一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
追記
皆さん、誤字修正ありがとうごさいます!
「凄かったよさっきの決闘!決闘ランカーのエードさんの攻撃をひらりひらりと躱して、隙をついて攻撃していて……まるで噂に聞いたモハメド・アリのような……あ、ごめんなさい。自己紹介もなくこんなに話して」
すごい勢いで喋ってきたかと思えば、失礼に気づいて直ぐさま謝罪してきた好青年。
見た目が金色の獅子のような人だ。
どっかで見たことあるような気がするんだけど、いまいち思い出せない。
「僕はヴィン……フィガロ、【
自己紹介と共に差し出された左手。そこにはマスターであることを示す〈エンブリオ〉の紋章があった。
”獅子の頭”を模したその紋章が、殊更彼にあっている気がしてならない。
「あ、あぁ。ええと、自分はペル・ナルシー。【
取り敢えず、せっかく差し出された手を無下には出来ない。
自分の方も左手を差し出して握手をすれば、どうやらフィガロは疑問があったらしい。
何やら不思議そうな顔をしていた。
「ええと……間違いじゃないと思うんだけど……【戦士】?【
あー、まあ、あの決闘を見ればそう思うのも無理ないよね。
MPバンバン使ってるし、何も無いように見えるのにおっさんが攻撃されてたし。
【
「詳しくはあまり言えないけど、特典武具と〈エンブリオ〉の関係で、ね」
取り敢えず、これを言っとけば問題ない。
便利だよ、これ。
「で、そういうフィガロはどうしたの?」
相変わらず「?」な顔してるフィガロにこちらから問返せば、本題を思い出したのかハッとした顔をしている。
「決闘しよう!」
「おーけー決闘……へ?」
「ありがとう。実はこの後10分後に、30分だけ予約してたんだ。快諾してくれて本当にありがとう。でないと、30分ひとりで【インスタントモンスター】の相手しかできないところだったんだ……」
「あ、うん」
「じゃあ10分後に、待っているよ」
そう言ってフィガロは……何かほかにも用事があったのか、走り出して行った。
その疾走具合は中々のもので……。
あ。
「……初日モンスターに突っ込んでった人かぁ……」
確かにあの時も、今と同じ笑顔を浮かべながら走り回ってたっけ……。
「お、なんだお前。あいつ知ってんのか?」
「あ、あーまあ?ちょこっと?」
てか、おっさんの方こそ知ってるのかよ。
「あいつはなぁ。マスター連中の中で
はぇー……。
「因みにてめぇ等マスターが増え始めてから4日目だ」
「なら、闘士としては自分の先輩に当たるのかな」
【サーラエレギー】を討伐した翌日に決闘登録をした自分と、デスペナルティが開けて早々に登録をしたフィガロ。
闘技場を使った回数も桁がひとつ違うだろうし、何より【カゲノワズライ】でレベルの上昇が遅い自分の方が、総合的なステータスでは劣るだろう。
……補正値も、MP以外マイナスだし。
加えて、〈エンブリオ〉の固有スキルも今の短時間の接触では分かるわけが無い。
これが接触を条件とした解析なら話は別だったんだろうけど、生憎自分はそんな〈エンブリオ〉の持ち主に会ったことがない。
「ま、お前にとっても初めての対マスターだ。これも経験だと思って挑め」
「はいはい、言われずとも分かってる。ま、せいぜい負けないようにはしますよ……」
「……あ?随分と及び腰だな」
「そりゃそうでしょ」
だってあいつ……
「妹の同類だよ、同じ匂いがした」
ま、
■
「時間ギリギリ……僕の方から誘ったのに、すまないね……」
「あ、いや、時間通りだから、別にいいんだけど……」
ホントに時間ギリギリ……30秒前に慌てて駆け込んできたフィガロに、最初は文句のひとつでもつけようと思った。
でも、この調子で……多分、言えば土下座ぐらいならしそうな雰囲気を帯びたフィガロを見て、辞めとこうってなった。
元々、今回の結界を発生させる代金は全部フィガロ持ちなのだ。
自分の懐が全く傷んでいないので、余り気にしていない。
「あぁ……わかった、分かったから。気にしてないから、決闘しようよ。時間は有限なんだし」
「そうかい?……じゃあよろしく!」
と、ここで決闘開始を伝えるブザーが鳴った。
これから30分間、どっちが負けても時間いっぱい再挑戦できる。
「取り敢えず、《飛翔──》」
「羅ァ!」
っぶなぁ!!
気づけば剣を振りかぶったフィガロが目の前にいて、咄嗟に飛びずさった。
その逃げた先にも、一足飛びに飛び込んで剣を振るうフィガロ。
《希望の盾》は発動するだけ無駄。物理の剣に対しては無力。
《逆茂木》も意味が無い。フィガロとの距離が近すぎる。
ならば……!
「っ!」
「ぐっ!」
《魔力自壊》で自爆して、無理矢理距離を離す……!
「おっ……らぁ!《インパクト》!」
ついでに、離れた距離をもう1回縮めて、《インパクト》……打撃強化スキルを併用しながら殴り掛かる。
スキルの効果で僅かに加速された拳はフィガロに月進み……
「!っち!」
《瞬間装備》で左手に出された円盾に防がれた。
固いものを殴った反動で、今度は自分が後退させられる。
「刎ァ!」
今度こそ殺すと言わんばかりに、喉に向かってくる剣先。
それを見つめながら……
咄嗟に、思考の6倍音速加速を使ってしまう。
それによって、景色が限りなくスローになった。
……本当なら、使うつもりはなかった。
おっさんなら……実力者相手なら使わないと食い付けなかった。
プレイヤー相手だと、少しずるいって感覚がブレーキになっていたけど……舐めてた。
こんなに
少し、傲慢だったな……
本気で行こう。
──《飛翔魔剣》
思考速度に追随するMPの性質が、首元まで迫っていた剣を握る手首を切り落とす。
純魔力攻撃。
最大MPの多寡によって抵抗が二極化する特殊攻撃。
「!」
「ふぅぅぃっ、しょお!」
そのままの勢いで、《飛翔魔剣》を突き込み……
「うっそでしょ?!」
音速の6倍なんですけど?!なんで避けれんの?!
「亜阿啊亞ァ!」
盾を捨てて、空中の剣を拾い、左手一本で逆袈裟から斬りかかってくる。
でも……!
さっきより、早い!
「っ」
ギリギリだった。
ギリギリだったけど、後ろに引いて避けられた。
けど、次は無い。
《飛翔魔剣》を結合解除、《魔弾の射手》へとフォームシフト……
発射。
「附!」
マッハ6で突き進む弾丸。
それにすら反応し、フィガロは手に持った剣でそれを切り払ってしまう。
でも、その動作で一手フィガロは使用した。
その一手で、此方も一手の猶予を得ている。
意識を向けるのは、切り裂かれた魔弾。
……綺麗に、正中線から2つになっている。
それを見て少しゾワリとしたけど、無視して魔力操作に集中する。
──《飛翔魔剣》、双剣形態で再構築。
切り裂かれた魔弾を、再び《飛翔魔剣》にする。
酷くゆっくりな視界の中で、フィガロが自分の首を狩りに来ている。
……やっぱり、早くなっている。
恐らく、遅延性の強化……〈エンブリオ〉の能力。
バフの上限値は……不明。
なら、長期戦は不利、ここで仕留める!
首元まで迫ったフィガロの剣を、そのまま敢えて中途半端に避ける。
肩口を切り裂き、右腕を【欠損】する。けど!
双剣状態の《飛翔魔剣》をフィガロの背中に突き刺す。
もう何なのか分からない位の超反応で1本は防がれるけど、魔剣はもう1本ある。
それをフィガロの足に突き刺し……発破。
《魔力自壊》
爆音と共に、勝利を確信
するわけないだろ!
案の定こちらの首元ギリギリまで迫った剣を見つめながら、それでも意識を向けるのはもう一本、防がれた方の魔剣。
それで、もう一度フィガロの
フィガロは反応して、口を大きく開けて齧り取ろうとして……
「っぷはぁ!」
《魔力自壊・再壊》。
僅かなMPで《魔力自壊》を引き起こした後、残存MPを掻き集めて威力が劣る爆発を起こす、2段構えの技。
かなりの緊張感、殺気、何よりフィガロの
さすがにこれなら、フィガロも死んで……!
「上!」
いつの間にかできていた影。
それに一瞬意識を取られながら、上を見上げれば──
「■■■■ァ……!」
悪鬼の表情で落下してくる、両脚のないフィガロの姿が。
不思議なことに、爆発して消失した下半身装備以外にも、いくつかの装備が
それでいて、さっきよりも
「く……」
どうする。
《飛翔魔剣》は、いや、《魔弾の射手》も、既に見切られている。
《魔力自壊》……《再壊》の方も、この距離だとまずい、自分も死ぬ。
《希望の盾》は物理の攻撃は防げない。
《魔力圧縮》は今更意味が無い。
《逆茂木》は……展開するまでの必要なMPが多い。
……《魔眼》はかっこいいだけ。
【戦士】のジョブスキル……いや、STR依存だ、いい結果を望めない。
まずい……今の切り札じゃあ、勝ち目が、無い……
なら、どうするか。
──
ぶっつけ本番、魔力操作の応用、スキルの作成。
「(制御──全開……形状──固定……個数──投入MPに準ずる)」
この間にも、フィガロは落下してくる。
悪鬼の表情を更に歪め、歯を剥き出しにし、唇を裂きながら。
「(展開範囲──視界内、いや、自分の全周……投入MP最大値──撤廃)」
その表情は、羅刹と言っていいほど歪んでいる。
瞳孔は狭まり、吐く息は白く濁っている。
「(───完成、スキル──)」
その手に握り、握力で砕きながら振るわれた剣は自分の首に僅かに触れて───
「(《
無数に現れたMPの粒で、フィガロを粉々にして───
「───」
振り抜かれた刃が、自分の首を刎た。
■
「っあー……死んだかと思った……」
「それは僕のセリフだと思うよ?初めてだ、全身を粉々にされるなんて」
「前例があったら生きてる方がすごい」
それはそうだと笑うフィガロ。
てか、自分が死ぬかと思ったのは……いや、言わないでおこう。
こんな好青年があんな……いやいやいやいや、考えない、考えない。
「聞いてもいいかな?」
「んー、最後のスキル?」
「そうだね、まるで反応出来なかったから」
どう?と純粋な笑顔を向けて、若干首を傾げるフィガロに対し、さてどうしたもんかと自分は自分で首を傾ける。
考えて……ま、いいかと結論を出す。
バレたら嫌なのは【カゲノワズライ】の方。
なら、まだ《真偽判定》を持っていないフィガロの口から偽りの真実として広めてもらって、誤解させておいた方がいい。
「あ、やっぱりダメかな?ごめん、僕ってリアルの都合で人とあまり話したことなくて───」
「最後に使ったのは《
説明を始めたところ、パチクリと目を瞬かせるフィガロをあえて無視。
なんか重そうなリアルの話しようとしてたけど、それも無視、というかあまり深入りしたくない。
「え、あの──」
「さっきはそれくらいしか出来なかったけど、本来だったら自分を中心に回転……公転させるのが本来の構想。だけどそんな暇はなかったからね……寧ろそのおかげで、公転に対して自転っていう発想が出てきたんだけど」
「う、うん、そうな──」
「具体的には、こんな感じ」
ていうことで、実践付きで見た方がわかりやすいだろうと思い、《全天星骸》を発動させる。
さっきと同じように、だけどさっきよりも数を少なくして。
さすがにあの数を全部制御するとなると、頭が痛くなる。
このスキルは自分としては初のシステム任せが主流のスキルになるかな……?
っと、フィガロのことをつい考えから省いていた。
自分もフィガロも座り込んでいて、予め発動させるのを考えていた自分とは違い、フィガロはちょっと後ろにのけぞった。
「あ、ごめん」
「いや、いいけど……少し、確認してからにしてね?」
「あ、うん」
なお、これから数年後。フィガロは”墓標迷宮”で、階段上にいたレイ・スターリングをランダムポップボスモンスターと勘違いし、先制攻撃兼確認の為にルーキーには荷が重いダメージ量の攻撃を放ったりしている