一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
楽しっ!やっべ!!
という訳で、もうこれ書いてて一気に放出しないと熱量下がると思ってるので3話更新します。あ、本日初投稿です。
1/3
□
<???>
むかしむかし、と言うほど昔でもないけど。
あるところに、と名乗れるほど、辺鄙な土地でもなくて。
ある特別なものがあった、と付け加えられるほどのモノは、顔以外なくて。
はっきりいって、顔以外は平々凡々、才能も普通レベル。
友達に恵まれたのがラッキーだった、そんな男の子がいた。
『あの、……先輩』
『ん?どうしたの?──』
「……」
”……”
異様にモテる顔を少々持て余しながら、それでも日々を過ごして早17年と少し。気づけば学び舎も終わりを見据えるある日の放課後。
少年は、同じ部活の後輩から告白された。
『……』
『……』
「…………は」
”……”
数えるのも億劫なほど告白された少年としては、断るのは簡単なことだった。
相手を傷つけず。かと言って後腐れも残さない。
口に出すのも慣れてしまった断り文句をさて、と用意しながら、されど一抹の迷いの風が吹き抜けた。
思い出すのは、最近彼女を作った友人の顔。
見たこともないほど崩れた顔面で、幸せそうに手を繋ぐふたりの後ろ姿。
『……うん、いいよ』
『……ぁ』
「…………はぁ」
”……”
全く見知らぬ他人、という訳では無いし、真面目だというのは普段の部活に取り組む姿勢から把握している。
何より、長い人生、一度も男女交際の経験がないのはそれはそれでどうかとも思ったのもある。
だからつい、了承の言葉を口に出してしまったのは、思いがけず少年にも彼女を密かに想う気持ちがあったからなのか。
今にして思えば、というのは、
まあ、もし戻れたとすれば、この告白自体されないように立ち回るけど。
『っっっ!』
『あ、あー、泣かないで、ね?ほら』
「……で?」
”────”
夕陽の赤に頬を照らされ、静かに泣き出す彼女の顔を果たして、【僕】は覚えてても【自分】は思い出せるか。
答えは、今も差し出した白いハンカチを取り払えないあたり、かな。
「君は……どっち?いや、
”───”
「あぁ……お前か」
■
【
「で?これはどういう状況なのか……聞くまでもないか」
格子の隙間から覗く月の光が少し、目に痛い。
「ねぇ、エッチなのはダメですって、自分言わなかったっけ?」
《魔力感知》で感じる牢の外側の人物に、話しかけてみる。でもまあ、正直、返事は期待してない。
「あぁあぁ、これはご丁寧に。仮面まで外されてるや」
一応外れないように工夫してたとはいえ、それは戦闘中に動いても外れないように、という方面でだったからなぁ。人の手でなら簡単に外せるか。
「てか……」
今まで【カゲノワズライ】が万全な状況で【気絶】したことがなかったから気づかなかった。
これ、どれか一体が【気絶】したら他の個体まで【気絶】する仕様になってるっぽい。
これまで色々と、それこそ【従魔師】やら【獣戦士】のバフを悪用してきたわけだけど、今回はそれが仇になった感じかな。
まあ、考えてみればどれだけいくつの体を操作しようとも、自分というマスターは結局1人なんだから、うん、しょうがない。
意識の一部だけ【気絶】とか、ぶっちゃけ意味わかんないし。
逆に言えば、もし自分と似たような〈UBM〉がいるとすれば、一部だけを【気絶】させればいいんじゃないかって気づきもあったから、無駄じゃないはず。
「はぁ……
他の自分もこっちに向かってるけど……これ、大丈夫か?来れる?かなり
こちとら逃亡中の身でありまして?いざと言う時にこのせいで負けましたー、死にましたー、なんて、したくないんだけど。
「て訳で、そろそろこの拘束を解いて、解放して欲しいんだけど?」
「……」
「んー……さっきから
「……っ」
「お、やっとこ反応あったね。てか、その様子だとマジで……?あ、ごめん、自分は普通の異性愛者だから、お前みたいな優柔不断野郎はちょっと……」
「誰が……!っ!巫山戯るのも大概にしろ!状況が分かってねぇのか!?」
「いやいや……分かってるからこそ、こうやって軽口叩いてるんだから。そこは察してよ、
敢えて裏声(結構得意)を使ってイントネーション付けてみたら、面白いくらいに頬を引き攣らせる。
まったく、やった時は面白いけど、いざ反応を見ると一気に気色悪くなるなぁこれ。
「さてさて、顔が真っ赤なソラーファくん。真面目に聞くけどさ、毒……まあ、毒か。
「てめっ、なんでそれを!」
「
「何処まで───」
あー気色悪い。消化される様子がないから胃とかでは無いだろうけど、それでもアレの体内にいるって状況が嫌だ。生理的に無理。
「答えろ!どうやってアレを知った!?アレは──」
「
「──ッ!」
気づいたのは割と最初の方。
そもそもとして、自分がこの村に来たのは
この時点でかなり作為的なものを感じたし、この村の中ではパッタリと
早ければ5分も経たずに、ゴキブリかってくらい湧き出てきてたのに、それすら無いのはおかしいよねぇ?
「黙れよクソが!なんなんだよお前は!いきなり来やがって、滅茶苦茶にしやがって!なあおい!」
顔を歪めて、思わずって感じに格子を殴りつけてきたソラーファに、寧ろいい笑顔を返してやる。
事情はうっすら想像できる。多分、エンジが今代の生贄で、この村はその生贄で存続してきた因習村。で、エンジは生贄としての自覚があって覚悟が決まってたけど、コイツは中途半端だった。
生贄にはしたくないけど、しないといけない。
どうにか抗ってるけど、本人にそのつもりが無い。
そんな時に自分なんかが来たもんだから、まあ、ぐちゃぐちゃになったんだろうな。
あの門番、水晶握って赤い色になった瞬間に目の色変わってたし、なんかあるだろうとは思ってた。そんで、報告に走って、あるよこれよと村で1番でかい屋敷にご案内よ?
挙句祭りの手伝い?普通余所者にさせること?それも、態々禁足地指定してまで隠してきたことに?
疑ってくださいって言ってるようなもんでしょそれ。
まあ実際、こうして捕まってるわけで、油断してたって言われればそれまで。
……ただの水が口に入る直前で毒になるとか思わなかったわけだけど。
エンジが渡してきたから油断してた、少なくともエンジは自分が邪魔だっていう雰囲気が隠せてなかったし。
寧ろ自分が自分の役割を果たすために積極的に村の外に出そうとすると思ってたから、意外って言えば意外かな。
まあ、それはともかく。
「いきなり、ってのは特に否定はしないよ。
ガンッ、と。
さっきの意趣返しってわけじゃないけど、もう一度、今度はこっち側から格子を殴って音を立ててやる。
「甘えんなよ。遅かれ早かれ、ソレはお前が腹括って覚悟決めれば良かったもんだろ。嫌ならさっさとあの子を連れて逃げればよかったんだ。それをしなかったのが今のお前で、だからこその今のあの子だ。ぽっと出の余所者に責任押し付けてんじゃねぇぞ」
……っと、まあ。偉そうに言っても、結局は、同じ穴の、か。
嫌だねぇ、無駄に昔の夢を見たせいかな?だから、思い出したくなかったのに。
「ぐ、ぅう!」
そしてこいつの反応は、ぐうの音が出ただけ。うん、くたびれ儲けだなこりゃ。
もう少し骨のある返答を期待してたってのに、弱い所を突かれたらそれだけでこうなる。
「結局お前の思惑は、自分を代替の生贄にしてエンジを延命させる、ってとこでしょ?」
「っ!それの何が悪いッ!お前らは、お前は!マスターだ!死んでも生き返る、それを殺して何が悪い!どうせ死なないなら!あいつの、エンジの為に死ね!」
「うーん、若干正論。そりゃ、自分は死んでも3日もすればまたこの世界に
ここで【生贄】ジョブ持ってる自分が、文字通り生贄にされたら、【カゲノワズライ】の挙動的にちゃんと復活できるかどうか分からないってのがひとつ。
十中八九されてるだろう指名手配のせいで、セーブポイントが【監獄】しかないから、死んだらそこに行くしかないってのがひとつ。
あと、【カゲノワズライ】で増えた自分、そんなこんな言ってる間に全滅しちゃったから、残ってるのは
やっぱり【気絶】して無防備になってたのがでかかったよなぁ。せっかく隠れてても、そのせいで羽虫共に見つかったし。
「というわけで、お前は自分を生贄にしてエンジを助けたい。でも自分は死ぬわけに行かないから、どうにかしてここから抜け出したい。なら話は簡単だね」
「簡単……待て、お前何するつもりだ!?」
「何って、もっと話を簡単にするだけだよ?」
この格子、流石デンドロと言うべきか、流石レジェンダリアと言うべきか、普通に鋼以上に硬い金属製だ。さっき殴ってみた感じ、脆くもない。
でも、隙間はある。
「自分が暴れるから、お前らは暴れる自分を殺さなきゃいけなくなる。仮に自分が死んでも、復活するのは3日後だ」
そして再ログインできるのが、この村の中とは限らない。
本当はログアウト出来れば良かったんだけど、ここはあの線虫の腹の中。
接触状態だからログアウトは不可能。じゃあ、こうするしかないよね。
「3日もあれば、祭りは終わる。言っとくけど、マスターには最終手段として自害システムが搭載されてるんだ。捕らえるなんてそんな思い込み、無意味だよ」
お、顔色変わった。気づいたな?今この瞬間、自分が自害すれば全てが終わるって。
まあ、今はする気がないけど。自分としてもかなりの悪環境、抗って抗って抗った末にそうなるなら甘んじて受け入れよう。
でも、生き残れる可能性が僅かにあるなら。
それなら、その可能性に全ベットしよう。
「という訳で、派手に暴れることにするよ。ま、せいぜい楽しもっか?」
「クソ、クソがァァァ!!」
叫び声と同時に《念動力》が伸びてくるけど、遅い。
自分を、自分のMPを止めたきゃ、最低でもマッハ
「っいっしょっと!」
「くっそ……が、あ?」
針状にしたMPを、ソラーファの胸……それも、心臓に突き立てる。
もちろん、純魔力属性、それから……。
「そろそろお前も、コソコソ隠れてないで、舞台に上がれ!」
固定ダメージ魔法。
当たった部位に設定したダメージを与える魔法でもって、こいつの心臓に寄生する線虫を殺す。
原理としては、注射みたいな形かな。純魔力属性の外殻で肉を切り裂いて、内側の固定ダメージでしっかりと内臓を壊す。如何に膨大なHPを抱えてようと、心臓を破壊すれば殺せるっていうコンセプトから作った魔法スキル。
まさか最初に使われるのが用途外の殺虫だとは、流石に思わなかったけど。
『Gi、iiiii───?!?!』
「ぐ、ぉぉぉ!?」
「ありゃ、これは……ちょっと予想外、かも?」
予想では、心臓に寄生してるように視えた害虫を殺しても、コイツには何のダメージも無いだろうって感じたんだけど……アテが外れた。
害虫の頭に突き刺して破壊したから、線虫自体は死んだ。けど、その瞬間にコイツも苦しんでる様子だから、まさかまさかの共生関係だったっぽい。
うえ、気持ちわっる。こんなやつと共生とか、想像すらしたくなかったんだけど。
多分連続更新後の自分が後書きはまとめてくれてるんじゃないかと期待。覚えてればな。