「あー?そりゃオレがお前を誘ったからだ。お前んちだけ家族旅行なんてそんな格差社会はいかん」

「なんだそれ」

「もっと言うとオマエのガッカリした顔が見たかったから」

 

 ワタシの幼馴染はサイテーだった。だがアンタの一番の欠点をワタシは完璧に把握してる。

 

「....ちなみに君がオッサン使ってリゾートにくる発想はできなかった?」

「..........お...オマエそれいつ思いついた?」

「アンタがさっき市民プールに誘ってきたとき」

「........なんで言わなかった?」

「そりゃあ..アンタのガッカリした顔が見たかったから」

「...ア....アァァ...」

 

 欠点はケンカ以外は頭空っぽってことだよ。衝撃の事実に気づいた男鹿は身体がまるでアイスクリームのように溶けていた。

 とりあえずワタシは立ち上がり自販機の方へいく。しかし自販機の方にも列ができている。うへぇ。

 

「しくったなぁ。普通に断ればよかったかなぁ...さすがに市民プールに来るとは思ってなかった...」

 

 男鹿に意趣返しは果たせたが目の前の現実は変わらない。今もワタシはジュースを求めて長い列に並んでいる。

 南の島とは違う蒸し暑さにワタシは水着の上に羽織るように着ているパーカーを脱いで肩にかけ、棒付きキャンディを口に放り込む。

 

「.....紬貴」

「んぁ?...千秋じゃん!ひとり?」

 

 幸運なことに両手に焼きそば持ってる千秋と出会えた。しかもワタシの問いに首を横に振っている。

 

「.....向こうでテーブルとってある」

「そっかぁ。ジュース買ったらワタシもそっちいっていい?」

「もち」

 

 千秋はワタシのお願いも快く承諾してくれた。とりあえずテーブルの場所を教えてくれたので自分の番になるまで飴を舐めながら待つ。

 

 

 

 ようやく自分のジュースを買うことができたワタシは先ほど教えてくれたテーブルの近くまでくるとそこには寧々と千秋が座っており、周りに何人かのチンピラが囲っていた。ナンパか?

 静かに近づくとソイツらは見覚えがあった。

 

「なぁいいじゃんか」

「オレらと遊ぼうぜ?たのしーよー?」

「....うっとぉしいわね」

 

 マニュアル通りなナンパだな。寧々たちも可哀想だ。とりあえずナンパ供のリーダーに後ろから近づいて

 

ソイツの頭からジュースを垂れ流す。

 

「...ダレだぁ!?んな舐めたことしやがんのはぁ!?」

 

 すごい形相でこっちを振り向く。久々の再会、ちゃんと挨拶をしないと。

 

「いやー久しぶりっす。アツイっすねパイセン。」

「ゲッ!!ふっ...古市!!」

「頭ァ...冷えました?」

 


 

「おっお待たせ、しました。トロピカルジュース人数分です。古市さん」

「うむ。くるしゅうない」

 

 顔をボコボコに晴らしたパイセンから売店で一番高いジュースを奢られるワタシ達。さすがは同中で今や西高のアタマ張ってるパイセンだ。懐が大きい。

 

「あ、もう帰っていいすよパイセン」

「.....うす」

 

 随分と素直に帰っていくパイセンを見送り寧々達に向き直る。

 

「いやーさすがお高いジュース。おいしいねこれ」

「...大丈夫なの?あれ?」

「モーマンタイ」

 

 寧々は心配そうに聞いてくるので自信いっぱいに答えて安心させる。しかし何故か寧々は溜息をこぼす。何故か。

 

「まぁ、いいわ。それより元気そうでよかったわ。この間はごたごたしてまともに話せなかったしね」

「それはこっちの台詞。頭の怪我は大丈夫なの?2人とも」

 

 この間は2人とも頭から血を流して倒れていたのだ。口から心臓が飛び出るくらいは驚いたものだ。

 

「大丈夫だからここにいるのよ私達」

「....もぐもぐ」

「それならよかった」

 

 ワタシは心底安心してトロピカルジュース〜夏の果物を添えて〜のストローに口をつける。

 すると一つ疑問が浮かんでくる。

 

「そういえば葵は一緒じゃないの?」

「えぇ。姐さんは今修行中だからね。遊んでるヒマはないのよ」

「.....花嫁修行?」

「違うわよ。なんでそんなのが思いつくのよ」

「だって...ねぇ?千秋」

「...むぐむぐ...ん。..男鹿に...ほの字」

「違うわよッッ!私は認めないわよッ!そんなのッ!」

 

 ワタシと千秋が葵の気持ちの答え合わせをすると、寧々は不機嫌になってしまった。まぁまぁジュースでも飲んで。

 

「まったく...おまけにチームを辞めるなんて言い出すし、本当男鹿との一件があってから踏んだり蹴ったりよ」

「苦労してんだねぇ...あっ千秋焼きそば一口ちょーだい」

「....ん」

 

 一口分箸で掴んで差し出してくれるので身を乗り出していただく。うむチープなソースがよくきき、モサモサしていてうまい。

 

「...紬貴。アンタ烈怒帝瑠には入る気ないの?姐さんも何度か誘ってるんでしょ?」

「うん。入る気ないよ」

「どうして?私達や姐さんも含めて何人かとは仲がいいでしょ?」

 

 実際ワタシは葵を通じて何度かチームの面々と話す機会があり、チーム内に友人ができている。

 

「でも入らないよ。だってワタシは葵とは友達であって、族の頭と舎弟の関係には慣れないもん」

「....そう。ならなにもいわないわ」

「.....もぐもぐ」

 

 そう。ワタシは友達として仲良くしたいだけである。ワタシの持論だがそんな奴がチームに入ったって軋轢を生むだけなのだ。

 

 そのままワタシ達は他愛ない会話してプールで水遊びして充実した時間を過ごした。帰りは一緒にアイスを買い食いした。

 

 なにか忘れた気がするけどまぁいいや。

 

 

 

「ハッ。アレッもう夕方っ!?つか古市は!?」

「スースー」

 


 

 古市が男鹿を置き去りにして大森と谷村と共に帰る1時間前。市民プールの前に大人数の男たちが集まっていた。

 

「...高島さん。ホントにやるんすか?ぶっちゃけ女相手にこの人数は...」

「うっせぇ!あの生意気なアマに痛い目みせてケジメつけさすんだよッ!」

 

 先ほど古市にパシられていた先輩、高島が手下を連れてきていた。その数は50人ほど。

 

「あのクソが。昔のツケも合わせて必ずリンチにして土下座させてやるぜ」

 

 中学の頃もひどくやられていた高島は人数を多く連れてきて仕返しをしてやると息巻いていた。しかし周りは相手がたった1人ということでやる気は上がらない。

 唯一相手が美人ってとこだけが人数を揃えて勝ちを確信している集団のモチベーションを支える。

 とりあえず高島は入り口付近を歩く図体のでかいアイスキャンディ屋に話しかける。

 

「いらっしゃい。アイスキャンディーはいかがですか。」

「おいアンタ!この写真の女プールから出てこなかったか?」

「アイスキャンディー1本80円です」

「おいコラ質問に答えろや!」

「....アイスキャンディー」

「いらねぇよんなのッッ!!」

「.....冷やかしか?」

 

 

 

 

 図体のデカいアイスキャンディー屋がまたプールの入り口付近を歩く。バイトである売り文句を言いながら。

 

「冷たくて甘ーいアイスキャンディ。いかがですかー?」

「おっおいしそ。買ってこ千秋」

「...うん」

「私は自販機でコーヒー買ってくるわ」

 

 何本かアイスキャンディーを売るそのそば、人目がつかない隠れた場所で高島たち50人全員ボロボロで意識を失っていた。

 

 


 

 

 寧々と千秋と別れ家の前まで帰ってくると家の門の前ででかいおっさんが体育座りしていた。

 

「古市殿。おかえりなさいませ」

「....なにしてんの?」

「留守番です」

 

 頼んでないけど。そう胸の中でワタシは思う。だが一つ疑問に思ったことがあったので聞いてみる。

 

「ひょっとして行く宛ないの?」

「...恥ずかしながらそうでございます」

「..じゃあウチくる?」

「よっ良いのですか!?」

「但し条件があります」

「じょ...条件?」

 

 

 

 

 翌日、蝉が外で元気に合唱してる中、古市の家族が南の島から帰ってくる。

 

「ただいまー。はー疲れた。やっぱりこっちは蒸し暑いわねー!」

 

 荷物をどさりと玄関に置き一息をつく母親と妹、父親は車を駐車して後から入ってくる。

 

「紬貴ー!!いるんでしょ!!降りてきなさい!」

 

 声を張り上げるが応答はない。しかしリビングの方で物音がする。

 

「なんだリビングにいるじゃない」

「おとーさん心配したんだぞ。急に1人で帰ったりして....」

「おねーちゃん!!ハー⚪︎ンダッツは!?」

 

 3人それぞれ話しながらリビングの電気をつける。そこにはいつも通り自分たちの長女がいると思いながら。しかし

 

お帰りなさいませ

 

口髭が立派な知らねーでかいオッサンだけが鎮座してた

 

「「「誰ッッ!?!?」」」

 

 当然面識のない両親も一度だけ会った妹も同じ言葉を発した。普通に警察案件である。

 

「今日からこちらでお世話になります。パティム・ド・エムナ・アランドロンと申します」

「...いやいやいやいや聞いてないです!名前は!つか何?今日から世話になるって!?いや娘は!?娘はどこですか!?」

 

 なんとか気を取り直した一家の大黒柱は問い詰める。するとアランドロンから古市家長女の声が聞こえてくる。

 

『オッサーン。漫画読み終わったから身体開いてー。次は⚪︎ロアカね』

「古市殿。その前にご家族が帰ってきました。一度出てきてはいかがでしょうか」

『あっ帰ってきた?んじゃ一旦でるか』

 

 そんなわけのわからない会話が聞こえると、目の前のおっさんが縦に割れるとかいう信じられないような出来事が起きた。

 かと思えば何故か中から長女が漫画を抱えてでてきた。

 

「いやーやっぱオッサンの中、気温が快適だし無重力みたいでめっちゃリラックスできるわ」

「いやはや、長いこと生きてきましたがこういう風に私を使うお方は初めてです」

「あっ。んじゃ今日から家族の一員になる次元転送悪魔のアランドロンさんでーす」

 

 なんて明らかに普通じゃない光景を見せて軽く紹介して済まそうとする長女に他3人は声を揃えて叫ぶ。

 

「「「そこに正座ぁッ!!!」」」

 

 いくら長女のファンタジー設定で不思議に慣れていても限度はある。

 そうでなくとも知らないオッサンを家に招くのはフツー簡単には受け入れられないことなのである。

 

 

 

 

 数日後にはアランドロンと母親が共に韓ドラを見るぐらいには馴染んでいることからやはりこの家族はどこか普通ではない。

 

 




アランドロンの中のはそれなりにスペースがある空間だと思ってます。
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