同人ゲーム(R18)の悪徳貴族に転生したので改心してオークと宿屋の主人と奴隷商人になりました【SIDE:ヒロイン】   作:笠本

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④-1 奴隷オークション.txt

 質素な貫頭衣を着て、壇上に立った女たち十人。

 その一人である私は震える身体を抑え、顔を上げました。

 

 目の前には多くのお客様たちの姿。

 私と、立ち並ぶ他の女性たちに容赦なく値踏みする視線を向けてきます。

 

「ううっ……」

 羞恥と緊張に私の心臓が音を立てて鼓動しているんじゃないかって感じます。お腹の奥がぎゅっと締め付けられるようです。 

 

 ですがそこへ客席の一角から心強い声が聞こえてきました。

 

「レイテー! がんばれー!」

「あなたなら立派な奴隷になれるわ!」

「お婆ちゃんがついてるからねー!」

 

 目を向けるとこちらに向けて必死に手を振るう家族の姿。

 

 そうです。私はここで奴隷として選ばれるべく、自分をアピールしなければならないのです。

 

 私は家族に深くうなづきを返すと、今度はキッと前を見据え胸をはります。

 

「覚悟はできたようだな、レイテ嬢」

 

 通り過ぎざまに小さく私にささやいたクリスティン様は、壇上の中心に立つと大きく腕をあげました。

 

「ゼッツリー様の奴隷になりたいかー!!!!」

「「「うわああああああああああ!!!」」」

 

 クリスティン様の叫びにコロシアムを埋め尽くした観客が大歓声を返します。

 

 そう、今日この領都中心にあるコロシアムで開かれるのは、ゼッツリー様に仕える奉仕奴隷の選抜の儀です。

 

 奉仕奴隷はゼッツリー様が招いたお客様をもてなすための奴隷です。

 

 かつてのアクドック家では他の貴族の取り込みや、王宮からの役人に対しての賄賂としてその身体を捧げるのが奉仕奴隷の役目でしたが、ゼッツリー様が実権を握ればそのような非道は許しません。

 

 可愛らしく華やかな衣装に身を包んで、楽団の音楽を背に可憐な踊りと心湧き立たせる歌とでお客様の目と耳を楽しませる。それが今の奉仕奴隷の形です。

 

 お城に招かれるような貴人や富裕層だけではなく、今はその奉仕対象を広く都の住人たちへと広げています。

 広場で祭りや市場が開かれるときに。あるいは孤児院の慰問で。月に一度はこのコロシアムで。

 人々をひととき、夢のような世界にと導くのです。

 

 特にコロシアムでの定期的な衆人環境でのお披露目(コンサート)は入場券をめぐって長蛇の列ができるほどに人気だといいます。筆頭(センター)奴隷の方などは、その絵姿や身にまとう香水などが熱心なお客様に購入され、毎回のお披露目では豪邸がたつほどの大金が動くそうです。

 

 私たちが壇上に立つ前にも先輩奉仕奴隷の皆さんが巧みな歌と踊りを披露し、大勢の観客を熱狂の渦に包みこんでいました。

 奉仕奴隷は今や領都の少女たちの憧れの職業のトップなのだそうですが、それも納得です。

 私だって領都に住んでいればきっと同じように彼女たちに憧れて……

 

 いえ、違います。私はいま同じところに立つためにここにいるのですから。

 

 

「只今より、アクドック家 第三期ご奉仕奴隷のオーディションを開催する!!!」

 

 クリスティン様の宣言にコロシアム中が再度沸き立ちます。

 

「さあ、そしてエロール王国各地からの自由応募と、奴隷商会からの推薦があった3千人の中から、見事書類選考を突破したのはここに並ぶ十名。ではさっそく紹介しよう! まずはエントリーナンバー1番、辺境の地からやってきたレイテ嬢だ!」

 

 名を呼ばれ、私はぐっと足を踏みしめて歩き出しました。

 

 壇上(ステージ)の中央で。パッと私は貫頭衣を脱ぎ去りました。

 

 お客様に披露した中の姿は。

 白いワンピースに麦わら帽子のシンプルな装い。唯一の装飾品は首にまいた黒いカチューシャです。

 

 都会のファッションの最新を知った私には いかにも田舎っぽいのではないかと思えるのですが、ゼッツリー様とクリスティン様から、だからこそいいのだと力説頂いたのです。

 

「諸君、我らはきっと同じ風景を共有していることだろう。それは遠い故郷の記憶。日差しは熱く照りつけ 、どこからかコオロギの鳴き声が聞こえるあの夏の日に、幼き我らに微笑みかけてくれたあの少女。ひと夏の思い出として心にしまいこんだあの笑顔が、今ふたたび蘇るだろう。

 

 ならば歓声と拍手で迎えよう、田舎で出会ったあの少女の歌と踊りを。曲名は『さくらんぼ摘みダンス(チェリー・カロル)』!」

 

 クリスティン様の宣言に私たちの背後の楽団が音を奏で始めました。より繊細に、豪華に奏でられる聞き慣れたメロディーに、私は歌と踊りを重ねます。

 

 はあ~、

 真っ赤なさくらんぼ

 森にはたくさん実るころ

 摘みにいこう

 ジャムにしよう

 丸かじりしよう

 急げ急げ

 ウサギが狙ってる

 ムクドリがついばむぞ

 あの娘のほっぺとどっちが赤いだろ~

 

 これは私の村で昔から夏祭りで披露される、森の恵みを称え、神に感謝を捧げる歌と踊りです。

 

「――――さあ、摘みに行こう」

 

 曲が終わり。

 うわああああと大歓声に包まれた私は粗い息を整えながら、ぺこりと頭を下げました。

 そんな私にお客様からいくつもの声が届きます。  

 

「いいぞー、レイテー!」

「さすが我が村のミスさくらんぼだよ!」

「お婆ちゃんも踊りたくなっちゃったよ!」

「かわいいー!」

「もっかいピョンピョンしてくれー!」

 

 温かく、熱狂的とも言える言葉の数々が私を称賛してくれています。

 

 ふふふ、踊り自体は村で引き継がれてきたものですが、そこにちょっとしたアレンジを入れてみたのです。前にゼッツリー様とギャラリーを充実させようと様々な差分を試したのですが、そこでゼッツリー様にことの他よろこんでいただけたのがウサギの格好だったのです。

 そのウサギの要素を踊りに取り入れました。

 

 このピョンピョンこそが男心をくすぐるのを成長した私は知っているのです。

 果たして審査員席に座るゼッツリー様も満足げにうなづいておられます。

 

「見事なさくらんぼ摘みダンスであった! 改めて拍手を!」

 

 私はたしかな手応えに満足して、壇上の控えに。新たな挑戦者に場所を譲ります。

 

 

「続いてのエントリーはなんと元貴族。辺境伯家令嬢であったミゼッタ嬢だ。エロール王国第三王子の婚約者でありながら、実家であるフォルス家が王家への反逆を企てたとしてお取り潰しにあったフォルス家のご令嬢が、まさかの奴隷でのエントリーだ!」

 

 貫頭衣を脱ぎ去れば現れたのはまごうことなき貴族令嬢。金髪の縦ロールに真紅のドレスを堂々と着こなし、首のチョーカーには特製の宝石が輝いています。

 

「お取り潰しにあったとはいえ、辺境伯家の伝手があれば周辺国に逃れることもできたでしょう。平民の富裕層や下級貴族であれば正室と迎えられることも可能であったでしょう。果たしてなぜ奴隷としての道を選んだのか、お聞かせいただけますかな?」

 

 クリスティン様の問いに、ミゼッタ様は貴族らしい堂々たる態度で答えます。

 

「それは当然ですわ。このミゼッタ・フォルス、二流・三流の男の正室になるくらいならば一流の男の奴隷を目指す。それこそが真の貴族の女の心意気というものですわ」

 

 その答えにクリスティン様も、さも道理であるといううなづきを返しました。

 

「それでは見せてもらおう。今よりここは宮廷になる。『神様おねがい!(デウス・サルブム・ミ・ファク)』、ソロ・バージョン!」

 

 コロシアムに優雅な曲が鳴り響くと、ミゼッタ様が華麗な社交ダンスをスタートしました。

 綿毛なのかというばかりに軽やかに壇上を滑るミゼッタ様。ふわりと舞い上がるドレスがステージのあちこちに円を描くと、まるでそこに満開の花が咲いていくようです。

 合間合間に天を仰いで神への愛を求める呼びかけが美しい言葉遣いの詩歌に紡がれます。

 

 本物なんて見たことのない田舎者ですが、きっとこれが貴族の社交界の世界なのでしょう。

 息も忘れて見惚れてたのは私だけでなく会場の皆も同じです。

 

 最後にドレスの裾をつまみ上げてお辞儀をするカテーシーで締められれば、私たちは盛大な拍手でコロシアムを満たしました。

 

「皆様に心よりのお礼を申し上げますわ」

 

 ステージを下がる仕草もまた優雅です。

 

 むう、これはなかなかの強敵です。

 次の審査項目で精一杯挽回しなくてはいけませんね。

 

 

 その後も負けず劣らずの候補者たちが続いていきました。

 

 例えばエントリーナンバー6番の一見のほほんとした女性。大舞台に何ら緊張している様子もなく、クリスティン様と掛け合います。

 

「さあ、次なる挑戦者のテレシア嬢は隣領のワイン農家の出身だ。このアクドック領でも人気のあのブランドの生産地であるぞ。ではそんなテレシア嬢に奉仕奴隷への志望動機を聞いてみよう」

 

「実は兄が勝手に応募しまして。あっ、正確には奴隷になったのがってことなんですが。ええ、兄と言っても父の後妻の連れ子なんですが」

 

「ほう」

「実は半年前に父が亡くなったときにギルドから私の名義で融資金を受けてることが判明したんですよ。でも家にはなぜかそのお金が無かったんですね。おかしいなって思ってるうちに、支払いの方だって言われて兄が手配してた奴隷商に連れてかれちゃってたんですよお」

 

 うん?

 

「普通に告発だな」

 審査員席のゼッツリー様がそう言って背後の従者に指示を出します。

 従者は事情を確認するように言いつかったのでしょう。慌てて駆け出していきました。

 

 奴隷落ちが冤罪だったみたいですが、それはそれとして彼女の挑戦は続くようです。

 

「ワイン作りで大事なのは天気やブドウの色艶をよく見て動くことなんですよ。ええ、このオーディションが一番ワインがおいしくなる道だって分かっちゃうんです。どうか皆さま、私のおいしいワインを召し上がってください」

 

「それでは歌ってもらおう。早くも彼女の生足に踏まれたいと願う者が続出! 『ぶどう♡ステップ(フィール・ワイン)』だ!」

 

 そうしてテレシアさんはスカートをちょいっとつまみ、たくしあげると、覗かせた足でもってタタンッと靴音を立たせました。

 それを合図に流れ出したのは軽快な音楽。

 

 テレシアさんはリズムよく足を踏み鳴らしていきます。

 思わずこちらも足を揺らしてしまう、楽しさを周りに振りまいていく見事なタップダンスです。

 

 テレシアさんの足元にはきっとぶどうが踏みしめれているのでしょう。リズムに合わせて、おいしいワインになるようにと、ぶどうへの祈りと感謝と励ましの歌を口ずさんでいきます。

 

 いつの間にか音楽のリズムは早くなり、足踏みの方もとても真似ができないほどの速度に上がっていって。それでいて上半身はあまり動かず、のほほんとした笑顔のままぶどうへの愛を歌い上げているのがおかしな感じです。

 

 時折、細目が開いてダンッと力強い踏み込みになってるのはちょっと怖いというかよいアクセントというか。

 

 最後に両足でタァーン、と大きく足音をたててダンスは終了。

 こちらもまたコロシアムを揺らす歓声がまき起こります。

 

 むう、これはなかなかの強敵です。 

 

 そして私たち十名全員の衣装と歌と踊りの披露が終われば、選抜の儀は次の審査に切り替わります。

 

「水よ、満ちよ」

「うおおおお! さすが領主様だぜ!」

「ゼッツリー様、ばんざい!」

 

 すごいです。 

 ゼッツリー様が詠唱もなく魔法を発動させれば、瞬く間にコロシアムの床面が水で覆われました。さらには風魔法も並用して、水面を波立たせるのです。

 

「さあ、お次は皆が待ち望んだ、水着審査だー!」

「「「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」」」

 

 話に聞く海というものを再現したこのコロシアムで、私たちの身体能力を皆にお見せするのです。

 水着という破廉恥な衣装に着替えた私たちは、水面よりもわずかに上に浮かんだ板を前に呼吸を整えていました。

 

 これは古代遺跡に設置されているトラップの一種で、乗ると数秒で沈んでいき、一定時間するとまた元の位置に浮かんでくるという不思議な板なのだそうです。

 ゼッツリー様が機構を読み解いて、外部でも使えるように改造したとのこと。

 私たちは水面にまっすぐ並べられたこの板を渡りついで、ステージの反対側のゴールを目指さないといけないのです。

 

「一位はいただきよ!」

「負けるもんですか!」

 

 と、もたもたしているうちに他の人たちが進んでいってしまいました。

 これは負けていられません。私も慌てて後を追いました。

 

「きゃあ!」

「ちょっと、あなた、しがみつかないでくださいまし!」

「うーん、これに混ざるのが私のコクを引き出せると見ましたね。えいっ、と」

 

 残念ながら私の運動神経ではなかなかうまくいかず、滑ったり他の方たちに絡まってしまったりで幾度も水の中に落ちるはめに。

 

「はあ……はあ……」

 

 ずぶ濡れで膝と両腕をついて息も絶え絶えな私に、コロシアム中の視線が集まるのが感じられます。

 うう……なんて恥ずかしいのでしょう。ですが公開羞恥プレイが生贄のギャラリーの枠に入っている以上、これは必要なワンシーンだとゼッツリー様から言いつかっているのです。

 

 ちらっと横目で見るとゼッツリー様は満足そうな表情でワイングラスを手のひらで転がしています。周囲の人たちが話しかければ、ゼッツリー様は私たちの方に手のひらを向けて誇らしげな笑みを浮かべました。

 

 私たちにお褒めの評をくださっているのは何となく分かります。ここは踏ん張らないと。

 

「えいっ!」

 私ははしたなくも、大きく足を開いて板に飛び乗っていくのでした。

 

 ……しかし今更ですが、審査員席のお偉い様たちは何で目元を仮面で覆っているのでしょうか?

 

 

****

 

 

「えっ、別にゴールするまでの順位は審査に関係ないのですか!?」

 

 いくつものアトラクションを越えて、水着審査は終わり。

 私の驚きをよそに、いよいよ審査結果が発表されます。

 

 

「さあ、それでは発表しよう。栄えあるアクドック家ご奉仕奴隷第三期オーディションの合格者は――――1番、レイテ嬢! 2番、ミゼッタ嬢! 6番、テレシア嬢! 以上の三名である!」

 

 やりました! 見事にゼッツリー様の奴隷の座を勝ち取ることができました。

 

「レイテー!」

「やったあああ!」

「お婆ちゃんはもう心臓が止まりそうよおー」

「おめでとー!」

 

 祝福の声援を受け、私はお客様と審査員の皆さまへ心からのお礼をのべました。

「ありがとうございます! 精一杯がんばります!」

 

 

****

 

 

 そうして私はアクドック家の奉仕奴隷となりました。

 それからは見習いとして歌と踊りの厳しい稽古の毎日です。

 

「あっ……あっ……あ、あああああ」

 

「レイテさん、のどを動かすのではなくもっとお腹から声を出すようになさい」

「はい、先生」

 

 教鞭を私のお腹に添え、未熟を指摘するのは音楽の先生です。

 私のミスや集中力の乱れを決して見逃さずに、いつも厳しい指導が入ります。 

 でも、その指導は的確で根底に生徒への愛情があるのが分かります。少しずつですが自分のレベルが上がっていくのも感じられますので、そこに不満はありません。

 

「がんばってー」

「デビューライブ楽しみにしてるよ!」

 

「あっ……はい、ありがとうございます」

 

 問題はそんな私の稽古が街の人たちに見えるところで行われていることです。

 私たち見習いの三人と先生がいるのは領都の中央広場。

 周囲には買い物や憩いの時間を過ごす人々が行き交い、それだけでなくわざわざ私たちの稽古の様子を見に来る人までいるのです。

 

 練習を重ねるほどに、かつてのオーディションの頃の私がいかに未熟だったかが分かりますし、今もまだ人様にお見せできる芸には達していないことが理解できてしまうのです。

 

 ですから訓練(トレーニング)を見られてしまうのは大変に恥ずかしい思いでいっぱいになるのです。

 でもゼッツリー様はこの公開調教(トレーニング)こそが肝なのだとおっしゃって。未熟な私が成長していく様を見ていただく。これもまたお客様から支持をいただく秘訣だというのです。

 

 恥ずかしい限りですが、それがゼッツリー様の確信を持ってのお言葉ですので、私はそれを信じて素人ながら精一杯励むのみです。

 

「ああっ……いいっ……ううっ……えっ……オオッ……」

 

「いい調子ですよ、レイテさん。すっかり滑舌がよくなって。あなたならきっとよい奉仕奴隷になれるでしょう」

「ありがとうございます、先生!」

 

 気合を入れ直して稽古を進めれば、先生からお褒めの言葉をいただけました。

 

「さすがだね、レイテちゃん」

「わたくしも負けていられませんわね」

 

 今や仲間であり一番のライバルであるミゼッタさんとテレシアさんからの言葉。

 

「そうですわ。私たちは仮にも三千人の候補から厳選なる審査を経て選ばれた身。こんなところで立ち止まっているなど許されませんわ」

「そうそう、早く頂点に立って、故郷のみんなに見せてあげるんだから」

 

「はい、皆でがんばりましょう!」

 

 

 まあ実のところは私が合格するのは最初から決まっていたのですけどね。

 

 

CG回収率

 

レイテ 45%

ミゼッタ・フォルス 5%

テレシア 5%

モブ女性 A~G 100%

クリスティン 302%

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