一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
体調やべぇ……
2/3ミス修正
■【
【<UBM>【魔枯蓄精 サーラエレギー】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【ペル・ナルシー】がMVPに選出されました】
【【ペル・ナルシー】にMVP特典【魔臓蓄嚢 サーラエレギー】を贈与します】
「……終わった」
予めおっさんから聞いていたアナウンスが流れた時点で、この戦闘に勝ったのだと実感できた。
実感したら、足腰の力が抜けて地面に座り込んで……そのまま全身に力が入らなくなって、大の字に倒れ込んでしまった。
「っあー……頭痛い……」
最後の最後、《魔力自壊・再壊》を咄嗟に成功できたからよかったものの……代償があまりにも酷い。
体の外で体を動かすのには慣れてる。
でも、流石に思考を加速させた状態でって前提がある状態は初めてだった。
普段より考えることが多いのにさらに一瞬で圧縮なんてしちゃったもんだから、もう大変。
知恵熱がやばいよねって。
「……よく勝てたなぁ……」
思えば無謀なことをしたなって、自分でも思う。
あのおっさんが警戒して、あのエルフのお兄さんが戦略を持って潰そうとした相手だ。
こうして生きてるだけでも奇跡の産物。ならこの頭痛くらい、代償にとっては安いもんだ……なんて、言ってみたり。
「……」
……手を、伸ばす。
そこにMPを通して……外に出し、ポンッと破裂させてみる。
アイツの得意技。
人に
自爆する時のMPは、全部アイツから送られる。
それを逆手にとった。
アイツが自分に侵入してきた時点で、アイツとはMPのラインができている。それはさっきの3人のマスターとの戦闘で確定した事実だった。
なら、そのラインを利用して、アイツのMPを操ってしまえばいい。
そして、実際にそうした。
だから、MPを操作できる人なら、同じことが出来たはず。
多分、この攻略法は邪法に近いものだったんだろう。
正攻法は、それこそ魔法系超級職がふんだんにMPを使って削り切るとかだろうから。
誤算だったのは、アイツが溜め込んでいたMPの量と質。
操作したことで感じられた、膨大なMP。
そしてそれを……多分、
流石に素のMPなら兎も角、圧縮され、
如何に効率とか操作性とか、諸々を度外視できていたからといって、それとこれとは話が別。
だから半分しか操作できなかったし、その分ダメージが少なかったし、防御にも使われた。
そこに自分の功績がいくら乗るのか分からないけど……明らかにMVPなんて取れたはずも無い。
「……【魔臓蓄嚢 サーラエレギー】、か」
多分これが、これこそが特典武具。
〈UBM〉を討伐し、選ばれた者だけに送られる……
……確かに、
名前の通り、と言うべきか。
腹の中に……今まで感じたことの無い
ふと思い立ってステータスを見てみると、アクセサリーの欄に【サーラエレギー】の文字が見えた。
それをひとつつついてみると、別のウィンドウが開く。
【魔臓蓄嚢 サーラエレギー】
<古代伝説級武具>
魔力を喰らい、命を啜り、蓄え続ける生物兵器の概念を具現化した至宝。
魔力を共有し、魔力を蓄え、生命を魔力へと堕とす。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
なし
・装備スキル
《魔力共有》
《魔力圧積》
《魔堕命》
「……あー……ステータス補正、無しなのか……絶対MP増えると思うのに……」
他の特典武具がどういった仕様かは知らないけど。
少なくともこの欄があるってことは、ほかの特典武具だと増えるんだろうな。
ま、仕方ないと思うしかないか。
その分、スキルが強力だし。
《魔力共有》
同じ臓器を持つ者同士でMPを共有し、統合する。
《魔力積圧》
100のMPを1のMPとして圧縮し、臓嚢内に溜め込む。
圧縮したMPを使用したスキルは、通常より効果が上がる。
《魔堕命》
HP1をMP2へと変換する。
MPからHPへの変換は出来ない。
特に《魔堕命》。
流石に自分でも、操れもしないものをMPに変換するなんて無謀はできない。
こういうのはシステムが絡むだろうし、出来ないことを補ってくれるのは素直にありがたい。
同じ理由で《魔力共有》も嬉しい。
同じ臓器、って記述のある時点で、この特典武具は複数あるタイプの物だと想像出来る。
多分、《生命増躰》で増えるアバターに対しても、この特典武具は対応しようとしたんだろう。
特に元となった【サーラエレギー】は自分の体の一部を分離して、それも含みで自分だった、って言う……どことなく自分に似ている生態をしていた。
これのお陰で、単一のアバターのMPに悩まされることなく、魔力の操作ができる。
そして……《魔力積圧》。
これは……うーん……。
試しに体の内側で魔力を……それこそアイツがやっていたように圧縮してみるけど……うん。
普通にできる。
なんなら、スキル使ってない。
今、《魔力圧縮》ってスキル取得したけど。
これじゃあ意味ないじゃんって、思ったけど。
一つだけ。
そんな圧縮した魔力を、溜め込める臓器があった。
位置は、心臓の向かい、胸の右側。
多分そこに……【サーラエレギー】が在る。
そこに溜めろ、ってことなんだろう。
当分は《魔力圧縮》の効率よりも《魔力積圧》の効率の方が上だからこのスキルに頼るけど、いずれこのスキルはただ蓄積すること以外に使えなくなる。
そうなった時、死にスキル化するけど……まあ、先の話か。
「あとは……お、【死兵】のレベルも40まで行ってる」
やっぱり、ボスモンスターをソロで、しかも
【カゲノワズライ】が第3形態になったお陰で、《生命増躰》もレベルが上がった。
その時に増えた効果は音速の2倍の認識加速だけど……それだけじゃない。
4体目のアバターも増えた。
それが、保険にして仕込み。
【死兵】ジョブを取って、近くの木にある洞に隠れていたんだよね。
もし仮に一撃で【サーラエレギー】を殺しきれなくて、【獣戦士】持ちの「女性」体が爆発、《ラスト・コマンド》が発動しても無意味だった時の為に。
最後のトドメ、それを刺す為に。
結果的に、保険は役に立った。【獣戦士】「女性」体は爆発したし、【サーラエレギー】は生き残った。
見るからに瀕死で、光も明滅して、フラフラと浮遊してた。
だから、博打を打った。
咄嗟に飛び出して、《ラスト・コマンド》が映すぐちゃぐちゃの視界を耐えながら、【死兵】「女性」体の目に映るMPを……空間中に飛散し、何やら嫌な予感がしたMPを掌握した。
それを集めて、囲って、嫌に
……多分、魔力が多すぎてアクシデント・サークルになりかけてた。
それも、自爆に特化した、被害が凄いことになりそうなやつに。
「はぁ……戻るかな……」
取り敢えず、《性別転換》で「男性」体にしとくかな。でないと、おっさんとかエルフのお兄さんとか、あの会議室に集まった人達に不審に思われる。
「……MP、回収しながら行こ」
【死兵】しか取ってないアバターで、MP0ってのは危なすぎるし。
自然魔力を吸収すれば……アイツと同じことをすれば、すぐに回復するだろうし。
■
【死招転身 グールグ・グ・グール】
最終到達レベル:44
討伐MVP:【
<エンブリオ>:なし
MVP特典:伝説級【聖転遺骸 グールグ・グ・グール】
【霧散胞砲 ミスコックス】
最終到達レベル:68
討伐MVP:【
<エンブリオ>:なし
MVP特典:古代伝説級【霧散胞槍 ミスコックス】
【千船歩殼 リ・リリア】
最終到達レベル:22
討伐MVP:【
<エンブリオ>:なし
MVP特典:逸話級【千船斬刀 リ・リリア】
【魔枯蓄精 サーラエレギー】
最終到達レベル:78
討伐MVP:【
<エンブリオ>:【並列分体 カゲノワズライ】
MVP特典:古代伝説級【魔臓蓄嚢 サーラエレギー】
「……ム」
闇の中。定められた作業、定められた記録を取りながら、常に無い記録に思わず声を上げる。
「遂に、マスターからも〈UBM〉を討伐する者が現れた。それは喜ばしい」
その記録は、たった一点を除けばソレにとって、同類にとって、とても喜ばしい事だ。
今まではソレ……管理AI4号ジャバウォックがデザインし、若しくは認定した〈UBM〉を討伐するのはティアンのみだった。
それがたった今、マスターによって初めて〈UBM〉が討伐され、MVPも取っている。
それ自体はいい事だ。
いいことなのだが……些か予想よりも早い。
〈Infinite Dendrogram〉がサービス開始したのは、現実で3日前の7月15日、デンドロ内でも9日前。
マスターによっては、どれだけ早くとも漸く上級職に就くか、〈エンブリオ〉第3形態に進化し始める者がいる頃合。
ジャバウォックのシステムに不備が認められないのであれば、このマスターはMVPを取るほどの活躍をしたことになる。
しかし、ジャバウォックのシステムは完璧であり、記憶にあるこの〈UBM〉の性質上、下級職パーティーがいくら集まろうが意味が無い類である。
故に、このマスターはジャバウォックの望む
「だが、不可解な……」
不審な点は、ただ1つ。
ジョブの表記が、常とは違う。
マスターが討伐したとしても、表記は常にメインジョブに設定されているものが表示される。
ジョブレベル、合計レベルにしても同一だ。
だが、このマスターは違う。
メインジョブが複数、合計レベルも複数。
この時点で異常だ。
すぐさま戦闘ログを呼び出し、記録を確認する。
もし外部から何らかの不正があった場合、セキュリティ担当の管理AI10号バンダースナッチに文句を付けなければと考え──
「─成程、
〈エンブリオ〉の能力、そしてマスター自体の出自を知って、むしろ納得した。
「ふむ、確かに、この〈Infinite Dendrogram〉ならば眠れるモノを起こすこともある。そしてこの〈エンブリオ〉はそれを理解して特化している、か」
恐らくこの〈エンブリオ〉は、マスターを補助することに特化したのだろう。
その結果、生来の才がこれ以上ない形で発露し、この世界に適応した。
特異の才を持つ者は
「複数の体、複数のメインジョブ、単一にして複数の自我……将来的に【
それならそれで結構な事だ。
「だが……自然魔力を限りなく吸収し、自身を成長させる〈UBM〉……惜しいな」
あともう数年……2年程度でもあれば神話級に到達したことだろう。
そこまで行けば、最早〈イレギュラー〉……いや、〈SUBM〉として回収対象になっていたかもしれない。
「この一件で成長性を示すマスターが複数いたことも事実。ならば、むしろ収支はプラスである」
いずれ、100の〈超級〉を揃える必要があるのだ。今はまだ、先行投資。
このマスターがいい刺激になることを祈るばかりだ。
「くくっ……。
その事実を噛み締めながら、ジャバウォックは笑う。
願わくば、これからもマスターによる〈UBM〉討伐が増えるように、と。
経緯
《魔力自壊》習得
↓
【カゲノワズライ】第三形態到達&アバター4体目増加、「女性」体に
↓
【獣戦士】習得体を「女性」体に、4体目が【死兵】習得
↓
本編
という感じです。
次はIFストーリー──自力到達型ハイエンドの〈彼〉についてです