一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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赤、それは、第3の権利である

『Giiiii───

 

「まずは1ぴ──」

 

──AaaAaAAァぁア!!!痛いのだが!?めっっっっちゃ、痛いのだが!?って、我の眷属死んでるのだがぁ!?』

 

「うるさっ!っ、巫山戯──!!」

 

咄嗟に牢屋に対して地属性を利用した構造強化を掛ける。空間全体に響く声に気を取られて、この部屋が揺れているのに気づくのが遅れた。

生物の内臓なんだから、当然収縮運動が起こって当然。それを反射で考えられてたから潰されずに済んだけど、無数に罅が入った壁にちょっと冷や汗が。

下手しなくてもこれ即死じゃん。

 

『あ!寝る前に《感覚共有(スキル)》切り忘れてたのだ!これはやってしまったのだ……あー!やっぱりSP半分位しか無いのだぁ……』

 

「ッさっきから、のだのだ五月っ蝿い!」

 

《陣》を構築、《飛翔魔剣》10連抜刀。先ずは小手調べ、狙いは周囲に、適当に!奴の体内空間なんだから、どうせ何処にやっても当たる!

 

「行け!」

 

《陣》を通して強化した《飛翔魔剣》を放つ。胸を押さえて四つん這いになったソラーファを一応避ける軌道で操作した《魔剣》は、罅だらけになった石壁を易々と破壊してその向こうに見える生々しい色の壁に突き刺さ……刺さらない?!

 

「あ、やば」

 

コイツ、MPの最大値が自分よりも──

 

『んん?んーー???何となーく、懐かしい魔法の気配なのだ。これは……あ!思い出したのだ!あれなのだ、格下殺しにしか使えない純魔力属性なのだ!うわー、懐かしいのだぁー!』

 

──え、コイツ知ってるの?wikiでも出てこない、俗に言うロスト属性だってのに?

っとと、危うく構造強化を切るところだった、危ない危ない。

やっぱり脳みそが1つしかないと、スキル化してない魔法の維持って割と大変だ。並列処理するにも演算力が違いすぎる。

 

てかまずい。非常にまずい。

割と今まで純魔力属性に頼ってきた都合上、自分の戦い方ってソレありきになってる節がある。

だからこれが通じないってなると、戦力半減。今の状況的に、結構もう詰み始めてる。

 

『あ、よく見たらお前、追加の器なのだ?そこに転がってる器は男だから要らないけど、褒めておくのだ。しっかり《思考誘導》に載ってくれて助かったのだ』

 

「ぅ、ぐ、ぁぁ……!なに、言ってやがる……!」

 

『ん?今の器から聞いてなかったのだ?我の眷属が体にいると、我の都合のいいように動く《思考誘導》がかかるのだ。効果は弱いけど、その分自分で考えたみたいに自然に行動できるのだ』

 

流石我流石、と続いたけど、こっちはこっちでアイツやエンジの行動の不明瞭さに納得がいった。

コイツはエンジを助けようとしてる癖にずっと村に居続けるし、エンジは自分を追い出せば良かったのに態々毒を盛って生贄にするし。

 

何処か、不合理さがあって、違和感があった。

だけどこれが、推定オヤカタ様(・・・・・)の言った通りに都合のいい様に誘導された結果なら、まあ、理解は出来る……かな?

 

「ふざ、ふざけ……ふざけんなよ、俺たちは、お前の、おもちゃじゃねぇ!」

 

『巫山戯るも何も、所詮お前らは我の玩具なのだ、家畜なのだ、所有物なのだ。精々我の器に相応しいモノを産む道具に過ぎないのだ。その代わり、毎回我は器を育てた労力に対しての報酬を払ってやってるのだ。流石我流石、我は寛大で優しいのだ。もっと感謝するのだ』

 

コイツ……いや、まあ、ヒトも同じような事をやってるからとやかくは言えないけどさ。

それでも、いざ同じ立場になってみると……。

 

「……一々、今日は癪に障ることが多いなぁ」

 

『なんか言ったのだ?……んん?今気づいたのだ、お前、なんで頭に石が付いてないのだ?普通のニンゲンは上級職の空きが2つしか無いのだ。なのに、なんで我の器に成れたのだ?だって、我の器になれるのは──』

 

「まで……やめろ、言うな……!」

 

「2つ、しか(・・)、無い?その言い方だと、まるで……まさかとは、思うけど、もしかして」

 

慌てて《昇力感知》でソラーファを見る、観る、視る。

昇力、詰まるところの経験値と言うリソースは、自分が触れた感触から体に重なる器みたいな物に溜まっているイメージが一番わかりやすい。

これが器を一杯まで満たすとレベルが上がるから、経験値で間違いない。そしてレベルが上がると、その器自体に溜め込まれた全てを使って上質な物に作り替える働きがある。

だから、これを使えば極論《看破》に頼らなくてもレベルの測定ができて、それによればソラーファのレベルは400で、下級職2つが無い、そんなイメージだったけど。

 

まさか。

 

まさか。

 

額の、赤い石を見る。

エンジが言っていた。自分たちは幻獣人族、赤珠(カーバンクル)氏族最後の集落だと。

額の石は、魔力と魂力を貯められる、特別なもので、これを目当てに他の集落は攻め寄られて無くなっていったのだと。

 

確かにその時はMP(魔力)SP(魂力)も感じられたから納得したけど、まさか。

 

見る。赤い石を。その表層にある魔力を超えて、深層にある魂力を透かしてみれば……!

 

『3つの上級職になれる才能がある奴だけなのだ』

 

「……あった、3つ目の、上級職の器」

 

 

 

 

〈赤珠種族〉について

 

 

 

それは、この世界が正式に稼働する、その直前にまで遡る。

当時、〈斡旋者〉は悩んでいた。

 

確かに、このシステムなら理論上、〈無限職〉に至る者は現れるだろう。

だが、果たして本当にこれが最適解なのか。

上級の器が2つに、下級の器が6つ。これがこの世界の人間範疇生物における最適値なのは疑いようが無い。

勿論、その才能が無いものもいるだろう。それに関してはハナから眼中に無いため何の問題もない。

 

しかし、混沌としたヒトという生物には時にイレギュラーな個体が生まれることもある。

そういう外れ値対策として、戦闘能力に秀でた個体用に超級職自体の試作としての【覇王】を。

スキルや魔法等の作成・創造に特化した個体用に【神】系統の試作ジョブ【術神】を宛てておいた。

これで〈無限〉へと至る可能性を可能な限り広げ、取り零しも少なくなるだろうと、少なくとも〈斡旋者〉は思っていた。

 

まあ尤も、ジョブの才無き天才達に向けて用意されたこの救済措置が、ハイエンド(才能の極点)マスター(万能の才能)の手の内にあるというのは、皮肉が効いているが。

 

さて、話を戻そう。

 

いよいよ正式稼働という時になり、〈斡旋者〉にふと、遊び心(・・・)を入れてみようという思いが芽生えた。

最適値は既に分かっており、全ての個体群はその最適値に沿うように設計を任せていた。

ならば、敢えてそれを崩し、世界規模の乱数としてどう影響するか、それを見るのも面白いと考えた。

 

しかし、それをするのは些か遅すぎたのだ。例えば〈■■■〉が生物を調整している最中であれば、如何様にも改造ができただろう。しかし、〈斡旋者〉がその考えに至ったのは、正式稼働直前、人間範疇生物にとっての時間で3日ほど前でしかない。

再調整するにも時間が足りない上、数が多い種族ほど早く配置されるようになっていた。

ならば諦めるのかといえば、そうではなかった。

 

寧ろ、その残された時間で仕様を見直し、自身のアイデアに適し、微細な調整で仕上がる種族を探していた。

 

そして見つけたのは、元より特殊な能力を持ち合わせる幻獣人種、その中でも《神装》の種を埋め込まれた影響か額に生体組織流用の石を持つものたち。魔力と魂力が混じり合う影響で赤く染まり、莫大な力を行使することが可能となる、まさに万能の触媒。

 

その石を土台に、下級職の枠を削り合計リソース量はそのままに上級職の枠を取り付けると言う荒業を施した。

魔力、魂力が自然に石に集まり、枯渇すればジョブの器を強制的に引き剥がされる反動でショック死するようになったが、まあ、誤差だ。どうせそんな状況なら遅かれ早かれ死ぬだろうし。

次いでにこの種族専用として、系統上級職を3つ就かなければなれない超級職とその系統を作成したので文句はないだろう。急拵えだが。

 

そう開き直り、正式稼働に間に合わせた結果として、幻獣人種の一角、人間範疇生物としての異端、3つの上級職に就くことが可能な赤珠種族(カーバンクル)は誕生した。

 

 

 

 

あるUBMについて

 

 

 

盲従蝸舎(もうじゅうかしゃ) アウトラベル】と世界に名付けられた伝説級UBMは、ある1人の男が終生の作品として生み出したコンセプトデザイン型の生物だ。

 

男は天才であり、同時に異才でもあった。

稀代にして、狂気に取り憑かれた【絵画王(キング・オブ・デザイナー)】。

男の書く()は、紙という媒体に囚われず、絵の具という触媒に縛られることがなかった。

 

奥義《張り子の画面(ワールド・キャンバス)》はこの男によって開発され、よりこのジョブに相応しいとして永劫上書きされたスキルだ。

効果は、世界というキャンバスに色を塗り、テクスチャとして具現化するというものである。

 

男はこの奥義を開発してからというもの、凡ゆるを絵の具(・・・)として世界に色付けてきた。

が、その殆どを破棄、若しくは上塗りしてしまっている。

 

彼の手記には、このように記された。

”あれは私の作品ではない。あれらを認める訳にはいかない。あのような造詣(せかい)の美を知らぬ醜悪など、私への最大の侮蔑である。あぁ、*≒└^など、しなければ良かった。才無き私の弱さを許してくれ。悉くを消し去る事で、償いにしよう。贖え、私は許されない事をした。まさか、人生の半分が、このような”

 

奇妙なことに、彼が子供のうちは、絵画など一欠片も興味が無かったと伝えられている。

これは在野の原石が磨かれた結果なのか、或いは。

 

いずれにせよ、彼は自分の傑作を自ら否定し、次から次へと世界に色を付けた変人であった。

 

そして、彼が終ぞ否定せず遺した作品は、全部で3つ、或いは2つ。

1つは老後、旅に出た男がインスピレーションのまま作り上げたジョブチェンジ用の施設。

1つはその地に別荘として組み上げた屋敷。

 

そして最後のひとつ。正真正銘、最後の作品が、【アウトラベル】である。

 

男はその生の終端でひとつのテーマに憑かれていた。

それこそは、立体造形である。

 

ただの立体造形と侮るなかれ、【絵画王】の奥義に保証された作品である。

故郷の木材を絵の具として世界へと塗りつけ、心の赴くままに描いたのがジョブチェンジ用施設の小屋だ。

作品名は「懐かしき我が産屋」。

これは後の作品であり、傑作の「階層、若しくは心」と名付けられる館に繋がる種であったと記録されている。

 

そして男は、寝台に横たわり、今際の際を自覚した際に禁忌へと手を伸ばした。

それこそが、生命の設計図への色塗り、である。

 

その日は雨であり、窓には1匹のカタツムリが這い回っていた。

殻を背負い、それを負荷とも思わずに蠢く蟲を見て、男は自らのアイデア故に歪んだ笑みを零した。

何しろコレは、男が初めて(・・・)行う作品への追加の筆入れである。年甲斐もなく心が踊り、その先を想像するだけで横隔膜が引き攣った。

 

手を伸ばし、奥義を……最終奥義を発動する。残りの寿命故に気圧されること無く発動したソレは、まるで【色欲魔王(ロード・ルクセリア)】の最終奥義、《色欲の終焉(ジ・エンド・オブ・ラスト)》を彷彿とさせるものだった。

 

そして、無事、作品(・・)は完成した。

 

同時に最終奥義の反動により、男は急激に()を失い、灰へと身を転じてゆく。

それ故に、男はこの最高傑作へと名付けることは叶わなかったが、心中は満足感で溢れていた。

 

そして、彼はその長い生涯で初めて筆を折る。

その最後は、窓の外を見詰め、目を見開いていた。

が、それを誰も見ることはない。

 

灰と化した彼は、自重で崩れ落ちたからだ。

 

 

 

 

 

 

【【(<UBMユニーク・ボス・モンスター>認定条件をクリアしたモンスターが発生)】

 

【(履歴に類似個体なしと確認。<UBM>担当管理AIに通知)】

 

【(<UBM>担当管理AIより承諾通知)】

 

【(対象を<UBM>に認定)】

 

【(対象に能力増強・死後特典化機能を付与)】

 

 

【(対象を逸話級――【盲従蝸舎 アウトラベル】と命名します)】

 

私は世界を塗り潰す(アウトラベル)》より産まれしモンスターは、ただ、眠りに就く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【───】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『センパイ、これはどう?』

 

『えーと、さっきの服よりもフワフワしてるから、どこかに飛ばされそう』

 

『……センパイって、服を褒める才能、無いね』

 

『酷いッ!こんなに、こんなに溢れる想いが止まらないって言うのに!』

 

「……はぁ……」

 

”──?─……”

 

「いや、良いんだよ。所詮自分には服を褒めるセンスなんて無かった訳だし」

 

白いレースに包まれた頭がコテンと横に倒れる。

はて、彼女はこんな装飾品をしていただろうか?

いや、していたに決まっている。だってここは、記憶の夢。

コイツ(・・・)が見たがったから映し出されてるんだから、正確であるに決まってる。そうでなければいけない。

 

『にしても……夏だよ?』

 

『……何が?』

 

『いや、さっきから選ぶ服、全部長袖長ズボンじゃん。しかも、サイズも少し大きい。特に上、ダボダボじゃんか。ほら、こっち側の短パンとか……あ、そっちの服も』

 

「……今にして思えば……予兆はあったのにねぇ……馬鹿だよなぁ、アホだよなぁ……■ねばいいのに」

 

”────”

 

未来を知らない、結末を知らない少年の一言一言に、我知らずかなり苛立ってしまう。

そうじゃない。お前が口にすべきなのはそれじゃない。

 

『んー……私、長い服が好きなの。ほら、例えばこの服、上も下も白が基調になってるでしょ?これで夏の日差しも全カット!ね?』

 

『あ、そゆこと。なら、2っつ前のズボンと、今の服。多分似合うと思うよ。 ま、僕は君が何を着ようと、もう目が離せないけどね?』

 

『あ、うん。……ごめん、キザすぎてちょっとキツイかも』

 

「で?結局、お前は何が見たいの?」

 

”───”

 

はあ?同じようで、でも違くて、それがキレイな訳?

 

 

 

 

 

 

 















愉悦部よ
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