一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
初めに言っておきます。続くかどうかは気力次第です。
エタったらごめんなさい。最初に謝っておきます。
戦闘シーンではエタりません。日常シーンが挟まるとやばいです。
それでは、素人仕事ですが、どうぞお楽しみください。
1/4
〈彼〉、もしくは---
「ーーーねぇ、なにやってるの?」
「うんとねぇ……じゃーん!どろだんご!」
「わぁ、きれい!あ、でもどろだんごできたから、つぎはわたしとあそぼ!おにごっこ!」
「んーん!つぎはーーーくんとくるーずふぁいぶごっこするの!」
「えー!じゃあつぎのつぎはぜったいわたしとあそんでね!」
「だめー!つぎのつぎはーーーちゃんとなわとびするの!」
「じゃあつぎのつぎのつぎ!」
「だめ!ーーーせんせぇとあっちむいてほいするの!」
「つぎのつぎのつぎのつぎ!」
「だめー!」
「つぎのつぎのつぎのつぎのつぎのつぎ!」
………………
…………
……
「ーーー、今日はどこ行くのー?」
「今日はーーー君と野球して、終わったらプールで泳いで、5時までーーー君達とゲームしてくるー! 」
「今日は少ないね、どうしたの?」
「ーーー君とやってるゲームがもう少しでクリアできそうだからねー」
「あぁ、そういうこと。じゃあ、気をつけて行ってくるんだよ?最近、自動操縦システムが故障して同い年の子が轢かれかけてるんだからね」
「分かってる分かってる、じゃあいってきまーす!」
「はい行ってらっしゃい、頑張ってねー」
「はーい!」
………………
…………
……
「よう!」
「あ、おはよう」
「おはようーーー、早速だが明日こそは釣りに行くぞ!俺独自の情報によればお前は明日、何も予定が入ってないだろ!」
「あ、うん、そうなんだけどね……」
「なんだよ、前々から約束してただろ」
「いやぁ、実は……新しいゲームが発売されまして……」
「……いつだ?」
「……昨日……」
「……んだよぉ……こうなったらお前、梃子でも動かないだろ……」
「あはは……いやごめん、ごめんって……夏休みになったら行こう」
「よし約束だぞ!絶対だかんな!」
………………
…………
……
「入るよー?」
「……あ、うん、いいよー」
「ごめんタオル頂戴……鏡なんか見てどうしたの?なんかあった?」
「あ、いや……隈がひどいなって……」
「そりゃそうでしょうが、あんた昨日から寝ないでゲームしてたんだから」
「うん……そうだよね……」
「ゲームが楽しいのはわかるんだけど、体壊すから少しは寝なさい」
「はい……寝ます……」
「じゃあ母は買い物行ってくるから、いい加減寝てなよ?」
「寝る、寝るからそんな怖い顔しないで……」
「分かったんならよろしい、じゃあ行ってくるからね」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「はいはい」
「…………言えない……よな……」
「そうだ……言える……訳が無い……」
「こんな……こんな特殊な……」
■
「……だー!もう!時間が!時間が!足りない!圧倒的に足りない!なんで一日は24時間しかないんだよ!?ぜんっぜん足りないんだが?!やりたいこと多すぎるのが問題だァ?!んなの分かってっから嘆いてんだよちくしょうめ!そもそもなぁ、1時間なんて釣りしてたら一瞬で、ゲームしてたら秒殺で、本読んでたら瞬殺で消えてくんだぞ?!それがたったの24回しか来ないっておかしいとは思わないか?!せめて倍……48時間ぐらい欲しいよなァ?!そうだ、一日48時間だ!それくらい欲しいよなァ!?でないとなんも楽しいことできずに終わるよなァ!?座右の銘は一日48時間だ、はい決定!となれば寝ねぇのは仕方ねぇだろ!48時間起きたら10時間くらい寝ればそれでいいんだからよォ!てゆうか48時間あっても結局ひとつしかできないんだから意味ないじゃん!?目、ていうか体、ていうか自分が足りない!そうだよ、時間があってもひとつしか出来ないんじゃ意味ねェじゃん!自分が欲しい!ほんっとにもぉ!なんでどっちも足りねぇんだよ!増えろよ!頭つながったまま増えろよクソ現実がぁぁぁあ!」
自分の部屋でベッドに横たわり、枕に顔を埋めながら
吐き出す……けど、こんな短い言葉に圧縮できただけでも体力を無駄に使わない分まだマシだ。惜しむらくは語彙力のない自分だろう。
「あー!もう!あーもう!」
意味の無い言葉だとはわかっているけど、それでも日々の苛立ちを言葉にして枕をポコスカ殴ることで少しづつ発散する。
それにしても1日は短いし、体ひとつで体験できることが限られすぎている。
どれだけなのかと言うと……………………だから………………そして……なので……………………というふうに短い。
「あーーーー!もーーーー!もっと楽みたいのにぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「うっせぇクソ兄貴!」
言葉と共に、部屋の壁がぶっ叩かれて思わず跳ね上がって正座してしまう。
くそぅ……長年の醜態で兄としての威厳が……!
「いやですね妹様、これは日々の嘆きと苛立ちと世界の不条理を発散させるためのですね」
「見苦しいから言い訳してんじゃねぇよ」
またもぶっ叩かれた壁に身が竦む。
「あの、言葉遣いが汚いと思いま」
「あ?!」
「すいません!」
土下座。自分で言うのもなんだけど、かなりふつくしい土下座だろう。
長年の研鑽の賜物だ。
しかし……信じられるか?この妹様、こんな言葉遣いで、こんな凶暴なのに、就職希望は国家公務員なんだぜ?
「うるせぇ余計なお世話だっつってっだろっが!」
「今度はなんも話してないですからね?!」
「うるせぇ!」
「理不尽!」
しかし、将来のために受験勉強中だった妹の「あ”?」……妹様の妨害をしてしまったのは確かだ。
ここは静かに過ごせるネットサーフィン……いやいや読書……いやいやいやイヤフォンすればゲームも……いやいやいやいや外出して商店街巡りでも……
「あー!もう、ほんとにどうしよーーー」
「クソ兄貴殿、
「すいませんでしたァ!」
……ネットサーフィンしてから読書でもしよ……
「へぇ〜、あの教授、ノーベル物理学賞取ってたんだ、知らなかった」
自分の行っている大学で教授をしてる人が、実はそんなすごい人だなんて知らんかった。
だってあの人、お茶目すぎるんだもん、しかも宝くじが当たったからもう永久に働かなくていいんだよなって、じゃあなんでこの仕事してんだよ……あいや、当てたのは助手だったか……
……あの教授、助手の脛齧るつもりなのか……
「……ん?あ、このゲーム面白そう」
ニュースを適当にスクロールして適当なところで止めて、少し読んでつまらなかったら戻る、を繰り返してたら、なんか面白そうなものを見つけた。
ゲームの名前は〈Infinite Dendrogram〉。キャッチコピーは新世界とあなただけの
なんだか面白そうだし、新興ゲーム会社だし、オリジナル要素の面で期待が持てる。
ただ……
「フルダイブなぁ……」
1回はやってみたくはあるけど、過去の事件が大きすぎて気軽にやるには勇気がいる分野だ。
だからこそ、今までやってなかったからこそ、やりたいって気持ちはある。
でもなぁ……
「価格も1万……安すぎるからなぁ……でも楽しそうなんだよなぁ……」
安すぎると逆に商品に信用が発生しない。
商業の基本……ていうか、人間の心理としては至極真っ当なもの。
「買うぅ?いやでもなぁ……楽しそうなんだよねぇ……でも値段がなぁ……安すぎるもんねぇ……そうなんだよなぁ……でも新規開拓って感じで……あー、そうしよっかなぁ……久々にやる?……やるかぁ……!」
ブツブツ呟いて、自分を自分で納得させる。
いや、買うって判断は見た瞬間から着いていたんだが、なにぶん優柔不断だから、納得しないと動かないんだよ。
「発売は……もうすぐ、ていうか明日か。1万円札あったっけかなぁ……?」
そこで、サイトを閉じて、財布の中を確認する。
奇跡的なことに、1万円は入っていたので、とりあえず今日は寝て、明日に備えることにした。
■
「……買ってしまった」
自分の手の中にあるのはひとつの箱。
中を開けてみればバイクのヘルメットによく似た機器が入っていた。
「説明書読んでーっと……あん?……え」
言葉を失った。
たっぷり10秒くらいだろうか、2度、3度と説明書のその部分を読み返し、嘘じゃないだろうなと何度も頭によぎる。
「3倍速……3倍速……一日……72時間……?」
そして、気づいたら箱を放り捨てて、急いで電源プラグに接続。
スポット頭に被りながらベッドに寝転んで、〈Infinite Dendrogram〉を起動させた。