一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜   作:苦悩

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試算した結果、オリジナルジョブは3つほどになることになりました。

あ、2話後、筆が勝手に動いた結果、〈あの人〉が登場しました。


隊動、胎動

死兵(デス・ソルジャー)】ペル・ナルシー

 

ログインっと。

お、これは……

 

「なるほど」「ちゃんと2体に」「「なってるんだな」」

 

んー、体感時間だと9時間だけど、すっかり馴染んだな、1人2体状態。

寧ろこっちの方が安心する。

 

取り敢えずアイテムボックスの中に回復薬が……あと2個。

これだとまずいからドロップアイテム売って……ついでにクエスト受けて、経験値を少しでも稼げるようにしよう。

 

そうそう、リアルで掲示板を少し覗いて見たんだよな。案の定というか、想像以上というか、かなり 荒れてた。

そりゃそうだ。完全にリアルと変わらないVRなんて、史上初の上に世紀の大発明。

これがゲームで発売されたからこれくらいの混乱で済んでいるけど、もし最初に出てたのが医療分野とか軍事分野とかなら、それこそもっと混乱が生じてやばかっただろう。

最悪、世界大戦の勃発だ。

 

あとは……なんだったか。あの、カルトの……あぁ、〈月世の会〉が大パニックで信者がそこかしこから湧いて出てきてるんだったか。ゴキブリだな。

基本宗教が嫌いな自分だから批判的にはなるけど……まあ、エセ宗派のエセ宗教のカルト集団なんてそんな感じの評価だろ。

 

……釣り仲間に見せ掛けて釣りについて話があるっつって車に乗り込ませて、色々個人情報抜こうとした挙句カルトの総本山まで連れていこうとしたのは忘れてねぇからな……!

 

「おう兄ちゃん、そんなに殺気立ってどうしたんだ?」

 

ん?

何やら聞き覚えのある声がしたので、念の為「男性」体の方で振り返ると……

 

「おう、やっぱり姉ちゃんっぽい兄ちゃんだったか」

 

あ”?

 

「俺ァ言ったよなぁ?俺を、女扱いすっと処すってよォ?オォン?!」

 

「ッハ!昨日までレベル0だった雑魚に俺が負けるかよ!……あん?おいテメェ……ふざけてんのか?」

 

「は?なにが?」

 

そっちこそいきなり殺気立ちやがって……

 

「【死兵】だ【死兵】!ふざけてんのかてめぇ!死ぬしか脳がねぇジョブなんか選びやがって……命をなんだと思ってやがる!」

 

……そのこと、か。

あぁ、これは自分の方が責められるべき立場なのは当たり前か。

何せ、ティアンはこのゲームの世界で生きている。

そんな彼らからしたら、命を無駄にするようなジョブなのだろう、【死兵】というのは。

 

「んまぁ……それは、成り行きっていうか……【適職診断カタログ】がおすすめしたっつぅか……」

 

そのせいで一悶着あったけどのも確かだし、なにかしらのフラグも立ったような気もするけど。

 

「そうか……てめぇ、そういえばマスターだったな。じゃあしょうがねぇか、死なねぇんだから」

 

そう言っておっさん……いや、エードは憐れむ目で俺を見てくる。

酷く……癪に障るが、ティアンの常識を考えればむしろこれが常識。

これは甘んじて受け入れる。

が。

 

「おっさんてめぇ、勝手に俺のステータス覗き見するとはいい趣味してるじゃねぇか、アァ”!ていうかてめぇ、昨日もそうやって覗きやがったなクズ野郎の覗き魔!おまわりサーンこいつタイーホしてくださーい!」

 

それとこれとは別問題だクソ野郎!

 

「おまっ、クソっ!衆人環境で何ふざけたこと叫んでやがる!えぇい散れ散れ!見せもんじゃねぇし、俺は変態じゃねぇ!」

 

……チッ、腐ってもこのおっさん、人望がありやがった。

胡乱な目で見られてはいるが、とりあえずって感じで人が離れてく。

 

「……で?俺ぁてっきり、【魔術師(メイジ)】か【獣戦士(ジャガーマン)】になってると思ったんだが……なんでいの一番で【死兵】になんかなんってやがんだよ」

 

「だーかーらー、さっきも言ったろ……【適職診断カタログ】が選びやがったって」

 

「……《真偽判定》にも引っかかんねぇ……まじでそのジョブ(【死兵】)が1番あってやがんのかよ……」

 

そういうおっさんは、どこか苦虫を噛み潰したような顔している。

なんか……つい最近見たような顔してんな。

 

「いや、【獣戦士】と【従魔師】のジョブもでてた」

 

思わず、つい、口に出さなくていい事まで言ってしまう。

あ、と思うも吐いた唾は飲み込めない。みるみるうちに血管が浮かび上がってく目の前の顔を見ながら、さてどうしたもんかと考える。

 

「お、い……最初にそのジョブのどっちか選べばよかったじゃねぇかよ、特に【獣戦士】」

 

頬を引き攣らせながらなんでそうしなかったのかを聞いてくるけど、こればっかしは……

 

「悪い、それは自分の〈エンブリオ〉のスキルに深く関わるから言えない。ぶっちゃけバレると使い辛くなる……後で取るつもりではあるけど」

 

昨日から何回か使われてきた、多分嘘がわかる《真偽判定》というスキルに引っかからないだろうこと。つまり真実では無いけど嘘を言ってないことを正直に話す。

こう言っとけば、多分おっさんの方でも少しくらいは察してくれるだろう。

 

ぶっちゃけ、対策されれば意味の無いことは本当だから、何言っても嘘にはならないだろうけど。

 

「あのなぁ……後で取るなら、なんで今取んねぇんだよ……」

 

「色々あんだよ、色々」

 

主に《生命増躰》のデメリットが限りなく小さくなるようなジョブだと思うから選んだ面もあるし。

……ほんっとにステータスの成長幅が少ないんだよなぁ【死兵】……これまで上がった分って、多分殆どが〈エンブリオ〉の補正分だけだと思うんだけど……

 

「……はぁ……ま、そんだけ頑固だと俺としても言うことはねぇ……後でちゃんと取んだろ?」

 

「あぁ、そこは間違いなく」

 

ならいい、と言いながらニヤリと笑い、今度は馴れ馴れしそうに肩を組んでくる。

……暑ぐるしい。

 

「で、で、で。後ろの姉ちゃん、お前と顔がすげぇ似てんだけど、もしかして家族だったりすんのか?」

 

「……似たようなもん」

 

……嫌な予感がする。これまでの人生で何度かあったけど、「女性」体の方にこの反応ってことは……十中八九、あれ、だろう……。

 

「頼む!紹介し──ぐえっ」

 

「するわけねぇだろおっさん───殺すぞ?」

 

ていうか二重(・・)の意味でねぇわ。

この顔は自分で、しかも───。

 

「くっそ、レベルとジョブの割にいてぇ……でもま、なるほど。こういうことか。伝承通り、レベルに見合わない強さなんだな、マスターってのは」

 

なんかブツブツほざいてはいるが、自分(・・)はやらん、出直しても来んな。

 

「で?なんか用あったのか?ないならおっさんから貰ったクエストの達成のためにレベル上げしに行きたいんだけど」

 

そのためにかなり無茶してるんだけど。

 

「んぉ、あぁ、そうだな。それが本題だ。さっき食らった一撃から察するに、少し遠出する感じだろ?」

 

それ先に言え……まず本題なんてあったのかよ……。

 

「まあ、そうだな。少し経験値効率が落ちてきたから、今度はあの森の方に行こうと思ってた」

 

「あぁ、やっぱりそうか。なら〈アクシデントサークル〉には気をつけろよ」

 

〈アクシデントサークル〉?

 

「ここレジェンダリアは自然魔力が豊富だからな、自然に(・・・)集まった魔力が魔法現象を起こしちまうんだよ」

 

「……ええっと?」

 

「まあ、分かりやすくいえば、勝手に魔法が発動して、しかもどんな魔法が飛び出してくるかも分からない、ってな具合だな。特にタチが悪いのが、転移系。何が、どこに飛ばされるのかもわからん。最悪、上半身だけ飛ばされてそのまま死亡ってのも有り得る」

 

それは……死んだら後がないティアンにとっては遭遇するだけでほぼ死、か。マスターでもそんな突然の死で、デスペナ食らったら、思わず台パンしてしまうだろう。

やられて一番イラつくのは、『運悪く流れ弾が致命部位にクリティカル判定で当たる』、だから。

 

「まあ、転移系なんて早々出くわすもんでも無いがな。普通はただの属性魔法が飛び出してくるだけだ」

 

そもそも予兆で霧が光るしなと続けるが、それでも厄介なことに変わりは無い。

 

「精々出くわさないように祈ってるよ」

 

「そりゃそうだ」

 

苦笑いしながら告げれば、おっさんはわっはっはと笑いながら同意してくる。

一通り笑うと、話は終わりとばかりに離れていく。

この方向は……闘技場か。

 

「ま、選んじまったもんはしょうがねぇし、それでお前が強くなるならそれでいい。昨日も言ったが、レベル50になったら闘技場まで来い、そん時に【獣戦士】についてをたっぷりと教えてやる」

 

手をヒラヒラと振りながらおっさんは去っていった。

初遭遇した時から思っていたけど、まるで嵐のような人だと思う。苛烈なところは苛烈で、でも緩やかなところがある。

 

「よし……」

 

言われるまでもない事だけど、とりあえずの目標はレベル50。【死兵】のカンスト。

一体全体自分がこのゲームで何を学ぶのかは未知数だけど、楽しいから、まあ、いいか。

 

気軽に楽しもう。

 

「そうと決まれば」「早速」「行くとしようか」「……あ、ポーション買わなきゃ」「まずは」「そっちからかな」

 

1歩を踏み出して───

 

 

デジャブ

 

 

体を3つ(・・)、動かした。

 

「「「あ、あー……」」」

 

なるほ、ど……理解。

 

あと、いい加減少し慣れた。

 

「「「〈エンブリオ〉、進化したのかー……」」」

 

悩みどころなのは……モチーフの影の煩い……そもそも二重のブレだから増えないと思ったんだけど……

 

あれか?あんまりに酷い目眩とかだとなんか凄いブレるから、あれが混ざった感じ?

……二度あることは三度あるとも言うし、何体増えるかも分からないから心しておこう……ぶっちゃけ後3つまでなら余裕あるし(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

×××年前

〈レジェンダリア〉山々に囲われた盆地の秘境

 

 

 

ソレは、満腹という感覚を知らなかった。

しかし、常に空腹、という訳でもなかった。

 

なぜならソレが食べるものは、それこそ産まれる前から(・・・・・・・)溢れており、常に(・・)喰らっているから。

 

種族からして睡眠欲と性欲が欠如し、土地も相まって(・・・・・・・)何もせずとも生きていける生態である。

そこに食欲まで無くなれば、あるのは無味乾燥とした停滞のみ。

 

その日々を、産まれ落ちたその日から続け、元から希薄だった意思はさらに削り取られ、もはや一種の現象として生きてきたソレ。

 

何もせず、生存に必要な分を最低限摂取し、ただ生きる為だけに生きてきたソレを大きく変えたのは……

奇しくも、同族だった。

 

ソレと同じ生態で、ソレよりも遙か昔からそこにただただあった(・・・)同族は、それこそ本当に現象と化したかのようだった。

 

喰らい、変換し、溜め込んだエネルギーはソレを遥かに凌駕する。

しかして、そこには疾うに意思などなく、まるで自然と同化して機構の一部となり果てているようであった。

 

そうしてその種最後の2体(・・・・・)は出会い、結果としてソレを残してこの世界から絶滅した。

 

 

ソレは満腹を知らず、空腹も知らない。

常に喰らい続け……常に蓄える。

 

それが、ソレの本能に根ざし、そのような構造体として産まれ落ちた理由。

先々期文明(・・・・・)崩壊直前、煌玉兵用生体魔力バッテリー(・・・・・・・・・)として【大教授(ギガ・プロフェッサー)】と【酪農王(キング・オブ・デアリー)】によって造られた、正式名称【決戦兵器3号付属兵装魔力源《ハイエンド・マナ・バッテリー・エレメンタル》】最後の一体である、ソレの生態であり───

 

長い年月の中で、遺伝子変異に()より、プログ()ラムコードが()書き換わった()暴走兵器の、行動原理の全てである。

 

それは、満腹を知らない。

それは、空腹を知らない。

 

故に喰らう。

 

それが、変質してしまった最後の機能(・・)だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【(<UBM(ユニーク・ボス・モンスター)>認定条件をクリアしたモンスターが発生)】

 

【(履歴に類似個体なしと確認。<UBM>担当管理AIに通知)】

 

【(<UBM>担当管理AIより承諾通知)】

 

【(対象を<UBM>に認定)】

 

【(対象に能力増強・死後特典化機能を付与)】

 

 

【(対象を逸話級――【魔■■精 サ■■エ■■■】と命名します)】

 

 

 

───ソレ単体でも対”獣”の化身用兵器としてデザインされたモンスターは、胎動する。

収まるべき器を忘れ去り、嘗ての敵の手に堕ちて。

 

対”獣”の化身──軍勢作成、及び分裂能力保持者に対しての天敵にして捕食者は、今は静かに喰らい続ける。

 

 

 

────何百年も。

 




うひ、うひひひ♪
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