一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

12 / 34
なかなか文が思い浮かばないねぇ……


イット・イット・イット

■8時間前

大鎌士(サイズマン)】イット・イット・イット

 

「はー!なんも無いんですけどー?!」

 

「……」

 

森の中を進むイットとその仲間たちは苛立ちを顕にしていた。

とある縁で知り合ったエルフから受け取った、強力なモンスター討伐クエスト。

 

事前の説明によれば、討伐対象は〈UBM〉と呼ばれるモノで、同一個体が存在しない超が幾つも付くレアモンスター。

1人のゲーマーとして、オンラインゲームでの自慢として、何より主人公たる自分──と思っている──の英雄譚、その1ページ目に相応しい相手。

それに、倒せば強力な武具が入手できることと合わせれば、是が非でも討伐に赴きたいモンスターだ。

 

「1時間も探して何もいないって、俺っちのことバカにしてんすかぁ?!」

 

「……」

 

探せど探せど、【サーラエレギー】が居た(・・)痕跡はあれど、肝心の本体が見つからない。

元々短気なタチではあるので、彼の仲間は何も言わない。

 

彼女ら(・・・)が加入した時から、イットがこのような人物なのは分かりきっていた。

だから、何も言わない。

 

仮に言葉を、忠告を口に出すことが出来たなら出来たで、彼の〈エンブリオ〉のスキルによって禁止(・・)されただろうが。

 

イットの〈エンブリオ〉【霊魂狩刈 エンマ】。

先程の会議場で明かしたスキル《全霊特攻》は、『霊』(もしくはスピリットなど)と付く種族のモンスターに対するダメージ倍率上昇スキル。

第3形態の今ならば、無条件でダメージが8倍になり、受けるダメージを8分の1にする。

 

縁があるエルフは、イットが自慢げに語ったその性能をしっかりと把握していたし、彼自身の性質もほぼ把握していた。

 

ここレジェンダリアは自然魔力の多さからエレメンタルが多い。

さらに、頭を痛める種である邪妖精にも将来的に抑止力になりそうなイットを将来の戦術に組み込んだ。

報酬さえ用意し、適当に褒めれば動くイットは、実に都合のいい駒だった。

マスターである為死なず、自分を特別と思っている故に扱いやすく、〈エンブリオ〉のお陰で適度に実力のある駒。

それがイットに対するエルフの評価である。

 

 

懸念材料は彼を竦める可能性のある仲間の彼女たちだが、イットの言動を一切無視している様子を見て一先ず大丈夫だと思うことにした。

 

エルフの側に誤算があるとすれば、マスターに対する認識の齟齬。

《全霊特攻》という、これまでこの世界に存在しなかった強力なスキル。

強力過ぎる(・・・)からこそ……見誤った。

 

彼の〈エンブリオ〉、【霊魂狩刈 エンマ】の全性能を、《全霊特攻》のみ(・・)だと、見誤った。

 

【霊魂狩刈 エンマ】

type:ガードナー(・・・・・)・アームズ。

 

《全霊特攻》が載るモンスターを、アームズ形態の大鎌で殺した際、そのモンスターをガードナーとして使役する〈エンブリオ〉。

 

そう、最初から、エルフの懸念など存在しなかったのだ。

 

何故なら、彼女らはモンスター(・・・・・)

つい最近まで(・・・・・・)、言葉など鳴き声くらいしか出したことがなかったモノ。

 

《魂縛支配》という、【エンマ】の有するもう一つのスキルによって、全ての行動を支配された存在だ。

 

「てかさぁ、探してる〈UBM〉って明らかに霊体じゃん!倒せば俺っちのスキルで好き勝手できるってことっしょ!?っはぁー!テンションアゲアゲェ!」

 

従属キャパシティの関係からパーティーに入れざるを得なかった彼女たちだが、何も彼女たちがイットの手持ちの全てでは無い。

容姿の設定(・・・・・)が上手くいった5体を、出しているだけだ。

 

「はぁ〜、今度はどんな事しよっかなぁー!強いモンスターなら、強気な女騎士っぽく設定しよっかなー!屈服させるのも面白いっすからねぇ!」

 

現実では既に成人を迎え、資産家の親の脛を齧り、悠々自適に爛れた日々を送るイット。

最近はマンネリ化してきた状況を打破するため、それだけの為に〈Infinite Dendrogram〉を初め、すっかりハマってしまった1人だ。

 

「いや、ここはツンデレっぽくして……」

 

「……!」

 

取らぬ狸の皮算用をしているイットとは違い、彼女たちは警戒を続けていた。

だから気づけた。

 

いつの間にかイットが、砂漠地帯に足を踏み入れる寸前であることに。

 

「……!」

 

「お、なんだ積極てき……?」

 

咄嗟に一人……一体の元エレメンタルがイットを弾き飛ばし、その代償に自身を光の粒に変じさせた。

 

「は、え?」

 

唐突に死んだ女を見て、思考が空白になる。

 

「え、え、え……ここ、森……え、砂……え……え?」

 

心ここに在らずであっても、周りを見るくらいの警戒は続けていた。

なのに、気づけなかった。

 

「……!」

 

「っお!」

 

また、突き飛ばされ、一体分の光の粒が増える。

砂漠の範囲は広がっていないのに、死んだ。

 

事前情報にあった、狙い撃ちからの死亡。

所詮は雑魚(脇役)の情報だからと参考程度にしか捉えていなかった。

 

「ど……どうして……」

 

なぜ自分が。

なんで。

どうして。

主人公なのに。

どうして。

 

そんなことしか考えられない頭を必死に回そうとして……気づいた。

砂漠化した範囲が、自身の足元10センチ程度の幅しかない円形だということに。

 

「もし……かして……」

 

恐る恐る、上を見上げれば、居た。

 

頭上に銘を冠するモンスター、|古代伝説級〈UBM〉【魔枯蓄精 サーラエレギー】と呼ばれるモノが。

 

「あ……あぁ……」

 

その、現実には存在しない異様。

無形なれど、伝わるプレッシャーは強大。

 

『……』

 

単なる光の玉だと言うのに……腰が抜けて動けない。

結局、舐めていたのだ。

せっかくのゲームを、リアル視点で楽しむなどありえないと考えたからCG描写にした。

戦うモンスターも、侍らせた元モンスターたちも、現実的では無い。

だから、舐めていた。

 

まさかここまで、死の恐怖を感じることになるとは、と。

 

「あ」

 

気づけば、侍らせた元モンスターは全滅していた。

【エンマ】の中にはまだストックがあるとはいえ、そこまで多くは無い。

何より、彼はもう折れていた。

 

ぬくぬくと温室育ちで、ろくに怪我などしたことがなかったイットが戦えていたのは、只管にゲームだったから。

だから、もうダメだ。

イットはもう、この世界がゲームだとは到底思えなくなってしまった。

 

HPが0じゃない(・・・・・・・・)のに上がり続けるMPをただ呆然と見つめ、荒く息を吐き出す。

 

その時目に映るのは、光の粒。

彼の〈エンブリオ〉によって彼に侍り、数日間一緒に行動を続けてきたモンスター、その残骸。

 

「……!《サークル・ス──」

 

その時、イットの心によぎった感情は一体なんだったかを、彼は一生理解できない。

ただ、確かだったのは、今なお上がり続けるMPを利用して【大鎌士】の攻撃スキルを放とうとして。

 

 

『……』

 

 

大爆発という結果を迎えた。

これがその、結末だ。

 

 

 

 

獣戦士(ジャガーマン)】ペル・ナルシー

 

「……ははっ……弱体化してるじゃないか……」

 

MPを直接操作して、《魔力自壊》を発動できた高揚が引いた直後。

 

自分の〈エンブリオ〉が、進化した。

 

……いや、これは進化というか……退化?劣化?

 

いや、進化……でいいか……スキルの性能が上がって、新しい効果も出てるし……。

 

 

 

【並列分体 カゲノワズライ】

 

 TYPE:ボディ

 

 到達形態:Ⅲ

 

 

 

ステータス補正

 

 HP補正:-G

 

 MP補正:G

 

 SP補正:-G

 

 STR補正:-G

 

 END補正:-G

 

 DEX補正:-G

 

 AGI補正:-G

 

 LUC補正:-F

 

《生命増躰》Lv.3

自身のアバターを増やす。

増加したアバターはマスター自身であり、元からあるアバターもまたマスター自身である。

そのため、全てのアバターが破壊されない限りにおいてマスターは死亡判定を受けない。

全ての体がマスターであるため、このアバターはそれぞれがジョブ適性を有し、制限はあるがそれぞれ別のジョブに着くことが可能。

全てのアバターは人間範疇生物であるが、種族は「ドッペルゲンガー」に変化し、従属キャパシティ「1」のモンスターとして扱う。

*全てのアバターはマスターのマニュアル操作である。

*破壊されたアバターは〈Infinite Dendrogram〉内時間3日で復活する。

*1つ共有のジョブを所有しなければならず、最初に取得したアバター以外そのジョブでステータスが成長しない。(スキルは共有する)

 

思考速度のみにAGI20,000の補正

 

《性別転換》Lv.3

性別を変更する。

変更先は「男性」「女性」「両性」「無性」の4つであり、変更するとステータス補正の傾向が変化する。

変化傾向はそれぞれ

「男性」STRがワンランクアップ、MPがワンランクダウン

「女性」MPがワンランクアップ、STRがワンランクダウン

「両性」HPがワンランクアップ、DEXがワンランクダウン

「無性」AGIがワンランクアップ、ENDがワンランクダウン

常時、魅了完全耐性

 

……補正値、MP以外マイナス、そのMPにしたってワンランクダウンだ。

《性別転換》でワンランクアップして、そこだけ漸くティアンと同じ能力値になる。

……同時にダウンする分もあるから、総合的にはすごいマイナスだよね、これ。

 

そして2つのスキルに現れた新しい効果。これ()凄い。

元々AGIが高くなっていくにつれ、ちょっとずつ周りが遅くなっていく感じはあった。

おっさんによれば、AGIは体を加速させるだけじゃなくて、思考も加速させることができるらしい。

今の自分の低ステータスの低AGIだと、あまり実感がわかなかったけど。

 

《生命増躰》の補正で実感した。これ、スゴすぎる。

確かAGI1万になると音速域に突入して、それ以降は1万毎に音速の何倍、っていう感じになるらしい。

で、AGI換算で20,000の補正。

音速の2倍の思考速度。これがやばい。

意識をポチッと切り替えると、周りがすごく遅くなる。

遅くなった世界で、自分だけが普通の速度で考えられる。

動きもよく見えるし、すごい万能感がある。

ただ、体の動きはノロッノロなので、そこだけは注意しないと……。

 

それに合わせて、《性別転換》の追加効果もすごい。

おっさん曰く、対策しようと思っても難しい状態異常として、【魅了】が上がった。

それに対して完全耐性、しかも常時だ。

 

これがあれば【魅了】耐性の装備は必要ないだろうし、何よりアクセサリーの装備枠ひとつ空くのが大きい。

 

……やっぱりステータス総合値が減少してるの……この後(・・・)のこと考えると、不味いかも……

 

「……いやいや、大丈夫、多分」

 

仕込み(・・・)はきっちりと行った。

勝算も……不安だけど、ある。

 

街の中の騒然とした雰囲気で、何となく想像は着いていた。

彼……イットは失敗したんだろう。

 

あのエルフのお兄さんが信用してた人でもダメだった。

そうなると今度は、ティアンの中での実力者。

エルフのお兄さんとか、おっさんとか、噂だけで聞いた【妖精女王(ティターニア)】が出張る事態になりそうだ。

 

そうなる前に……自分も、1度リベンジしたい。

 

「ま、復讐ってね」

 

もしダメならダメで、それまで。

どうせ、準備した戦術だと、勝負は一瞬(・・)で付く。

 

もし自分もダメだったら……潔く諦める。

《生命増躰》はレベルアップで残機が回復する仕様じゃなかったから、ここで死ねばこの世界で初めてのデスペナルティ。

 

……嫌だなぁ、この世界から3日も排除されるの……。

 

「まあ……いいか」

 

ここでグチグチ悩んでてもしょうがない。

さっさと闘技場のおっさんに一声かけて、挑んでこよう。

 

 

 

 




ステータスが乗るのでかなりすぐに書き終わりました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。