参加者全員悪人のデスゲームに巻き込まれた死に戻り能力者 作:とみたけじろう
No.?
プレイヤー名:戸坂
所属グループ:「B」
NO.8
プレイヤー名:山下康平
所属グループ:「A」
NO.9
プレイヤー名:外路沙羅
所属グループ:「A」
基本ルール
1
10名のプレイヤーは、A・B・C・Dのいずれかのグループに配属される。
グループの内訳はそれぞれ3名だが、Dグループに限っては1名とする。
2
獲得条件を満たすことで、他のグループへの移籍権を得られる。
しかし、移籍権を行使しても、Dグループには移籍できない。
取得してから12時間以内に移籍権を行使しなかった場合、当該権利は失効する。
また、移籍権は重複しない。
3
ゲームの開催期間は4日。
開催期間内に他のグループを殲滅したグループのプレイヤーを勝利者とし、10億円の賞金を分配する。
開催期間後に、複数のグループが存在していた場合、プレイヤーは全員殺害される。
4
ゲームのエリアは予め指定されており、エリア外に出たプレイヤーは殺害される。
また、エリアは日数を経るごとに縮小するが、初日に限って縮小しない。
5
ゲーム初日は、戦闘禁止とする。
戦闘行為が発見された場合、当該プレイヤーは殺害される。
移籍権獲得条件
移籍権獲得条件
1つのグループにおける定員は3名とする。
Dグループのプレイヤーを殺害すると、所属グループに関わらず、移籍権を得ることができる。
・Aグループに所属しているプレイヤーが、他グループへの移籍権を獲得するための条件
他プレイヤーが所有するスマホ3台を破壊する。
しかし、Dグループに所属しているプレイヤーのスマホを破壊した場合、そのプレイヤーは殺害される。
・Bグループに所属しているプレイヤーが、他グループへの移籍権を獲得するための条件
同一グループのプレイヤーを殺害する。
・Cグループに所属しているプレイヤーが、他グループへの移籍権を獲得するための条件
12時間以上、一緒に行動したプレイヤーが死亡する。
自らの手で殺害する必要はない。
・Dグループに所属しているプレイヤーが、他グループへの移籍権を獲得するための条件
スマホ5台の収集。
プレイヤー8名の死亡。
24時間以上、一緒に行動したプレイヤーが、ゲーム終了1時間前まで生存する。
体力が持つ限り、どんどん進む。
マップを頼りにすることで、探索の効率が著しく向上した。
その甲斐あって、瞬く間に二つ目のトレジャーボックスが置いてある建物にたどり着く。
そして、呆気なく開封出来たのだが。
「10分近く歩いたのに、またSDカードですね」
「今回は一つしか入ってないっぽいな。俺が貰ってもいいか?」
「もちろん、OKっす」
トサカ兄貴が打ち立てた行動方針は、マップアプリを活用した物資の収集。
片っ端からトレジャーボックスをかき集めていく、ストロングスタイルだ。
情報も武器も、食料も。
ありとあらゆる物資を独占して、他のプレイヤーを追い詰めていく。
シンプルながら、有効的だと俺も思う。
そうして、手始めに訪れた学校近くのトレジャーボックスの中に入っていたのは「プレイヤー」と記載されたSDカードであった。
トサカ兄貴はスマホにSDカードを差し込み、即座にダウンロードが終了する。
◇
生存者数:10
NO.1
プレイヤー名:
NO.2
プレイヤー名:
NO.3
プレイヤー名:
NO.4
プレイヤー名:
NO.5
プレイヤー名:
NO.6
プレイヤー名:
NO.7
プレイヤー名:
NO.8
プレイヤー名:
NO.9
プレイヤー名:
NO.10
プレイヤー名:
◇
なるほど。
「プレイヤー」アプリでは、現在の生存者数とゲームに参加しているプレイヤーの名前を確認できるようだ。
しかし、それにしても……。
「兄貴の名前、透って言うんですね〜」
「あー……まぁな」
「良い名前じゃないっすか。なんで、自己紹介の時隠したんです?」
「…………コンプレックスなんだよ」
「え?」
「なんつーか、その。透って名前、なんか女っぽいだろ。だから、ちょっとコンプレックスがあってな。頼むから今まで通り、呼んでくれ」
「な、なるほど。了解です……!」
トサカ兄貴は露骨に顔を背けた。
恐らく……いや、間違いなく、恥ずかしがっているのだろう。
口ではちょっとと言っているが、相当気にしているように見える。
厳ついにも程がある見た目に反して、彼にも繊細な面があるのかもしれない。
なんというか、すごく意外である。
「そんなことより、現在のプレイヤーの数は10人。1人も死んでないみてぇだな」
「いいのか、悪いのか。反応し辛いっす」
「……どうにも、気味悪ぃな。こんなに死なない事ってあんのか?」
言われてみると、変な感じがする。
デスゲームものでお決まりの、ルール違反で死ぬ人の数はゼロ。
プレイヤー全員が現状を把握して行動しているだなんて、あり得るのだろうか。
スマホに書いてあるルールを見ないで、俺をぶん殴ろうとしたトサカ兄貴のようなプレイヤーが1人は居ても不思議じゃない……。
というか、この前のゲームでトサカ兄貴と組んでいた少女は、どこに消えたんだ?
恐らく、前回の彼女は、今回のゲームにおける俺のポジションに座っていた。
暴走するトサカ兄貴を止め、手を組んでいたと思うのだが、今回のゲームでは出会ってすらない。
初日で、関わりを持ってもおかしくないのに。
確か、彼女の名前は……ダメだ、覚えてない。
前回殺される時に聞いた記憶はあるのだが、あの時は死にたくない一心で覚える余裕が無かった。
「……おい、兄弟。あっち見てみろ」
とんとんと肩を叩かれた俺は、トサカ兄貴が指を刺す方に目を向ける。
窓から外の様子を見てみると、そこには……4名のプレイヤーの姿があった。
距離が遠いから確証は持てないが、こちらの存在はバレてなさそうだ。
周囲を警戒している奴らは、俺達が潜んでいる建物へと歩み寄ってくる。
「あいつら、トレジャーボックス狙いだな。俺たちの存在を知らずに、のこのことやってきやがった」
「ど、どうします? あっちの方が人数が多いし、隠れてやり過ごしますか?」
「眠たいこと言ってんじゃねぇよ。数の利は向こうにあるが、無防備なところを奇襲すれば有利不利は覆るし、何よりも俺らにはハジキがある。このまま待ち構えて、皆殺し以外の選択肢はねーだろ」
「でも……俺、ひ、人を殺すのは……」
いくら何でも、展開が急すぎる。
さっきまで、トサカ兄貴の意外な一面を垣間見て、ちょっと和んでいた。
なのに、間髪入れず即戦闘。
他人を待ち伏せして、皆殺しにするときた。
当然ながら、切り替えられない。
殺人する覚悟なんて持てないのだ。
「どっちにしろ、他のプレイヤーを殺さないと生き残れねーんだ。時間に追われて敵のケツに火がつく前に始末した方が、お前にとっても楽じゃねぇか」
「…………」
「それに、こんなに有利な状況、二度と来ないかもしれないんだぜ? 気持ちは分からんでもないが……テメェも男なら腹括れ、コウヘイ」
紛れもない正論。
反論する材料もなければ、言い返す妥協もない。
返事をできずにいると、トサカ兄貴にバールのようなものを手渡される。
今から、俺はこの武器で人を殺すのだ。
これも神の悪戯か……前回とは打って変わって、奇襲を仕掛ける立場になって。
そう実感すると、手足が震えてきた。
呼吸が荒くなり、次々と冷や汗が流れる。
やらなきゃ、やられてしまう。
どんなに嫌がろうとも他のプレイヤーを殺さなくては、いつか殺される。
分かってはいるが、受け入れられない。
……今思うと、あの時もそうだった。
怒り狂うトサカ兄貴と出会った時。
本音を言うと、俺は兄貴が怖いから、殴られなかったんじゃない。
自分の手を汚すのが怖かった。
戦闘禁止のルールによって、人を殺すのが嫌だったから、土下座したのだ。
「いいか? 奴らが所定の位置に来たら、まずは俺が発砲する。もしも、連中が銃を構えたら、お前は大人しくしとけ。だが、尻尾巻いて逃げたり、銃を取り出す素振りを見せなかったら、バールを持って突っ込んでけ。バックアップはしてやるからよ」
こくこくと頷く。
出来ません、なんて言えるわけがない。
他人の命を奪うのも怖ければ、トサカ兄貴に殺されるのも恐ろしい。
極めつけに、生き残りたいと願う浅ましさもある。
まさしく、どっちつかずの小心者。
それが、俺という人間の本質であったのだ。
「……そんなに、不安がるな」
「え、あっ、な、何をです?」
「あいつらを殺すのが嫌なら、足止めするだけでいい。身の危険を感じたら、俺の後ろに隠れとけばいい。戦うことを選んだのは俺だ。責任持って守ってやる。だから、安心しろ……兄弟には借りがあるからな。嫌なもんは代わりに背負ってやる」
人殺しに対する忌避感が無く、躊躇なく他者を害する事ができてしまう。
そんな彼が、ここまで言ってくれた。
殺さなくていいし、危険な時は助けてくれる。
そう考えると、気持ちが楽になっていく。
全部、トサカ兄貴の言う通りだ。
このデスゲームで生き残りたいのなら、いつかは戦わないといけない。
そして、その事実から目を背け続けた先に待っているのは、揺るぎない死。
覚悟を決めるのは、早ければ早いほど良い。
トサカ兄貴がここまでお膳立てしてくれたのだ。
怖いけど、覚悟を決める他ない。
「お心遣いありがとうございます、兄貴。俺……やれます!」
「良い返事が聞けて嬉しいぜ。まぁ、あまり気負わずにやれよ」
前回の記憶は何処へやら。
この時の俺は、トサカ兄貴の舎弟と化していた。
彼についていけば全て何とかなると、心の底から信じ込んでいて。
だからこそ、危ない役割も請け負った。
疑問を持つことなく、戦うことを選んだ。
バカは死んでも治らないとは、よく言うものである。
「もうちょいだ。奴らが階段に差し掛かった時、鉛玉をぶち込むからな」
「はい……!」
息を殺して、来訪者を待ち構える。
建物こそ違うが、それ以外のシチュエーションは前回とまるっきり同じ。
俺達が潜んでいるとは知らずに、4人のプレイヤーがこちらに近づいてくる。
1人の青年と、3人の少女。
その中には、見知った顔が。
……前回のゲームで俺を見捨てて逃げた少女、サラちゃんの姿があった。
「引っかかったな、間抜け!」
彼女の存在に気づいたのも束の間、事前の打ち合わせ通りにトサカ兄貴が発砲する。
初弾が外れた、その時。
サラちゃんは、近くにいた青年を情け容赦なく突き飛ばして逃走を図った。
それこそ、前回と全く同じように。
「死に晒せや、クソ女ァ!!!!」
俺は感情の赴くままに叫び、物陰から飛び出す。
そして、他の奴らを気にも留めず、サラちゃんの背中に向かってバールのようなものを全力で叩きつけた。
「あぐっ!」
まさしく、クリーンヒット。
ゴッという鈍い打撃音と共に、人を殴りつけた感触が伝わってくる。
倒れ込んだサラちゃんは骨でも折ってしまったのか、うまく立ち上がれない。
芋虫のように這いつくばる様子は、まるで前回の俺のよう。
無様な姿を見て、胸がスッとする。
ざまぁみろ、と思った刹那。
「……っ」
すぐ隣に迫っていた制服姿の少女が、鋭利なナイフを突き立ててきた。
咄嗟に躱したものの、尻餅をつく。
その隙を少女が見逃す訳もなく、矢継ぎ早にナイフを振りかぶろうとして。
「惜しかったな、ガキ!」
宣言通り、助けにきてくれたトサカ兄貴によって、横っ腹を蹴っ飛ばされる。
不意打ちに対応できなかった彼女は軽く吹っ飛ぶものの、すぐに立ち上がった。
そして、蹴られても手放さなかったナイフを握り締め、即座に兄貴へと突撃する。
混沌が混沌を呼び、もうめちゃくちゃ。
何故か素手の兄貴とナイフで斬りかかる少女はヤンキー漫画さながらの喧嘩をしており、今もなおサラちゃんは蹲ったまま。
突き飛ばされた青年は銃撃されたらしき左肩を抑えており、あと1人の少女は……。
「止まって。動いたら、首を掻っ切るわよ」
いつの間にか、俺の背後に忍び寄っており、首に小刀を突き立てていた。
冷たい刃の感触を味わってゾッとした俺は喋ることなく、こくこくと頷く。
もちろん、逆らうつもりは毛頭ない。
「お仲間の首が裂かれるところを見たくないなら、モヒカン頭も止まりなさい!」
気丈そうな少女の一声によって、あれだけ騒がしかった戦場に静寂が訪れた。
トサカ兄貴は、どこか不満げな表情を浮かべながら……忠告を無視して銃を構える。
その対象は、俺と脅している最中の少女。
「動くな、と言ったはずだけど」
「承知の上ってやつだよ。やれるもんなら、やってみろ。テメェの脳天が吹っ飛ぶのが先か、そいつの首が切られるのが先か。試してみるのも悪くねぇ」
その言葉を耳にした途端、脳裏に大量のはてなマークが浮かび始める。
あの、トサカ兄貴?
とんでもなく物騒なこと言ってません?
それだと俺、死んじゃうんですが。
もしかして、見捨てられた……!?
「……なら、取引しない? 私達を見逃してくれたら、あそこで蹲ってる女の子を好きにしていいわ」
暫し悩んだ後、気丈そうな少女が口にしたのは、あまりにも残酷な提案。
サラちゃんを生贄に捧げることだった。
もう、なんていうか。
色々と超展開すぎて、理解が追いつかない。
だが、一つだけ言えることがある。
できる事ならなんでもするので……トサカ兄貴には、取引に応じて欲しい。
俺は、まだ死にたくないのだ。
「ちょっと待ってください、間宮さん。なんで、私がっ」
「貴女が、堤さんを突き飛ばして一目散に逃げたから。他者を蹴落として、自分だけ生き残ろうとしたからに決まってるでしょ? 土壇場で裏切るクズを切り捨てて、いざという時に裏切らない仲間を生かす。これは、至極真っ当な判断よ」
「まぁまぁ、その辺にしとけ……いいぜ。その提案、乗ってやるよ」
サラちゃんをこれからどうするかとか、トサカ兄貴が忠告を無視したとか。
色々と気になる点はあるものの、ほっと胸を撫で下ろす。
首に突きつけられた小刀で、喉を裂かれることは無くなったからな。
取り敢えず、一安心だ。
「交渉成立ね。私達はそこの曲がり角で、この人を解放するわ。もし、貴方が発砲したら……言わなくても、分かるわよね」
「……逆も然りって言葉を、肝に銘じとけよ」
まだ安心するのは早かったようだ。
気丈そうな少女も、トサカ兄貴も……お互いのことを全く信用していない。
少女の方は身の安全が保証されるまで、俺を解放するつもりがないし。
トサカ兄貴の方は俺が殺された時に備えて、銃を構えたままだし。
今もなお、ピリピリとした緊張感が漂っている。
「ま、待ってよ……みんな!」
「……さようなら」
サラちゃんの言葉に応じることなく、曲がり角に差し掛かった3人は走り去っていく。
それと同時に、俺の身柄も解放された。
結局、トサカ兄貴は発砲しなかったし、俺の首が裂かれることも無かった。
2人とも怪我一つ無いので、奇襲は大成功と言っても過言ではないだろう。
だが、そうして、俺達が手に入れたのは。
「さて……これからどうするよ、兄弟」
「ど、どうするっていうのは?」
「惚けんなって。この性悪女を生かすのか、殺すのか。ハッキリさせる話をすんだよ」
「お願い……殺さないでっ……」
涙目になって、死にたくないと訴える少女。
かつて、俺を裏切った張本人である……サラちゃんの身柄だった。