TS異能力古市   作:ブッタ

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やるかどうかかなり迷いましたが原作改変入ります。



第9話 花火とケンカが名物の学校です。

 

「ベル坊とヒルダがいなくなったぁ?」

 

 ある日、男鹿に呼び出されたかと思えば衝撃的な事を言われついオウム返しのように聞き返してしまった。

 

「そ、それマジ?なんで?」

「まじだ。朝起きたら綺麗サッパリよ」

 

 動揺するワタシに対してあっけらかんに男鹿は言う。

 

「でもベル坊は?今あの子すごい熱だしてたじゃん」

 

 先日様子を見に来た時ベル坊はビニールプールの水が一瞬で沸騰してしまうほどには悪魔的な高熱を出していたはずだ。

 

「魔界にでも連れてかえったんじゃねーか?」

「じゃなんでアンタ生きてんの?15m超えたら即死なんじゃ?」

「これをみろ」

 

 男鹿は手の甲を見せつけてくる。そこには昨日まであったはずの蠅王紋がなくなっていた。どうやら謎の高熱によりベル坊とのリンクが途切れために15m以上離れても問題なくなったらしい。

 すると後ろから走ってくる足音が聞こえてくるから横にずれる。

 

「たぁぁーつみぃぃいいッッ!!!!」

 

 後ろから走ってくる美咲さんに男鹿は顔面に飛び蹴りをかまされぶっ飛んでいった。

 


 

「くそっ姉貴のやろー。ボコスカなぐりやがって」

 

 あの後男鹿はベル坊とヒルダを見つけてこいと美咲さんに家から追い出された。

 

「これからどーすんのさ男鹿」

「あー?せっかく手に入れた自由なんだ。誰が捜すかっての」

「フーン」

 

 隣を歩く男鹿に問いかけるがその答えはあまりにもぶっきらぼうだった。しかし

 

「あー、くそあちいな。河原にでもいくか」

「.....ふーん」

 

 ワタシの幼馴染は全くもって素直ではない。河原は初めてベル坊と男鹿が出会った場所であり、捜しにいくつもりなのだコイツは。

 ワタシ達は河原を目指して特に会話もなく歩き出す。

 

 

 河原に着いたワタシ達は辺りを見回すとサングラスかけたオールバックのオッサンが片手を掲げてガニ股で近寄ってきた。

 

「よ」

「...お前」

「ダレ?」

 

 どうやら男鹿とは面識あるらしい。ワタシは男鹿に問いかけるが答える前にサングラスのオッサンが話しかけてくる。

 

「いやー昨夜は悪かったね急に帰っちゃって。でもオレのことヨメちゃんに話してくれてないの?」

「嫁じゃねぇ」

「そうかい。まっ今日用があんのはオレじゃねぇ。東条さーんきましたよー」

 

 どうやら東条の関係者らしい男がいきなり後方の草むらの向こうへ声を上げる。草むらの向こうからは「おーきたか」と男の声が聞こえてくる。

 

「お前が男鹿か...意外に細ぇな」

 

 草むらの方から歩いてきた男を見てワタシ達は驚く。男鹿よりもタッパも図体も大きい。ただ大きいだけでなく筋骨隆々でまさしく野生を生き抜いてきた猛獣のような身体と目つきだった。

 しかし驚いたのは東条にではなくソイツの背中にくっついてる見慣れた赤ん坊の姿に驚いていた。

 

「ケンカ。しようぜ」

 

 東条の背中にベル坊がひっついており、まるでそこにいるのが当たり前かのように2人とも自然に振る舞っている。

 男鹿はそんな光景が気に入らないのかすごい目つきで目を引き攣らせている。

 何も言わない男鹿に東条は何か思ったのかワタシの方に指をさしてくる。

 

「...ひょっとしてこっちの方が男鹿か?」

「「違います」」

 

 ははーん?さてはコイツ男鹿と同じでアタマ空っぽだな?ワタシとグラサンが同時に否定する。

 すると男鹿が立ち直ったのか声を上げる。

 

「ら..ラッキー.....」

 

 全然立ち直ってなかったわ。なんなら今まで見たことないぐらい動揺してるわ。目とかめっちゃ泳いでるもん。

 

「みっ見たまえ古市ちゃん。なんだか知らんがあのガキ東条にひっついるですぞ?バカだバカ」

「落ち着きなよバカ」

 

 何が古市ちゃんだ。今まで呼ばれたこともない呼び方するくらい混乱している男鹿を嗜めるが聞く耳持たない。

 

「とにかく押し付ける手間も省けたってもんだ。帰るぞっ!!」

 

 そういうやいなや男鹿はいきなりズンズンと歩み出す。川へ。

 

「おーいそっちは川だよ。家は逆方向でしょ」

「バカやろう!!川だって家だ!!」

「河童かおのれは」

 

 意味のわからないことを言い出す男鹿を追いかける。すると背後で東条がアイツは大物だとか楽しみだとかグラサンに話しかけているのを聞こえた。

 とりあえず川の中に片足突っ込んだ幼馴染の肩を掴んで止める。

 

「落ち着きなって」

「落ち着いてるっての!!」

「いいから聞けって。何がどうなってるか知らないけどまずは事実確認。ホントにベル坊が東条に乗り換えたのかどうか。焦るのはそれから」

「だから...別に焦ってなんかねーよ」

「はいはいとりま聞くよ。そのあとは川にでも土にでも帰るといい」

 

 とりあえず落ち着いたか男鹿は素直に川から上がってきたからワタシは代わりに東条に話しかける。

 

「東条パイセーン。背中の子かわいいですねぇ。パイセンの子です?」

「..あん?こいつか?ちげぇよ」

「それじゃお隣のグラサンパイセンの?」

「グラサンて。肝太ぇなオガのヨメ」

「...それとも最近拾った、とか?」

 

 苦笑するグラサンを無視して質問を続けるが東条が思案する。

 

「....そうだな...じゃその質問にゃ..男鹿がオレに勝ったら教えてやるよ」

「...あぁ?」

 

 東条は問いかけに答えながら男鹿にケンカを売る。まるで目の前にご馳走置かれて焦らされている猛獣のようにもはや待ちきれないようだ。

 

「だからほら...ケンカしよーぜ」

「..ふざけんなよてめー。赤ん坊背負ったまま喧嘩する気か?怪我したらどーする気だてめー」

「オマエがいうな」

 

 説得力がない正論を吐く男鹿についツッコんでしまう。しかし東条は素直にの言葉を聞いてベル坊をグラサンに預ける。

 

「んぁ?あぁ...庄司ちょっと頼むわ」

「うす」

 

 

 

 男鹿と東条が互いに向かい合う。東条は闘志を燃やしながら嬉しそうな顔している。片や男鹿はいつもの仏頂面だ。

 

「いいねぇ。お前もオレと同じケンカ好きだ。目でわかる」

「ああ?」

「自分の本気を試したくてウズウズしてんだろ?だが周りにゃてめーの全力を受け止めてくれる奴はいねえ。わかるぜ」

「.....」

 

 男鹿は東条の言葉に何も言わず、東条は拳を握って不敵に笑う。

 

「俺がそうだ。どっからでもかかってこい」

「...オレはテメーとはちげぇ。んな奴既に知ってる」

「....ホウ?」

「オレが、テメーに胸を貸してやるよ」

「...ハハ..ふざけたヤローだ」

 

 互いに同時に殴りかかる。互いにノーガードで顔面狙い。

 おおよそ人の体からしたとは思えない音が聞こえると男鹿だけが河原の草を掻き分けてぶっ飛び川から水しぶきが上がる。

 

「あらま」

「終わりだな」

 

 ワタシが驚き隣でベル坊を抱えているグラサンが終わりを確信する。しかしその確信を裏切るように男鹿が勢いよく立ち上がる。その様子にグラサンは驚いていた。

 

「嘘だろッ?」

 

 そのまま足取りしっかりと東条の前まで歩いて行く。ぶっ飛ばされたのが気に入らないのか目は闘志が燃え上がっている。

 

「いいね、もう一回やろうってか?」

 

 もう一度互いに顔面へと拳を振るいめり込む。

 

「グッッらぁぁぁああッ!!」

 

 次に吹っ飛ぶのは男鹿に押し負けた東条だった。何度か身体が跳ねつつ後方へ倒れる。

 

「とっ東条さん!?」

「...騒ぐなよ」

 

 東条はふらつかずに立ち上がり首を鳴らす。その顔は心底楽しそうだ。

 

「面白くなってきた。オメーもそうだろ?」

「.....」

 

 男鹿は何も言わず、2人はまた馬鹿正直にもう一度正面に向かい合って殴り合う。互いに仰け反るが2人とも踏み止まる。

 

「ラァッ!!!」

 

 東条の拳を男鹿は掌で受け止め、

 

「グッ!!」

 

 男鹿の拳を東条は手首を掴んで止める。2人とも両手が塞がり睨み合う。

 痺れを切らした男鹿が頭を少し後ろへ引き頭突きを繰り出すが東条も同じく額で受け止める。また睨み合いだ。

 

「ムカつくやろーだ。マネすんじゃねぇよッ!」

「ハッ!オメー下の名前は?」

「あぁ!?辰巳だボケッ!」

「男鹿辰巳か...」

 

 雰囲気が変わった東条に男鹿は警戒して後ろへ跳び間合いを開ける。東条は話を続ける。

 

「あのガキな昨夜拾ったんだ。なんでか知らねーが迷子でな」

「あ?聞いてねーよ」

「仕方ねーから親が見つかるまで面倒見てんだが、まさかお前が親ってわけじゃないだろう?」

「だから聞いてねぇッつってんだろッッ!!」

 

 珍しく声を荒げる男鹿が右フックを顔面に叩きつける。そのまま勢いに乗って男鹿はラッシュを仕掛ける。両手交互に顎、頬、鼻、鳩尾、首に殴り続けるがいつもの手応えを感じられないのか焦りを浮かべる男鹿。

 そのまま決めようと胸ぐらを掴むが東条に振り払われ胸ぐらではなくシャツの袖が破れる。

 

「なっ...!?」

「....まじで?」

 

 その肩に見える蠅王紋に男鹿とワタシは驚愕する。蝿王紋ってことはマジで乗り換えたの?ベル坊..

 そんなワタシ達の気持ちを知らずに東条は拳を引いて構える。

 

「礼を言うぜ男鹿辰巳。久々に本気をだせそうだ」

「ッッ!」

 

 その姿に男鹿は遅れて防ごうとするが

 

「フンッッッッ!!!」

 

 男鹿は東条に上空高く、川は渡る大きな橋が小さく見下ろせるほど高くぶっ飛ばされた。

 

「....マジで...?」

 

 見上げるワタシは目の前のコミックみたいな光景にただただ驚く。お隣のグラサンもあんぐりと口を開いている。

 男鹿はそのまま頭から大きな水しぶきをあげて川へ落ちる。

 

「ふむ.....こんなもんか」

 

 そう呟く東条にグラサンは今のふざけた威力の拳のことを問い詰める様子を横目にワタシはその場に足を揃えてしゃがんで飴を咥える。

 

「なぁアンタ」

「ん?」

 

 男鹿の落ちたところ眺めていると東条が話しかけてくる。

 

「ケンカしよーぜ」

「は?」

「東条さん!?」

 

 話しかけてきた東条の目には新たな獲物を見つけた猛獣のように目を輝かせていた。いきなりの発言にワタシもグラサンも驚く。

 

「オマエだろう?さっき男鹿がいってたヤツの全力を受け止められる奴は?」

「...あー」

 

 なんともこの手の人間はケンカのことになると勘と嗅覚で嗅ぎつけてくるから厄介だ。てか節操がないな。

 

「...アンタとはやらないよ」

「なぜだ?」

「なんでも」

 

 そのままワタシ(狂犬)東条(猛獣)が睨み合う。今はまだ絶対にコイツとはやらない。これはまだアイツのケンカだから。

 

「....はぁ。わーったよ。梃子でも動かなそーだ。アイツに伝えとけ...楽しかったってな」

「.....」

 

 ワタシは答えずに肩をすくめる。東条は気にせず歩き出しその後ろをグラサンが追いかけていき、ワタシはしゃがんだまま男鹿の方を眺めていた。

 

 少しして男鹿が立ち上がる。川から上がりこちらへ歩いてくる。

 

「...これからどーすんの?」

「...帰ってシャワー浴びて寝る」

「そ...」

 

 そのまま男鹿はワタシと別れて帰っていく。

 

 ワタシはそのまま飴を舐めながら川を眺めている。この後のことを考えていると後ろから話し声が聞こえてきた。

 

「男鹿のやろーついに邦枝もやったらしいな」

「これで後は東条だけか...」

「東邦神姫も終わりだな..今のうちに東条についとくか」

「あぁ。東条に味方して調子づいてる男鹿を潰さねーと」

 

 

 そんな話し声が聞こえてくるようだと今じゃ神崎や姫川の手下も含めて石矢魔の不良ほとんどが東条に着いたと考えていいだろう。

 ワタシは飴を噛み砕いて棒を吐き捨てる。そして立ち上がり、これからのことを考えての行動を始める。

 


 

 東条のやろーにぶっ飛ばされたあと古市のヤツに帰ると言ったがそのまま帰るのになんだか気まずく足取りが重かった。

 結局家に着く頃には日は暮れていてすっかり夜となっていた。

 しかし家の中にはヒルダがいて、ましてや魔界から連れてきた医者だとかいうラクガキみてーなやつと生意気なピンク髪のガキがいるわ、そいつに股間蹴られるわ、挙げ句の果てにベル坊は俺のために離れたとか言われてもう滅茶苦茶だ。

 しかもベル坊の治療のためだとかいって拳銃をオレの額にぶち込まれて頭ん中でおかしくなりそうな光景を見せられる。機関車になって競い合うヒルダと邦枝。羊のアランドロン。なぜか男になってる女好きの古市。

 

 なんとかおかしくなりそうな世界の中でベル坊をみつけ、目を覚ましたオレは生意気なガキに仕返しして最悪な気分を洗い流すようシャワーを浴びて着替えて玄関を出る。

 そこには見慣れた銀髪がウチの塀に寄りかかって飴を咥えていた。

 

「んぁ?遅かったじゃんか男鹿」

「..なんでいんだ?オマエ」

「いきなりひどいなぁ。待ってたんだよワタシ」

「なら上がって待ってりゃいいじゃねぇか」

 

 オレは指摘するがコイツは、

 

「やだよ。外出たくなくなるもん」

「....んだそれ」

 

 訳わかんねーことをニヒルに笑って言いやがる。そのままオレは歩き出して隣をコイツが歩く。

 コイツが言うには東条の野郎は学校にいるらしい。どっから知ったのか知らないが取り敢えず学校を目指す。

 

「東条から伝言あるけどきく?」

「聞かねぇ」

「なんで?」

 

 隣を歩くコイツはわかりきってることを聞いてくる。

 

「まだ負けてねぇからだ」

「...ふーん」

 

 ....なんか嬉しそうだなコイツ。気に食わねぇなと感じつつ明かりもない静かになった商店街を歩いてると昼間にみたグラサン野郎が自販機でジュース買っていた。

 

「よー男鹿ちゃんにヨメちゃん。どーした?こんな時間に」

「これから喧嘩の続きしに東条さんトコいくんすよ」

「続き?」

 

 オレが口を開く前に古市が喋り出す。すると横からゾロゾロと知らねぇ奴らが出てくる。

 

「相沢さん。ここはオレたちにやらせてください」

「そして勝った暁には正式に東条さんの部下として認めてもらいますよ」

「はぁ?キミたち誰?」

 

 訳の分からない会話を目の前で繰り返される。さらに横から出てきて言い争いしてさらに出てくる。

 気がつけばオレと古市は20人以上なら囲まれていた。

 

「うーん??なんだこれ?めんどくさいな?」

 

 グラサン野郎が困惑しいて、

 

「...しくったな。吹っかけすぎたか」

 

 なぜか古市が隣で手を額に当てている。

 

「キミたちやるなら静かにね。ご近所さんのメーワクにならないようにね」

「あっ待てこら!!テメーとの決着はついてねーぞ!!」

「そいつら全員倒したら相手してやるよ」

 

 背中をこっちに向けて学校の方向へ歩いていくあの野郎に声をあげるが背中越しに言いやがる。

 ヤロウの背中を睨んでると横から1人殴りかかってきたが、

 

「舐めてんじゃねーぞッッ!!男鹿ァ!!」

「お下がりください」

「ブギャァッッ!」

 

 古市がソイツの顔面に膝を叩き込んでぶっ飛ばす。おー綺麗にぶっ飛んだな...

 

「いきなりウチの大将を相手にできるわけないでしょ」

「テメェ!!」

「全くもー。さすがに血の気多すぎだっての。こんなとこで待ち伏せなんてさ」

 

 コイツの口振り。間違いねぇ。

 

「....古市テメェ..なんか知ってんな?」

「そりゃね。今や石矢魔全員勝手に東条についてるよ」

「あ?アイツはそんなタイプじゃねーだろ」

「だから勝手になのさ」

 

 東条のヤローは間違いなく部下を持つようなタイプじゃねぇ。そんな事したって相手になんざされねーのがオチだろうが目の前のコイツらはそれがわからないのか。

 

「...しかたねぇ。ぶっ飛ばすか」

「いやアンタはすでにアンタのケンカがあるでしょ?これはワタシのモンだよ」

 

 珍しく古市がやる気を見せてオレに下がるよう言ってくる。その姿に違和感を抱くが特に気にせず任せることにした。

 


 

「んじゃ行くか」

「そうだね」

 

 20人近くいたチンピラをパパッと片付け、ワタシは男鹿と一緒に東条がいる学校へ2人で向かう。

 学校に着くと校庭には3桁は超えている石矢魔の生徒がほぼ全員いた。そこには困惑しているグラサンこと相沢が1人のチンピラと話していた。

 

「相沢さん。行ってください。ここはオレ達が食い止めます」

「なにこれ?あのねキミたち。戦争じゃないんだから」

「戦争ですよ。石矢魔の誇りをかけたね」

 

 その言葉を皮切りに校舎全体が殺意が充満していく。相沢は勢いに押されながら校舎のグラウンドの方へ歩いていく。

 

「おっおいっ!!まてっ!!」

 

 男鹿が声を上げるが周りのチンピラに囲まれ邪魔される。

 

「待つのはテメーだコラ」

「観念しやがれ」

「邪魔だなコイツらッ!」

「男鹿」

 

 イラつく男鹿にワタシは名前を呼んで前に立つ。男鹿はこっちを向いたので要件をそのまま伝える。

 

「ワタシが道を作ってあげるから行ってきな?」

「....オメーどーするつもりだ?」

「アンタはアンタのケンカしなよ。これはワタシのケンカだ」

 

 男鹿は納得したような顔は見せず、しかし視線を東条らがいるであろうグラウンドへ向ける。よかった、わかってくれたね。

 一安心してワタシは道を作るように風を脚に纏わせる。そして、

 

「なにごちゃごちゃ言ってんだコラァ!」

「ぶち殺せぇッッ!!!」

 

 脚を振るい、纏わせた風をグラウンドの方へ放つ。進行上のチンピラたちは突然の強烈な突風に思わずぶっ飛び、男鹿は開いた道を走っていく。

 

「ふぅ。よし第一段階修了」

「テメェ女ぁ!!どいうつもりだ!!」

「何って?」

 

 一際目立つようなでかい図体のスキンヘッド。阿部が怒鳴ってくる。

 

「さすがにオレも説明が欲しいよねツムギちゃん。グッナイ」

「おっグッナイ君おひさ」

「惚けてんじゃねぇ!!」

「そう怒らないでよ。今のじゃみんな元気ピンピンでしょ?そういう風にしたから」

 

 今の風はただ吹っ飛ぶようにしただけで誰も怪我しないようにしっかりコントロールした。ワタシはケンカで風を使わないことを決めているのだ。

 

「そうじゃねぇ!!テメェが男鹿を裏切って全員で仕留めるって話だったろうがっ!!」

「それが意味わかんねえことして逃しやがって!」

「あー。あれね、嘘」

 

 チンピラの叫ぶ質問にわかりやすく答えるワタシの言葉に先ほどとは比にならないほど殺意と怒気が満ち溢れていく。

 そりゃそうだ。ワタシが男鹿をダシに今夜集めたのだから。

 


 

「いやービビったビビった。こんな時間に花火するっていうから来てみたら...なんすかあの人だかり?」

「ひとだかり?」

 

 相沢は人だかりを抜けたあと東条ともう1人連れである長髪を後ろでまとめた寡黙な男。陣野かおるが待つグラウンドへきていた。

 そのままあの人だかりについて2人に聞くが陣野は知らないようだ。相沢は東条へ目を向けるがその手に持ってるものをみてギョッとする。

 

「って!ちょッちょっと!?花火って本物のやつじゃないすか!?どっからそれを!?」

「ん?あぁ。祭りのバイトでくすねた」

「犯罪っすよ。屈託ない笑顔でなにいってんすか!?」

 

 東条の手には打ち上げ花火の玉と筒があり準備を進めていた。大きなその手を近くにいるベル坊の頭に優しく乗せられる。

 

「いやな?デッケー花火でも見ればコイツもちょっと元気出すかと思ってな?」

「それより庄司。人だかりとは?」

「いやなんかほぼ全校生徒が集まって手柄立てて東条さんの手下になるってよ...」

「でたらめな話だ。だれがそんなこと」

「あー。オレオレ」

「あんたかいっ!?」

 

 あまりにも軽くカミングアウトする東条に芸人顔負けなキレのあるツッコミをする相沢。

 

「いやね?手下にしてくれってウルセェから頑張ったらいいよって何人かにいったんだ。あと花火観においでって」

「しかもテキトー!?」

「だが、何人かなのか虎。全校生徒と聞いたが」

 

 あっけらかんに言う東条に陣野は疑問をぶつける。

 

「オレからいったのは何人かだ。あと他のほとんどのやつはアイツから聞いたっていってたぜ」

「アイツ?」

「男鹿の連れだよ」

「「はぁ?」」

 

 なぜそこであの女が出てくるか2人はわからずつい聞き返してしまう。だが利用された東条は気にしない様子で花火の準備を進める。

 

「まぁ。いいじゃねぇか。あの女が何考えてるか知らねーがウチはそういう学校だ」

 

 マッチを取り出して火をつける。

 

「全員集めて、喧嘩して、最後に立ってるのが大将。単純で分かりやすい」

 

 火のついたマッチを筒に入れ点火。

 

「派手に行こうじゃねぇか。花火も喧嘩も」

 

 火のついた花火は待ちきれないといったように発射され口笛じみた音を響かせ真っ暗な夜空を登っていく。そして、

 

「なぁ?男鹿辰巳」

「....」

 

 夜空を覆い尽くすほどの絢爛な大輪の花が大きく咲き、対峙する2人を激励するかのよう照らした。




改変点 神崎、姫川→出番なし、烈怒帝瑠→未だこず。
この後やりたい展開があるので申し訳ないですが流れを変えます。
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