一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
「それで、これが……」
「ん、《
展開した《全天星骸》に、今は回転を与えていない。
今は闘技場の外で発動しているし、フィガロが指を恐る恐る粒に触れさせている。
こんな状態で回したら、フィガロがデスペナルティになってしまう。
「少し離れて……そうそう、そのくらい。で、本来の構想だと、こんな感じ」
離れたから、本来の構想……《公転球》という名前にする予定だった運用をする。
魔力の粒は自分の周りを一定の距離を保ちながら
「で、フィガロがあまりにも近距離に現れて、これじゃあダメだって思ったから改造したのが、さっきのコレ」
今度は
「この粒は人に当たるとダメージを与えて消えちゃうからね。本当なら公転させて逐次補充するのが1番いいんだけど。さっきのフィガロみたいにHPが削れてて、ただ壁に当てればHPを削り切れる状態なら、こっちの方が早い」
しかも本当ならもっと大きくする予定だった。
だから最初は《惑星》。でも、こんなに小さくなって、直ぐに消える程度のものになっちゃうと、《衛星》ですら大袈裟な名前になる。
だから、《
「へぇ……ねえ、さっきから自分で作った、みたいな口ぶりだよね。もしかしてだけど、キミの〈エンブリオ〉って……」
「
嘘だけど。
まるっきしの、嘘だけど。
「やっぱり、そうだよね。あ、僕の〈エンブリオ〉は──」
「あ、だいたい予想は付いたし、自分のはバレやすいから言っただけだよ。だから言わなくても大丈夫」
「そうかい?なら、そうさせてもらうよ」
苦笑しながら言うフィガロだが、人が良すぎる気がする。
さっき言ってたリアルの事情……かなりヘヴィーなものなんだろう。
自分も、こうやってフィガロを利用する気満々だから。
「あ、でももしどうしてもって感じなら、今から推論だけ言うから聞いてて。それだけでいいから」
罪悪感ありそうな顔をしてるので、自分の罪悪感もあってついつい余計なことを言ってしまう。
「うん、いいよ」
「ありがと……多分フィガロの〈エンブリオ〉って、時間が経つにつれて強化倍率が上がるバフのスキル持ってるよね。理由は闘った時の肌感覚から。そのひとつだけなのか、まだ何かあるのかは分からない。けど、〈エンブリオ〉の姿が見えないし、特殊な武器を使ってたって訳じゃないからアームズとガードナーは除外。で、残るはキャッスルとチャリオッツ、テリトリーのどれかだけど、自分の予想としては自分が対象になったテリトリーかチャリオッツ。これが今考えてるフィガロの〈エンブリオ〉なんだけど、どう?」
「うーん、そうだね……」
あ、まずい。
「……ごめん、やっぱ答えなくていいよ。最初に大丈夫って言ったのについ聞いちゃった、ごめん」
「いや、でも……わかった。ペル君の意思を尊重するよ」
危なかった……ただでさえ誤情報を掴ませて流布させようとしてるのに、更に〈エンブリオ〉の情報なんて貰いすぎだ。
さすがに良心が咎める。
「うん、それでいいよ……よし!じゃあ気分転換も兼ねて、もう1回闘ろう!あと1回ならできるくらいには時間も残ってる事だし!」
「うん、いいよ、闘ろうか!」
……良かった、フィガロがノリのいい人で。
そのまま安堵と共に闘技場に入って、結界が作動して……今度は時間いっぱいまでやっても決着がつかなかった。
……いや、強化されすぎだろ……最後まじでやばかったんですけど……。
■
「で、負け越したと」
「いや、負けてない。引き分けただけ」
「いやいや、話聞く限り、お前の首切り落とされたんだろ?なら、負けだ」
「いやいや、フィガロも
「粉にした後に殺られたんだろ?なら、粉になっても戦えたっつぅ話だ」
……なんだろ、このまま言い続けても平行線な気が来てきた。
「で、肝心のアイツはどこ行ったんだ?」
「んあー、レベル上げに行くって……笑っちゃうよね、あんだけ戦えてまだ一職目の39レベルだったなんて」
それこそ、〈エンブリオ〉の補正にスキルの強化が乗ってもなお、天性としか思えない動きの良さに、勘の鋭さ。
断言出来る。アレは、妹の同類だ。それも、妹よりもタチの悪い方面の。
「そ、そうか……ぶふっ……」
……何が可笑しいんだ、あ?
ことと次第によっちゃァ……
「お?なんだ?何がそんなに笑えるって?」
「そ、そりゃおめぇ……ぐふっ……半分以下のレベルのやつに……ぶふぉぁ!……引き分けたって……だわっはっはっ!」
「……おうおうおっさん、喧嘩売ってるらしいな」
よろしい、ならば決闘だ。
「辞世の句を読め、カイシャクしてやる」
「はっ……ハッハッハ……てめぇなんぞに……ひぃー……負けるかよ……ぶふぉぉ!」
それでも尚立ち上がらず、それどころか余計にツボに入った様子のおっさん。
その様子を見てると、こう、無性に……腹が立つ。
「おっさん……3秒数える。それまでに起き上がんなければ……そうだな、粉にする。はいさーーーーーん」
宣言しても……おっさんは立ち上がらない。
いや、この様子だと、残りゼロって言った瞬間に立ち上がる心胆だろう。
馬鹿め!
「に《
「はっはっ……は?おま、ちょ!」
「自分は、3秒と、言ったよ?」
マッハ6で、今回は公転させた粒をおっさんに押し当てる。
はぁー、ここが闘技場の結界内で助かった。
でないと、ティアンの実力者殺害で御用だ。
「な、くそ、ちくし──」
不意を打たれ、秒間ダメージがえげつない
……思えばおっさんに勝ったのって初めてなんだけど……こんなに虚しい勝利があっていいのだろうか……。
「──くぉらぁペル・ナルシィー!お前ェ!」
自分が悟りを開いてると、なんかおっさんがキレ散らかしながら近寄ってきた。
顔真っ赤だし、血管が浮き出てるし。
これはもしや……
「大変だね、高血圧。ほっとくと血管逝くから気をつけてね」
「だぁれが死ぬ寸前の病人だてめぇ!言いたいことは山ほどあるが、さっきのあれはなんだァ!?」
「……ごめん、心当たりが多すぎて……」
「秒数だ秒数!3秒数えてねぇじゃねえかよ!」
そんなこと言ったって……
「おっさん、自分はちゃんと、
「何処がだ!」
「さっきの、さーーーーん、の時点で、2秒くらい?で、に、って言った時点で3秒たってた」
「紛らわしいんじゃボケがァ!」
「えー、自分はただ適当に声出してただけだよ?」
「……!……!……!」
あー、そんなにプルプル震えちゃって……そんなに悔し……待て。
待て待て待て、なんだその拳は!?その、どす黒くなるまで握りこんだ拳は、一体何だ!?
「待ておっさん、話せばわかる」
「……」
自分のその言葉に、おっさんの震えは止まった。
取り敢えず一安心か──
「ぐぼぁ」
「一回死んでこい」
風穴あけられたぁ……。
■
「で?実際のとこどうだったんだ?」
「フィガロ?天才鬼才秀才……ま、神童だね」
「やっぱりか……」
ところ変わって、いつかの喫茶店。
闘技場は他の人も使うし、おっさんの権力もそこまででかくは無い。
何より最近は使い過ぎだって、受付の人に言われたから……おっさんと二人して平謝りした。
で、取り敢えず落ち着いて話できるとこは無いかなっておっさんに聞いて、連れてこられたおっさんの行きつけ。
それがこの喫茶店だった。
あれから何回かは来てはいたものの、それは「女性」体の方でだ。
だから、「男性」体で来るのは地味に2回目。
取り敢えずいつも「女性」体の方で頼んでいるメニューを頼み、最初にでてきた紅茶を嗜む。
「……やけに手馴れてるな」
「とーぜん。うち、こういうの厳しいから」
普通の家庭なんだけど、嫌にこういうマナーに厳しいからね、うちの親。
まあ、そのお陰で大学入ってからしょっちゅういいとこの出だって勘違いされる。
顔も関係あるだろうけど、どうしたって仕草が伴わなければ下品に見える。
そしてそう見られるってことは、そういう目的の奴らに目をつけられるってことで……うん、あいつら、殺せるようなら殺したかった。
「お、おう……どうした、そんな真っ黒いオーラ出して……」
「ん……あぁ、なんでも……」
そういえばこのおっさんもそういう目的で声掛けてきやがったっけ……
「後で殺す」
「物騒だなおい?!俺なんかしたか?!」
見る分にはいい。が、実際に行動に移すなら、容赦はしない。この────
「ひっ!お、おまたせ、し、ししししました……!」
「……っと、失礼。いや、思わず思い出したくないことを思い出してしまいまして……」
やばいやばい、店員さん怖がらせちゃった……。
どうしても
「で、では、ご、ごゆっくりぃ……!」
あ、あー……。
思わず伸ばしかけた手を、ゆっくりと戻す。
次いで、視線を正面に向ければ……
「お前……何やってんだよ……」
「いや、その……はは……自分で、自分の地雷踏んじゃった……」
うーん、やっぱりそういう顔なるよね……。
分かってる、自分でも治そうとは思ってるんだけど、こればっかしは中々治らないんだよね……。
「……はぁ、ま、後で謝罪にでも行けよ。あの子、入ってまだ数ヶ月なんだからな」
「あー、うん……反省してる」
まじで失敗したなぁ。
はぁーあ……。
「で、話を戻すが」
「フィガロ?」
「いや、違う……違うとも言い切れねぇか」
見かねたのか、おっさんが強引に話を戻すけど、それはそれとしてなんだか煮え切らない話し方だ。
「フィガロ……と、俺を粉にしやがった、《
はあ、
「ちょ、おま、街中でスキル使うバカがどこいんだよ!」
「あ、ダメだったの?」
「あったりまえじゃねぇか!」
そうなんだ、初めて知った。
まあ、当然と言えば当然?危ないしね。
パッと、少しだけ作った粒をMPに戻して《魔力積圧》に投入する。
「で、それの話なんだが。
「んー、まあ?分類としてはそうなるのかな?」
大して気にしてなかったけど。
なんせ、さっき創った《
なんなら【サーラエレギー】の時だって、
「……聞くが、【サーラエレギー】の特典は魔法が作れる類の物だったのか?」
「いや?MPを溜め込むのに便利、くらいだね。これは自前」
信じられないものを目にしたように表情を歪めるおっさんを無視して、さっき運ばれてきたパンケーキにフォークを突き刺す。
……あ、美味しい。
「お前……それが何か、分かってんのか?」
「多少は調べたよ。スキルの作成、一部の魔法系の超級職、及びスキル特化超級職【
「違う……いや、それもなんだが、俺が言いたいのは属性だ、属性」
……あ、何となく理解。
「要は、対策立てるにしても何属性かわかんないと難しいってことね」
「……はっきり言えばそうなるな」
「んー……」
そっか、さすがに面と向かって教えろ、なんて、恥ずかしすぎて言えないよね。
でも、流石にわからなすぎも危険だから、こうして苦渋の顔で頼み込んでるっと。
さて、どうしようか、なんて。分かりきってることを自問自答する気は無い。
「この店の代金払ってね」
「……あ?」
「自分の作ったスキル群、システムが名付けるところによると、純魔力属性。特徴は最大MPによってダメージ0と100のどちらかを与えること。自分よりも相手の最大MPが下なら100、上なら0……ダメージは通らない。物理的に防がれた場合も同様。ただ、魔法系の攻撃なら純粋に込めたMPの量で勝負できる。ピーチちゃんを例に出すと、自分よりMPが上だからダメージは通らないし、ブレスは物理現象を利用してるよね?だから防げない。もし魔法スキルを使ったとすれば、基本自分が有利になると思う」