一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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仕事の合間に描き続けた、スランプ作。
つまり、初投稿です。


お喋り

「あ、おい……」

 

言って、御館様(ジジイ)はそのまま部屋を出てった。

ヨタヨタと、杖を突き、ふらつく足取りは見てて不安になるほど歳を感じさせる……少し前に、エンジが言っていたことが頭に過ぎった。

 

「……」

 

……いや、今は、それじゃない。

今は、コイツ(・・・)の対応だ。あのクソジジイ、気絶させるだけさせて後のことは任せた、だと?

アレ(・・)をジジイも見たからこその対応だとはわかるが、分かってはいるんだが……!

 

「ラーフ……大丈夫、大丈夫だから……」

 

「……!エンジ……ぁ……」

 

いつの間にか部屋の中にいたエンジに呼びかけられて、そのまま勢いよく手を取られて……気づいた。

 

いつの間にか白く、白くなるまで握りしめて、血が滲んだ手を見て。

ゆっくりとその手を開こうとして、震えているのを必死に隠そうとするエンジを視て。

 

「……」

 

「本当に、うん。私は、大丈夫、ね、ラーフ」

 

普段のエンジからは想像もできないような、気弱な目で、上目遣いで俺を見てくるエンジは……。

 

「あぁ!もう、クソ!目ぇ覚ませや俺ぇ!」

 

《念動力》起動!からの!

 

「グェ……」

 

痛え……やべ、ジジイに殴ら(ぶた)れたとこに当たった……。

だが、おかげで目が覚めた……多分。

 

「ラーフ……何してるの?」

 

「まあ、なんだ。まだジジイの子守唄(・・・)が抜け切ってなかったからな、気付け代わりだな」

 

呆れた目で俺を見てくるエンジ。何馬鹿やってんのとでも言いたげな風だが、これでいい。

さっきの目は……怯え、俺なんかに媚びるような瞳は、お前には合わねぇ。笑うまで行かなくても、せめてあんな顔浮かべんなよ。

 

「さて……待たせたな、客人(・・)。どんな話をしたかは分からねえが、ジ……御館様が認めたんだ。さっきの無礼を謝罪する」

 

軽く頭を下げ、見てみれば、何やら腕組みして首を傾げるあいつの姿が。

 

「……いや、うん。別にいいんだけど、さ。なんって言えばいいのかなぁ……」

 

仮面に手を当て、唸りながら何かを考えている様子に、エンジと目を合わせて倣うように首を傾げる。

 

「んー、あー……そう、うん。端的に言って、気持ち悪いね。調子狂うんだけど」

 

「……あ”?やんのかコラ」

 

「そうそう、こんな感じ」

 

……っスーーー……。

 

フゥーーーーーーー……。よし。

 

「エンジ、御館様は、何だって?」

 

「ええと……いいの?」

 

ハッハッハ。

 

「オヤカタサマハ、ナンダッテ?」

 

「あ、うん。ええと……取り敢えず、受け入れる方針みたい。【宝櫃】は多分倉庫に置いてもらえればいいし、多いようだったらリルを払って、だって。んと、ジョブクリスタルは使っていいって話だよ。あとは……今日の分の準備(・・)、を、手伝って貰う、って……」

 

……は?待て、ちょっと待て。3つの話の2つは別にいい、元々その話だったわけだから。だが、だ。

 

今日(・・)?明日、じゃなくて?」

 

ジジイが、今日の準備を手伝え、そう言った、と。

 

「えと……うん」

 

「あ、あーあー!わかった、わかったからそんな顔するな、な?」

 

エンジには悪いが、これは……。

 

思わず、唇の端が動いたのを意識して止める。だが、だとするなら……実に都合がいい時期に、来てくれたもんだな。

 

「あー……早速案内する。こっちだ、着いてこい」

 

「はいはい、分かりましたよ、っと」

 

取り敢えずコイツの怪しさは満点だが、使えないことは無い。

なに、悟らせなければいいだけだ、コイツにも、エンジにも。

 

「えっと、あの……」

 

「ん?」

 

暫く歩いていると、唐突にエンジが奴に声を掛けた。

まあ、奴もエンジも女だ。しかも、村に数人といない同年代の。

立場上、あまり気楽に話す訳には行かないから、普通のお話、ってもんに興味があるのは知ってた。

 

そして奴は……まあ、エンジが話してみたいってのも分かる気がする。

 

「何処から来たのか、聴いてもいい?」

 

「あー、うん、霊都アムニールから」

 

「へぇ、霊都から……私、1回だけ【妖精女王】様のライブ(・・・)を見たことがあるの」

 

「んんん”、いや、ごめん。ちょっと目にゴミが……まあ、そうなんだ」

 

「私よりも遥かに年上、って言うのはわかってるんだけど、やっぱり歌って踊ってると、可愛いなぁって思っちゃう。ね?わかる?」

 

「ア、ハイ、ワカリマス」

 

……《真偽判定》に反応しやがったぞコラ。

 

「自分の魔法で演出するから、歌と踊りにちゃんとマッチしてキレイに一体化してるし、歌声も綺麗だし、踊りも素敵だし……」

 

「うん、自分も見た(・・)事があるから、分かる、よ?」

 

「私、もう1回で良いから、見たいなぁって思ってたの」

 

「エンジ、それは……」

 

「あ、ううん、やっぱり何でもないかも!あはは」

 

畜生が、思わず口挟んじまったが、却ってエンジに気を遣わせるだけだっつうの!

 

「んー……だったら、近いうちに行く?絶対、確実に、ライブは見れる(・・・)だろうから」

 

「え……そ……ぅん、そうだね。お願い、してもいい、かな?でも、絶対に見れるって、どう───」

 

「着いたぞ、ここだ」

 

話の途中で悪いとは思うが、今はこっちの方が重要だからな。

目の前にある倉庫の扉を開けて中に入る。この部屋はジジイの親父の知り合いの知り合いの超級職……の誰かが造ったもので、外観と内観が合っていない。

なんでも、レジェンダリアの自然魔力が物体に与える影響を誘導して定着させた”生きた箪笥”、だそうだ。

……見る度に箪笥じゃねぇだろって思うんだが、野暮ってもんか?

 

「うわ……え、何この部屋。ちょっと気持ち悪いんだけど……」

 

「あぁ、お前はマスターだったな。見た目以上に広い部屋は初めてか?」

 

「えー、あー?うん?……あぁ、まあ、そうだね。正直驚いたよ」

 

「ま、でかいアイテムボックスだとでも思っとけ。生物が入れる時点で全くの別物だけどな。あー、と。【宝櫃】関係のアイテムボックスは……これか」

 

金と緑、それから赤で彩色されたアイテムボックス。これが【宝櫃】入れのアイテムボックスになる。最高級品だからこれ自体が一財産だが、この村ではせいぜいが便利な保管庫代わりだな。

 

「ほらよ、これに【宝櫃】を移せ。分かってるとは思うが、盗難防止に強奪防止は当たり前に付いてるからな」

 

「自分をなんだと思ってるの?適当に狩れば手に入るんだし、わざわざ盗むメリットがないんだけど」

 

「ハッ、正直者(・・・)のお前にはいらん心配だったな」

 

「よせやい、褒めてもサービス位しか出ないよ」

 

「……」

 

色付けておくねとか軽い口調で返された背後で、エンジがオロオロしてるのが見えた。

思えば、ここまで俺とウマが合わない奴ってのは、村の中にはいなかったからな。箱入り娘のエンジには少し刺激が強いか?

 

とはいえ、霊都の方に出向いた時のアイツ(・・・)と比べれば、この程度はチャチな問題か。

 

「これとこれと……あと、これ……あー面倒、全部入れちゃえ」

 

「おい」

 

何かえげつない事呟いてねぇかこいつ。

 

「だいじょぶだいじょぶ。自分としては要らない物の処分、そっちにとっては換金で大金が手に入る。だから、なんの問題も無いよ」

 

「いや、まあ、そう、なんだが……!」

 

「それにほら、もう全部入れちゃったから、もう自分には取り出せない。大人しく受け取っといて 」

 

渡されたアイテムボックスの中身を見てみると、確かに、かなりの量が入っているのが分かる。

てか逆に言えば、ボスモンスタークラスをこれほど倒しているということだ。

 

「……思った以上に多いな……追加のリルを払う。それでいいか?」

 

「上5個はサービスだから、その分のリルはいいよ。それに、自分の方からお願いしてるんだ。何回も言うけど、安く見積っていいからね」

 

「分かった。なら少し待て、見積もる……あいや、そうだな」

 

ちらりと視線を上げてみれば、相も変わらず何時もの元気がどこかに行ったエンジが見える。

 

……顔色、まだ少し悪い、か?いや、俺が少し心配掛けすぎたせいだな。

あまり気ぃ使わせてると体調崩すからな、エンジは。となると……。

 

あー、うん、そうする、か?少しくらいなら、寧ろさっきの様子を見るに……。

一つ、お節介を考えた。

 

「エンジ。俺はリルの準備だり何だりしてるから、コイツをジョブクリスタルまで案内してやってくれないか?」

 

「え、私?」

 

キョトンとした顔で自分を指さしたエンジに向かって頷く。

 

「計算に時間が欲しいからな。それに、エンジとしても色々(・・)話したいこと、あるだろ?」

 

さっきも話してた【妖精女王】の話とか、霊都の話とか……まあ、色々、だな。

考え、アイテムボックスを見るふりをして目を逸らしながら告げれば、想像通り、すこし強ばる気配を感じる。

 

「そういう訳でだ。お前はエンジに着いて行け……あぁ、傷一つ付けてみろ、殺すぞ」

 

「はいはい、指示には大人しく従いますよ。あと、自分らマスターは死なない(・・・・)ってこと、忘れてるでしょ。笑えるぅ」

 

「っるせぇ!殺せば3日は死ぬだろ!」

 

「ンー、そうだね、当然だ。殺せれば、ね」

 

嘲る口調に思わず殴りそうになって、グッと堪える。

偉い、俺。頭空っぽにして殴るところだった。

 

「ッチ……エンジ、頼んだ。これ以上コイツと喋ると手が滑っちまいそうだ」

 

「はぁ……ラーフ、女の子には優しくねって、忘れたの?」

 

「んぐ……」

 

……忘れては無い、が!

こいつだけは、こいつだけは……!

 

「もう……ほら、こっちだよ。行こ?えっと……その、ごめんなさい、名前を……」

 

「……ああ、名前?ペルって呼んで?」

 

……そう言えば、名前聞いてなかったか。いや、だから何だ、って話だが。

 

「ペル……うん。じゃあペルちゃん、着いてきて」

 

「ペルちゃん……ちゃん……あ、うん。わかった」

 

今氷系の魔法食らったみたいに硬直してたな……。

何気にアイツ、ダメージ受けてるし……この方向で詰めるか……?

いや……現実逃避は、しないでおくか……。

 

「取り敢えず、この大量の【宝櫃】の換金だな……はぁ……めんどくせぇ……」

 

多すぎんだよ、クソが……。

 

 

 

 

 

 

「オヤカタ様〜、オヤカタ様〜!返事してー!」

「ざんねーん!オヤカタ様寝ちゃってるよー!」

 

………………

 

「えー、またー?!オヤカタ様、最近寝てばっかりじゃん!」

「しょうがないじゃんか!交換(・・)まであと少しなんだよ!?あの(・・)状態のオヤカタ様は寝たきりに近いの!」

 

………………

 

「またまた〜そんなこと言って〜♪《念動力》の動き、アレ絶対寝てないでしょ〜♪」

「アレは僕!僕が動かしてたの!抜け殻(・・・)を!操って!代理権限で!ありがとうねチクショウ!」

 

………………

 

「ねぇ、じゃあ、いつ、起きる、の?僕、もうそろそろ、会いたい、んだけど」

「明日!どれだけ前から言ってるって思ってるの!?あーしーた!」

 

………………

 

「ふーん?まあ、いいけどさ?それよりもアイツ(・・・)、本当に放置してていいの?殺しちゃダメ?」

アイツ(・・・)はダメ!オヤカタ様が欲しいって言った(・・・)から!」

 

………………

 

「あ、じゃあ今回は3個(・・)なんだ?楽しみ〜」

「んー、どうだろ?なんか、1個だけは無理かもって言ってたから、2個じゃない?」

 

………………

 

「えー……まあ、オヤカタ様が言ってたならしょうがないかー……でも、アイツ(・・・)は使うんでしょ?」

「あ、アイツ(・・・)は凄い欲しいみたい」

 

………………

 

「よし!アイツ(・・・)、僕らのことおちょくってたからね、オヤカタ様と遊ぶんだ〜」

「ねぇ、1番おちょくられたの僕だからね?僕が1番目に遊ぶんだからね?ねぇ?」

 

………………

 

『えー!?』

「えーじゃないの!僕が最初にオヤカタ様と遊ぶの!」

 

………………

 

「なにを〜!」

「やるかこのー!」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

ほほー?へぇー?ふぅーーーーん???

 

 

 

「ねぇ、あの、ペルちゃん、どうしたの?」

 

「ん?いや、なんでもないよ?……いや、ごめん、ちょっと嘘ついたかな。羽虫(・・・)が耳元で鳴いてて(・・・・)、気が散っちゃったみたい」

 

「あ、分かる。もうちょっとで寝れるーって時に耳元で飛ばれると、気になって気になって起きちゃうもんね」

 

「へー。それ、こっちでも一緒なんだ。あっちでも寝てる時に耳元で飛ばれると、すぐに起きちゃうんだよね」

 

「え、もしかして、これってどんな世界でも共通なの?あの五月蝿い羽虫の音」

 

「そうそう、あのすんごく煩い羽虫(・・)

 

 

 

 




改めてなんですが。

私は、ペルくんちゃん”を”好き放題して、好き放題”に”デンドロさせるために描いてます。
つまり、どういうことだってばよ。

あ、それと関係ないですが、ちょっとした疑問が。
デンドロ内で「メートル」は「メテル」ですけど、「センチメートル」ってなんでしたっけ。
教えてもらえれば幸いです。
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