一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
たった一話で勝負つけちまった……プロットの通りの戦術だけど。
あと、2話後はIF(もしも)編です。
闘技場に向かってったら、ちょうどよく大通りにおっさんがいた。
「というわけでおっさん、ちょっと
「ちょっと待て、何言ってやがんだてめぇ」
何って、決まってる。
「【サーラエレギー】に挑戦してみる感じだけど?」
「おま……馬鹿野郎!下手に刺激するような事すんじゃねえ!」
名前を出した瞬間から雲行きが怪しそうな顔をしてたけど、やっぱりか……?
今、爆発音、しなかった?
「……今更じゃない?」
「……誰だよ勝手に突入しやがっ……」
おい、なぜ自分を見る?
「……そういえばいたな、どこの指揮系統にも属してねぇ考え無しの特記戦力共が」
「おい、自分はちゃんと勝算ありで行くって言ってるんだからな?」
「っは!一番最初に爆死しやがったのは何処のどいつの〈エンブリオ〉だったか?」
それ言われると、弱い手……が。
「アレは不意打ちだから」
「……」
いや、分かってる。このまま言い争っても糠に釘、暖簾に腕押しだって。
だからそんな呆れた目で見るなよ……!
「とにかく!……自分はなんと言われようが、もう一度アイツと戦う」
例え、ここでおっさんに殺されても。
そのための
「……」
「……」
「……」
「……はぁ……」
「……」
「……行け」
「は……?」
突然の態度の変わりように、さすがに戸惑う。
さっきまでおっさん、骨を砕いてでも、脚をもいででも止める、みたいな感じだったのに……。
「目を見りゃわかる……俺はあの
おっさん……
「何時もそうなら……もっと威厳あるのに……」
「あ?なんか言ったか?」
滅相もございません。
「ッチ……行け」
「……ありがとう」
そのまま、おっさんの脇を通り抜けて森へと走る。
……あぁ、にしても、
ステータスのマイナス補正……改めて考えても、まずいな、これ。
普通に過ごしている分には感じなかったし、今よりももっとステータスのある状態を知っているからこそ、その差異が足を引っ張る。
……大丈夫、今はステータスが高くて低くても、なんなら、レベル1の状態でも勝ち目がある……。僅かな可能性だけど、それに賭けるしかない。
□
「死ねぇ!」
「《ファイアボール》!」
「喰らえ!《クリムゾン・スフィア》の【ジェム】だ!」
【魔枯蓄精 サーラエレギー】と世界から名付けられたモノは、自我が薄い。いやもうほぼ無い、と言っても過言では無い。
何百年も前、逸話級〈UBM〉として認定された時から、僅かな食欲で繋いで来た自我。
無味乾燥、退屈で、脅威もなく、死すら訪れない。
【覇王】すら、当時は弱く、同盟国の秘境に居た【サーラエレギー】を見過ごした。
今も昔も、レジェンダリアの秘境の奥、自然魔力が特に
そんな【サーラエレギー】がこんな浅い所まで来たのは、なんのことは無い。
自然魔力の
それを吸いながら移動してきた……それだけの理由。
だからこそ、【サーラエレギー】にとって、近付いてくるものは、酷く不快だった。
秘境で閉じこもり、生物と言える生物も根絶やしにして久しく、自然魔力と自身の魔力以外を感じることが無い環境だったが故に。
何百年か振りの生物は、酷く、雑音だった。
だから殺す。
静かな、安寧とした日々を再び取り戻す為に。
嘗て見た同族、その威容に近づく為だけに。
事ここに至り、【サーラエレギー】は久しく忘れていた……否。
それは、苛立ち。
木っ端なMPしか持たないにも関わらず自身を傷つけようと集る羽虫共が五月蝿い。
そんな理由で、【サーラエレギー】は殺し尽くす。
当初は態々HPも吸収してMPに変換していた。
が、それで入手出来るMPなど雀の涙以下。
加えて、最初の2体でHPを吸収しても死なない存在も確認できた。
ならば、
「ハッハッハ!事前情報通り!打ち放題だ!おら!《ウィンドカッター》!」
「ちょっとは周りを見ろよ、たく……MP充填!解放!《ギガント・ハンマー》!!!」
「あーっと……こりゃ危ないな……【ジェム】複製、装填完了、《宝石の国》……【ジェム】解放!」
風の刃で切られ、上下から巨大なハンマーで挟まれ、自身よりも一回り大きな球状の範囲を宝石……【ジェム】で覆われ、それが一斉に《クリムゾン・スフィア》を発動させる。
「へへっ!これで多少は削れただろ」
「流石に未発見属性の重力で上下から挟まれれば……」
「上級職奥義の《クリムゾン・スフィア》、それも360度同時展開、個数にして200個程……効かない方がおかしいし、ぶっちゃけこれまでの最大火力だ」
……風の刃?
……重力属性?開発時期には辛うじて残存していたし、重力なぞ最も相性が悪い。故に効かぬ。
……《クリムゾン・スフィア》の同時展開?込められたMPが違いすぎる。故に効かぬ。
だが……傷を付けるとすれば、最後がいちばん近いだろう。
『……』
「お?なん──」
故に、爆散せよ。
直後、【ジェム】を再び構えていたマスターは蓄積した1000万のMPが引き起こす大爆発……
同時にその爆風を浴びた仲間のマスターも、ほぼ同時に死亡した。
粉々になり、蘇生猶予時間すら与えられず、3人は光の塵となる。
その様を無感動に見詰めながら、【サーラエレギー】はまた
少しでも、今の
古代伝説級〈UBM〉、【魔枯蓄精 サーラエレギー】。
その元となった種族、《ハイエンド・マナ・バッテリー・エレメンタル》。
モンスター製造特化超級職【
例え本来の器たる煌玉兵が失われようと、生中な攻撃では群体であるナノマシンを砕くこと叶わず。
逆に敵の群れ全体からMPを奪い取り、道ずれに死ぬ。
それなるは、半物質半精霊にしてジョブと技術の融合。
決してAGIが高い訳でも無く、ENDで耐え切る硬さもない。
あるのは、溜め込み続けた膨大なMPだけであり。
それを利用するだけの、広域
■
「……やっぱり、そういうこと……ね」
そして今の殲滅風景を……1人のマスターが目撃していた。
■
「《魔力自壊》……ほんとに言い得て妙だね……」
最初は爆発させるときの肌感覚から。
やがて理論的に見てみると、益々そうとしか思えなくなった現象の、
「まさか、本当に、これがただの
加えて、その仕組みもさっき見た時にある程度は理解出来ている。
今が黄昏時で助かった。あんなにも
さっき……あの3人が【サーラエレギー】と戦った、その直前。
アイツは、小さな小さな光の玉をあの3人に向けて放っていた。
目に映るのはほんの一瞬で、あれだけスキルを打ち放題にしてたら分からなくなる程度の光の玉。
でも、今なら……音速の2倍の認識速度を持っていて、《魔力自壊》という再現で結論だけを知っていた自分だから、わかった。
アレは、アイツの体の一部だ。
なら、連鎖的に見えてくることもあるし、何より決定的な出来事もあった。
それがあの、3人の中の1人が爆発した時の、光の玉の動き。
あれは確実に、多すぎた。
爆炎にカモフラージュして、姑息に見えないようにしてたけど、遠目から見れば違和感を覚える程度には見やすかった。
そこからわかること。
多分アイツ、
大量に光の玉を体の中に入れなければ、供給速度はそこまででもないし、今の時間帯なら見えやすいし、
なら、想定内。
なに、大丈夫さ。あの光の玉は、
魔力の流れって言うのかな?それが、《魔力自壊》を作った頃からうっすらと
ましてや、あんなに
「……行くか」
勝負は、一度きり。
『……!』
あぁ、気づいたか、【魔枯蓄精 サーラエレギー】。
そうだ、少し前に殺した2体と同じ魔力、同じ姿の敵だ。
「……来い!」
『……!!』
あぁ、ここまで純粋な殺意、浴びたことがない。
決して現実では味わうことすら出来ない衝動。
「クヒっ!」
あぁ、ダメだ……
胸が、ひりつく。
光の玉が自分の体内に侵入したことさえ、最早些事。
余程自分を殺したいのか、先程の爆発した人よりもさらに多くの玉を入れてくる。
大いに結構。
「ヒャヒャっ!」
それこそ、自分が求めていた最後のピース。
オマエとの、繋がりという、最大のチェック。
『…………!!!』
死ね、と何かが言った気がした。
「クヒッ!お前がなぁ!」
───《魔力自壊》
叫び、スキルに頼らず……否。
───奇妙な、静寂だった。
認識を加速しても、尚感じる静寂。
互いが互いを殺意を持って殺す……原始的な生存闘争。
その結果を焦らすように、ゆっくりとした時間が流れ……
□
《魔力自壊》
それは、自爆スキルを模した、遠隔自爆技能。
──をさらに模した、遠隔自爆技術。
ペルのそれは、【サーラエレギー】自体が遺伝子に組み込まれた生態を、万能たるMPで再現したもの。
故に、どちらも似通った結果を齎すが……決定的に違う部分が2つ。
1つは、望めばそのまま最高効率で発動するソレに対し、あくまでも技術として、一瞬考える時間が必要なソレ。
もう1つは、生まれ持ったが故に、それこそ何百年となく使い続けた経験と、つい先程未完成ながらに身につけた事実。
───勝つとすれば、圧倒的に優位な【サーラエレギー】である。
□
『……』
大爆発……その結果大凡の生体ナノマシン、及びエレメンタルの外皮を失った【サーラエレギー】は、瀕死も瀕死。
しかし、生き残った。
保有していた10億にも及ぶMPもほぼ全て失い、遥か昔ですら経験したことの無い虚弱状態となった。
しかし、それでも生き残った。
幸運だったのは、敵手が発動した自爆。
あれがやたらめったらに自壊させたのは、全体からすれば半分ほどのMP。
ならば、残り半分を防御に割き、重要区画を防御する程度は簡単であった。
その結果がこの瀕死であるなら馬鹿らしいが、育まれた長期的思考故にまた蓄え直せばいいと楽観視する。
副次効果として、爆発範囲が狭まり、普通に自爆した時よりも威力が出ていなかったが……構わない。
普通の生物にとって、死ぬには十分な威力だから。
そう楽観視して、それでも僅かに警戒を滲ませて、改めて周囲を見渡したからこそ……気づいた。
『……!』
その時、【サーラエレギー】が感じた感情な筆舌にし難いものだった。
あの爆発から逃げ延びたのか?
いや、できるはずがない。
ならばアレは
繰り返される自問自答。
AGIに優れない【サーラエレギー】が作ってしまった一瞬の『間』。
その『間』に、敵手──ペル・ナルシーは。
音速の2倍で思考する『天敵』は。
静かに、手をかざし、目を閉じた。
『……!!!』
ゾクリとした予感と、チャンスという本能の呼び掛けに応じるように、【サーラエレギー】は逃げる。
自爆型モンスターには存在しない生存本能。
それが出来てしまったのは、幾百年に及ぶカタログ外の長寿故。
警鐘を鳴らす本能に導かれるまま、必死に、我武者羅に逃げ延びようとする【サーラエレギー】は、終ぞ気づくことがなかった。
周囲のエサ……自爆した際に拡散したMPが、蠢いているということに。
まるで自分を包み込むかのように、広がり、縮んできていることに。
「───《魔力自壊──」
とにかく、逃げなければ。
逃げなければ、終わる。
『終わると、どうなるの?』
終わりの、先を問う、思考回路が吐き出したエラー。
生物ならば、幼少の頃に解決する思考。
唐突に吐き出されたソレに……【サーラエレギー】は動きを停めてしまう。
今まで、そんなこと考えたこともなかったから。
奇しくもそれは、後に【黒天空亡 モノクローム】と呼ばれる同族が遺したモノと同質のモノであった。
故に、間に合ってしまった。
自身を囲む、魔力の檻が。
「──・再壊》」
『……、……』
先程よりもゆっくりと、終わりの瞬間を見た。
自身の放ったMPが、敵手によって、再度爆発という現象に成り代わる様を、じっくりと。
だが、彼─もしくは彼女が見たのは、その
自分を殺し、自分の生態を模倣し、自分を超えた、自分よりも弱き者。
『…a……La…La………』
死の際に初めて使われた発声器官は、意味のある音を吐き出すこと無く。
ただただ感じた、美しい、という感情を吐き出すだけに終わる。
そしてその音が、誰かに、ましてや敵手に聞こえることなど、ないだろう。
直後に発生した大爆発によって、その声はかき消されてしまったから。
あぁ、でも、願うならば。
嘗て見た、あの、同族のように……。
ひとつに、成りたい。
そんな、自身の起源を思い出しながら。
【魔枯蓄精 サーラエレギー】は。
まるで因果応報のように。
爆死した。
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なにぶん、自分の拙筆だと表現し尽くせない部分が多すぎるので……