一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
「へー、なんか、凄いね」
私の村のジョブチェンジ施設は、他の村や遺跡、それに霊都にあるそれと比べても見劣りしないどころか、特に奇妙なものである……らしい。
偶に来る放浪人や議員、それに色んなところに行って見聞を深めているラーフから聞いた話だから、間違いじゃないと思う。
私としては生まれ育った村の中にある日常の風景だから特にこれといった違和感は無い。それに、1度だけ行った霊都でもジョブチェンジする機会は無かったから、私もこの村の中のものしか知らないってのもあるかな。
でも、目の前の
「外から来たみんな、コレを見るとそう言うんだよね……やっぱり、他のとは違う?」
「まあ、そうだね。自分は霊都しか知らないからネット……あー、マスター同士の情報共有の場、っていえばいいのかな?そこでしか見たことないから確かなことは言えないけど……うん。なんだこりゃ、って感じ」
「そう、なんだね」
一応、古い文献を漁っていくと、この村の出来た当時の記録も残っていて、そこにこのジョブクリスタルの記述もあったりする。
する、んだけど……うーん、これ、言ってもいいのかな?
まず間違いなく信じて貰えないだろうし、何より私も信じてないようなことだから。
「遠目に見た時は明らかに一枚岩なのに、至近距離で見ると実は年輪の無い黒っぽい木を隙間なく組み合わせたログハウス。これだけでも凄いね」
「あ、そこなんだ」
「そりゃ、ね。だいたい、このサイズのログハウスがたった1本の木でできてるとは思えないから。間違いなく、数十じゃ効かない数の、同じ種類の木があったとみて間違いない。でも、それだと疑問がある」
ゴソゴソと、ペルちゃんはアイテムポーチを漁り出した。だいぶスッキリしたって喜んでたし、あの量の【宝櫃】を入れてたんだから、てっきり不要な物は入れてないと思っていたんだけど……。
少しして取り出したのは、私だと持ち上げるにも苦労しそうな丸太。それも、割と長い。
目算だけど、大体5メテルはあるんじゃないかな?このジョブチェンジ施設がそのくらいだったはずだから。
「これ、ここら辺で1番多く生えてる種類の木ね。そして、ここをこう、スパッ、とね 」
ペルちゃんは、魔力を手刀に纏わせて、丸太の下部分を切断した。
……え?
「……え、ちょっと、え?」
「で、これを見てみると、ほら。年輪がビッシリ。少なくともここら辺の木でできてる訳ではないってのが分かるね。まあ、全部切ったか何かで絶滅した可能性はあるし、もしかしたら希少種ってことかもしれないけど」
「えっと、その木、30セルチメテルもあって……しかも、すごく硬い種類で……」
家を建てる時に、壊れにくい上にそこら辺に生えてるから、外壁は全部それにするって聞いたことがあるんだけど……。
「あ、そうなんだ。集めて即席の盾にしようかなって思ってたんだけど、もしかしていい加工法でもあったりするのかな?後で職人さんに聞いてみるよ。それで、この建物、まず材質からして有り得ないってことになるね」
それに、と呟きながら、手馴れた様子で丸太をアイテムポーチに戻していく。
それよりも、私としてはさっきの手刀が恐ろしいんだけど、そこら辺は触れない方がいいのかな。
「それに、岩なら有り得なくはなかったけど、木組みの家だと思えばヤバいよねこれ。全部が全部、負荷が絶対逃げない構造だし。何で崩れてないの?」
「昔からこの形だったから、私には……」
それに、ある人がいつの間にか、一晩で造ったって書いてあるだけだったから。流石に一晩で造るには手間ががかかりすぎるし、材料も何も準備した様子がなかったらしいから、大分怪しい由来なのは間違いないけど。
「まあ、あとはこれだよね。なんか見てるだけで正気度《SAN値》が
「さん……え?」
「手っ取り早く言えば、頭がおかしくなりそうってことだよ。なんか、成立しそうで成立しなさそうなのにこうして成立しちゃってる不気味さがあるからさ」
「??」
えっと、マスターの方では通じる言葉……なのかな?
私には少し、分からない言葉だから。
「ゲームだし、それにレジェンダリアだし、そういうもんなのかな。まあいいや、早速使っても?」
「え、あ、うん。中に一つだけクリスタルがあるから、それを使って貰えればいいよ」
「ありがと……出来れば、一人で入りたいんだけど……いいかな」
いいかなって、それは……
「もう色々と察してるようだからだけどさ。ほら、自分って諸々隠してるでしょ?顔だって未だに見せてないし」
「うん、そうだね。何かペルちゃんに秘密があるっていうのは私でも分かるし、ラーフもそれでピリピリしてたわけだから」
「自分が秘密主義者ってのもあるかな。あまり表面的なこと以外知られるのは好きじゃないんだ。勿論、知られる必要があるならしょうがないことだけど。でも、自分にも事情が少なからず有るからね、ここは飲み込んで欲しいな」
ペルちゃんは、真剣な声で私を説得しようとしてる。
顔を見せてくれないのも、他に何かを隠してるのも、ペルちゃんなりの事情があるってのはちゃんとわかってる。
でも、ペルちゃん……
「えっとね、ペルちゃん」
「あぁ、その分祭りの準備は精一杯やらせてもらうよ。なんてったって部外者の自分を使うってことは、それなりに危ない所の準備とかでしょ?大丈夫、きっちりしっかり────」
「この小屋、1人しか入れないの」
「────はい?」
「中を見てもらえればわかるんだけど……ほら、幾何学模様が書いてあるでしょ?アレが自然魔力に干渉してギリギリの所で安定させてるおかげで、2人以上の魔力が混じると一気に破綻しちゃう……らしいの」
誰も怖くて確かめられてないけど、文書には確かにそう書いてあったのを覚えてる。
破綻するとどうなるかは抽象的で、ただ凄いことが起こるよってしか書いてなかった。
「だから、その、元々1人専用なの」
あ、凄い。仮面越しでも分かるくらい、ペルちゃんの顔が真っ赤になったのが分かる。
だってあんなに耳が真っ赤で、顔が赤くないなんて、そんなことありえないだろうし。
「ええっと、そのぉ……し、しばらく1人にさせて!」
「あ、ご、ごゆっくり?」
……あわあわしてるペルちゃん、可愛い。
■
「酷い目にあった」「酷い辱めを受けた」「しかも今日1日は拘束されるって、ま?」「しかもこの幾何学模様、マジでやばいし」
「まあ、いいや」「ようやくジョブを変えれる訳だし」「
「あ、ヤバい」「壊れる、ゲームバランスが壊れる」「何がヤバいってこれ、量産品」「そりゃそれなりの手間はかかるけどさぁ」
「まあ、【
「よし、
「にしてもなんか」「きな臭いなぁ」「祭りってのも」「怪しすぎるし」
「それにあの羽虫ども」「居なくなったよね」「この村に入った途端に」「不自然な程に」
「不自然と言えば」「あの葉の嵐」「あれは間違いなく 」「《念動力》だった」
「そして、”オカヤタサマ”」「さっき会ったのも、”オヤカタサマ”」「同じヤツ?」「違うやつ?」
「あの
「……この村」「なんとなーく」「一筋縄じゃ」「行かなそうだね」
「因習村的な?」「最悪としては」「生贄になりそう」「実際【生贄】だし」
「ギリギリ」「
「てか【異能力者】って何」「名前からして」「あいつの」「下位職だよね」
「しかも初発見ぽい?」「wikiには載ってなかったし」「ワンチャンこの村固有?」「ラッキーだから取ったけど」
「それはいいとしても」「逆に
「普段使い」「しまくってるから」「むしろ無かった方が」「不自然だったけど」
「当然のごとく」「コレは自分が」「初発見だろうし」「上手くやればいける?」
「あ、てか」「ちょっと」「時間」「掛けすぎた」「やばいやばい」
「ん?」「なんか」「違和感」「あるような」「ないよう……な?」
『…………んんんんん?????』
■
「あ、おかえり。……その、結構時間掛かってたけど、大丈夫そう?」
ペルちゃんが小屋に入ってからかなりの時間が経ってるわけだけど……。
なかなか出てこないから、扉をちょこっとだけ開けて覗いてみようかな、なんて考えてたら、ひょっこり出てきちゃった。ちょっとだけ残念。
待ってる間、ずっと立ってるのも何だし、ってことで展開してた《念動力》を消して、っと。
これ、子供の頃からやってるんだけど、何でか皆が皆しらーっとした目で見てくるんだよね……。
でも、そんなにおかしいのかな?ただ《念動力》の形をいい感じに天蓋付きのベッドっぽく整形して、寝転がるところの質感を、それこそ水に近いようにしてるだけなんだけど……。
そう言ったら、今度は微妙に温い視線を貰ったのはなんでだろ。
「……うん、何とか、大丈夫だよ……ちょーっと想定外が重なり過ぎて、疲れてるだけだから」
あははーって陽気に笑ってはいるけど、なんか、ペルちゃんの背中にドンヨリとしたオーラが乗ってる気がする……。
「そ、そうなんだね。なんだか、一気に重い雰囲気になっちゃったから……聞いたことしかないけど、〈重力の井戸〉に来ちゃったのかと思う位だったよ?」
「大丈夫、ほんと、大丈夫……凄いナチュラルに爆弾落とされたような気分だけど……うん、まあ、なんとかなるさ」
「それは大丈夫って言わないんじゃ……」
うーん、もしかしてこの小屋、マスターと相性悪かったりするのかな?
この小屋を造った人、ジョブも特典武具も、何も使ってないのにこの小屋造ってる訳だからね。中の幾何学模様も、私達からしてもかなり嫌な雰囲気はあるから。
「てか〈重力の井戸〉って何それ、行ってみたいけど行ったら後悔しそうな雰囲気があるんだけど……」
「え、あ、そっか。マスターだから知らないのも無理ないよね。うん、行かない方がいいよ。まず間違いなく死んじゃうだろうから」
「急に辛辣ぅ……え?何?名前からして潰れる感じ?こう、プチって」
「うーん、プチって潰れるならまだいい方で、大抵は少しも動けなくなるだけっぽい?まあ、あとはモンスターに無抵抗のままヤられるらしいけど」
「こわぁ……こわぁ……」
「ふふっ」
ちょっと脅かしすぎちゃったかな?でも、さっきまであったドンヨリとした雰囲気は鳴りを潜めたし、うん。結果良ければ全てよし、だね。
「それでそれで、どんなジョブに就いたか、聞いてもいいかな?あ、勿論無理にとは言わないけど」
「む」
あ、やっぱり無理、かな?
あれだけ色々隠し事してて、しかも多分だけど、ジョブの方も本当の事は言ってなくて、なのに今私が聞いたくらいで教えてくれる感じじゃないよね。
それに、私に聞かれて答えたってことは、それがそのままラーフの方にまで伝わっちゃうってことだし。
私にそんなつもりがなくても、ペルちゃんから見ればそうとしか思えないもんね。
腕を組んで、唸りながら考えてるくらいだし。
「……まあ、アドバイス貰える、って思っとけばいいかなぁ……【
「……え、うそ、え、【異能力者】?でもそれ、村でも適正持ちが少なくて……」
村の中でも、私とラーフ、それに
「あー、適正云々は……えーと、マスターって、条件さえ満たしちゃえばどんなジョブにも就ける、云わば万能の適正、ってのがあるから……」
万能の、適正……。どんなジョブにも、就ける、って、それって……。
『いいか、エンジ。お前は────』
私達ティアンと、マスターの、根本的な違い。
「あ、そう、そうなん、だね?ええっと……あはは、ちょっと、凄いって言うか、狡いっていうか、なんというか……」
あぁ、だから、なんだね。
『ダメだ!俺がやる!エンジを────』
死んでも死なない、とか。ステータスが高い、とか。エンブリオがある、とか。
「それでこのジョブ、どんな上級職に派生してくとかは教えてもらえたりするかな?【念動力者】に【発火能力者】ってのはアイツがそうだから分かるけど」
そんな問題じゃなかった。
そもそもの、生物としての、構造の違い。
だから、私とラーフ以外に、ペルちゃんも
「……えーと、エンジさん?」
「……あ、ご、ごめんね?ちょっと思い出してたっていうか、なんというか」
じゃあ、ペルちゃん以外のマスターも、同じ?
万能の適正を、全員が持っていて、それで……
じゃあ、私の、ラーフの、お爺様の、御先祖様たちの、想いって、一体……
もう……■方■■だ■で■■■■■ゃな■?
30センチの木でも十分でかいからね?
センチってセルチで本当にいいっけて?