一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
「……マスター?」
マスターって言えば、あれだろ?
【猫神】が有名で、死んでも死なない奴ら。〈エンブリオ〉とかいう何かを持っていて、その力で違う世界に行き来出来るっつう、おとぎ話の。
「そう、マスター。これ、証拠」
差し出された左手には、確かに伝承通り、不可思議な紋章が刻まれていた。
……こりゃあ……驚いたな。
居る居る、っつう話は聞いてたが、まさか本当にいるとは……。
偽物は重罪だし、〈エンブリオ〉が居ないと証明できないんだから、態々偽装するようなやつはそう居ない。まあ、御館様の話だと、特典武具をあたかも〈エンブリオ〉だ、って見せ掛けるバカは毎年のように出るらしいが。
そして、コイツはそのバカか、或いは本当にマスターなのか……。関係ねぇな、今は。
てかこれ、微妙に見ずらいな……人型ってのは分かるんだが、ぼやけ過ぎてて四重にブレてやがる。
「それで、【宝櫃】なんだけど」
「あ、あぁ……そうだった」
そうだよな、現実逃避、出来ないよな……。
聞いた事はあっても見たことがない奴がいたもんだから、ついそっちの方を気にしてしまったらしい。
とはいえ、とはいえ、だ。
この数の【宝櫃】、中身はかなりの高額換金アイテムだろう。基本ボスモンスターからしかドロップしないから、【宝櫃】自体もそれなりの価値がある。
というか、街の方だと中身より【宝櫃】の方が高い場合もあるんだったか……?
しかもしかも、だ。
こいつの取りだしたのは最低でも亜竜級ボスモンスターの【宝櫃】。このレベルになってくると、換金アイテム以外にもそのモンスターに関連した装備品が確定で出てくるはず。
御館様が時々持って来るから大体想像はできるが……それでも、この数は異常だろ。
それに、数は少ないとはいえ純竜級……上級カンストフルパーティーが勝てるかどうかの奴がある。
それが複数個……ひとつ怪しいヤツがあるが、それでも1つで一財産になる。
正直言って……欲しい。
幸い、御館様は推定超級職のこいつと同じく、
今後の村のことも考えれば、是非とも欲しいが……
「……先に、もうひとつの用事を確認したい」
アイテムボックスの容量的にも【宝櫃】を手放したいのは分かる。だが、逆に言えば
強者特有の感覚のズレか、或いは他に目的があるのか……。
「あぁ……【ジョブクリスタル】を借りたい」
「……超級職だろうに……必要なのか……?」
超級職が、今更……?
普通、サブジョブ全部埋まってるもんだが……。
「……?《看破》持ってない?自分、
──────。
「……嘘だろ?」
あれだけの攻撃を放つ奴が、超級職じゃない、だと?
嘘だ、絶対嘘に決まってる。
そう、嘘、嘘だよな?
最低でも、上級職カンストしてないと、おかしいよな……?
下級職3職目とか……俺と同じとか……!
ふざ……巫山戯てやがるのか……!
だが……だが!《真偽判定》が……!それに、さっきから発動しっぱなしの《看破》も……!
「……なんで、嘘じゃねぇんだよ……」
【
それが、俺に現実を教える。
見せ付ける。
───巫山戯るな。
「丁度3職目もカンストしたから、
「──」
4職目?上級職?
なんだよ、何なんだよそれは!
俺が!俺は!
……ッ!
「……少し、待ってろ……」
落ち着け……ここで……ここで騒いでも、悔しいがこの女には敵わない。
認めたくないが、認めるしか無い……!
「……
「……
クソ……マジで、落ち着け……!
みっともねぇ!そんな湿気た面で、それがお嬢に、坊ちゃんに合わせる顔のつもりか?!
「……ッ」
唇から流れた血の味がする。
もう、捨てた筈だ。ガキの憧れは!
だから長年門番で立ち続けたんだろうが!
本当に、落ち着けよ、俺……!
俺は、門番!仕事は、村を守ること!
そして……、ああ、なんだ……コレ、コレがあったじゃねぇか……。
「……忘れてた。コレを、手に載せてくれ」
懐から取り出したのは、透明な……いや、青い煙が内側に漂う水晶。
「これは?」
「……ただの確認だ、気にするな」
「ふーん……性別によって色が変わる感じ?」
なんの躊躇いもなく俺から水晶を受け取った女は、
別の意味で心臓が煩いが、構うもんか。
コレは……!
「いや……御館様のところに行くから、大人しくしてろ」
兎に角、御館様に話を通さねぇと……!
正直、運がいい。外から
■
「もう、逃げないか……?」
「ダメだよ。私は巫女、みんなの期待と希望の代行者。産まれた時から、それは変わんないよ」
だから、そんな悲しそうな顔をしないで欲しいな。
私、そんな顔の
これが、私のお役目、人生の意義。
「額玉を砕かれても、絶対に」
「……そこまで……!」
だって、そうでしょ?
私が巫女で
私一人と、皆。どっちが天秤に乗せた時に重いか……簡単だよね?
「だったら、俺も……!」
「ダメ。ラーフはお爺様のジョブを引き継ぐって、大事な役目があるでしょ?あ、私のも大事だから、お揃いだね」
何せ、先着一名の超級職。引き継ぐまで期間が空いちゃうと、他の人に取られてしまう。
ずっとずっと、この村の長が引き継いできたそのジョブを、私はラーフに引き継いで欲しい。
「エンジ、茶化さないでくれ……爺様の後継なら、きっと見つかるさ。ほら、樵のニノメルの奥さんがもうそろそろだっただろう?若しかしたら、就けるかもしれない。だから……」
でも、ラーフは分かってない。分かりたくないのはわかるけど、それでも、せめて現実は見てて欲しい。
でないと、私が巫女としての御役目を果たしてる時、何も出来なくなっちゃうから。
「もう、それじゃあ遅いの。超級職は一人しか就けないんだからね?お爺様ももう長くないって、散々言ってたじゃん」
「だが……!」
───ッ?!
「なんだ、この魔力……?!」
「……赤い……天、違う、火属性……?でも、少し……変?」
先祖帰りの私が感じ取れるのは当然として、ラーフが感じ取れるくらいに莫大な力。
魔力なのは間違いないけど、魔力が魔力じゃ無いみたいに……薄いというか、濃いというか……乳化した水と油みたい。
「モンスター……この前の〈UBM〉か?!」
「ううん、あの化物じゃないよ。魔力の
こんなに特徴的な魔力、間違える方が難しい。この前の〈UBM〉──【魔枯蓄精 サーラエレギー】は、私が今まで見てきた中でも一番に透明で、大きかった。
ぐちゃぐちゃに色んな色が混ざって、今は赤に染まってるけど、それでも分かるほどに別のものが混ざった魔力と見間違うなんて、絶対に無い。
「でも……吸ってるのは、同じ。延々と自然魔力がこの
周りから自然魔力が渦を巻いて吸い込まれて、魔法になってまた自然魔力になってて……凄い。
終わりが、見えない。
「人……?!なんでだ、立ち入り禁止のはず!」
「……綺麗……」
回って、廻って、巡って……キラキラとした、軌跡。
使って霧散して、自然魔力に還った魔力をまた取り込んでを繰り返す、一切の無駄が無い芸術作品。
【サーラエレギー】からも同じ光景を感じられたけど、この人は、人の身でそれを行えてる。
「くっそ、行くぞ!」
「え、あ……うん」
とと、違う違う。ボーッとしてたけど、違うでしょ。
今の時期に人がいるってこと自体、異常なのに、なんでこんなに大規模な魔法を使ったのかも分からない。
攻撃の意思がある人かもしれないし、今の魔法で門番の人に放たれていたのだとしたら。
魔力の流れは村の外に向かっていたとはいえ、安心はできない。
「畜生、なんで、今日に限って!」
「もう、泣き言言わないの!お爺様は動けないんだから、貴方が村を守るんでしょ!?」
運悪く、昨日からお爺様は病気で寝込んでしまった。最近は歳のせいか、魔力が日に日に衰えていたから、抵抗力も下がっていたんだと思う。
考えたくは無いけど……もう、そろそろかもしれない。
だから、ラーフには、早くお爺様のジョブを継いで欲しいんだけど……。
走りながら、私に気遣って並んで走ってくれてるラーフをチラリと見る。500レベルカンストのメインジョブ【
それなのに、相変わらず自覚が足りないというか、甘いというか、不安な部分が目立つ。この調子で私が居なくなったら、本当にどうなっちゃうのか、考えたくもない。
何か、変わるきっかけでもあればいいんだけど……。
「ぁっ!お嬢っ!坊ちゃんっ!は、ぁ!今、外に!門のところで!」
「アナタは、確か門番の……」
「丁度いい所に!何がどうなってるか、簡潔に説明しろ!」
「はぁ、っ!これっ!これが、赤く……!」
懐から、何か────。
「これ、は……!」
────。
「あいつ、今来やがった奴が!」
──?あかく?は、え?
「おい、嘘じゃ無いだろうな?!」
「ぐぅっ!本当に、赤く染ったんだ!嘘じゃねえ!」
ぁ、ぇ、ぁ……。
「っ!今すぐ、連れてこい!屋敷の方だ、行け!」
「わ、分かった!分かったから、早く、離してくれ!」
「っ!クソッ!」
らー、ふ?なんで?ねぇ、なんで?
「アガッ!
「さっさと!」
「す、少し待っててくれ!今すぐ連れてくるから!」
そんなに……どうして……。
「エンジ……行くぞ……!」
「ぁ……ねぇ、待って……待ってよ!」
「……なんだよ」
「なんで、なんで。そんなに……」
ラーフは……口を……歪めて……。
「嬉しそうに……笑ってるの……?」
今まで見た事ない笑い方を、していた。
「なんでって、そりゃ、お前が……」
「私が?何? 」
「……いや、なんでもない。行くぞ」
「待っ!痛っ、ちょっ、ラーフ!引っ張らないで……!」
「ねぇ!待ってよ!どうしちゃったの!?」
「ラーフ!話を!」
「ラーフ……!」
「……ッ!」
「……笑えよ」
──?
「笑えっつってんだよ!なんなんだよさっきから!
「ラーフ!!!」
「……ぁあ!くそ!」
ラーフ……。
「……どうせ、屋敷の方には来るんだ。掟破りだが、別にいいだろ。エンジ……分かってくれ」
「────」
……あぁ、そっか。ラーフ……あなたは……。
「……叱りたきゃ叱れ。いくらでも、嫌ってくれていい。たが。だが、な、エンジ……。俺としても、譲れない。こればっかしは、な」
「……」
「……とっとと、行くぞ」
今度は、優しく、引っ張られた。
あー……王レ・ダウの亜空間判定クソやわぁ……あれなければ8分台乗せれる確信あるんだけど……
あ、愉悦部の皆さん。カウントダウンは大体6か7くらいかな?で、お願いします。多少前後はすると思いますけど。