一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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更新の方針
ストックは2話常に確保してます。
3話を書き終わった時点で1話推敲してから放出します。
短くて1週間、最長で1ヶ月を目処にお待ちください。

次に、この作品にはオリジナルジョブが複数登場します(予定)。
苦手な方は無理せずお楽しみください。


一心二体

【死兵《デス・ソルジャー》】ペル・ナルシー

 

さっきの老婦人には、悪い事をしたな。

まさか最初に就こうと思ってたジョブが、まさかまさかの特大地雷だったとは。

でも、自分の〈エンブリオ〉……【カゲノワズライ】のスキル《生命増躰》を活用するにはこれが多分マッチしてる。

 

さっきの話だと、HPが無くなったあとも動き続けることができるような言い方だった。

さっき確認したスキル説明でもそれは大体あっていた。

そして自分が考えるこのスキルの活用法は、ズバリ、『油断した隙を狩る』戦法。

 

多分、全力でぶつかりあった後にこのスキルを発動して、窮鼠猫を噛む反撃をしたとしよう。

そして制限時間が来て、自分のどちらかは死亡エフェクトが出るだろう。

そして勝ったあとの油断を……多分戦えるようになっている頃には獲得しているであろう、隠密首狩り致命傷攻撃で刈り取る。

 

初期の初期のビジョンとしては、多分これが限りなく正攻法に近い。

……まあ、今後心変わりとか、別の有用なスキルを発見するとか、手札がモロバレしていない状況ならば、だけど。

 

「よし、と」「それじゃあ」「「一狩り行こうか」」

 

この喋り方も板に付いてきたところだ。

別々に喋るのはまだ難しいから、どっちかが喋るタイミングでどっちかは口を塞ぎ、最後の最後で重ねる。

これがすごい楽。

なんたって、変に考える必要が無い。

頭に浮かんだ単語を適当に分割して、どっちかを交互に口を動かせばいいんだから。

 

寧ろ(・・)2人分の操作って思ったよりも楽だな(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そしてルンルン気分でそこらの平原でモンスター狩り。

 

とは行かなかった。

 

何せ、最初に選んだジョブが【死兵】、ステータスの伸びが悪い上に、武器の適性が何も無いジョブだ。

それに、《生命増躰》の効果で最低一つはジョブを共有する必要があるので取り敢えず【死兵】をセットしている影響で、共有した「女性」体のステータスはさらに貧弱だ。

 

だからこそ、連携が必要になる。

現実にいるオオカミのように、まるで一個の生物のように群れで獲物を追いつめ、仕留める連携が。

 

他人とだったらそれはかなりの年月がかかるんだとうけど、自分に関してそれは当てはまらない。

 

何せ、自分は1人……ソロプレイヤーなのだから。

 

「こっちだよー」

 

「女性」体の方で、モンスターを誘き寄せる。

「女性」体は、文字通りのレベルの1……ちょっと力のあるだけの一般人とそう変わりない。

 

モンスターはその野生の本能でそれが分かるのか、はたまた自分の「ドッペルゲンガー」としての気配が狩りやすい獲物だと思わせるのか、一直線に向かってくる。

それを正面(・・)から見つめながら、少し背の高い草の()で待機して……今!

 

「よい、っしょぉお!」

 

【死兵】で僅かばかり強化されたステータスプラス、《性別転換》でステータス補正の傾向を変更してプラスされたSTRで、初期装備の棒を振り下ろす。

……思えばこれ、魔法が使いたくて選んだんだけど……どうしてこうなった……。

 

とか思ってる間に、「女性」体の方の目で「男性」体が棒を上手いことモンスター……「ティールウルフ」と表示された一匹オオカミの頭をぶん殴り……

 

「「あ」」

 

【気絶】……しなかった。

 

考えてみれば当然。

自分はまだレベル1で、幾ら〈エンブリオ〉とジョブの補正があるとはいえ、序盤のザコ敵に一撃スタン取れるほど強くは無い。

多少びっくりしたろうが、それ止まり。

少し危ない橋を渡ってる自覚はあったけど、かなり脅威を低く見積ってたらしい。

 

とはいえ、だ。ちゃんと当たる所が良ければ多少影響はあるようで、飛び退いた先でフラつきながら足を微妙に震わせている。

恐らく、脳震盪一歩手前。そこまでリアルに再現してるのは凄いが、ちょっと甘くしてくれても良かったのではなかろうかと思う所存。

 

「さて」「どうしようか」

 

ジリジリと取り敢えず左右から近づきつつ、呟く。

「男性」体の方は力はあるけど技術がないせいで奇襲以外通じなさそうな気がする。

「女性」体の方は囮としてしか機能しない。

 

さて、困った。

 

「取り敢えず」「こっちの方で近づいて」「HPで耐えてる間に」「そっちの方で」「殴る」

 

困ったときは、脳筋突撃あるのみ。

古事記にも書いてある、間違いない。

 

 

「とりゃ!」「おりゃ!」

 

やべぇ、ただでさえ少ないHPがゴリゴリ削れる。

うおぉ、頑張れ自分、3日のスキルリチャージはクソめんどいぞ!

 

「こ、れ、で」「さいごぉ!」

 

叩いた。

めっちゃ叩いた。

 

初期費用の5000リルで買い叩いた分のHPポーションも使って、どうにかこうにか1匹の「ティールウルフ」を倒した。

 

「「よし!」」

 

同時にガッツポーズして、ふと周囲を見渡してみれば……

 

火の玉を放って一撃でティールウルフを倒して、かつ周囲を炎上させて継続ダメージで群れを壊滅させてるプレイヤー……あいや、マスター。

 

……うん

 

男の子の大好きなお土産間のちっちゃな剣を振ったと思えば、超巨大化して敵の大群をぶっ潰したマスター。

 

…………うん

 

口に牙を嵌めてモンスターに直接噛みつき、かと思えば牙が外れてどんどん敵の血を吸いながらその血で体を形成していくマスターとその〈エンブリオ〉。

 

………………うん

 

走り回ってモンスターに突撃してそのまま死んだマスター。

 

…………………………うん、あれよりはマシかな。

 

「ビルド方向」「あってる……よね?」「「折れそう」」

 

大丈夫なはず……大丈夫、大丈夫、自分を信じろ、頑張れ、自分。

 

それにこう考えればいい。ステータスの成長がなくてスキルがあるジョブなら、《生命増躰》のデメリットに引っかからない。共有ジョブとして優秀だし、【適職診断カタログ】でもこれがいいって言われたんだから合ってるんだろう。

 

「大器晩成」「って思おう」

 

出ないとやってられん。

 

「「はぁ……あ、レベル上がってる」」

 

やっぱり最初はレベルが上がりやすい。

一応パーティー状態ではあるけど、それでもティールウルフ1匹で2人分のレベルアップだから、やっぱり最初は上げやすいんだろう。

 

まあ、これでHPで耐える戦法は少し長めにできるようになったんだから、地道にコツコツやっていくかな。

 

……コスパ最悪オブ最悪だけど……。

 

 

 

 

 

 

時間が経つのは憎々しいほど早いもので、気づけばこのゲームを始めてから9時間が経過していた。

空はすっかり日が暮れ始め、赤く染った夕焼けが最後の一体に向けて放たれた一撃を祝福し、超攻撃力の一撃を……

 

「んなことで」「強化されれば」「「楽だったなぁーー!!」」

 

ずばぁんと、割といい音を立てた棒の振り下ろしが、「女性」体に取り押さえられて無防備になっていた「ティールウルフ」の頭にクリーンヒットして、光の粒に変える。

 

みっちりと狩って、今のティールウルフを倒すことで地道に上がり続けたレベルは13。

クエスト目標であるレベル50まではまだ程遠いし、経験値効率が悪くなってきた気がするから、明日から狩場を違うところにする必要があるだろう。

 

取り敢えず、今日はここまでにしよう。

……ほんとに3倍速になってるんだよな?一回もログアウトしてないからリアルで何時間経ってるか分からないから不安だけど、明日の講義は単位とってあるからもし3倍速じゃなくてもなんとかなる。

もし3倍速だったら……トイレとか済ませてもう1回遊ぼう。

実はさっきから【尿意】と【空腹】のアラームが煩くて、微妙に集中できなかったからな。

 

「……昔ながらの」「デスゲームみたいに」「ログアウトボタンが」「無くなってたりしないよな?」

 

杞憂だった。

普通にログアウトボタンがあった。

まあ、最初に確認はしてたけども……不安にはなる。

何せ最近読んだばっかりだから、ちょっと過剰に反応してしまう。

あれだ、ホラー番組見た後に暗いところが怖いみたいな感覚だ。

本当はそんなことはないってわかってるのに、心の奥底で認めてしまっているから本能的に恐れてしまう。

 

まあ、そんなくだらないこと考えてないで、さっさとログアウト……

 

「「あ」」

「ログインした時に」「どっちが出てくるだろう」「多分予想だと」「2体分出てくるだろうけど」

 

……まあ、いいか。

 

じゃ、ログアウトっと。

 

 

【ログアウトします】

 

【次回ログインポイントはセーブポイントと現在位置のどちらにしますか?】

 

あ、選べるのか。

てっきりセーブポイントからやり直しになるかと思ったけど、確かにそれだと拠点から遠いと行き来が大変だからこうなったのかな?

それじゃあ今回は、セーブポイントからっと。

 

【承知しました】

 

【またのご帰還をお待ちします】

 

アナウンスが流れた直後、夢が覚める感覚で意識が上に昇ってって……

 

 

 

 

 

 

「うっ、……ぐっ……」

 

ログアウト直後、酷い違和感(・・・・・)に襲われた。

まるで視界がひとつしかないような(・・・・・・・・・・・・・)、もっと言えば、体が一つ足りないような(・・・・・・・・・・・)感覚。

 

あぁ、そう、か……

 

「リアル……クソだな……」

 

そして認識した瞬間に襲いかかる尿意。

ついでにめちゃくちゃ腹減ってる。

3倍速だから、頭めっちゃ使うのかな……。

 

「っそ……でも……少しずつ……治まってきた……」

 

今なら行けるか?

取り敢えず、歩くぐらいなら行けるはずだ。

もし転んだら……いや、階段は使わないんだ、大丈夫。

 

「ぐおぉぉ……間に合え……!」

 

よしよしよしよし、運がいい。

誰も使ってないから……行ける!

 

 

(〜〜〜)

 

 

「っはぁ〜……」

 

間に合って良かった……。

この年齢で漏らすとか、ないわ……。

 

「ていうか、本当に3分の1しか経ってないんだな……」

 

説明書を放り投げてチェシャと出会ったのが3時間前か……

 

「神ゲー」

 

ほんと、昨日決めた座右の銘の1.5倍とか神か、神だったわ。

明日サボろっかな……サボるか。

こんな神ゲー、放置するとかありえない。

まずは早いとこ【死兵】を50にしてクエストクリアして……

 

「おいこらクソ兄貴、さっさと出て来い」

 

「はい!ただいまぁ!」

 

おっと妹様がお待ちだ。

ここはすぐに出とかないとあとが怖い。

 

流して直ぐに

「おいクソ兄貴、まさか『超・消える力』しねぇで出てくんじゃねぇだろうな?」

 

HAHAHA

「そんな訳ナイジャマイカ」

 

ドンッ!

 

「ちょっ!ドア!ドア蹴らないで!!!」

 

暴力反対!

 

「たったらさっさとしろクソ兄貴、モグぞ?」

 

ひぇぇ!

 

「ただ今ぁーーー!!」

 

 

 

 

 

 

なお、妹様も尊厳は守られた模様。

 

 

 

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