最果てのサーガ ~夢のポケモン世界に転移したんだが、転移先があまりにも過酷すぎる件~   作:野傘

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第23話:雷天大壮

「粉砕せよ、ゴーゴート! “グラススライダー”!」

「バーバリーゴート!!」

 

 

【ゴーゴートの “グラススライダー”!】

 

 

 稲妻を帯びた蹄で大地を蹴り上げ、滑るような動きで疾駆するゴーゴート。眼前の敵手(イワンコ)を屠らんと、彼我の距離を一瞬にて縮める。

 “先制技”の名に恥じぬ、目にも留まらぬ速さの「駆け」。同時に、その身に帯びた“くさ”の攻勢エネルギーは、直撃すればイワンコを容易に“ひんし”へと追い込めるほどであった。

 

「先制には先制だ! 相棒、“でんこうせっか”!」

「がるるるわ!!」

 

 しかし、相対するイワンコもまた然る者。

 先制技には先制技とばかりに“でんこうせっか”の速さで地を駆け、“グラススライダー”の軌道より一瞬で離脱。触れれば致命となる一撃を危なげなく回避してみせる。

 さもありなん。先制技同士がぶつかり合った際、先に動くのは“すばやさ”が高い方。そしてイワンコの“すばやさ”はゴーゴートのそれを上回る。故に同時に“わざ”を繰り出せば、先手を取るのは当然のことであった。

 氷原キング(シナトマカミ)はユール最速の王。その眷属たる(血を引く)イワンコが“すばやさ”勝負で負ける道理はないのだ。

 

(──なるほど、(はや)い)

 

 事前に発動を知りえていたとはいえ、“グラススライダー”を難なく躱してみせたイワンコにラクサは内心で舌を巻く。

 まさしくキングの眷属の面目躍如。凡百のポケモンであれば瞬く間に地へと伏すであろう攻勢を、紙一重でも凌いでみせるその技量。

 その身が進化前であることも鑑みれば驚異的と言ってもよいだろう。

 

(──だが、それだけである)

 

 その事実は認めつつ──しかしラクサは“それだけ”であると断じた。

 

 なるほど確かに“すばやさ”には目を見張るものがある。

 しかし、そこに先代(ラッセル)の如く駆けるだけで全てなぎ倒す威力はなく。

 あるいはルピナスのような、格上をも封殺する技巧もない。

 

 ただただ己が才覚(スペック)に任せただけの、単純な暴力。

 それだけで打ち倒せるほど、ユールの藩屏(自分たち)は甘くない。

 

(“勝ちにいく”といった割に戦法は逃げが主体。あまりにも消極的に過ぎる)

 

 ──大口を叩いてコレでは興冷めが過ぎる。

 ──少々、買い被っていたか。

 

(……否、判断するのはまだ早計。ならば、今少し攻めてみるか)

 

 心の内にてそう判断を下したラクサは、自らの相棒(ゴーゴート)へさらなる攻勢を指示する。

 

「逃げてばかりでは勝てぬであるぞ、カナタ青年!! ゴーゴート、再び“グラススライダー”である!!」

「バルルル……ゴゴー!!」

「……ッ、避けろ相棒!! “でんこうせっか”だ!!」

「ぬわん!!」

 

 ラクサの指示に応え、再び草原を滑走するゴーゴート。対するイワンコもまた先と同様に電光石火(“でんこうせっか”)の素早さでそれを避けんとする。

 同じ“わざ”で再びぶつかり合う両者。結果は無論、先の攻防の焼き直し──

 

 

「併せよ、“エレキチャージ”!!」

「んな!?」

 

 

 ──()()()()

 

 迫る草の猛進(“グラススライダー”)からイワンコが身を翻した次の瞬間、ゴーゴートは己の帯びたるエネルギーの属性(タイプ)を変化させる。

 

 大地の力たる“くさ”から、天上の力たる“でんき”へと。

 

 帯びたエネルギーの変質が“グラススライダー”の効果を消滅させ、滑走の速度が一挙に緩まる。

 瞬間、ゴーゴートはその剛脚を大地へと叩き付け急停止。傍らをすり抜けんとしたイワンコの土手腹へ、稲妻の蹴撃を叩き込んだ。

 

【ゴーゴートの “エレキチャージ”!】

 

「バリリリ!!」

「がぎゃう!?」

 

 直撃(クリーンヒット)

 

 雷蹄の一撃を受け、煙を上げながらイワンコの体が大地へと転がる。

 大地をも踏み砕くゴーゴートの後ろ蹴り、それを無防備の脇腹へと食らったのだ。進化前の貧弱な身では大ダメージは免れまい。

 だが、“エレキチャージ”は弱点(くさ)タイプの“わざ”ではなく、また“わざ”の威力自体もそれほど高くはない。

 故にギリギリのところで“ひんし”を免れたのだろう。大きく吹き飛ばされながらもイワンコは地面に爪を突き立て、再び立ち上がって見せた。

 

「相棒ッ!!」

「ゴーゴートの雷蹄を受けてなお立つか!! 流石は氷原キングの眷属、不撓不屈の勇士よ!! だが……次はどうかな? ──ゴーゴート、“グラススライダー”である!!」

「バーバリゴーン!!」

 

 “ひんし”寸前の身でなおも立ち上がってみせたイワンコの根性に、惜しみない賞賛を送りながら、ラクサはなおも攻め手を緩めない。

 

 

【ゴーゴートの “グラススライダー”!】 

 

 

 休む暇は与えないとばかりに、イワンコ目がけ再び放たれる滑走(“グラススライダー”)

 直撃すれば“ひんし”は確実。故にイワンコは何をおいても避けざるを得ない。

 しかし同時に、避けようとすれば先の二の舞は免れないのも事実。“でんこうせっか”を使用したが最後、ゴーゴートは先と同様、即座に“エレキチャージ”を叩き込むだろう。

 そして先の攻防でダメージを負ったイワンコでは二度目の“エレキチャージ”を耐えることはできまい。

 

 避けなければ敗北は確実、しかし避けても敗北は必至。

 

(さて、どう出る?)

 

 例え敵手がどちらを選ぼうとも“詰み”となる一手。

 敗北必至の状況を前にどう出るか。カナタとイワンコを見据えながら、ラクサは内心でそう呟いた。

 

「……ッ……相棒、堪えてくれッ……! “でんこうせっか”!」

「く……ぬ……ぐわんっ!!」

 

【イワンコの “でんこうせっか”!】

 

 果たして敵手が選んだのは──回避。

 震える四肢に力を込め、イワンコが地を蹴って跳び上がる。

 “グラススライダー”の軌道から外れ、中空へと躍り上がったイワンコの体。

 先の攻防の焼き直しのような状況を前に、当然ゴーゴートもまた同様の一手を打つ。

 

 

【ゴーゴートの “エレキチャージ”!】

 

 

 電撃を纏う後ろ蹴りがイワンコ目がけ放たれる。

 直撃すれば戦闘不能となることは必至。そして中空へと身を躍らせたイワンコに“エレキチャージ”を避ける術はない。

 

 故に──()()()()()()()()()()()

 

「……ッ、ぬわん!!」

「ムッ!?」

 

 中空にて身を捩り、迫る蹴撃を真正面から捉えたイワンコ。

 そして次の瞬間、“エレキチャージ”が炸裂すると同時にゴーゴートの蹄を蹴り上げ、勢いよく背後へと跳んだ。

 

「ギ、イ……!」

 

 電熱が体毛を焦がし、体から煙が上がる。

 痛みのためかイワンコの口から悲鳴が漏れる。

 

 ──だが、それだけだ。

 

 確かにダメージは与えた。

 先の攻防も相まり、もはやイワンコは“ひんし”寸前。

 

 だが、それでもまだ“ひんし”には至っていない。

 “エレキチャージ”はその性質上電撃にそれほどの威力はなく、ダメージの大半はゴーゴートの後ろ蹴りによるもの。故にゴーゴートの蹴りに合わせて背後に跳ぶことで衝撃を相殺し、受けるダメージを軽減したのだ。

 

 絶体絶命の状況の中、当然のごとく“死中に活”を掴み取る。

 己が武略をも凌駕する類稀な戦の才を目の当たりにして、ラクサは呵々大笑するのだった。

 

「ガーハッハッハァ!! アレをも凌いでみせるか!! 何たる技巧、何たる才覚よ!! まさしく王の嗣子に相応しき(かな)!!」

 

 まさしくキングの眷属に相応しき、綺羅星の如き才覚。氷原キングが自らの後継と目すのも頷けると言うもの。

 同時に、彼のイワンコがトレーナーにこの上無き信頼を寄せていることもまた垣間見えた。

 言葉はなくとも“わざ”を交わせば自ずと分かる。自らの相棒(カナタ)が必ずや勝利すると、イワンコは心の底から信じているのだ。

 

(しかし、よく堪えるものよ。あれ程の戦の才、トレーナーが役に立たぬと見れば自らの判断で戦闘を行ってもおかしくないというのに。よほどに深い信頼関係を結んでいるのか……あるいはカナタ青年がかの嗣子に“従うに値する”と思わせるだけの策を持っているのか)

 

 相対する敵手の強者ぶり。己の血が滾るのを感じながら、“ならば”とラクサは口角を吊り上げ、叫んだ。

 

「──その策ごと真っ向から粉砕してくれよう!! ──進撃せよ!! ゴーゴート!!」

「バーバリリィ!!」

 

 その言葉が轟いた瞬間、ゴーゴートが疾駆を開始する。

 

 緒戦にて展開された“グラスフィールド”は先の攻防を最後にすでに消滅している。“グラススライダー”の先制効果はもう使えない。

 故にゴーゴートのそれは単なる疾走。“わざ”の効果を伴わない、純粋な身体能力によるもの。

 

「──!?」

「んなっ、速っ……!?」

 

 ……にもかかわらず、その加速は異様の一言であった。

 ゴーゴートは何も“わざ”を使用していない。だというのに、駆ける速さは素早さ自慢のイワンコのそれに匹敵……否、凌駕している。

 流石に“グラススライダー”よりは遅いものの、それでも驚くべき速度で進撃するゴーゴートにカナタとイワンコ思わずとして面食らう。

 

 ──無論ゴーゴートの加速には種がある。

 その種とは、戦闘中ゴーゴートが多用した“わざ“──“エレキチャージ”。ユールゴーゴートの専用技たるこの“わざ”には類縁たる“ニトロチャージ”と同様、使用後に“すばやさ”を一段階アップさせる追加効果がある。

 そしてゴーゴートはイワンコとの攻防にて幾度もこの“わざ”を使用し、その度に“すばやさ”を上昇させており──今、そのステータスはイワンコのそれを優に上回るものとなっていた。

 

 元々“すばやさ”に優れぬゴーゴートに先制技を多用させ、相手に鈍足を印象付けたところを、上昇した“すばやさ”で以て奇襲する。

 幾度の戦闘を経験し、自らの持ちうる力を知悉するが故の武略。かくてカナタとイワンコは百戦錬磨のそれに見事に引っかけられたのである。

 

「ッ……マズい!! 相棒、“でんこうせっか”で避けろ!!」

「ぬっ……ぬわわ!!」

 

 緒戦との速度差が生んだギャップ。その衝撃で判断するのが一瞬遅れる。

 失ったのはほんの刹那の間、しかし戦場においてはその刹那が致命的となる。

 

 気が付けば目と鼻の先にまで迫ったゴーゴートの姿に、慌てて相棒に回避を命ずるカナタ。

 いかに素早いとはいえ、先制の力を持たぬ単なる突進。電光石火ならば避けられる。

 果たしてカナタの指示に応え、イワンコが地を蹴り跳び上がろうとした──その時である。

 

「……がうっ!?」

 

 ()()()()()()()

 地面を蹴り上げたその瞬間、まるで蹴躓いたかのようにイワンコの体がつんのめる。

 咄嗟に足元を見ればそこには地面より絡みつき、両足を縛り上げる草の結び目があった。

 

【ゴーゴートの “くさむすび”!】

 

 “くさむすび”。地面から伸ばした草をからませ、相手を転ばせる“わざ”である。

 相手の体重が重いほど威力が高まる性質上、本来であれば重量級のポケモンに対し使用する“わざ”。しかしゴーゴートはその“わざ”をイワンコを拘束する(トラップ)として使ったのだ。

 トラップとなった草は所詮、その辺りの雑草を伸ばしたもの。故に力を込めれば容易に引きちぎられるだろう。

 

 だが、引きちぎろうとすれば一瞬であれど時間が取られる。

 そして、ゴーゴートはその一瞬が稼げれば十分であった。

 

「バルバリィ!!」

 

 ゴーゴートの双角が紫電を帯び、強い輝きが戦場を満たす。

 

 その様はまさしく天に閃く雷光が如く。

 

「打ち砕け!! “サンダーハンマー”!!」

「ゴーゴオオオオン!!」

 

 

 

【ゴーゴートの “サンダーハンマー”!】

 

 

 

 刹那、轟音とともに雷鳴の大槌(“サンダーハンマー”)が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

(捉えた──!)

 

 渾身の“サンダーハンマー”が振り下ろされる様を見ながら、ラクサは内心で呟く。

 あの一撃は避けられない。間違いなく直撃するだろう。

 そしてイワンコがこの一撃を耐えることは叶わない。

 

 ──“エレキチャージ”は“すばやさ”を一段階上昇させる他に、もう一つの効果の有している。

 その効果とは使用後のポケモンを“じゅうでん状態”にすること。即ち、今の“サンダーハンマー”の威力は通常の倍。先の攻防にて体力を消耗したイワンコが耐えられる筈もない。

 

 このままいけばカナタたちの敗北は確実。

 だからこそ、ラクサは確信していた。

 カナタたちが切り札を切るならば、まさしく今であると。

 

(さあ、どうするカナタ青年!? ここを凌がねば敗北は必至であるぞ!!)

 

 対戦相手に回避不能の「必殺」を叩き込みながらも、しかし隠し切れぬ期待を込めて相対するカナタを見るラクサ。

 果たしてその目に映ったカナタの顔に、焦燥はあれども諦念はなく。

 

 刹那、彼は己が掌を腕へと翳し──。

 

「──相棒!!」

「ガルルルルルウオオオオオオオオオオンン!!」

 

 ──極光が溢れ出る。

 

 猛る紫電の閃きが、それをも上回る極光の輝きによって掻き消える。

 迸る膨大なオルタナエナジーが、振り下ろされる“サンダーハンマー”の勢いを殺し……押し返した。

 

「バルッ……ゴウゥ!?」

 

 大技を弾かれた衝撃によろめき、思わずして数歩ほど後退してしまうゴーゴート。

 

「グルルオオオ!!」

 

 次の瞬間、溢れ出る極光を突き破り、身に同色の輝き(オルタナオーラ)を纏ったイワンコがその姿を現した。

 

 

【イワンコの オルタナバースト!】

【イワンコはオーラをまとい 全ての能力が上がった!】

 

 

(──無拍子の“オルタナバースト”!! なるほど、これがカナタ青年の奥の手かッ!!)

 

 戦場を満たす眩い輝きに目を細めながら、ラクサは頬を吊り上げる。

 “オルタナバースト”、ユールにおいてはキャプテンのみが扱うことを許された切り札(ジョーカー)。“極光の加護(オルタナオーラ)”を身に纏わせ、相棒を“ぬし”に伍する存在へと押し上げる……正しくキャプテンを人界の藩塀たらしめる力であった。

 

 カナタとイワンコは未だ修行中の身。故に“オルタナバースト”の発動にはタメがいる。

 先の全島集会(アルシング)にてルピナスから聞き及んでいた修行の経過から、自らの経験を踏まえそう判断していたラクサ。

 故にそう簡単に発動はさせんと、一気呵成に攻め立てていたのだが……どうやら彼の実力の伸びは予想以上だったようだ。

 

「オルタナバーストの余波で以て技を掻き消したかッ!! キングの(わざ)を真似するとは中々やるであるなカナタ青年!!」

 

 絶体絶命の状況を見事に凌いで見せたカナタとイワンコに惜しみない賞賛を送るラクサ。

 その上で彼は言う、“それだけではまだ自分たちには届かない”、と。

 

「しかし、凌いだだけでは吾輩らには勝て──「んなこたあこっちだって分かってんスよ!! 行け、相棒!!」──むう!?」

 

 しかしカナタはそんなラクサの言葉を途中で遮るや、相棒(イワンコ)へとある“わざ”を命じた。

 

「“がむしゃら”だあ!!」

「何っ!!」

 

 その“わざ”の名を耳にして、ラクサの顔に初めて驚愕が浮かぶ。

 無理もない。何せカナタの命じた“がむしゃら”、その効果は──。

 

「──相手の体力(HP)を自分と同じになるまで減らす! 散々ボコボコにしてくれたお返しだ、やっちまえ相棒!!」

「ガルル!!」

「いかん! ゴーゴート、避けよ!」

「バルッ……!」

 

 先の攻防により、イワンコの体力(HP)は既に“ひんし”寸前。“がむしゃら”の効果は最大限にまで高まっている。

 命中すれば最後、ゴーゴートの体力(HP)はイワンコと同等にまで引きずり落される。

 そしてゴーゴートがもう先制技(グラススライダー)が使えない以上、形勢は先制技(でんこうせっか)を持つイワンコへと一挙に傾くだろう。

 

 何としてもこの“わざ”を受ける訳にいかないと、慌ててゴーゴートに回避を命ずるラクサ。

 しかし“オルタナバースト”によって超強化を果たしたイワンコの速度に、ゴーゴートは反応できず。

 

 

【イワンコの “がむしゃら”!】

 

 

「ウルルオオ!!」

「バリ、ガアッ……!?」

 

 瞬間、狼狽えるゴーゴートの胴体にイワンコの渾身の突進が突き刺さった。

 

「ゴフッ……!」

 

 身を襲う激烈な衝撃に、ゴーゴートの体が後退する。

 同時に“がむしゃら”の効果によって体力(HP)がゴッソリと削られ、思わずして膝をついてしまう。

 

 これで双方、体力(HP)は五分と五分。

 そしてどちらも“ひんし寸前”であるならば──勝負はどちらが先に攻撃を当てるかで決まる。 

 

「これでトドメだ! 相棒、“でんこうせっか”!」

「ぐるわんぬ!!」

 

 間髪を入れずイワンコへ先制技(“でんこうせっか”)を命ずるカナタ。

 力強く大地を蹴り、イワンコは寸分違わぬ狙いでゴーゴートへと吶喊する。

 

 既に相手の体力は“ひんし”寸前。威力に劣る“でんこうせっか”であろうと、トドメを刺すには十分だ。

 そして相手(ゴーゴート)には、これに抗する術(先制技)はない。

 

 かくて第一の試練は見事、カナタとイワンコの勝利に終わる──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──震威を纏え」

「バーバリゴート」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──否。まだだ。

 勝負はまだ終わってなどいない。

 

 

「──ウルォッ!?」

「──んな!?」

 

 イワンコの突撃(“でんこうせっか”)がゴーゴートに突き刺さらんとしたその刹那、突如としてゴーゴートの体が()()()()()()()()()()()()

 

 総身に輝く極光の加護(オルタナオーラ)が帯びる。

 その身から迸るオルタナエナジーが、物理的な圧を伴いイワンコの突進を押し返した。

 

「わうっ!?」

「相棒!? クソッ……土壇場でソレが出来んのかよ……!」

 

 眼前に発生したどこか見覚えのある事象にカナタは驚愕すると同時に──歯噛みする。

 当然だ。何せ、それは正しく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

【ゴーゴートの オルタナバースト!】

【ゴーゴートはオーラをまとい 全ての能力が上がった!】

 

 

 即ち、“オルタナバースト”の余波を用いた“わざ”の打ち消し。

 先の攻防で披露したカナタの奥の手。散々練習しようやっとモノにしたそれを、そっくりそのままの形で返されたのである。

 

「──“オルタナバースト”の使用はキャプテンの()()。ならば其方と同じキャプテンたる吾輩に出来ぬ道理がなかろう」

 

 思わず、といった形で漏れ出たカナタの言葉に、淡々とした声でラクサは答える。

 その顔には先ほどまで溢れていた喜色も、興奮もなく。ただただ凪のように平静な表情が浮かぶのみ。

 だがしかし、その瞳に宿る光は先ほどと比べ物にならないほど強いものであった。

 

 直感的にカナタは理解する。

 ラクサが“本気”を出したのだと。

 

「……アレで決着つけられたと思ったんスけどねえ……!」

「笑止。あの程度で沈んではユールの脅威より人界を護ることなど出来ぬ」

 

 額に冷や汗を滲ませながらそう発したカナタに、ラクサは“笑止”と返す。

 ユール開闢の刻より、押し寄せる自然の猛威から人界を護り続けてきた守護の盾。その地位を受け継ぐものとして、この程度の技で沈むことなどありはしない──と。

 

 が、そこで“──だが、”と前置きし、ラクサは続けた。

 

「吾輩らに“オルタナバースト(切り札)”を切らせたのは見事であった。認めよう、()()()()()・カナタ。其方らはまさしく人界の盾、吾輩らの背を預けるに相応しき力の持ち主であると」

 

 未だ未熟の身の上ながら格上のゴーゴートと渡り合い、“ひんし”寸前にまで追い込んだ挙句とうとう“オルタナバースト”を切らせてみせた。

 最早、カナタとイワンコの実力に疑うべき点はない。同じキャプテンと認めることに否はなかった。

 

 ──故に。

 

「──その実力、その奮戦に敬意を表し……我が全霊の一撃を以てこの戦を終わらせよう」

 

「──秘伝王技(ヒデンオウギ)

 

 ラクサがそう呟いた、刹那。

 

「バーリ」

「ぬわんっ!?」

「んな、相棒!?」

 

 ゴーゴートの首筋より蔓が伸び、イワンコの体をぐるりと拘束する。

 意識の間隙を突いたまさしく一瞬の事にイワンコは反応できず、成す術なく囚われてしまう。

 危険を悟ったイワンコが拘束から逃れようと必死に藻掻くも、強靭な“つるのムチ”を解くことは叶わない。

 

 

「──この一撃を手向けとする」

 

 

 戦場に、ラクサの朗々たる声が響く。

 

 

「天よ、裂けよ。地よ、震えよ」

 

 

 仁王だつゴーゴートの眼に、紫電の閃きが宿る。

 

 

「万象ただ一切よ。この一撃にて砕け散れ」

 

 

 総身に纏いし極光の輝き(オルタナオーラ)が両前足へと収束し、ゴーゴートの蹄に眩い七色の稲妻が帯びる。

 

 

「霊峰統べし雷王の、(おお)いなる怒りを見るがいい」

 

 

 次の瞬間、双脚が高々と(もた)げられ──。

 

 

「雷王秘伝──“ガラガラ・ドーンストンプ”!!

 

 

 ──天声と共に打ち下された。

 

 

 

【ゴーゴートの バーストわざ!】

 

 

【“ガラガラ・ドーンストンプ”!】

 

 

 

 

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