一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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原作投稿されたので初投稿です。


ギリギリ負け

戦士(ファイター)】ペル・ナルシー

 

「おら死ねおっさん!」

 

「はっ!誰が死ぬか……!っぶねぇなぁ!」

 

ッチ……避けられた、見せすぎたか。

 

闘技場の舞台は狭いし、どうしてもよーいドンで始まるから、罠も仕掛けられない。

だからこそ、正面から(・・・・)罠を敷いたんだけど……最初ほど引っかかってくれない。

 

「てかお前【魔術師(メイジ)】取ってねぇだろ!?なのになんだそのMPの量と操作性は!?」

 

「技術と特典武具だよ!!っとぉ!」

 

話ながらこちらに向かって振るわれたおっさんの拳を……マッハ2の視界で捉え、ゆっくりとした動きで、確実に避ける。

……うわぉ、紙一重ぇ。

だけど、その分猶予が出来た。

 

「……《逆茂木》」

 

硬質化させた(・・・・・・)魔力の杭を、地面から……地面の中に設置しておいた圧縮魔力塊(・・・・・)から発生させる。

《魔力積圧》の効果で、圧縮魔力は解凍(・・)せずそのまま使っても効果を発揮できる上、威力は圧縮率次第で右肩上がり。

今はスキル頼りの100分の1圧縮、威力は10倍。

発生速度(・・・・)も10倍になる。

 

「……くそっ!」

 

元々MPに優れないから、魔法ダメージはよく効く戦士系統。

上級職ともなればMPにもある程度の伸びがあるとはいえ、おっさんは純近接系統でジョブを埋めている。

如何にピーチちゃんのステータスを上乗せできる【獣戦鬼】とは言っても、《獣心憑依》にも60%っていう限度がある。

 

「おいマジでどうなってんだよそのMP?!」

 

「特典武具!と!〈エンブリオ〉!」

 

てか至近距離《逆茂木》を見てから回避してからの背後に回り込んで殴り込みするってやば。

こちとら見えはするけど動き自体はAGIそのままなんだぞ?!

 

「……っ!っ!っ!」

 

「オラオラオラオラ、初めの勢いはどこ行った!?」

 

ヤバい、イニシアチブ取られた……!

しかもおっさん、なんかスキル発動しやがったな?さらに早くなりやがった!

 

まずい……見えない……!

だったら……!

 

「バグ技……!発動!」

 

哲学者(フィロソフィア)】「両性」体、《高速思索(ハイスピード・スペキュレイション)》発動。

全アバター(・・・・・)、効果適用。

 

思考速度、凡そ音速の6倍(・・)

 

「み……え……る……ぞ……!」

 

全アバターが、自分1人(・・・・)のマニュアル操作で運用されているからこそできるバグ技。

AGIで加速される思考は、全ての思考に及ぶ、という原理の抜け道。

 

……詰まるところ、1番早いAGI(・・・・・・・)に、思考速度だけは統一される。

 

「……《魔弾……の……射手》!」

 

空中待機させていたMPを解放。

弾丸の形状を象らせ、螺旋運動を持って突き進む。

 

思考速度(・・・・)に追随するMPの仕様によって、発射から着弾まで一切の減速のないマッハ6の等速直進運動。

 

「ぬ、おぉぉ?!」

 

生憎ダメージ自体はそこまででもないけど、おっさんを後退させることには成功。

 

……と、ここでMPの最大値が大幅に増えた(・・)

この上昇量だと、【生贄(サクリファイス)】のレベルが上がった感じ。

【生贄】に就いた【魔術師(メイジ)】専任「女性」体のおかげで、MPは2日前の【サーラエレギー】討伐前の10倍以上。

おまけにレベルアップする度にMPの最大値がゴリゴリ増えるから、ここまでの無茶ができる。

 

……1レベルごとに400プラス補正値10%の上昇は頭おかしいって。

最大レベル50になる頃には20,000超えるじゃん。

 

「ふぅ……すぅー……ふぅ……」

 

「はぁ……はぁ……んぐっ……っはぁ……」

 

おっさんが後退して、1度仕切り直し。

だけど、明らかにどっちが劣勢かは見てわかる。

 

おっさんは軽く呼吸を整える程度なのに対して、自分は荒々しく息を吐き、時々吸うにも詰まる在り様。

 

流石にレベル、ステータス、何より経験が足りない。

見るだけならマッハ6の認識でどうとでもなる。

でも、それじゃあ見えるだけ(・・・・・)

 

肝心の肉体の速度(AGI)が足りないから、避けるにしたっていつもギリギリ。

持続力(END)が足りないから、必然耐久力(END)不足で常時スペランカーモード(一撃死)

頼みの綱は魔力(MP)っていう、それ近接系としてはどうなんだって有り様だし、それにしたって今もレベル上げのためにジャブジャブ使ってる。

最後の砦、《ラスト・コマンド》は、この闘技場じゃ無意味。

 

「不利にも程がある……!」

 

「おま、お前がそれ言うかよ!」

 

……いやまあ、近接ステータスしといて至近距離から魔力攻撃するのはずるいって、自分でも思うけど。

何故か純魔力攻撃だかなんだかで最大MPの多寡(・・)がそのまま攻撃力になって、相手にとっても受けるための防御力が最大MPになったけど。

《魔力共有》のお陰で最大MPが統一されて、今は10000超えてるけど。

 

「お前ぜってぇ下級職3職目じゃねぇだろ……!」

 

「失礼な。バリバリ3職目のルーキーですが何か?」

 

「くそっ、嘘くせぇ癖に嘘じゃねぇ!」

 

正確には、この体は(・・・・)3職目だ。

破壊されて丸3日で復活したアバターはこの体も含めて、【サーラエレギー】討伐での経験値が入っていた。

だから直ぐに転職して、3職目に就いたし、4つ目の体に関しても「無性」体に《性別転換》した上で新たに【蹴士(ストライカー)】っていう、明らかにAGIが上がるジョブに就いた。

 

「取り敢えず、おっさん」

 

「あ?」

 

左腕(・・)、貰ってくね」

 

言葉と共に、敢えてカッコつけてフィンガースナップ。

 

さっき《魔弾の射手》を防いだ右腕に、まだ埋まってる魔力弾。

それを《魔力自壊》で、自爆させる。

 

「っく!がぁぁ!」

 

爆発音とともに、おっさんの右腕が肩口手前まで吹き飛ぶ。

肘の近くに着弾したから、凡そ真円を描く爆発範囲。

 

昨日貯めて圧縮した10,000のMP。100程の大きさになってはいるし、敢えて先を尖らせない形状を取ったからこそ腕の表面で止まる。

だからこそ(・・・・・)、爆発範囲は到底MP100で出せる域に無いし、威力も桁違い。

 

おっさんが痛みで動けなくなってる間に、回復する。

 

そこら辺の自然魔力を吸って、MPを補給する。

勿論、外でレベル上げをしている3体のアバターも、だ。

外の方が自然魔力が濃いから、簡単に回復する。

 

「くっそ……すまん!《喚起(コール)》───ホワイト!」

 

そしておっさん側の動きは、予想が外れて従魔の召喚。

それも、今まで見たことがなかった個体……白く濁りのないスライム。

 

咄嗟に、いつの間にか習得してた《看破》で覗いてみれば、《メディ・サブスティック・スライム》の文字が。

 

「すまん、貰うぞ(・・・)!」

 

「や……」

 

やべ、と思う間もなく、おっさんの失った左腕に飛びつくスライム。

グニグニと形を変えて、質感を変えて、色も変わって……おっさんの左腕が、元に戻る。

 

メディ・サブスティック(代替治療)・スライム》の名前の通り、失った左腕を代替した。

……【欠損】無効のスライムとか、どんなレアモンスターだよ……。

 

悔しいから《逆茂木》を……地面から斜め前方に向かって魔力でできた極太の杭を突き出す。

 

が。

 

「《喚起(コール)》───ピーチちゃん!」

 

それよりも早く、おっさんが切り札を……上位純竜級(・・・・・)の天竜種、《ハイ・ジーニアス・ドラゴン》を《喚起》した。

折角起動した《逆茂木》はピーチちゃんの分厚い鱗に遮られて、おっさんどころか受けたはずのピーチちゃんも無傷。

 

「……あー、ピーチちゃんの60%のMPなら越えられるけど、100%のMPは無理、かぁ……」

 

となると……ピーチちゃんのMPは17,000ちょい手前……くらい。

 

これで成長途中ってんだから笑っちゃうよ。

 

「……手加減してくれたりとか……」

 

『GAAAAAAAA!』

 

「無理ですよね知ってた!」

 

そりゃご主人がフルボッコにされてるのを見れば手加減なんかしてくれないよね!

 

怒りのまま吐き出された炎のブレス。

それに対するは、戦闘行為ができない【生贄】「女性」体がせっせと生産した圧縮魔力を咄嗟に回した魔力の盾、《希望の盾》。

名前の由来は、お願いだから最大MPを上回ってくれるなよ、っていう希望(・・)から。

 

そんな希望(・・)を載せた《希望の盾》を、ピーチちゃんのブレスの目の前に展開して───

 

パリン。

 

一瞬すらもたず、割れ散った。

 

「ウッソだろお前、そんな成りして物理攻撃とかやめてください!」

 

MPの直接操作で創り出したスキル一覧。

今の時点で8個生み出してるけど、その全てに『純魔力○○』という表示が載る。

それは最大MPの多寡で攻撃、防御の判定が下される、という一見して至極近接潰しな性能をしてるけど……。

 

『純魔力○○』、これ、物理にはガラス以下の耐久力しかない。

攻撃なら、防ぐために逆に攻撃されるとか、高耐久力の盾で防がれるとか。

防御なら、物理攻撃をされるとか。

 

まあ、要するに、『魔力にはダイヤ、物理にはガラス』っていう性能なわけ。

 

で、ピーチちゃんのブレス。

口から炎を吐き出してくる。

絶対魔力を伴った攻撃だと思うじゃん。

 

物理です。

口から炎(物理)です。

 

「あ、オワタ」

 

そんな隙を晒した自分をおっさんが見過ごすはずがなく……

亜音速で近づいてきたおっさんの手刀で、首を切られた。

その直後、僅かに残ったHPをピーチちゃんのブレスが燃やし尽くして……傷痍系状態異常で【救命のブローチ】も無効化されて、死んだ。

 

普段ならここで《ラスト・コマンド》が発動するんだけど、闘技場だからそれは無理。

今までの奮戦の分、酷く不格好な終わりを迎えてしまった。

 

 

 

 

 

 

「っあー!負けたー!」

 

今度こそは勝てると思ったのにぃ……!

 

「……いやお前……俺に虎の子のホワイト出させた挙句、ピーチちゃんも《喚起》させやがっただろ……」

 

そうは言っても……うごごごご……!

 

「吹っ飛ばす腕が……せめて右腕だったら……!」

 

そうすれば従魔の居ないおっさんを仕留めるだけだったのにぃ……!

【ジュエル】ごと吹っ飛ばして、悠々と《逆茂木》当てるなり、《飛翔魔剣》で切り刻むなりできたのにぃ……!

 

「はぁ……これ、本当はナイショの話なんだが……まあ、ここまで俺を追い詰めたご褒美ってやつだな」

 

「あ……?」

 

おっさん程の闘士が、内緒にする話題……?

……嫌な予感がする。

 

「俺の【ジュエル】に、ピーチちゃん達は入ってない(・・・・・)。入ってるのは、こっち(・・・)だ」

 

言いながら指で弾いたのは、特典武具の【ハードラヴィ】。

……特典武具は、壊れにくい。

 

「……」

 

「……そんな目で見んな。情報戦も立派な戦術なんだからな」

 

……確かに、キャパシティ強化の効果があるアクセサリー、【ジュエル】と同等の効果があっても不思議じゃない。

タチが悪いのは、それをわかってて執拗に【ハードラヴィ】を攻撃しても、直前に【ジュエル】に移されてたら無駄な労力だってことだ。

 

「……《魔眼》」

 

「うぉっ!いきなりなんだ!?」

 

苛立ちを込めて、魔力を目に集める。

すると、魔力の色なのか青白く目が輝く。

 

そしてその効果は……

 

「……《魔眼》は、目が光る」

 

「…………それで?」

 

「……かっこいい」

 

目が光ってかっこいい。それだけ。

マジでそれだけ。

 

「……」

 

「……」

 

「……あと、見続けると即死効果」

 

「はぁ?!」

 

「……嘘だけど」

 

「だろうな知ってたけどさすがにビビる!」

 

あ、そっか。おっさん《真偽判定》持ちか。

便利だなぁ、ブラフも効かないのか。

でも、びっくりしてたってことは、嘘だとわかっても咄嗟の反応は抑えられないってことかな?

 

「はぁ、にしても、あとちょっとだと思ったのになぁ……」

 

「まだ言うか、こいつ。言っとくが、次からはピーチちゃんも最初に出すぞ」

 

「あー、ま、そうだよねぇ……」

 

思いっきし追い詰めたからなぁ。

……魔力の節約なんか考えず、一思いに《魔力自壊》しとけば良かった。どうせ闘技場の中なら、無かったことになるんだし。

 

「あ、居たね 」

 

どこかで聞いた声が聞こえたのは、ちょうどその時だった。

 




純魔力属性はオリジナル属性です。デンドロ内ではロストした属性魔術、という設定にしてます。

あ、分かる人だけに分かるように言えば、「天才の所業」の「黒化」にプラスαしてる感じですね。
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