一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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襲撃

【試練を達成しました】

【ペル・ナルシーを今代【術神(ジ・オド)】として認めます】

【転職が可能となりました】

 

「……はあ……」

 

終わってみれば呆気ないもので、いまいちアナウンスに現実感がない。

何処かフワフワした感覚がある。

 

【サーラエレギー】の時ほど命懸けでもないし、分の悪い賭けじゃなかった。

フィガロの時ほど石の塔は常識外れな勘だったり、判断の速さを持っていなかった。

 

あと妹ほど、修羅では無かった。

 

総評として、弱くは無いけど、強くもなかった。

 

比較対象がおかしいような気も……いや、フィガロと妹が混じった時点でおかしい。

むしろその2人を出したのって、無意識よ?どんだけよ、あの(戦闘狂)2人。

 

あの石の塔、割と強敵な方だったんだなぁ……。

 

今まで戦ってきた相手が頭おかしかっただけ。

思えば、自分って強敵もしくはザコ敵、みたいな極端な奴としか殺りあった事がない。

いつの間にか基準がおかしなことになってたっぽい。

 

「ふぅぅぅぅ……よし」

 

だめだ、頭使い過ぎて考えが纏まらない。

流石に新スキル2つを……しかも、色々なスキルから要素を組み合わせてったせいで、フィガロと殺りあった時より疲れた。

 

てかアイツ、結局倒せたの?《星の視線(ガンマ)》がぶつかって、爆発したのは見たけど……その瞬間にあの空間から排出されたから、その後が分からない。

《陣魔眼》で超強化したし、かなりの威力……数十倍くらいにはなってるから、壊せたとは思う。

ただやっぱり、結果が分からないのは凄いモヤモヤする。

 

てか、目からビーム出した。

目からビーム、出した。

 

……

 

「ぶっふ!」

 

目から、ビーム、出した!

マジか、全男の子の夢、叶えちゃったよ?!

 

やっべ、後でアイツに自慢しよ。

 

「っとと、そうじゃないそうじゃない」

 

やっぱり駄目だ、思考があっち行ったりこっち行ったりする。

これは……直ぐに【術神(ジ・オド)】になって、性能確認したらすぐログアウトしよ。今狩りに出かけたら、有頂天すぎて叩き落とされる。

 

「おいしょっと」

 

善は急げ、直ぐに【ジョブクリスタル】に触れて、目の前のウィンドウの中から【術神(ジ・オド)】をタップ。

勿論、「女性」体……というか、今は「男性」体。

誰が見てるか分からないから、視界が切り変わった瞬間に《生命増躰》と《性別転換》を使った。

その判断は幸を成していて、少し辺りを見渡せば人がいるくらいには増えていた。

 

これで【カゲノワズライ】の効果は秘匿されたまま。

初見殺しの手札だからね、大事に切らないと。

 

パパパパーン

ピカッ!

ピュー……ドン!

 

「……はへぇ?」

 

……【術神(ジ・オド)】になった瞬間……なんか、派手派手だった。

 

なんかどこかで聞いたことがあるような無いような、荘厳な音楽が流れた。

【クリスタル】からは七色に輝く光の帯が自分を囲んだ後に、周囲に飛び散って同色の光の粒になる。

 

外からは一瞬強烈な光とともに、一泊遅れて何かが空に上がる音と、爆発する音……花火?

 

で、最後には空から自分に向かって一筋の光が伸びてきて……。

 

【【術神(ジ・オド)】をメインジョブに設定しました】

 

一瞬MPと──これは、SPかな?──で出来た後輪(ハイロゥ)が自分の背中に出現して、すぐに霧散していった。

 

……うーん、派手。

 

だって見てよ、周りの人達を。

 

手に紋章のあるマスターはポカーンとしてるか、動画撮ってたり、ログアウトしたり……反応は様々だから逆にわかりやすい。

 

じゃあ、逆でなくてもわかりやすいのは、って言われれば、ティアンの人達になる。

 

流石にこの現象は、超級職に就いた時特有のものだと思う。下級職の時は味気なかったし、上級職に就いた人を見ても、ここまでではなかったから。

だから当然、この世界では当然の現象として認知されてるんだろうね。

 

ほら、突然の現象に驚きつつも、一定の冷静さは残して察してくれる人に、どこかに走り去る人……どこかの組織の人が上役に報告しに行ったのかな?

あとは、純粋に尊敬の念を込めて見てくれてる人と、嫉妬の念を堪えきれてない人。あとは少数だけど攻撃態勢に入ってる人に、下心満々で見てくる……うん?

 

攻撃態勢に、下心……?

 

「やれ!《クリムゾン・スフィア》!」

 

『《クリムゾン・スフィア》!』

 

「顔はなかなか……体の方は貧相だが……ふむ……」

 

「《看破》……んー、やっぱり超級職。しかも、下級職が3つしか埋まってない……それが条件?それに【術神(ジ・オド)】?聞いたことないねぇ……あ、《ハンドレッド・ダーク・ピック》」

 

「くふふ、あの子はぼくちゃんが最初に目を付けてたんだからねぇ!?《雄性の誘惑(メール・テンプテーション)》!《雄性の誘惑(メール・テンプテーション)》!!」

 

「あ、お前ら!」

 

攻撃態勢に、下心……。

 

攻撃態勢に、下心ぉ?

 

「……」

 

こちとら疲れてんだ……。

なのに、よくもまぁ……人の地雷に、躊躇無く踏み込んでくれるなぁ?

特にそこの魅了スキル連発してるお前、お前だよ。ヒキガエルみたいな顔したエルフなんぞ、見たくなかったわ。

 

「《(Load)》」

 

陣魔眼(サークル)》は、《魔眼》を敢えて発展させた魔法補助スキル。

実は、作ってる時に思ったことがひとつある。

『あ、これ《魔眼》にしない方が楽』ってこと。

 

まあ、当然。

どうしても眼球内って条件だと大きさが限られるから、圧縮MPでゴリ押すしか無くなる。そうなると、上乗せ率とかの効率が悪い。

なら、普っ通に、空間に大きめの《陣》を描いた方が、燃費も効率も効果も、《陣魔眼》よりも良い。

 

まあ、かっこいいから使うけどね。

 

でも、今みたいな状況なら、こっち()の方がいい。

それに、便利なスキルも色々(・・)入手できたし。

 

……ぶっちゃけこの程度なら手動の方がいいけど、せっかくだからテストしよう。

術神(ジ・オド)】が多数保有するスキル、そのなかのひとつ、《魔力操作》。

MPの直接操作をアシストする、センススキル。

ぶっちゃけおまけ程度だけどあるだけマシ。

 

これを以て《陣》の構成を少し弄り……。

 

《魔力吸収》を追記した《陣》の中に、数他の魔法が飛び込み……。

 

はい、

 

「捕まえた」

 

魔法の制御を、奪う。

《陣》は、通った魔法に対してMPを注ぎ込み、強化する魔法スキル。

これが自分からの魔法なら、そのまま強化する。

そして相手からの魔法でも、MPを注ぎ込む。

 

そして、奪う(・・)

その魔法に込められた術者のMP……それを塗り潰し、制御権を強引に書き換える。

さながら、油絵が絵の具の重ね塗りによって表現されるが如く、表面上に見えるMPの所有者を、自分にした。

 

「……へー、これが【紅蓮術師】の奥義、《クリムゾン・スフィア》かぁ……確かに、自分のと構成……みたいなのが違うねぇ……一番の相違点は……あ、なるほど。魔力の質……ていうか変換?あー、そういうことかぁ……と、言うことは。こっちの《サウザンド・ダーク・ピック》は見た目通りの闇属性ってことで……変換の種類が違う?《ウォーター・ボール》……んー、これも違うっていえば違うけど、火属性の変換に似ている部分はある……。《ウィンド》……え?こっちの方が火属性に近い?うっそー……じゃあこれは?《ロック・パイル》……はぁ?!全く違う!えぇ……面倒くさ……」

 

見える、観える、視える。

術神(ジ・オド)】になった瞬間から感じていた違和感。

MPが、よくみえる(・・・)

いや、他のもよく見えるんだけど……MPに関しては、これまで以上に進化……それも、幾つもの歯車がピタッと揃って回転を始めた感じ。

それが《魔力眼》によるものか、そうじゃないのかまでは分からないけど……いい事しかないから、別にいい。

 

こうして、放たれた後の魔法スキルを掌握して、そこから構成を逆算(・・)する程度、簡単に出来る。

後で魔法関連について調べないといけないけど、今はそんなことは些細な問題。

 

何せ、魔法は構成さえ分かれば、その通りに手順を踏むだけで、発動するんだから。

なるほど、おっさんが頭を抱えるのも納得する。

自分の純魔力属性とは、真逆。

 

属性があると、魔力変換を前提にした構成を考えなきゃいけない。

でも、純魔力属性は、ただどういう感じの指向性を持たせるかを意識するだけで済む。

 

方や論理的に出来て、方や個人の才覚に完全に依存する。

これじゃあロストするのも分かる。分かりすぎる。

 

なら、最初に純魔力属性を習得して、次に属性変換を覚えた自分は。

 

「ははっ!せっかくだから混ぜて返すね!」

 

名付けて、《黒炎千針》。闇属性の生物のみの干渉能力に奥義の炎を混ぜ込んだ、生物にしか効果のない《クリムゾン・スフィア》が細分化した針。

《魔力供給》と《魔力吸収》の要素を使った……そうだね、《属性融合》とでもしとこうか。

 

それによって属性化したMPをそのまま混ぜて、共存させる、所謂複合魔法作成スキル。

 

当然の如く純魔力属性攻撃で、さらに闇属性と炎属性を加算した魔法。

生物特攻で、よく燃えて、最大MPが低ければ防御不可。仮に自分より上だとしても、今度は闇属性が仕事をする、正に防御無視攻撃。

 

「あっは!」

 

「くっそ、マジかよ!総員、退避!」

 

「えー……それ、ありぃ……?ホントのホントに超級職に就いたばっかの人ぉ?」

 

「ふむ……技術も申し分無い。ならば……」

 

「《雄性の誘惑《メール・テンプテーション》》!《雄性の誘惑《メール・テンプテーション》》!!!《雄性の誘惑《メール・テンプテーション》》ンンンン!!くっそ!なんで【魅了】されないんだよ!」

 

あと、さっきからそこの蝦蟇蛙ウザイ。

こちとら【魅了】完全耐性持ちぞ?効くわけなかろう。

まあ効かないからといって不快に感じないかといえばそれは否。

むしろ、余計気持ち悪い。

 

こう、ネチョネチョした流体で背中をしゅんっ、て擦られてるイメージ。

それが毎回だから……いい加減キショい。

 

「は、ひ……なんでぇ!」

 

安心していい、所詮は1000に別れ、威力もそれ以下に落ちた《クリムゾン・スフィア》だ。

精々、熱湯が一瞬かかったくらいじゃないかな?

ま、当然の報い、ってことで。

 

んで。次は……。

 

お、?

 

「はいはい、そこまでにしておくのね」

 

突然だった。

 

突然、幼女(・・)が現れたと思ったら、瞬く間に場を制圧されていた。

それに対して、やはり周囲の反応は二分……三分されている。

 

誰?ってキョトンとしてるマスターの殆どに、安堵の表情を浮かべるティアンと……『【妖精女王(ティターニア)】♡Love!』と書かれたハチマキを巻いたまま気絶するマスター数名。

 

で。自分の反応としては前者……誰?って感じになるんだけど……この人、いや、妖精かな。

 

ヤバい。

それこそ、MPの量でいえば【サーラエレギー】に軍杯が上がるけど……多分それ以外、いや、本当の(・・・)MPが分かんないんだから、もしかすればもしかすると、【サーラエレギー】よりも、もっと……。

本当になんだこの、妖精の形したアクシデント・サークル(・・・・・・・・・・・・・・・・・)は。

化け物か?

 

「そこのアンタ、何か変なこと考えなかったかしら?」

 

「いえ、滅相もございま」

 

「《真偽判定》に反応が出てるのよ」

 

「ちょっと化け物だと思いました」

 

くそう……またお前か《真偽判定》……!

こうなったら、せっかく操作できるようになったSPも利用して無効化スキルを……!

 

「はぁ……私が来たのは、新しく超級職に就いた人がいるって報告と……まあ、今の状況を考えたら、って感じね。実際、予想通りの結果になっていたようだけれど」

 

辺りを見渡す【妖精女王】。その目線の先には、制圧した襲撃者と、何故かおっさんがいた。

 

「で?私が来るまで、アンタは何してたのよ?」

 

「……いえ、そのぉ……」

 

「あぁ、アンタは”繁殖魔”だったかしらね。このヘンタイ」

 

……おっさん……”繁殖魔”なんて呼ばれてるのか……関わるのやめよっかな……?まかり間違って”繁殖魔の弟子”!……なんて風聞が広まったらやだし……手遅れ?いや、まだ大丈夫。

取り敢えず、荷物を纏めて……

 

「それで、アンタはアンタで何してるのよ。まさか、この惨状を見なかったことにするワケ?」

 

「あの、制圧したのはほとんど貴女──」

 

「黙らっしゃい」

 

「ハイ」

 

 




妖精女王は口調のデータが少なすぎて、ほぼほぼ想像の口調です。
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